アルルの魔術学院生活 作:ほよ
そんなこんなでグレンの講師生活一日目は始まった。
一限目は、グレンが眠いから自習………となる所をシスティーナが引き止めることで授業は行われた。しかし終始死んだ目をしているグレンの授業。その内容は無いようで、何となく教科書を読んでるだけのテキトーな授業に、質問にもテキトーな受け答え。ほとんどの生徒達は、
((((((うわぁ………))))))
と感じていただろう。酷い授業であると、間違いなくほとんどのクラスメイトがそう感じていた。
一方アルルはというと、カーバンクルを撫でながら教科書と授業内容を照らし合わせてある程度ノートをとっていた。そのノート内容は教科書の比率の方が高かったが。
二限目は授業前から一波乱。錬金術の授業で生徒達が制服から着替えている時のこと。グレンが女子更衣室と男子更衣室を間違えて入ってしまう、いわゆるラッキースケベを起こしてしまった。そのまま出て行けば良かったものの、その後グレンは着替えてきた女子生徒をがっちり見ようと仁王立ちして目を見開くという意外な行動に出た。
即座にアルルがカーバンクルに顔に貼り付くよう指示したことでグレンの視界をふさいで被害を最小限に抑えて女子更衣室から追い返す事で、何とかその場は事なきを得たが、その後の授業でグレンはほとんどの女子生徒から吹雪の様な目線を向けられるのだった。
そして、大波乱が起きてしまった午前授業が全て終了した後の昼ごろ、アルルはこの時を今か今かと待ち望んでいた。
「よし、昼ご飯の時間だ!!カレーが僕を待っている!!」
「
そう、アルルの至福のひととき。昼食のカレータイムである。アルルは、システィーナとルミアの二人と共に食堂に趣きカレーの大盛りを注文した。同じくカレー好きのカーバンクルもアルルの肩に乗って準備は万全だ。
「貴方もカーバンクルも、本当にカレーが好きよね………。」
「アルルもカーくんも、ここのところ毎日カレー食べてるけど飽きないの?」
「もちろん飽きないよ!しかも、ここの食堂のカレーって季節の食材を使ってて結構種類があって、それですっごく美味しいんだよ!今日のカレーは………あっきたきた。」
「ぐぐーー!!」
((ありがとう、食堂の人たち!))
アルルがカレーに飽きることなどない。カレーに飽きる。その事はアルルにとっては有り得ないし、想像もつかないことだった。可能ならば毎日、毎食カレーを食べていたい。そう思うくらいにはカレーのことが好きだった。アルルにとってカレーは全ての料理の中の希望であり、至高の財。この世で何よりも素晴らしい食べ物と言えるだろう。
ゆえに、アルルはカレーのことになると少しばかり話が長くなる傾向にある。今、それを遮るような料理を出すタイミングは本当の意味でジャストタイミングだった。
「じゃあ、カレーも来たことだし行きましょうか。」
「そうだね。じゃあ空いてる所に座ろっか。」
システィーナとルミアに連れられてアルルも適当な四人席に着席し、それぞれのプレートに乗せられた料理に手をつけようとした。
「いただきます、それで、『メルガリウスの天空城』がね———————」
((あっ、始まった………))「「い、いただきます。」」
「
すると、もはやお昼恒例となってしまったシスティーナの『メルガリウスの天空城』についての長話が始まる。ルミアやアルルにしてみればいつもの事なので、特に何も言う事はない。システィーナも料理に手をつけているようなので、相槌を打ちながら二人もそれぞれ料理を食べ始めた。
「それで、メルガリウスが————で、———————だから………」
「そ、そうなんだ………。」
三人で昼食の時間を楽しんでいる(?)と、その四人席のそばで誰かに声をかけられる。
「失礼。」
「どうぞー。」
声をかけてきたのは黒髪の青年だった。黒髪の青年が席に座ろうとして断りを入れたときアルルは誰も返事をしないだろうなと思い、カレーを食べる手を止めて了承の返事を出す。青年はアルルの隣に座ると、大量にもられた料理をナイフで切り分けていく。すると、切った料理をパンに挟んでもしゃもしゃと食べ始めた。アルルの前に座っていた二人は突然の流れに唖然としていたが、はっとしたシスティーナが声を上げる。
「あ、貴方はっ!」
「違います。人違いです。」
システィーナの言葉を右から左に受け流し料理を食べ進める青年。それは、新人講師グレンだった。カーバンクルと2人でカレーに夢中だったアルルも顔を上げて挨拶をする。
