セイバーと十六夜は森の中を走っていた。普通の人間にとってその速度はありえない速度ではあったが確かに二人は走っていた。
「ヤハハハハ、結構早く走れるんだなぁセイバー」
「十六夜さんこそ本気じゃないですよねそれ」
「やっぱわかるかまぁもっと速く走ることはできるぜ」
と喋りながら走っていると滝が見えてきた
「ふーん、良い景色じゃねぇか」
森に囲まれた湖とそこに落ちている滝が幻想的な風景を作り出していた。
その景色を眺めていると
「ここに人間が来るのは何年振りだぁ」
「我ら蛇神が貴様らを試してやろう」
と二匹の蛇が湖から現れた。通常このようなことが起こればたいていの人は腰を抜かしてしまうだろうしかしその蛇の前にいるのは常識が一切通用しない問題児と切らねば自分が死ぬという数多の任務をこなしてきた剣客、このようなことでは動じることはなかった。
「そうかじゃあ俺を試せるか、試させろ!」
十六夜はそう言い放ち二匹いる蛇の片方を殴り飛ばした
「なっ、貴様ぁぁぁ!」
もう片方の蛇が激昂し十六夜に向かっていくがそれを見逃すセイバーではない
「あなたの相手はこの私です」
そう言い放ち蛇に刀を向ける
「せっかくですしギフトゲームをしましょう、内容はあなたと私で一対一の決闘を」
「その戯言が貴様の最後になるぞ」
「いえ、あなたのような弱者に負ける方が難しいかと」
”蛇神との一騎打ち”
プレイヤー
・セイバー
・蛇神
勝負方法
上記のプレイヤー同士で戦う
勝利条件
・相手を戦闘不能にするor相手を殺す
敗北条件
・自分が戦闘不能になるor自分が死ぬ
宣誓
両者の合意のもとこのゲームを正式なものとする
両者の前に羊皮紙が現れる
「フハハハハ!小娘がわしにかなうわけなかろう。この神である私にただの人間がかt「シュッ」GYAAAAaaaaaaaa!」
ギフトゲームが始まった直後大口を叩きだした蛇に向かい一筋の剣尖が走った。相手が小娘だと油断していた蛇にとってそれは意識を失うのには十分な一撃だった。
「やっぱり手応え無かったですね」
そう言うセイバーの手に一振りの刀が現れた
「これが報酬ですか、なかなかの業物ですね」
「へぇ、見ただけでわかるのか」
「これでも一応剣客ですから」
と話しているとちょうど黒うさぎたちが向かっていった方向から気配が近づいてきた
「黒うさぎですか?」
「もう!一体どこまで来ているんですか!ここは"世界の果て"ですよ!」
十六夜とセイバーを怒鳴りつけた。
「なかなか早いな。こんな短時間で俺に追いつけるなんて」
怒鳴られた十六夜に反省しているような様子は一切見られない。
「当然です!私は箱庭の貴族と謳われる黒ウ......サギ……え?」
(黒ウサギが半刻以上もの時間追いつけなかった!?)
