マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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下手くそ、ただそれに尽きる


巨人と火神 配点¦(だからこその証明)

激突と衝撃、爆音と炎熱、そして剣神の慟哭が響き渡る中、男二人騒がしさの渦中にて隣り合わせで、腰を下ろしていた。

 

「……止めなくていいのかい?」

「何をですか?」

「あのままだと、彼女は死ぬかもしれないよ」

「ふむり、有り得ませんね」

 

二人の内の一人、年若い方の誠一郎が、迷う事無く言い切る。

 

「そちらの剣神が切り札の様に、こちらもあの小さな龍が切り札なのです」

「その切り札は斬られたよ」

「まさか」

 

そしてもう一人、鹿島が不思議なものを見るかの様に、誠一郎に眇を向ける。

 

「彼女、凰・鈴音は龍だ。龍に人の理は通じない」

「だが事実、龍は神の剣に倒れた」

「まさか、あれは寝ているだけです」

 

屁理屈、そうとしか聞こえない台詞だが、鹿島は知っている。〝神〟を知っているからこそ、誠一郎の言葉が屁理屈などではないと。

 

「そして、今あの場は〝祭〟の最中、神が騒いで、龍が一休みするなら、その間は誰が繋ぐか」

 

その答えは

 

『あーっと、ここで織斑・一夏が、剣神熱田をインターセプト!』

『雪片頼りだが、まあ及第点か』

 

「人が神と騒ぎましょうや」

「神と人が対等だと?」

「祭の場で人も神もないでしょう?」

 

共にバカ騒ぎをしているのだから。

その言葉を聞いて鹿島は、画面に映る熱田の表情に目を向ける。

角度のせいか、あまり鮮明ではないが、それでも長い付き合いだ。嫌でもよく分かる。

 

「さて、あいつは腐っても剣の神。剣持つ人は何時まで舞えるかな?」

「あいつバカなんで、少しおだてたらすぐ調子乗りますよ」

「ちょっと評価が酷くないか? 同級生なんだよね?」

「同級生でも、事実は事実なんで。あ、鹿島主任」

「なんだい?」

「この祭が終わったら、少々ご相談が。……あるものを、鍛造してほしい」

「あるもの?」

 

鹿島が疑問し、誠一郎がそれに答える。だが、その答えは、画面だけでなく空からも轟く爆音に掻き消された。

 

「……分かった。鍛えようじゃないか」

「感謝します」

「だが、それもあそこの結果次第だ。あいつはあんなでも、一応は僕の相棒でもある。剣神を奉る祭、もう少し派手でもいいんじゃないのかな?」

「準備は進めていますよ」

 

 

御曹司¦『はい、確定の言質取った!』

兎軍人¦『いや、今のは言質か?』

御曹司¦『あのばけもん相手に派手にしろって発言だ。熱田の性格上、断る訳がない』

弾薬庫¦『どうでもいいけど、ラウラ手伝ってよ。弾薬の積み込みがまだ終わってないし、まだ〝あれ〟も届いてないよ』

セシー¦『あの、アメリアさんは何処に行きましたの?』

Oまり ¦『アメリアなら、もうカタパルトデッキに仁王立ちしてる』

約全員¦『やる気だ……!』

 

 

やる気も何も、負けるつもりで勝負の場に立つ奴は居ないと、アメリアはエナジーバーが齧りながら、武装のチェックをしていた。

 

 

あめり¦『英国代表候補、まだなの?』

セシー¦『あ、パッケージ自体の接続と設定は終わりましたが、まだ武装チェックが……』

あめり¦『なら早くして。流石に、あれに一人で突っ掛けるつもりは無いわ』

 

 

広げたディスプレイでは、一夏と箒、そして簪が、どうにか熱田を抑え込んでいるが、長くは保たない。

既に倉持側の選手は、熱田と蔵橋以外は全員リタイアしているが、どうなるか分からない。

 

「四組副代表、あなたが負けたら、一気に終わるわよ」

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

何か、とんでもない事を言われた気がしたが、今はそれどころではない。

 

「ふう」

 

現状、季節を間違えているのかと、そう叫びたくなる様な高温の中、右腕を振り回して、襲い来る焔の神を迎え撃っている。

既に機体の整調作用でも、最早間に合わなくなり始めた全身の冷却と、残り少なくなった経口補水液のパウチを絞る様に飲み干し、戦闘可能時間を割り出す。

 

――キツイですネ――

 

蔵橋自体は正直な話、戦って勝てない相手という訳ではない。しかし、あの蔵橋の右腕である〝ヒノカグツチ〟が、その全てをひっくり返していた。

蔵橋の右腕は、今や煌々と燃え上がり、その高熱とそれが生み出す陽炎で、直視する事すら難しくなっている。

あれは焔の神ではなく、最早太陽神に近い。

 

腕を動かす事無く、ただ身を揺らすだけで致命の熱量が、辺り一帯を焼き潰していく。

機体からの鳴り止まない警告を無視し、傭平は巨人の右腕を振り抜くが、それは届かない。

 

「これで……!」

 

蔵橋がヒノカグツチを向けるだけで、コンクリートが、〝播磨〟のフレームがバターの様に熔断されていく。

さあ、この焔の神に、自分は勝てるのか。

 

 

