マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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播磨君RTA1ターン目スタート!


龍は如何に剣の神と舞うか 配点¦(奉納の神楽舞)

まず最初に、視界に入ったのは笑みだった。

余裕を感じさせる、上位が下位に向けるそれとは違う。

喜と楽、嬉しい楽しい。

遊び相手を待ちわびた子供、まさにその笑みが、互いの視界に入った。

 

刃と拳が火花を散らし、鍔競り合う中、熱田が視線を鈴音に向ける。

ただそれだけ、何か起こる訳がない。

しかし、熱田の視線を受けた鈴音に、何かがぶつかり砕け割れ、散っていく。

 

「それも〝剣神〟の権能ってやつ?」

「お前のそれもそうか?」

 

硬質な破砕音が不規則に連続し、鈴音の周りに散っていく。しかし、それを意に介さず、鈴音は握り締めた拳を熱田目掛けて振り抜く。

普段の拳とは違う。シールドはおろか、絶対防御すら当たれば貫き、致命の一撃になるだろう拳。

 

「ははっ、お互い窮屈だったよなあ!」

 

その拳を紙一重でかわしながら、熱田が〝フツノ〟の刃を向ける。ただ向けただけ、それだけで何かが斬れる事など有り得ない。

しかし、鈴音に向けられた刃は、確かに斬ってみせた。

 

「あ、やっぱり邪魔よね」

「いいのか? あっち、誰か泣いてるっぽいぜ」

「いいのよ。ちょっと振ったらへたれる段平に、龍の名を冠している癖に、弾が見えない以外に取り柄の無いがらくたよ?」

 

学園島で誰かが膝を折る気配があったが、そんなものはどうでもいい。

背後、龍砲が千々に斬り刻まれるが、有ってもデッドウエイトにしかならない。寧ろ、龍砲二つ分、〝剣神〟の権能が見られると考えるなら、盾代わりくらいにはなった。

 

『イラナイノー』

 

甲龍のコンソールに文字が浮かぶ。久々に喋ったと思ったら、本人からも邪魔扱いだった様だ。

鈴音が、自身の周囲に破砕音を多重に響かせながら、拳を振り抜き、蹴りを放つ。

兎に角、廃屋が邪魔でしょうがない。蹴り割ったビルの壁の残骸の端を掴み、水切り宜しくアンダースローで投げる。

碌に確認せずに投げたが、あれはさっき熱田が斬り飛ばしたビルの屋上部分だった。壁ではなかった。

当たる手前で、微塵切りになったが、まったく紛らわしい。

 

「こんな豆腐投げても、こっちの刃は欠けねえぞ?」

「これで欠けたら、逆に驚いてあげるわ」

「ははは、無理な話だ。……んで、どうだって話だ」

「あら、何がかしら?」

「私の権能探ってたろ? 解ったのかって話だ」

「あんたの通り名が答えでしょ。範囲を確認してただけよ」

 

それはいいと、熱田が鈴音に〝フツノ〟の切っ先を突き付ける。刃だけでなく、刀身を向けてきたのは、これが初めての事だ。

そして鈴音は、横薙ぎに拳を振るい、伸びてきた刃をへし折った。

 

「あんたの権能、〝剣神〟の通り名そのままに、あんた自身が刀剣だという事。つまり一挙手一投足、いや、もしかすると呼吸もかしら? まあ、その全てが斬擊となる」

 

それも、超一級の剣士なんて話にならない。

世に謳われる剣聖すら、遥か遠く霞む。

剣士という、刀剣を扱うだけの格では、到底辿り着く事叶わぬ域。

切る、斬る、断つ、裂く。おおよそ、刃が為せる物事を、人の身や業という不純を含まず、ただ切断という概念が振るわれる。

 

「まあ、だから何だって話ね」

「だよなぁ。お前はこんなカミソリじゃ斬れねえ。私も予想外だった。まさか、刃が届かねえとはな」

「あら、気付いてたの」

「当たり前だ。刃がお前に触れる前に、弾かれて砕けてやがる。だが、ワンオフって感じと違う、お前はんな小せえタマじゃねえ」

「なら、何かしら?」

 

まあ、焦るな。

熱田は腰のハードポイントパーツから、皺だらけの煙草の箱を取り出し、よれた煙草に火を点ける。

千冬や他の連中が、現役を離れ始めた頃に、腹いせの様なもので始めたが、思ったより悪くなかった。

 

「一応、禁煙よ」

「いいじゃねえか。それで、お前のそれだが、ワンオフじゃなく、ワンオフの一部だろ」

「正確には、強引に押し込んでるワンオフの、押し込みきれてない部分ね。〝龍の威圧〟とか呼ばれてるらしいわね。因みに私のワンオフ、常時発動型だけど、学園だとちょっと使えないから」

「ああ、越えられねえのか……」

 

落胆したかの様に、熱田が紫煙を吐き捨てる。

やはり気概だけで、誰も届かなかったのか。そんな疑問が、熱田の脳裏を過る。

しかし、それを鈴音は鼻で笑った。

 

「あんた、何勝手にがっかりしてんの? え、もしかして悲劇の強者気取り? 戦える相手が居ないとか?」

「あぁ?! んだ、このガキ! たたっ斬るぞ!」

「あー、馬鹿らし。誰も私に届いてないなら、ここには私一人で立ってたわよ」

 