黒ウサギはあまりの十六夜とセイバーの走力の高さに驚愕した。
「それよりも、終わりですか?」
「アレのことか?」
「まだだ…まだ試練は終わってないぞ小僧ォ!!」
十六夜が後ろを指差すと怒り狂った白い大蛇が水の中から姿を現した。
「水神の眷属蛇神!?」
「別に、ただ偉そうに試練を選べとかなんとか上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ、俺を試せるかどうか試させてもらった。結果は期待ハズレだったがな」
十六夜はニヤリと笑って言った。
「そりゃ怒るに決まってます!何をやっちゃってくれてるんですか!」
「付け上がるなよ人間風情が!我がこの程度のことで倒れるものか!!」
「あなたの片割れは一撃で倒されましたけどね」
蛇神は敵意を全面に出しにしている。
「助け、いります?」
「冗談!こいつは俺の喧嘩だぜ、それにお前は一匹と遊んだじゃねぇか俺にも遊ばせろ!黒ウサギもな!」
「了解です」
「ちょ!何言ってるんですか十六夜さん!相手は神格持ちなんですよ!それにセイバーさん、遊んだってどう言うことですかっ‼︎」
「十六夜があの蛇を殴り飛ばしたらもう一匹の蛇が怒りだしたからギフトゲームをやって勝ちました」
「その心意気は買ってやろう!それに免じてこの一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる!」
「寝言は寝て言え!決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ!」
「フン!……その戯言が貴様の最期だ!」
蛇神は大量の水で10mは超えるであろう巨大な水の竜巻を2本作りだしこちらに1本もう1本は十六夜のほうに放った。そして竜巻は十六夜を飲み込む。
「十六夜さん! セイバーさん!」
「こっちまで巻き込まないでくださいよ。」
セイバーは落ち着いて刀を抜いた。
「ハっ!しゃらくせぇ!!」
十六夜は竜巻をたった一撃の拳で消し飛ばした。
「馬鹿な!?」
「セイバーさんは!?」
黒ウサギがセイバーのほうを向くと居合の型をとったセイバーが刀を振り抜き竜巻を切り裂いた
「嘘!?」
「ま、それなりには楽しめたぜ。あいつの力も見れたしな。これはその礼だ!」
十六夜は大地を蹴り蛇神の頭上に飛び上がり、
「グアッ!!」
蛇神を蹴り飛ばした。
その一撃で蛇神は倒れ伏し、辺り一帯に水飛沫が飛ぶ。
「全く……今日はよく濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだよな?黒ウサギ」
「そんな……ありえません。デタラメです。」
黒ウサギは驚きを隠せなかった。神格を持った存在がただの一撃で倒されてしまったのだから。あと竜巻を斬ったセイバーの居合。
(信じられません…ですが本当に最高クラスのギフトを所持している!)
黒ウサギは思わず笑みを浮かべた。蛇神を素手で打倒した十六夜の力とセイバーのあの力があれば……悲願を達成することも夢ではないと希望を見出したが、
「こんな力がいる程なんですかねー?」
「へ?」
気が付けば、セイバーはじっと黒ウサギを見つめている。
「な、何のことでございましょう……?」
「じゃあ、あなたは何で私達を呼び出す必要があったんですか?」
「ああ、それは俺も聞きたいね」
表情には出さなかったものの、黒ウサギは激しく動揺した。
二人の問いは、黒ウサギが意図的に隠していたものだったからだ。
「それは……言った通りですよ?十六夜さん達にオモシロオカシク過ごしてもらおうと――」
「ああ、そうだな。俺も最初は純粋な好意か、もしくは与り知らない誰かの遊び心で呼び出されたんだと思っていた。俺は大絶賛、暇の大安売りしていたわけだし、セイバーはともかく、他の二人も異論が上がらなかったってことは、箱庭に来るだけの理由があるんだろうよ。だからオマエの事情なんて気にかからなかったが―--俺には、黒ウサギが必死に見える」
その時、黒ウサギが動揺を顔に出してしまった。
真紅の瞳が揺らぎ、虚を衝かれたように十六夜を見つめ返す。
「これは俺の勘だが。黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくは訳あって衰退したチームじか何かじゃねぇのか?だから俺達は組織を強化するために呼び出された。そう考えれば今の行動や、俺がコミュニティに入るのを拒否した時に強く拒否ことも合点がいく――どうよ?満点だろ?」
「っ!」
黒ウサギは内心で舌打ちした。この時点でそれを知られてしまうのは、彼女にとって余りにも手痛い。
苦労の末に呼び出した力を手放してしまうようなことは、何としてでも避けたかった。
「んで、この事実を隠していたってことはだ。俺達にはまだ他のコミュニティを選ぶ権利があると判断できるんだが、その辺どうよ?」
「どうですか?」
「…………」
「沈黙は是也、だぜ黒ウサギ」
「話してくれませんか?」
十六夜は近くにあった手ごろな石に腰を下ろして聞く姿勢をとった。
セイバーは半身の姿勢に変え、黒ウサギを見つめる。
しかし黒ウサギにとって今のコミュニティの状態を話すのは余りにもリスクが大き過ぎる。
(せめて気づかれたのがコミュニティの加入承諾を取ってからならよかったのに!)
