マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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はい、〝播磨〟耐久RTAスタート!


祭囃子の中心 配点¦(祭りの始まり)

さて、上手くかましたものだ。

千冬は笑みを隠す事無く、特別観覧席に視線を向ける。

 

「うわ、荒れてますね~」

「ふん、当然の事だ。何時かは来ると分かっていた痛みが、今来ただけだろうに」

 

特殊ガラスに囲われた密室で、何やら詰め寄られる数人が居る。顔に見覚えはある。確か、倉持技研本社の重役だった筈。

成る程、早瀬も手を回していたのか。

 

「しかし、あれだね。この国は何時でも賑やかであるね」

 

何処にでもある一般的な語りかけ、しかしその語りかけに、千冬は眉間に皺を寄せた。隣の山田も、開いた口が塞がらない。

 

「はっはっはっ、どうかしたのかね? まるで、鳩が機関砲掃射でも浴びた様な顔ではないか」

「……元、とは言え、ロシア国家代表がお忍びで来る場所ではないぞ」

「何、気にする事ではない。夫と娘と、日本旅行の最中でね。いやまったく、……小煩い同志大尉である」

「日本旅行に有り得ない単語が出ましたよ~」

 

快活に笑いながら、白い女が口に黒く磨かれたパイプを咥え、千冬の隣の席に腰を下ろす。

禁煙だと睨みを効かせるが、それを見越してか空のパイプを引っくり返して見せる。

 

「うむうむ、同志ノブツカヤも中々にやっているね」

「お前の跡継ぎはどうだ?」

「同志楯無なら先程試したが、まだまだであるね。機体はおろか、装備すら無い私の槌と鎌に負けるとは……」

「お前の権能は質が悪い。特に楯無の奴とは相性が最悪だ」

 

しかし、それを覆してこその国家代表。ならば、あの学園最強もまだまだだという事だ。

 

「楢原や百日紅も来ているよ。ほら、ちょうど榊原の所に」

 

見ると、放送席に人が増えている。よくよく眺めてみると、他にも千冬達が知る顔がある。

思わず千冬が頭を抱えるが、隣からは平然とした声があった。

 

「それだけ、あの〝剣神〟が再び剣を手にする理由が気になるのであるよ」

「なら、大人しく観ていろ。無駄な騒ぎを起こしてくれるな」

 

折角、面白くなりそうなのだ。つまらぬ邪魔が入るのは嫌だ。

 

「もし、邪魔が入ったらどうするのかね?」

「決まっている。コイツ(山田)を弾除けに、全員斬る」

 

何か絶望的な顔を向けるが、知った事か。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

〝播磨〟上で向かい合う姿は十、しかしその内の一人は、いやに不満気に表情を歪めている。

その歪んだ表情は、間違いなく熱田だ。

 

「あ゛ー……」

「〝神様〟は何か文句でもあるのかしら?」

「あ゛ー、……足りねえ」

「足りない?」

「足りねえ足りねえ足りねえ。私はさ、楽しみにしてたんだ。この〝剣神〟熱田様に楯突くガキ共斬るのをよ」

 

 

あめり¦『真面目に危険発言出たわね』

Oまり¦『日本こわいわー』

 

 

「それが蓋を開ければどうよ? 目の前には五人しか居ねえ上に、余計なおまけがくっついてきやがった」

「熱田代表、余計なおまけとは心外ですね」

「黙れ。私の楽しみを邪魔すんな」

 

 

セシー¦『これ、どうなんですの?』

弾薬庫¦『意思の疎通というより、初めから一対五のつもりだった?』

牛鬼 ¦『あ、これ違うね? 言ってる意味が少し違うね?』

長口上¦『あー分かっちゃった……』

である¦『何? 分かったのかね。ちょっと私にだけ教えてみないかね、同志京極』

 

 

熱田が同じ倉持所属の選手と、言葉を交わす度に、周囲に掛かる圧が増していく。

倉持所属のパイロットも、説得に入っている一人を除いて、熱田から距離を取っている。

 

「ですから、既にルールは決定済み。いくら貴女と言えど、勝手は通りません」

「勝手についてきたのはテメーらだ。折角、千冬肝いりのガキ共が喧嘩吹っ掛けてきたのに、テメーらの分私の取り分が減るじゃねえか……!」

 

ああ、くそ! 大体だ……!