首領飾¦『ははは、傭平。激戦の様だね』

雇われ¦『ボス? え、そっちは大丈夫なんデ?』

首領飾¦『傭平、大丈夫な訳ないじゃないか。今にも死にそうだよ』

一季 ¦『簪さーん、サポートサポート……!』

侍娘 ¦『参ったぞ! まったく刃が届かん! いやあ、参った』

雇われ¦『ボス? 本当にとんでもない事になってませんカ?』

首領飾¦『傭平も早く気給え。そちらの火祭りもいいが、こちらの喧嘩祭りもまたよいものだよ?』

 

 

それに

 

 

首領飾¦『聞こえてくるだろう? 追加の祭囃子が』

 

 

何をと問う前に、蔵橋の熱線が傭平の視界を遮り、世界を更に焼いていく。

灼熱、その言葉に生温さすら感じる中、蔵橋が汚れでも振り払うかの様に、右腕を振り下ろす。

自らの放つ熱で自壊を始めた〝ヒノカグツチ〟は、既に原型を崩し始め、振り下ろした右腕の動きに、灼け熔けた装甲の一部が、熱に焦がれる地面へと落とされる。

 

「……もう、諦めろ。お前では無理だ」

「理由になりませんネ」

「私は勝ちたいだけで、お前達を壊したい訳じゃない」

「交渉の意味、知ってますカ?」

 

経口補水液のパウチを一つ飲み干し、傭平は〝ヘカトンケイレス〟の拳を蔵橋へ向ける。

 

「我々は今日、神との神楽を舞いに参じた者共。祭囃子が止まない限りは、踊り続けましょウ」

「ならば、神との差に灼かれろ……!」

 

〝ヒノカグツチ〟が、その輝きを増し、熱波を伝え世界に火神の存在を焼き付けていく。

もう、世界に〝カグツチ〟を、〝ヒノカグツチ〟を侮蔑する者は居ないだろう。

だが、まだ足りない。まだ、〝ヒノカグツチ〟は〝ヒノカグツチ〟でしかなく、蔵橋も蔵橋でしかない。

〝火神〟に、〝ヒノカグツチ〟でも蔵橋でもない。〝剣神〟熱田と同じ様に、〝火神〟蔵橋とならなければ、世界は再び父と姉を否定する。

だから〝火神〟となる。

〝火神〟となり、世界に刻み付け焼き付ける。

そうすれば、もう誰も二人を否定しない。

その為にまずは、

 

「火神の焔に倒れろ、神挑みの巨人……!」

 

蔵橋の右腕が、〝ヒノカグツチ〟から炎塊へと姿を変え、傭平へと迫る。

〝火神〟、そう呼ぶに相応しい炎は、もう傭平一人でどうにか出来るものではない。

この神の炎に対して、己はどうするべきか。

決まっている。

 

「神挑み、その名を冠したなら、ただ挑むのみ……!」

 

その為の右腕だ。

軋む〝ヘカトンケイレス〟を振り上げ、〝ヒノカグツチ〟と激突する。

激突は一瞬で数回、だがそのいずれでも傭平は弾かれ、押し込まれていた。

 

「もう挑戦の時間は過ぎた」

「いえ、まだですヨ」

「いや、もう終わりだ」

 

蔵橋の言葉も解る。機体からは警報が鳴り止まず、〝ヘカトンケイレス〟も、装甲の一部が融解を始めている。

あと数合の内に、〝ヘカトンケイレス〟は自壊する。

そして、傭平自身も限界が近い。

ISのパイロット保護機能が十全に機能して、それでも肩と肘は熱を持ち、冷却が間に合わず、感覚すら曖昧になり始めている。

全身の疲労も、脱水症状も出始め、満身創痍の中、最後の経口補水液を飲み干し、傭平は再び〝ヘカトンケイレス〟を振り上げる。

 

「だからどうしタ。もう一度言ってやル。だからどうしタ」

「死ぬ気か?」

「〝神〟だ〝火神〟ダ。ご託並べてねえで、さっさとかかってこいヨ。人間はまだ立ってるゾ……!」

「ならば、本当に焼いてやる!」

 

視界を塞ぐ莫大量の焔を前に、傭平は笑い、右腕を振り抜いて、焔の軍勢を掻き分けて、蔵橋へと駆けていく。

今、己は証明出来ているだろうか。

どうだろうか。

いや、今はそれよりも目の前の敵を叩き潰し、簪の元へ急ぐ事だけを考えろ。

さあ、駆けろ。

一心に

不乱に

ただそれだけを果たせ。

 

「お……!」

 

眼前の全てが炎に覆われ、それでも傭平は叫び駆ける。

それが己の全てで、証明だと。

仙波・傭平の証明を果たす為に、仙波・傭平を使い切れ。

その為に振り抜いた右腕は、炎の壁に飲まれ弾かれ、傭平は強かに打ち据えられる。

 

「さらば」

 

蔵橋のその言葉が聞こえると同時に、熱が辺りを支配していく。

相手は正しく炎の神、己は勝てるだろうか。否、勝つ。

その為にこの場に立っている。

なら、往く。

その為に立ち上がり、〝ヘカトンケイレス〟を振り上げた瞬間、傭平を巻き取り、引き上げる力があった。

 

「なっ……!」

 

驚く蔵橋と、集中から醒め事態が飲み込み切れない傭平。だが、傭平が顔を上げた時、視界に入った者の顔が見た瞬間、傭平は事態を把握した。

 

「ねえ、傭平。何をしてるのかな?」

 

シャルロットが、笑顔でブチ切れていた。

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