加入承諾を得た後なら、コミュニティの状況を知られても簡単に脱退することはできない。
なし崩しにコミュニティの再建を手伝ってもらうつもりだったのだが……何にせよくじ運が悪かった。相手は世界屈指の問題児集団と忌み子なのだ相手が悪い。
「ま、話さないなら話さないでいいぜ。俺はさっさと他のコミュニティに行くだけだ。お前はどうする?個人的にはお前の力に興味が湧いたから一緒にきてほしいんだが」
「元々、死ぬ直前でしたからやりたいことも特に無かったですしいいですよ」
「……話せば、協力していただけますか?」
「ああ、面白ければな」
十六夜はケラケラ笑うが、その目は一切笑っていない。
黒ウサギはようやく己が間違っていることに気がついた。黒ウサギの話を聞くだけだった二人の少女とは違い、この二人は箱庭の世界を見定めるのに真剣だったのだと。でなければ、黒ウサギの動揺に気づけるわけがなかった。
「………わかりました。それではこの黒ウサギもお腹を括って、精々オモシロオカシク、我々のコミュニティの惨状を語らせていただきます。」
黒ウサギは、コホンと一つ咳払いして内心半分以上自棄やけっぱちだった。
「まず私達のコミュニティには名乗るべき名がありません。よって呼ばれる時は名前のないその他大勢ノーネームという蔑称で称されます」
「へえ……その他大勢もその扱いかよ。それで?」
「次に私達にはコミュニティの誇りである旗印もありません。この旗印というのはコミュニティのテリトリーを示す大事な役割も担っています」
「はい。」
「名と旗印に続いて、中核を成す仲間達は一人も残っていません。もっと言っててしまえば、ゲームに参加できるだけのギフトを持っているのは一二二人中、黒ウサギとジン坊ちゃんだけで、後は十歳以下の子供ばかりなのですヨ!」
「もう崖っぷちだな!」
「ホントですねー♪」
十六夜の冷静な言葉に最初こそ明るく笑うものの、ガクリと膝をついて項垂れる黒ウサギ。ただの空元気だったらしい。いざ口に出してみると、本当に自分達のコミュニティが崖っぷちと思わずにはいられなかった。
「で、どうしてそうなったんだ?」
「叛逆ですか?」
黒ウサギは項垂れたまま力なく首を振る。
「いえ、彼らの親も全て奪われたのです。箱庭を襲う最大の天災――魔王によって」
魔王――その単語を聞いた途端、適当に相槌を打つだけだった十六夜が声を上げた。
「ま………マオウ!?」
「?」
その瞳はまるで子供のように輝いている。さらに具体的に言うと、まるで新しい玩具を目の前にした子供のような瞳でありとてもとても輝いている。
十六夜の変わり様に隣で聞いていたセイバーは疑問符をあげた。
「魔王!なんだよそれ、魔王って超カッコイイじゃねえか!箱庭には魔王なんて素敵なネーミングで呼ばれる奴がいるのか!?」
「え、ええまあ。けど十六夜さんが思い描いている魔王とは差異があるかと…」
「そうなのか?けど魔王なんて名乗るんだから強大で凶悪で、全力で叩き潰しても誰からも咎められることの無いような素敵に不敵にゲスい野郎なんだろ?」
「ま、まあ…倒したら多方面から感謝される可能性はございますし倒せば条件次第で隷属させることも可能です。」
「へえ?」
「魔王は主催者権限ホストマスターという箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたら最後、誰も断ることはできなせん。私達は主催者権限を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティは……コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまいました」
これもまた比喩ではない。黒ウサギ達のコミュニティはその地位も名誉も仲間も、全てを奪われた。彼女達に残されたのは、廃墟と子供達だけである。
しかし十六夜はそんなコミュニティの状況に同情する様子もなく、岩の上で足を組み直した。
「けど名前も旗印も無いというのは不便な話だな。何より縄張りを主張できないのは手痛いだろ」
「潰して作ればいいじゃないですか?」
「そ、それは......。」
二人の指摘に黒ウサギは言い淀む。その指摘は正しい。