眉をひそめる熱田だったが、すぐにその困惑の色はかき消えた。

 

「ああ、そうか。そうだよなあ。なら、これから来る連中もか」

「ええ、そうよ。〝神〟に挑み、〝神〟に勝とうとする者達よ。じゃあ、〝剣神〟熱田。龍の威圧すら断てない貴女は、本当に私達が打倒するに値する〝神〟なの?」

「言ってろくそガキ……!」

 

心の何処かに、僅かに残っていた迷いと疑念は、今この瞬間に露と消え果てた。

己の〝圧〟のみで、全て断てると思っていたが、現実はどうだ。

〝圧〟で断てぬ者が居る。

〝剣神〟相手に吼える〝龍〟が居る。

そして、〝神〟に勝とうとする者達も居る。

 

「マジで帰らなくてよかったって話だ。それじゃあ、鳳・鈴音。……斬るぜ」

「いいわ、来なさい。全部、受けてあげる」

 

鈴音が両手を広げ、余裕の笑みを浮かべる。

歓喜にうち震える熱田が、この日初めて〝フツノ〟を構えた。構えたといっても、肩に担ぐ様にしていた〝フツノ〟を、右手一本でだらりと垂れ下げただけだが、学園島の観客全てが、あれが〝剣神〟の構えだと理解する。

そして、その理解がまるで足らなかったと、次の瞬間理解した。

 

『は?』

 

黛の声だった。マイクに拡声された声が、呆けた色を観客席に落とす。否、黛だけではない。観客席の一部を除く全員が、〝播磨〟上で起きた現象に理解が出来ず、呆けたままに声を失っていた。

 

「……おい、あれ死んだんじゃ……」

 

現象は一瞬で、起きた原因も単純だった。熱田が右手に構えた〝フツノ〟を、横薙ぎに振るった。

ただそれだけの事で、〝播磨〟表層部にある建築物、崩れていた瓦礫の山が、形をそのままにずれた。

ズルリと、音が付きそうな程に、鉄筋コンクリートで出来たビル群が、滑り落ちていく。

瓦礫の山も同様に、新たに崩れる気配すら見せず、積み重なった姿をそのままに、滑り落ちて、地に落ちた瞬間に、己の惨状に気付いた様に、粉塵の血飛沫を上げた。

 

『榊原先生、今のは……?』

『良い機会だ。よく見とけ、あれが〝絶対の第一世代〟だ。つまり、千冬の同世代は全員あれだ』

『き、キチガ……、いや、あれ! 鳳さん死にましたよ……!?』

『だから、よく見とけ。死人が出たなら、なんでまだビルが斬られてる?』

 

あ、と黛が声を漏らす。

その間にも、〝播磨〟上では止むこと無く、切断の刃が走り続け、遂には〝播磨〟の船体の一部を斬り落とし、海面に巨大な水柱を作り上げていた。

 

「は、やっぱりだ。やっぱり、斬れてねえな」

「ホント、嬉しそうね」

「当たり前だ、当たり前の話だ。最後に〝フツノ〟を振ったのが、何時だと思ってやがる」

「聞くけど何時かしら?」

「千冬が引退する前だ」

「そう」

 

言った瞬間、〝播磨〟が激震した。否、沈み込んだ。

鈴音が踏んだ震脚は、〝播磨〟船体を海面に確かに沈み込ませ、〝播磨〟だけでなく学園島にまで波と揺れを伝えた。

折れ曲がり割れ、砕け散りながらも、〝播磨〟のフレームから伝わる反力を足場に、鈴音は固めた拳を力任せに、熱田に叩き付けた。

 

「じゃ、今日が最後ね。その剣、私が叩き折ってあげる」

「ははははははっ! なら私はお前を斬ってやらぁ!」

 

弾き飛ばされた熱田だが、ビルや瓦礫に激突する事は無かった。熱田に接触する寸前に、熱田の〝圧〟によって微塵に斬り捨てられ、障害物となる事無く、通路を開く。

 

「流石に、すぐには折れないわね」

「なら、お前はすぐに斬れるかぁ……!」

 

熱田が斜めに斬り上げ、ビルや表層部だけでなく、中層のフレームまで斬り裂き、〝剣神〟の刃は〝播磨〟の船体を歪ませる。

 

「鱗も斬れないわね……!」

 

熱田の刃を避ける素振りすら見せず、鈴音は熱田の顔面目掛けて、必殺の拳を振り抜く。

しかし、その拳は熱田を捉えず、まだ残っていたビルの基礎部分に直撃し、基礎部分と連結していた表層フレームごと引き抜き、表層部の一部が捲れ上がる。

 

「楽しんでるか〝龍〟……!」

「楽しくないの〝剣神〟……!」

 

〝神〟が勝つか、〝龍〟が勝つか。

崩れ落ちていく〝播磨〟を舞台とした、熱田と鈴音の激突は、〝播磨〟の悲鳴を他所に、更に加速していく。




1ターン目
ダイスロールの結果
播磨君、耐久力の半分が消し飛びました……!

つまり、熱田か鈴音のどちらかが、メインフレームやりました!
え、播磨君弱ない?
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