特典?能力?阿呆か貴様ら。   作:好き嫌い

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おうおう!勢いに任せて書いちまったぜ。


これぞ天狗道

時の庭園と呼ばれる場所がある。

そこは魔法世界ミッドチルダの元研究者であった、プレシア・テスタロッサが隠れ家として使っている場所。今そこは襲撃にあっている。

襲撃者は2人。

 

一人は転生者を虐殺していた少年。もう一人はこの時の庭園に身を委ねていた少女。否。この庭園で生まされ、人形のように言いなりになることを望まれた憐れなクローン。

 

神の悪戯か、少女には本来とは異なり魔法の適性がなかった。本来なら魔法の適性が入る器は空っぽで、そこには特別な何かは何も無い。

何も無かったからこそ、造り手たる母親から見放されているからこそ、彼女のことを狙う転生者達が付き纏いすぎていたからこそ、少年に会った時に彼女は目覚めた(感染)のだ。

 

究極的な求道者に。自分と少年で完結した宇宙(天狗道)に。完結した自己愛主義に。

 

能力()を見た。魔法()を見た。才能()を見た。精神()を見た。

力を見て彼女は答えを出した。

なんだこれは?と。

 

この程度が力?たかが古代の宝物を撃つだけが、剣を複製するだけが、魔力砲撃をするだけが、スキルと呼ばれる特異現象を起こすことだけが力だと?

これのどこが力だ?それは力などとは言わない。赤ん坊に木の棒を持たせただけだ。

こんな力があっても、少年の()には叶わないではないか。

 

彼女は狂気()を見た。自己愛()を見た。宇宙()を見た。渇望()を見た。徹頭徹尾最強無敵。誰が相手だろうと滅尽滅相。

人の精神だろうが生命力だろうが神秘だろうが関係ない。蹂躙するのに能力など要らない。殺すのに能力など必要ない。塵を片付けるのに能力など必要ない。

何を思ったかは彼女ですら理解していないし、誰も理解できない。だが確実に彼女は少年と出会った時から紛れもない求道者へと目覚めた。

 

彼女は少年に恋していると思っているが、根本的な部分から自己愛主義者の彼女は前提の考え方が間違っている。

 

彼を愛する自分は素晴らしい。

 

天狗道らしい自己愛に満ちた考え方。だが悲しいかな、彼女はそれに気づけない。もし悪悦な蛇が呪いを与えるとしたら、『永遠に自らの真意に気づけない』となるだろう。

だがそんなものは関係ない。呪いだろうがなんだろうが、気づかせてくれる人がいなければ意味は無い。何せ彼女は既に出来上がっているのだ。一つの宇宙()として。

 

いずれにせよ、既に少年と同じく(太極)を握れる身へ昇華した彼女に、2人がクソ以下と断ずる能力が通じるはずはない。

 

塵掃除をしようとしても結果的には塵を使って塵を掃除しなければいけなくなるのだ。その身に纒わり付く塵が塵を掃除しても、その身を這い寄る塵が鬱陶しくなっていくだけだ。

 

ならば仕方がない。自分で塵掃除をしよう。面倒だけどやらなければ。それは全て、自分が綺麗でありたいと思うからこそ。自分の綺麗な(天狗道)に塵がいるなど許せない。

 

彼女が死神の鎌を振るう。空気を切り裂きながら刃が踊る。一太刀で十を超える首が飛ぶ。だが満足しない。足りないのだ。彼女は最低でも二十を超える首を刎ねようとした。なのにたったの十。

少し離れた所で刀を振るう少年を見れば一太刀で数十の首を飛ばしている。全く届いていない。同じ天狗道でも天と地ほどの差がある。目覚めたばかりとはいえこれは酷い。

 

すると彼女は奥に逃げようとする自分の母親を見つけた。母親は数十の転生者に囲まれて逃げようとしている。その時母親は彼女を少し見て、慈愛を込めたような視線を送った。

 

そして彼女は気付く。自分の天狗道が未だにか弱い理由を。全てあの母親が原因だ。自分に愛のこもった視線を送っていた母親こそが元凶だ。

 

ニタリと口元が緩む。そして頭の中で増幅する彼女の『彼に愛される為に素晴らしい自分でいたい』という渇望が彼女を動かす。あの塵は邪魔だ、さっさと掃除しろ(殺せ)と。

 

走るために一歩目を力強く踏み込む。地面を陥没し、衝撃波が撒き散らされる。前に塞がる転生者達()を見据える。二歩目を踏み出すと同時に鎌を振るう。

踊る刃。宙を彩る赤い絵具。殺す度に、彼女は浄化されていく快楽に浸る。

 

思わず下品にキャハハと笑ってしまう。顔に満面の笑みが咲く。返り血が顔に付くが気にしない。目障りな転生者達の恐怖する顔を鎌でグシャりと引き裂く。何人も串刺しにして母親のところへと投げ込む。肉壁を作って障害物を作り上げる。

 

何を逃げられると勘違いしている?あなたはもう逃げられない。この(天狗道)からは。

 

滅尽滅相。貴様()はここで滅する。

 

一人づつチマチマと殺さない。どうせやるなら一片にやった方が速いだろう。恐怖の視線を向けるがそれがどうした?元々塵の分際で纒わり付いていた貴様らが悪いんだろうが。

 

フェイト・テスタロッサという個が完全するのは、残り僅かである。

 

——————————————————————————

 

違う。これじゃない。こいつらじゃない。あいつじゃない。あいつらじゃない。

 

少年は転生者を斬りながら思考する。少女と違い少年の天狗道は既に完成の兆しが見えている。だが何かが足りない。何かがへばりついて離れない。そんな這うような感覚に追われながら視線を動かし続ける。

目の前にいる転生者達ではない。この程度の塵、確かに目障りだとは思うが、それは少年の天狗道を今の状態に落としている程ではない。

 

他の要因がいるのだ。それも相当近くに。

 

少しづつだが時の庭園にいるほど天狗道が薄れてきている。少女は未だ気づいた様子はないが、聡明な少年は既に察している。何かが邪魔をしている。自分達の天狗道と相反する『渇望』を持った何者かが阻害している。

 

一太刀振れば数十の首を刎ねる絶死の刃は一度に十まで減っている。目まぐるしい弱体化に吐き気を催すが気合で乗り切る。

 

何処だ、何処にいる。(天狗道)の邪魔をする奴はどこだ?