 

「数が足りねえじゃねえか! イギリスフランスドイツに男一人! あと、最近移籍したのが二人居たろうが……!」

「つまり、あんたは一人で、私達全員を相手する気だった訳ね。……いいわ、奉納の喧嘩祭りだものね」

「おいおい、いくら何でも数が合わねえよ。鈴」

「あら、相手は天下の倉持技研所属のパイロット様よ?私達学生が四、五人増えたからって、物の数じゃないわ」

「お、それもそうだな。プロのパイロットが、ガキにビビる訳無いよな!」

「当たり前、相手はプロ。勝ち確の試合で、私達学生にハンデを与える位訳無い」

 

軽い調子で笑い合う鈴音と一夏に簪だが、熱田ともう一人を除く倉持側はそうではなかった。才能と未来はあるが、実績の無い子供の言葉。その挑発など、本来なら一笑に伏すものだ。

しかし、他三人には嫉妬の色が濃くあった。

絶対の一期生に次ぐ、華の二期生として代表候補生にはなれた。だが、そこから鳴かず飛ばず、一般的な代表候補生のまま、専用機も専用武装すら得る事も無く、十把一絡げの中の一人として、誰からも覚えられる事すら無かった。

だが、目の前の子供達はどうだ。

才能も未来も有り、自分達の欲した形有る実績すら手にしている。

嫉み妬む、負の感情というものは、意図も簡単に宿した者を焚き付ける。

 

「……いいわ、たかが子供四、五人程度、かかってきなさいよ」

「おや、何か言ったかね? いや、済まない。私、この打鉄弐式の開発中に、どうやら耳を痛めたらしく、すこ~~しばかり聞こえ難くてね。それにこの歓声の中では、天下の倉持技研も縮み上がってしまうかな?」

 

 

雇われ¦『どうなっても知りませんよ? ボス』

首領飾¦『面倒な劣等生根性丸出しなのが悪い』

 

 

思わず傭平も苦笑を浮かべるが、相手はそれすら挑発と受け取った。

ふざけるなと、怒号が飛ぶが、傭平からしてみれば、熱田以外はただの敵でしかない。だが一つ、気になる視線があった。

熱田ともう一人、傭平と同じく、右腕を体と不釣り合いな巨腕とした女。

彼女は傭平と〝ヘカトンケイレス〟、そして簪を確認し、敵意に近い視線を向けてきている。

その様子に熱田は興味は薄そうだが、まるきり興味が無いという訳でもないらしい。

 

「……まあ、あれだ。お前ら全員対私がいいんだが、どうにも収まりがつきそうにねえな。んじゃまあ、こうするか」

 

軽い提案でもするかの様に、熱田が言葉を吐いた瞬間、傭平は右腕を構え、簪の前に立った。

箒も二刀を前に構え、一夏と鈴音の二人は、一瞬だけ視線を交わし、一夏が頷き雪片を、鈴音は仕方なさそうに双天牙月を前に、熱田を中心とした爆圧を受けた。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「うわー、熱田も変わんないね。サカキ」

「一度は手放したって話だけど、やっぱり〝剣神〟は〝剣神〟という事ね。サカキ」

「どうでもいいがな、ナラ、サル。お前ら何でここに来た?」

 

榊原の眇に、楢原と百日紅は、何か理解出来ないものを見る様な目を向ける。

 

