マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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やあ、ザクⅡF2型を衝動買いしたナマモノです。
今回からお話がジワリと動き出します。
後、ちょっとした悲劇が起きます。


一年専用機持ちによる 前編

晴天のアリーナ、そこに二人の男女が向かい合っていた。 

一人、男は白の鎧に身を包み

一人、女は朱と黒の鎧に身を包んでいた。

 

「よっし、それじゃいくぞ?」

「どっからでも来なさいな」

「これで六回目、頼むぞ、成功してくれ~」

 

何か拝む仕草を見せる白、織斑・一夏。彼の機体〝白式〟は近接特化の高機動型、ヒットアンドアウェイを基本としているが、その白い装甲には幾つもの打撃跡があった。

 

「一夏、本当に成功したの?」

「おう、誠一郎に協力してもらってな。……一回だが」

「一回……、それも誠一郎に協力してもらってね。それ違うんじゃない?」

「一応、コツは掴んだと思ったんだがなぁ。やっぱり、なんか違うのか?」

 

頭を悩ませる二人。向かい合い共に頭を傾げる様子は中々に滑稽だが、このアリーナには二人以外は誰も居ない。

 

「う~ん、なにとは言えないけど、何か違うのよね。一夏のは対処出来るもの」

「だよなぁ。千冬姉のは対処も何も無いって感じだったし、やっぱり何か足りないのか?」

「どうにも、厳しいわね」

 

新たな打撃跡を刻んだ白式と打撃跡を刻み付けた甲龍。

甲龍にも幾つか傷が刻まれているが、明らかに白式の方がダメージが深い。

一夏は得物である雪片弐型を一度肩に担うと、その柄で頭を掻いた。

体力、機体共にまだ余裕はあるが、頭に余裕が無い。

本来、一夏も鈴も細かく考えて動くタイプではない。そういうのは、簪と傭平や誠一郎達に任せている。

だが、今回は自分達で考えて動かなくてはならない。

だから考えているのだが、一向に答えが出る気配は無い。

 

「なんだろうなあ?」

「なにかしらねえ?」

 

腕を組み考えるが、一向に答えは出ない。

二人が悩んでいるものはなんなのか。それは、一年専用機持ちだけでなく、学園に所属する専用機持ち全員に課せられた〝課題〟である。

 

「あ~、考えても埒が開かない。休憩だ休憩」

 

一夏が手に持っていた雪片を拡張領域に納め、背筋を伸ばし首と肩を回す。

 

「お、おぉぉ~、鳴るな~」

「それだけ、姿勢が固まってたって事よ」

「これじゃ、〝再現〟は無理だな」

「そうね」

 

鈴も一夏と同じく軽いストレッチをして、幾らか体の凝りが軽くなったら、二人は同じピットへ向かい、そこで待っていた一人に口を開いた。

 

「どうだった?」

「ダメだな、あれじゃ、ただ加速して回り込んでるだけだ」

「それじゃぁ、誠一郎。あんた達の方はどうだったの?」

 

鈴の言葉に、茶髪の少年早瀬・誠一郎は両手を挙げて、盛大に溜め息を吐いた。

 

「偉そうに言ったが、こっちもだよ。俺の機体のワンオフ使えば似たような事は出来るが」

「全然ダメ?」

「ああ、傭平のセントリーガンとスロワーマイン(空中機雷)で簡単に迎撃された」

 

もう一つ、盛大に溜め息を吐いて、誠一郎は続ける。

 

「一夏とコツは掴んだと思ったんだがなぁ」

「まるで違う、似て非なるものだった訳だ」

「そういえば、傭平達は?」

「ん? ああ、簪が整備室に缶詰になってな。セシリア達はそっちに、傭平は会長に呼ばれて生徒会室」

「……何故かしら? 嫌な予感しかしないわね」

「右に同じ」

「以下同文」

 