名も旗印もないコミュニティは誇りを掲げることもできず、名に信用を集めることもできない。この箱庭の世界において名と旗印がないということは、周囲に組織として認められないということに他ならないだが
だからこそ、黒ウサギたちは望みを賭けた。異世界からの同士の召喚という最終手段に。
「か、可能です。ですが改名はコミュニティの完全解散を意味します。しかしそれでは駄目なのです!私達は何よりも……仲間達が帰ってくる場所を守りたいのですから!」
仲間の帰ってくる場所を守りたい。それは黒ウサギの本心だった。出会ってから初めて口にした、彼女の偽りない思いだった。
魔王とのゲームによって居なくなった仲間達が帰る場所を守るため、彼女達はどれだけ周囲に蔑まれることになろうとも、コミュニティを守るという誓いを立てた。
「修羅の道ではあります。けど私達は仲間が帰る場所を守りつつ、コミュニティを再建し……いつの日か、コミュニティの旗印を取り戻して掲げたいのです。そのためには十六夜さんや詩姫さんのような強大な力を持つプレイヤーを頼るほかありません!どうかその強大な力、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか!?」
「……ふぅん。魔王から誇りと仲間をねえ」
「仲間......誇り......」
その言葉にセイバーは後ろめたい気持ちになる、病気だったとはいえ最後まで仲間と戦えなかった、誠の文字を最後まで背負えなかった、さらには仲間に別れを告げずにここに消えたこと、それは彼女の心に大きな溝を作っていた。
「お願いします‼︎」
深く、深く頭を下げて懇願する。だが、必死の告白にも関わらず十六夜は気のない声で、セイバーは顔を俯かせていた。その態度は黒ウサギの話を聞いていたとは思えない、黒ウサギは頭を下げたまま肩を落とし、泣きそうになっていた。
(ここで断られたら……私達のコミュニティはもう……!)
黒ウサギは血が出てしまうのではないかというほど強く唇を噛む。こんなことになるなら最初から全て話せばよかったという後悔が彼女を苛む。
十六夜は組んだ足をだるそうに組み直し、たっぷり黙り込んだ後、
「いいな、それ」
「...............……は?」
「は?じゃねえよ。協力するって言ったんだ黒ウサギ」
不機嫌そうに言う十六夜。呆然と立ち尽くす黒ウサギ。
「そんな流れでございました?」
「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねえのか?失礼なこと言うと本気で余所行くぞ。」
「だ、駄目です!駄目です!絶対に駄目です!十六夜さんは私達に必要です!」
「素直でよろしい。で?お前はどうするんだ?」
「私は.........。」
今の流れで黒ウサギはすっ飛んでいたようだが、セイバーは返答していない。いや返答ができなかった。
セイバーは迷っていた、前とは違う世界に来ているのは確かだがこのまま彼らに協力してもまた最後まで戦えずに他の仲間に迷惑がかかってしまう恐れがあるからだ。
十六夜の了承に嬉しそうに顔を綻ばせていた黒ウサギが、不安げな顔に戻る。
「セイバーさん…......」
「私は….コフッ」
「セイバー⁉︎」
「セイバーさん⁉︎」
返事を返そうとした時セイバーは吐血した。いくら体の調子が良くなっていたとはいえ病気が治っていたわけではない、ただ症状が軽くなっていただけなのだ。
(あぁ、やはりこのままではみんなに迷惑がかかってしまいますね….)
「大丈夫かセイバー?」
「いえ、ちょっと発作が起こっただけですので大丈夫です」
「本当に大丈夫なんですか?」
「はい、それとさっきの返答ですが断らせてください」
「えっ….」
「私にはあなた方をたs「それってお前が他の人に迷惑がかかるからだよな」ッツ」
「そんな理由じゃ納得しねぇよ仲間に迷惑がかかる?上等だ仲間になるんだったらそれくらい当たり前だろうが」
「その通りです」
その言葉は乱暴な物言いだがセイバーにとって救われる言葉だった
「ありがとうございます。私はあなたのコミュニティに入ります」
「よし決まったな。ほれ、あの蛇起こしてさっさとギフトを貰って来い。その後は川の終端にある滝と世界の果てを見に行くぞ」
「は、はい!」