マイボス マイパートナー   作:ジト民逆脚屋

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はい、後編。
大分、無理がある展開ですが、生暖かい目で見てもらえますと幸いです。

あと、この世界では白騎士事件起きてません。タッバが学会にチッフ詰め込んだ白騎士持っていって、実演したからね。
なんで、原作はこれしなかったのか。

次にデュノア社男装事件、起きてません。
「ちょっとぉ、こっちにいい感じの衣装あるんスよぉ。寄ってかない?」

こんな感じで、日本では男装女子がアツいとかなんとかをキャッチしたシャルロットさん。何を思ったのか、男装して日本に入国、神話レベルで性癖がフルオープンでフル活動している国に何も知らない子羊が入った瞬間である。
後は知らない。

VTシステム?
ほら、どっかの2nd-Gの剣神の歩法で動いてるチッフに対する抑止力を目指したけど、現状最高性能の探知能力すら認識出来ない相手を、どうやって抑止するのか? 
その時、世界が匙を投げた。


一年専用機持ちによる 後編

「取り合えず、進級の目処は立った。後は、卒業か……」

「そうですわね」

 

進級出来る事がほぼ決定したにも関わらず、一同は微妙に暗い顔をしていた。

それもその筈、一年の専用機持ち達が卒業する為には、知覚の外に居る織斑・千冬に一撃を与えなければならないからだ。

 

「ああ~、腹へった……」

「簪は余裕だな」

「どうせやんなきゃいけない事だし、それより今の空腹を満たすのが大事」

 

簪が上着のポケットを探り、飴を見付けて噛み砕く。

続けてもう一つといこうとしたが、飴玉は噛み砕いた一つだけだったようで、簪の眉間に皺が寄り不機嫌さが増した。

 

「腹へった……」

「まったく、仕方ないわね。ほら、テーブル片して、ご飯にしましょ」

 

鈴が備え付けのロッカーからエプロンを取り出し、ぐったりとした簪以外が資料が山積みのテーブルや、その周りを片付け始める。

 

「鈴カーちゃん、今日はなに?」

「カニカマのなんちゃって蟹玉よ。あ、箒。野菜茹でといて、簪が生野菜食べないから」

「簪、好き嫌いは良くないぞ?」

「生野菜が苦手なだけ、野菜は好き」

 

簪がぐったりと首だけを回して箒を見る。

空腹時の簪は徹底して動かない。IS学園の常識である。

その時は鈴カーちゃんか、傭平を呼ぼう。

 

「傭平」

「シャルロットさん、話は後にしましょウ」

「本当に話してくれる?」

「ええ、話しますヨ。ボスにも関係ある話ですシ」

「……傭平、どういう意味?」

「ま、ま、ま、後にしましょウ」

「お~い、シャルロットすまんが手伝ってくれ」

「あ、うん。後で絶対に話してね」

「ええ、勿論でス」

 

傭平がヒラヒラと手を振り、誠一郎に呼ばれたシャルロットを見送る。

それを簪が下から見詰めていた。

 

「そんな目をしないでくださいヨ。ボス」

「傭平、打鉄弐式の事?」

「……ボス、俺はボスの傭兵でス」

「知ってる。初めて会った時から、傭平が傭兵で私がボス」

「ボス、ボスの夢は絶対に叶いますヨ」

 

俺が叶えまス。

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

「それで、傭平と誠一郎は何をしようとしているのかな?」

「シャルロットさん、笑顔、笑顔が怖いですヨ?」

「ん?」

「はい、ごめんなさイ」

「申し訳ありません」

 

揃って頭を下げる傭平と誠一郎、にこやかな笑顔を浮かべているが、どす黒いナニカが漏れ出ているシャルロット。

箒は冷や汗を流し、セシリアはワタワタと頭を下げる誠一郎の周りで慌て、ラウラはシャルロットに少し引き、一夏と鈴は通常運転、簪は明日の作り置きを摘まんでいた。

 

「で、何をしようとしているのかな?」

「いや、順を追って話すから、少し落ち着いてくれ」

「それじゃあ、早く」

 

取り合えずは、どす黒いナニカを納めたシャルロットに、二人はある事を説明する。

 

「理由は後で話すが、今傭平の機体はフルスクラッチの真っ最中だ」

「最近、模擬戦にあまり来なかったのはそういう事でしたの?」

「ちょっと訳ありでして、あの機体を組み上げてくれたクラスの皆さんに申し訳ないですけど、ラファールExtra -04 はフレームしか残っていませン」

「また、思い切った事をするものだな」

 

一息置いて、傭平がミントの匂いのする煙を吐いた。

喉の痒みが少しマシになる。

 

