捻くれ者と強すぎる艦娘。   作:ラバラペイン

13 / 26
元の時系列に戻りました。
日常回前編なので中身が薄いよ!


厳しい秘書艦とクズ

 提督になった時の事を走馬灯の様に思い出していた。いや走馬灯は言い過ぎか。

 だがそれも仕方ないと思う。

 なんせ俺は今死にそうなのだから。

 

「ねえクズ司令官、なんでこんなに遅れたの? いつもあれ程口すっぱくしてサボるな、って言ってるわよね? そもそも朝の会議には出てたじゃない、なんで遅れるのかわからないんだけど。ねぇ?」

 

 霞の背中から憤怒のオーラが見える様だ。

 執務室に入った瞬間から土下座をしているが効果はない。じゃあと顔を上げたら太ももを踏みつけられた。はい正座ですね。艤装も付けていないし靴を脱いでくれているのは温情なんだろうが、しかしそのせいで逆にいかがわしさが増している。 パンツ見えそうですよ。

 

 そう、(社会的に)死にそうなのである。

 この場面を誰かに見られたらやばい。

 俺はロリコンじゃねぇぞ!

 

「で、なんで遅れたの?」

 

「会議のあと、朝食を食べてました」

 

「へぇ」

 

 霞の声の温度が下がる。

 

「会議が終わったの、何時だっけ?」

 

「……8時半です」

 

「そうね。クズ司令官の業務開始時間は?」

 

「…………9時半です」

 

「ふぅん…………」

 

 また温度が下がる。空調何やってんの!

 

「で、…………今何時だっけ?」

 

 もはや霞の顔が怖くて見ていられない。

 

「じゅ、10時です」

 

 俺がそう言うと、霞の堪忍袋の緒が切れた。

 

「ど、う、やっ、たらそんなに時間かけてご飯が食べられるのかしらねぇ……!」

 

 グリグリグリグリ。

 霞の足が正座した太ももを踏み躙る。床板に膝と脛が押し付けられる痛い痛い。

 ひとしきり踏んだ後、霞はため息をついた。

 

「はぁ、八つ当たりしても仕事は減らないわね。もう正座はいいから、さっさと仕事するわよ。遅刻の罰としてクズの仕事量倍で」

 

 霞から恐ろしいオーラが霧散する。でも仕事倍かよ……あ、何でもないです。

 

 この時、俺たちにミスがあるとするならば。俺が部屋に入った瞬間土下座したせいで扉が開きっぱなしだったことと、霞が俺の太ももから足を退かすのが3秒遅かったことだろう。

 

 コンコンコン

 

「司令官、遠征の報告を届けに……っ!?」

 

 扉が開いている為中を覗き込んだ朝潮が絶句した。彼女の位置からは、霞が正座した俺の下半身を足で責めている様に見えたのか。何かを察した様な、それでいてどこか悲しそうな表情を浮かべ、

 

「お、お取り込み中の様ですね、また後で伺います。失礼しました」

 

 パタンと。

 

 扉を閉じた。

 数秒開けて我に帰った霞が慌てて追いかける。

 

「あああ、朝潮姉さん!? ちょっと待ってもの凄い誤解してるでしょう!?」

 

「大丈夫です。霞と司令官がどんな趣味を持っていても、朝潮は2人を見捨てませんから」

 

「そう言う割に目が死んでる!? だから違うってばぁ!!!」

 

 大慌ての霞とか初めて見たわ。

 因みに俺はと言えば、ゆっくりと立ち上がり、仕事の準備を進めていた。

 ま、そのうち戻ってくるだろ。朝潮には後でそれとなく弁明しておくか。

 

 程なくして、霞が戻ってきた。

 

「や、やっと誤解が解けた……あれ解けたのかしら……? っていうかなんでクズは手伝ってくれなかったのよ!」

 

 いつものことだからスルーしてるけど、司令官は付けよう。クズでもせめて司令官は付けよう。

 

「俺が一緒に行くと余計ややこしくなるだけだ。2人で弁明したら必死過ぎて逆に怪しまれかねん」

 

「それは、そうかもしれないけど」

 

「俺からも後でフォローしとくから、仕事するぞ」

 

 このまま仕事倍化も有耶無耶にしてしまおう!

