将来の夢はマダオ。 作:ら!
久我春日はただじっと見つめていた。
自分の布団に転がる奇妙な模様のたまごを。
「…どうしようか、これ。」
恐る恐るたまごを手にとってみる。
「…なんともいえない生あたたかさ。まるで産み落とされたばかりのような」
そしてやはりじっとみつめてみる。
「…これって食用?」
首をかしげてそうつぶやいた。たまごが怯えたような気がした。
ところ変わって聖夜学園小、四年星組。
結局、そのままおいておくわけにもいかず、鞄に入れて持ってきた。
(...起きたらたまごがあるなんて、どうなってんだ?)
春日はふと、思い付いた。昔、つまり前世のこと。自分が少年時代に熱中した電気ネズミが登場するゲームを。
(たしか、たまごは歩きまくって孵化させてたっけ。)
其れから某たま⚪っちよろしく、どこにいくにしてもたまごを手放さなかった。
(結構歩いたんだけど、まだみたいだな。…こいつ、さてはプータローだな。)
春日がそう思ったとき。
----コトン
たまごがそんな音をたてた。
そして放課後。
帰り際、細い道にある人影がいた。
「いいからそれ、よこせよ!」
「こっ、これはっ、ぼくがおこづかいをためて買ったもので…」
そう。春日はカツアゲ現場に遭遇したのだった。だが、春日はそれを気にも止めなかった。彼はその光景を眺めながらいちご牛乳を飲んでいた。
それに気づいたカツアゲ犯は春日にも目を向けた。
「おい、そこのおまえ。なにみてんだよ」
「......」
「おまえ、センコーにちくんなよ!チクったらおまえも」
「......」
ゴクゴグゴク
「わかってんだろーなぁ!」
「......」
ゴクゴグゴクゴグ
「人の話きけやぁ!」
「......だれだ、おまえ。」
春日はやっとカツアゲ犯の顔をみた。
「おれは-----」
「あぁ...思い出した。田中くんでしょ?うわぁ、久しぶりだね、元気だった?ところで君の向かいのおじさんのネコどうしてる?」
「知らねぇよ!おれ、田中じゃねぇよ!!てかおれとおまえ初対面!!」
「そういや、田中くん。山根くん元気?ジャンガジャンガしてるの?キモカワイイって最近いわれなくなったよね(笑)」
「おれ、田中じゃねぇよ!?山根くんも知らねぇよ!?ジャンガジャンガってなんだ!?アンガー⚪ズじゃねぇんだよおぉ!」
----コトン
また、たまごが音をたてた。
「ふざけんな、てめぇ!」
そして春日の手元のいちご牛乳奪い取った。
「はっ!こんな甘ったるいもの飲んでんのか、おまえ---」
ズゴオォォ
直後、カツアゲ犯の右頬にきれいなストレートがきまった。
----ピキキっ
同時にたまごが割れる音がする。
《こいついちご牛乳になんてことぬかしやがる。よし!春日、キャラチェンジだ!》
「...え?」
春日が目をぱちくりさせ現状を理解しようとする。自分の体が勝手にうごいた気がしたのだ。
《つっても、もうフライングしちまったが。
なりたい自分にキャラチェンジ!
か
め
は
め
波ァ-----ーーー!》
鳥山先生ごめんなさいいぃ!
メガネの雄叫びもはるか遠くで聞こえたような気がした。
「ったく、ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ、発情期ですか、コノヤロー」
口が勝手に動き出す。手元には洞爺湖と書かれた木刀。ただ、水溜まりに写った自分の目がいつも以上に死んだ魚の目のようだった。