「それで、機体のフルスクラッチの為の人員を、早瀬クンの家から借りてきているという訳です」

「〝HAI〟の技術者か」

「それで、それはなんの為?」

 

空になった大皿を流し台に置いて戻ってきた簪が、傭平に半目を向けている。

その目は、普段と変わらぬ眠気を堪えた様な気怠気な目だったが、下手な言い逃れや言い訳は許さないという意思があった。

 

「……ボス、落ち着いて聞いてください。このままでは、……打鉄弐式は完成と同時に倉持技研に奪われます」

「……え?」

 

一瞬、躊躇い続けられた言葉に、簪は理解が追い付いていなかった。

仕方のない理由からではあったが、怒りや憤りも覚えたが、完成しないかもしれないと思っていたが、それでも皆の協力もあって完成間近に迫った機体。

そうだ。漸く、漸くだ。漸く、完成が間近に迫って、姉に並べると思っていた。

だが、

 

「傭平、……今なんて言ったの?」

「……ボス、〝このままでは〟完成と同時に打鉄弐式は、倉持技研に奪われます」

 

自分が、一体何の為に機体を造っていたのかが、まったく解らなくなってきた。

目の前で傭平が言っている言葉が理解出来ない。理解したくない。理解してしまったら、今までの自分が崩れて無くなってしまいそうだ。

 

「ボス、お気を確かに」

「お気を確かに、じゃないわよ。バカ傭平」

 

今にも倒れそうな程に憔悴した簪を、隣に座る鈴が抱き止めた。

簪は震えていた。震える手で、抱き止めた鈴のシャツを弱々しく力無く握り締め、彼女の胸に顔を埋めていた。

それを鈴は、優しく抱き寄せて背中を撫でながら、傭平を睨み付けた。

 

「あんたね、簪がどんな思いで打鉄弐式を造ってきたのか。それを私達の中で一番知ってるのは、あんたでしょう。そのあんたが……」

「鈴、ストップ」

「でも、一夏」

「傭平の話を聞こう。傭平が意味も無く、こんな事言う奴じゃないって知ってるだろ?」

「解ったわよ。簪? 大丈夫?」

 

鈴は己の胸に顔を埋めている簪に問い掛けた。

 

「大、丈夫」

「……順を追って話をしましょう。何故、ボスの機体が奪われるのか」

 

口の端から、清涼感のある香りのする煙を吐いて、傭平は真っ直ぐに簪を見た。

 

「先ずは、倉持技研についてです」

「国営企業で、純日本製IS〝打鉄〟を開発した企業だろ?」

「ええ、その通り。その通り、その筈だったんだよ」

「あの、誠一郎さん。一体それは?」

 

苦い顔をする誠一郎に、セシリアが問うた。

倉持技研は純日本製機体である〝打鉄〟を開発し、世界的なシェアも、デュノア社の〝ラファール・リヴァイブ〟に次ぐ世界第二位に当たる。

その倉持技研に対し、苦い顔をする誠一郎。倉持技研と関係のある、〝HAI〟の御曹司である彼が何故その様な顔をするのか。

それは、傭平の口からもたらされた。

 

「倉持技研は〝打鉄〟を開発していなかったのです」

「ま、待て。何? 〝打鉄〟が倉持技研を開発してないだと?」

「箒、落ち着け。慌て過ぎて日本語が変だ」

「いやいや変にもなるぞ、ラウラ。倉持技研と言えば、姉さんの友人である篝火さんが居る会社だ」

「今回の打鉄弐式の件は、その篝火・ヒカルノさんからのリークです」

「え、篝火さんが?」

 

一夏が驚きの声を出す。篝火・ヒカルノ、一夏の専用機〝白式〟の調査を担当する技術者であり、〝天災〟篠ノ之束の友人でもある。

その彼女が、打鉄弐式に関する倉持技研の動きをリークした。

 

「倉持技研は国営企業で、その傘下となる企業も山の様にある。その関係企業まで含めたら、引くぞ?」

「それで? 余計な話はいいのよ。結論と本論を言いなさい。……私がキレる前にね」

「では、ISの登場から各国は篠ノ之博士に、その技術供与と共有化を求めました。勿論、その中には日本の倉持技研もありましたが、博士の性格を解っていなかった」

 

傭平が茶を口に含み、代わりに誠一郎が眉間に皺を溜めて話す。 

 

「同じ日本人、日本の倉持技研を優先するとか調子に乗っていたんだろうな。他国の様に迎え自ら博士に教えを乞いに行かず、博士が来るのを待っちまったのさ」

「あ、あの姉さんにそれをやったのか……」

「あの来るもの拒まず、去るもの追わず、意欲があれば子供だろうが、死にかけの老人だろうが、誰にだって自分の知識を教授するが、やる気が無い奴は完全に無視のあの篠ノ之博士にだ」