「サカキって、学園の警備のトップだよね?」

「いや、トップは千冬だ。アタシは実働」

「なら、千冬で止まってる?」

「一体何の話だ」

「楢原一尉、並びに百日紅一尉。IS学園に出向になりました。宜しく、榊原三佐。あ、元だった」

「……この程度は話に噛ませろって事か」

「そんな感じそんな感じ。んで、解説はいいの?」

「実況が止まってるからな」

「ふぉぉうっ!?」

 

〝播磨〟上でと突如発生した爆圧に、呆気に取られて固まっていた黛の横腹を小突くと、奇声を発しながら、実況を再開し始める。

 

「え~、実況者としてあるまじき事でしたが、あまりに突然の事に言葉を失っていました。解説の榊原先生、色々トンでも情報出た気がしますけど、今の単純に何ですか?」

「〝フツノ〟、熱田が持つ機殻剣の名だ。そして、熱田だけしか扱えないし、下手をすると触れもしない」

「え、ファンタジー?」

「あのクラスは大概ファンタジーだ。そして、〝フツノ〟はその名自体が〝断ち斬る〟という意味だ。さて、黛。アタシは授業で言ったな? ISコアは何を基準にワンオフアビリティを発現させる?」

 

答えられなければ、座学と実技の補習と追加すれば、壊れたスピーカーの様に、答えを垂れ流し始めた。

 

「……まあ、及第点だ。補習は無し」

「ふう、しかし、何故〝名前〟から何ですかね?」

「……〝名前〟には意味と、願いが籠められている。とある博士の言葉だと、ISコアには願望器としての側面もあるそうだ」

 

首を傾げているが、細かい事までは知らん。

いまだに解明の糸口すら掴めない話を、一実技教師でしかない榊原が、知る筈も無いのだ。

しかし、言葉だけは知っている。

だがそれは、今は関係無い。

 

「さて、黛。こっから忙しいぞ」

「え?」

「一対一の試合じゃなく、生き残りのサバイバルになったんだ。あっちこっち実況しないとなぁ?」

「うわ、あの〝剣神〟余計な真似を……!」

 

マイクが入ったままだが、聞こえてはいないだろう。

いや、聞く気すら無い。

 

「気を引き締めて、実況再開! 只今〝播磨〟上で確認出来る選手は、〝剣神〟熱田選手以外は、土煙で確認出来ません。それで解説の榊原先生、今のがその、〝フツノ〟の切れ味って奴ですか?」

「軽く斬る気で、〝フツノ〟の刃を向けただけだ。本当に斬る気なら、切断面が崩れる事は無い」

「つまり?」

「鳳の奴は大変だぞ。千冬の〝零落白夜〟すら斬った〝剣神〟と、正面から殴り合うつもりだからな」

「は? サカキ、マジの話だったのあれ?」

「ナラ、サル、よく見とけ。もしかすると、もしかするかもな」

 

榊原の声に、観客全員の視線が〝播磨〟に向けられる。

そして見たものは、割れた青竜刀を片手に、欠伸をする鈴音の姿だった。

 

「徒手空拳って話じゃねえのか?」

「ん? ああ、これ? 私的に要らない物なんだけど、上がどうしてもって、甲龍のスロットに入れるのよ。数回振ったらヘタれて、ちょっと風を受けたら割れるとか、玩具じゃないんだから……」

 

割れ曲がった双天牙月を放り捨てれば、観客席の何処かで、誰かが膝をつく様な気配があったが、そんなものどうでもいい。

大事なのは、今目の前だ。

 

一歩、熱田が前に出る。

一歩、鈴音が前に出る。

二歩、熱田が〝フツノ〟の刃を鈴音に向ける。

二歩、鈴音の眼前で刃の砕ける音が響く。

三歩、熱田が笑う。

三歩、鈴音が笑う。

四歩、熱田の前に鈴音が立つ。

四歩、鈴音の前に熱田が立つ。

 

「まずは一発、龍の拳受けてみる?」

 

握り締められた龍の拳が、〝剣神〟を打撃した。

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