「あ、変た……先生。こんにちは。」
「今変態って言おうとしたよね?」
「違わないでしょ?僕達の着替えをまじまじ見ようとしてたんだから。」
アルルは、半目でグレンの目を咎めるようにじっと見つめる。グレンも自分に落ち度があった事を認めたのか、食べるのを一旦止めて謝ろうとする。
「うぐっ………悪かったよ。」
「ごめんなさいは?」
「………ごめんなさい。」
「…………先生も謝ってくれましたし、いいですよ。もうあんな事はしないで下さいね?」
「それはどうかな!!「は?(威圧)」すいません自重します。」
「………ならよし。さ、先生も食べましょう?早く食べないと、そんなにいっぱいあったら冷めちゃいますよ。」
「お、おう………。」
アルルはもう怒ってはいないのか、笑みを浮かべてグレンに食べるように促す。グレンが食べ始めたのを見て、そのまま自分もカレーに手をつける。グレンが食堂の料理を懐かしむように嬉しそうな顔で食べ進めていると、ルミアがグレンに声をかけた。
「あの……先生、たくさん食べるんですね?ひょっとして、食べるの好きなんですか?」
「ん?ああ、食事は俺の数少ない娯楽だからな。」
「ふふっ。その豆の炒め物、すごく美味しそう。とてもいい匂いしますね。」
「おっ、分かるか!こいつは——「キルア豆の新豆、ですよね?」お、おお。よく分かったなアルル……。」
「もちろんですよ、グレン先生……。今日の僕のカレーにも入ってますからねキルア豆。……風味がしっかりとしていて、それでいてカレーの風味を消さずに味を引き立てつつ、豆の美味しさもそこに「わかったわかった。お前も好きなら一口食わせてやろうか?ルミアも。」ちょ。ひどい……」
「いいんですか?関節キスになっちゃいますよ?」
「んなもん気にしねぇよ。ガキじゃねぇんだし。」
「……………………」
段々と食事の雰囲気が柔らかくなっていく。しかし、そんな中でシスティーナだけはただ一人暗く重い雰囲気に包まれて、談笑にも参加せずに今でもグレンの方をじっと険しい顔で睨みつけていた。
システィーナはグレンに初めて会ったときも、教室に遅刻してきたときも、授業中も、そして今もこうしてずっと不満を抱いている。さらに、グレンがルミアやアルルと仲良さそうに話している姿が気に入らない。そんな思いが綯い交ぜになっていた。
「じゃあ、僕も失礼して。あ、システィーナもどう?ほら。そんなカリカリしてないでさ。」
「べ、別にいらないわよ……。」
そんな様子に気付かないアルルは、仲良く皆で食べようとシスティーナに呼びかけた。が、もちろんシスティーナは拒否。
「あ、そう?じゃ、カレーは?カレーはどう?!美味しいよ!」
「だから、そういうことじゃなくって!!」
さらに自分のカレーまで勧めてくるアルルは遂に相当な不満を溜め込んでいたシスティーナの怒りに火を灯してしまった。
「あ……なんかごめんね?でも、どうしたの?そんなに大声だして。」
「そうだぜ。今までずっと俺のほうばっか見てるけどさ、...もしかして俺のキルア豆も食べたいんじゃないのか?」
「違います!そういうわけじゃなくて………分かりました。この際、ここではっきりとんぐぅ。」
怒りで震えながら立ち上がり話すシスティーナの口に向けて、突然スプーンが差し込まれた。育ちのいいシスティーナは、黙って口に入ったカレーを咀嚼して飲み込んだ。その先には、スプーンを差し込んだと思われるアルルの姿。
「どう?美味しいでしょ?」
「んむ………あ、おいしい………。」
「でしょ!………何だか分からないけどとりあえず落ち着いて。せっかくだしさ、皆で一緒に食べようよ!」
「そうだよ、システィ。その気持ちも分かるけど、抑えて……ね?あ、私のシチューも食べる?美味しいよ?」
「シチューも大丈夫よ…………………はぁ、わかったわよ。早く食べないと次の授業に遅れちゃうからね。」
すると、システィーナは仕方ないと言ったような笑顔で座り直し自分の頼んだスコーンを食べ始める。
「そうだぜ?そんなにカリカリしてっと、白髪増えるぞ。」
「増えないわよ!これは、白髪じゃなくて銀髪!地毛よ!」
「ちょ、どっちも抑えて抑えて!」
システィーナの怒りもアルルとルミアの働きで何とか最小限に収めることができた…………かどうかは分からないが、この後4人でめちゃくちゃご飯食べた。
カレーの話しかしてない………
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