 

転生者を壁に投げつけて壊す。ここにはいない。ならばどこかに隠れている。こざかしい真似をする塵をあぶり出してやろう。

 

首を動かす。視線を左右させる。そして見つけた。プレシアを惨殺しているフェイトの「先」にある何かを。違和感の、気持ち悪さの原因を、少年はその目で捉えた。

 

「ははははは!!見つけたぞ!忌々しい、憎々しい、鬱陶しい、小賢しい塵を!!滅尽滅相ォオオおおおおおおおお!!クソはここでクソ同士喰らいあっていろォ!」

 

壁に向かって転生者を投げつける。弱体化していようが天狗道。投げる瞬間に「塵掃除のために塵を喰らい合わせる俺は素晴らしい」と思い天狗道を一時的に増幅させる。

どこぞの鼠と猫の追いかけっこのように壁に人の形の穴は作られず、ただ壁を破壊して進む。

 

手加減の一切を排除する。滅尽滅相。言った通りに実行する。狙うはただ一人。

だが勿論道中には転生者が存在する。日に日に増えていきフェイト狙いで時の庭園に滞在していた転生者達。

 

「邪魔だああああああああああああ!!!」

 

小細工一切無しの容赦なき一太刀。少年の気迫で動けなくなったところを殺害。そのまま加速。地面を砕きながら前へ進む今の少年なら少し触れただけで四肢がちぎれ飛ぶだろう。ゆえに誰も近づけない。誰しも、心の中で死にたくないと思っているから。

 

「ほう・・・この塵が(天狗道)の邪魔をしていたか」

 

行き着いた先は生命ポッド。中にはフェイトと瓜二つの少女が入っており、そのまま眠り続けている。

 

「見た所慈愛・・・恐らくはみんなを抱きしめる、か?ハァッ!下らん。このような塵に、我はしてやられたというのか!なんの力も持っていない、塵を掃除することも出来んこんな小娘に・・・!」

 

眠っている少女、アリシア・テスタロッサは生まれながらにして神になる才覚を持っている。だがそれが目覚めることはなく、目覚めたのは彼女が巻き込まれた爆発事件で眠りについたのがキッカケだった。

彼女は『座』へと繋がり、世界位に蔓延る悲しみを見た。怒りを見た。幸せを見た。優しさを見た。

夢を、願いを持っていても叶わない者がいた。

 

そんな者達を見続けて、アリシアは思った。

 

「みんなの思いを抱きしめたい」、と。自らのことを鑑定に入れてない破綻した渇望。否、彼らからしてみれば渇望は破綻者にしか持てない。叶えるためならなんだって行うのだから。

彼女はめぐり来る全ての思いに祝福を与えるために眠り続けた。起きたら『座』への接続が切れるのを知っているから。だからこそ、眠り続けている己の体を母に任せ、自分は『輪廻転生』を掲げ、みんなを幸せにしようとした。

 

だがそんな時に現れた。少年が。アリシアの渇望を押しつぶす天狗道を持って。幸いなことにまだ天狗道を完成していない。ならば自分が触れ続けていれば天狗道は破綻し、少年の渇望は消えるだろう。そう思っていた。

 

少年の天狗道に憧れたものがいたのだ。皮肉なことにその人物はアリシアのクローンであるフェイト。フェイトは同じく天狗道に目覚め、自己愛を貫き通している。

だからこそ早くしないと、と焦燥に駆られ、それが今まで無視していた少年の琴線に触れた。

 

アリシアのやり方はなにかしら、本人には知覚されないが触れている。魂に触れているのだ。だからこそ、魂を核としている天狗道に触れてしまい、少年は怒り狂った。触れた瞬間に天狗道が弱くなったのだ。目に見えるほど明らかに。

 

そして少年はアリシアを殺し、己を浄化するために動き出した。己と同じ天狗道であり、自分に何かしらの感情を持っているであろうフェイトと共に殺し尽くした。

 

そして今、アリシアが殺されようとしている。

 

「ではな。名も無き神格よ。貴様の理など知ったことではないが、我の天狗道の邪魔となったのだ。我の手で逝くことを光栄に思いながら華々しく死ね、塵」

 

斬。

 

一太刀で首を切り落とす。救いもない、確実な殺し方。それだけでは飽き足らず、少年は心臓、腹部、さらには手足を貫く。

念には念を。これで目の前の塵が息を吹き返したらそろそろ天狗道がどうなるか分からない。

 

「おお・・・!俺が純化されていく・・・!完成するのだ、(天狗道)は・・・!」

 

歓喜に打ち震える。自らの根源が純化されていくのを感じる。これ程の幸福、味わったことは一度もない。

 

血と死人に溢れた時の庭園。最後まで殺し尽くした二人は、完成の余韻に浸りながら、お互い殺し愛をおよそ一時間ほど続けていた。

無論、時の庭園は崩壊寸前まで破壊された。

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