三人同時に肩を落とす。

専用機持ち達に課された〝課題〟、これをクリアしなければ卒業が出来ない。

いや、下手をすると進級すら危うい。

 

「取り敢えず、セシリア達に合流しよう」

「ああ、じゃあ、いつもの整備棟に行こうぜ。そこで合流する予定だったしな」

 

簪の専用機開発の関係もあり、一年専用機持ち達の溜まり場は基本整備棟となっている。

各国の代表候補生達が、未完成の機体に関して議論し、学園にある部品や装備の試験の算段を試案し、打鉄弐式に組み込むかを設計図を片手に悩む。そんな場となっていた。

 

「じゃあ、今日は泊まり?」

「ああ、そうだな。今のところはそのつもりだ」

「なら、後で着替えを取りに行くか」

「そうね。あ、傭平には言ったの?」

「会長に呼ばれる前に言ってるよ。しっかし……」

 

二人の着替えを待つ誠一郎は、ロッカールームがある方向に歩いていく二人の背を見ながら呟いた。

 

「倉持と傭平はなに考えてんのかね?」

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

「では、やはリ?」

「手回しと根回しが早くてね。というか、あれは最初からね」

「ははは、流石、国営企業。喧嘩売るのが上手イ」

 

言うと、清涼感のある匂いの水蒸気の煙を吐き出す。

一拍置いて、彼の右手から何かが割れる音が聞こえた。

 

「〝御当主〟、仙波家次期当主として問いまス。このまま捨て置くつもりデ?」

「ま、さ、か? そんなつもりがある訳ないじゃない。自分の仕事もまともにしない、更識嘗めくさった真似をした。累積罪が天元突破よ!」

 

余裕のある猫の様な笑みが、獰猛で狡猾な肉食獣のそれに変わる。

くつくつとした笑いが生徒会室に響く。

 

「傭平、仙波傭平。準備は?」

「進んでますヨ。というか、また無理させますネ?」

「〝更識の右腕〟の次期当主が何言ってんだか。で、どこまで進んでるのかしら?」

「武装に装甲、モーターも全取り替え、残ったのはラファールのフレームのみですヨ」

「間に合う?」

「貴女が選んで、貴女が準備させた人員でしょウ?」

「そうね、愚問だったわ」

 

くつくつとした暗い笑いが、ケラケラとした軽い笑いに変わり、生徒会長更識・楯無は書類の束を手に取る。

図面と数値とグラフが並び、彼女は一枚目と二枚目を見比べる。

 

「フレームも一部延長して、関節並びにフレーム強度増強の為に部品変更、各部モーターも安定性から出力重視に切り換え、ラファールが影も形も無い機体になるわね」

「俺の要求と御当主の要求を合わせたら、こうなりましたからネ?」

「色も変更なのね」

「えエ」

 

傭平が頷き、楯無が設計図を机に置いた。

そこに描かれた図面は、傭平の機体〝ラファールExtra-04〟とは似ても似つかぬ機体が描かれていた。

更識・楯無は少し冷めた紅茶を口に運び、唇を軽く湿してから、仙波・傭平を真っ直ぐ見て言った。

 

「〝更識の右腕〟〝更識の暴力〟、仙波家次期当主仙波・傭平、更識当主更識・楯無が命じます。更識を侮辱し、国家を欺き務めを放棄した倉持技研に鉄鎚を下しなさい」

「仙波・傭平、拝命致します」

「……後、これはただの更識・刀奈として、仙波・傭平にお願い」

「なんですカ?」

 

彼女は一度目を閉じ、更識当主としてではなく、更識・簪の姉の更識・刀奈として傭平を見る。

 

「簪ちゃんを、あの子の夢を守って……」

 

傭平はその言葉に、ただの仙波・傭平として答えた。

 

「だ~いじょうぶ、任せてヨ刀奈姉。ボスとボスの夢は俺が守るヨ」




悲劇
ラファールExtra-04、出番も無しに解体。
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