 

「ホント頼むわよ。……ん? なんか忘れているような」

 

「そ、そんなことないんじゃないか?」

 

「そうかしら……まぁいいか。んじゃ、今日のぶんの仕事ね」

 

 ドンと俺の机に置かれたのは何時もの4倍はあろうかという紙の束。

 

「あの、霞さん?」

 

 倍って、2倍じゃないんですかね……。

 

「何か?」

 

 うわぁ超笑顔、超怖い。

 

「何でもないです頑張ります!」

 

 逆らったら死ぬ。

 

「最初からそう言いなさい」

 

 そうして、漸く業務が開始されるのであった。

 

 

 

 カツカツカツカツと、紙の上をペンが滑る音が響く。

 

 分かってはいたが、量が多い。

 遠征記録に資材管理、開発報告に艦娘の体調管理に定期便の発注依頼、っとそうだ。娯楽品頼まなきゃな、約束だし。取り敢えず各寮にイカゲーでも導入しておく。あとは本か。取り敢えず色んな需要に応えられるように色々頼んどこう。SAO、とある、ロードス島戦記、封神演義、文スト、ジョジョ、俺物語、ハチクロ、のだめ。少女漫画はよく知らんが小町がよく読んでた奴なら外れは無い。あと真面目勢用に、文学も。……こんだけ用意すりゃどっか好みに刺さんだろ、うん。足りなかったら今度足そう、もうパッと思いつかん。

 後はいつも定期便で頼んでる物を追加してと。

 

「ふぅ、こんなもんか」

 

「何が」

 

 疑問符付けよう怖いから。

 

「定期便の発注依頼書だ」

 

「ん、見せて」

 

 紙を渡す。

 

「は? なんか色々書いてあるけど何これ」

 

 は? っておっかねぇな。だが今回はちゃんとした理由があるから問題無いだろう。以前大量にマッカンを仕入れようとしたら怒られた。当然だった。

 

「おう、今日食堂で58が言ってたんだが、ここ娯楽が無いだろ? 休日にする事がないってボヤかれてな。これは58だけの問題じゃなさそうだし、ストレス溜まってる艦娘とかのためにも娯楽品頼んで息抜きして貰おうと思った次第だ」

 

「ふぅん、ゴーヤさんがね……。休日とか訓練してたからそういうことは気づかなかったわ」

 

「いや休めよ」

 

 なんなの? 艦娘って動いてなきゃ死んじゃうの? あ、いやそれは無いか。望月みたいなのもいるし。

 

「ま、そういう理由があるなら良いわ。でも本とか1部じゃ足りないでしょ、3部ずつ頼んどきなさい」

 

 あぁ、確かに人数多いとそうする必要があるか。ぼっちだからその発想はなかった。

 

「分かった」

 

 そしてお互い再び無言になり、ペンを動かし始め……

 

「あ」

 

 られなかった。

 

「な、なんだ、何があった?」

 

「いえ、クズは関係ないわ。ちょっと駆逐寮に行ってくる。2時間くらいで戻るから、あたしの仕事はそのまま置いといて」

 

「2時間って昼過ぎちゃうぞ。お前昼飯どうすんの」

 

「適当に済ますわ。クズもお昼は食べなさいよね。あ、でもまたサボったら許さないから」

 

「流石に今日はもうサボらねぇよ。なんにせよ了解」

 

 俺がそう言うと、毎日サボるなクズ! と言い残して去って行った。何があったのやら。俺は霞の置いて行った仕事軽く見やる。俺より少ないが、それでも結構量があるようだった。

 

 さて、俺は業務に戻りますかね……。

 




次回はなんとあの戦艦が!?(決めてない)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。