 

それが招いた結果は、惨憺たるものであった。

各国が彼女の教えの元に、着々とIS開発を進めていく中、日本だけが明らかに遅れていた。

〝ラファール〟〝テンペスタ〟〝メイルシュトローム〟次々と試験機体が産み出されていく。

焦る倉持技研、このままでは国から切り捨てられる可能性もある。

自分達は、この技術大国日本の国営企業だ。それが他国に後ろ指を指されるなど、我慢ならない。

 

そんな中身の無い自尊心に限界が見え始めた時、ある報せが届いた。

 

「日本のとある企業が、〝打鉄〟の元となる機体の開発に成功した」

「それも、倉持技研が格下と見下していた企業が」

「待って、それってまさか……」

「……そのまさかですよ、シャルロットさん」

 

ここまで言われれば誰だって気付く。

焦った倉持技研の所業に。

 

「なまじっか、顔も手も広い倉持、開発成功の噂がひろがりきる前に、あの手この手でその企業の取引先や顧客を奪っていった。自分達がやったとは解らない様にな」

「そして、弱った企業を吸収合併し、〝打鉄〟の開発元を倉持技研、自分達とした」

 

傭平が首を左右に曲げ、凝りを解していく。

硬質な音と繊維質な音が混ざり、それが止んだ時、力の無い笑みを見せた。

 

「情けない話だ。倉持技研に誰も疑いを持っていなかった。この情報が無ければ、誰も気付かなかっただろうよ。俺も、傭平から聞かされるまでそうだったしな」

「ボス、聞いてください」

 

傭平の声に鈴から離れた簪は、顔を俯けたまま動かない。

だが、傭平はそれに構わず続けた。

 

「倉持はこう思っているでしょう。〝学生の身分で、ここまでの機体を造り上げるとは、見事としか言いようがない。しかし、悲しいかな。あと一歩、学生という身分があと一歩を届かせなかった〟」

 

一度、息を吸い

 

「〝そこで我々倉持技研が手を差し伸べた。我々の的確な指導と設備の元、新型機を完成させる。こうして、打鉄弐式は倉持技研によって、初めて産声を上げたのだ〟」

 

一息に言い切った傭平は、湯飲みの底に残っていた僅かな茶を飲み干した。

 

「奴らの考えているシナリオは、こんなもんでしょう」

「…………」

「簪……」

 

誰も俯いたままの簪に、何も言えなかった。

言ってしまえば最初から、打鉄弐式は簪が完成させると同時に奪われる手筈になっていたのだ。

自分の今までは一体なんだったのか。震えだした簪を、全員が心配そうに見詰める中、彼女はいきなり立ち上がり、鈴が冷蔵庫で冷やしていた杏仁豆腐が入った大きめのボウルを掴み、スプーンで一気に掻き込んだ。

 

「ちょっ、簪?!」

「わぁ、僕ら全員分がみるみる無くなってくよ……」

 

あの細い体のどこに入っていくのか。鈴特製杏仁豆腐は、シロップの一滴すら残さず簪の中に消えた。

 

「ふぅ、傭平」

「イエスマム」

「打鉄弐式の開発状況」

「機体、システム共にほぼ完成。残るは、第三世代兵装〝山嵐〟の調整と山の様なテストです」

「やるよ、傭平。思い知らせてやる。奴らに刻み付けてやる。叩き付けてやる。打鉄弐式は私達が造ったんだって」

「マムイエスマム」

 

口に残る杏仁豆腐の甘さを、冷めた茶を飲んで流し込み、簪は全員を見た。そして、頭を下げた。

 

「皆、お願い。私達を助けて」

「いいぜ、任せろ」

 

誠一郎が言えば

 

「そうですわね。これは少し筋が通りませんわ」

「確かにな。少々、勝手が過ぎる」

 

セシリアと箒が同意し

 

「技術者としてより、人間としてアウトだよね、これ」

「まったくだ。こちらを馬鹿にしているとしか思えん」

 

シャルロットとラウラが頷く。

 

「一応は、白式のバックアップ会社なんだが、この際〝HAI〟に鞍替えするか?」

「そうねぇ、それもいいかもしれないわね」

 

一夏が自然体で構え、鈴が腕を組み首肯する。

 

「ありがとう、皆」

「では、ボス」

「うん、お願い傭平」

「マムイエスマム」

「世界中に思い知らせて、刻み付けて、叩き付けて、私達が造ったんだって。私達子供が、この子を造ったんだって」

 

打鉄弐式を造ったのは自分達だ。

更識・簪の目には、その意思が強く見えた。




次回から

少し日常
皆で更識家に遊びに行こう!



倉持技研のお話?
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