捻くれ者と強すぎる艦娘。   作:ラバラペイン

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予定より大幅に遅れての投稿です。

なんもかんも多人数描写が難しいのが悪いんです!←


作戦会議と、魚雷

 カツサンドを齧りながらドローンを飛ばし、両チームの準備が完了しているか確認しに行く。

 まずはAチーム。木曽を旗艦とした4隻はそれぞれの艦の速度差がほぼ無いからか、特に問題無く指定地点に到着していた。

 対してBチーム。こちらは指定地点までの距離がややある為、少し遅れそうだ。まぁ島風は先に着いていたが。いっちばーん、とか言ってんだろうな。

 今俺が操作しているドローンだが、カメラ操作は妖精さん頼みだったりする。本体に妖精さんが乗っており移動は俺、カメラは妖精さんという具合だ。まぁ戦闘が始まって両チームが見える位置まで来たら丁度中間くらいを陣取る様動かすだけになるけど。

 

 程なくしてBチームも全員到着。こちらには戦艦、重巡などあまり速度の出ない艦娘もいる為、チーム全体で動く時の速度はそれ程でもない(まぁ例によって一般的艦娘よりは圧倒的に速いが)。

 

 そして気付く。無線機を忘れた。あいつらの声が聞こえないからどう作戦立ててんのかわかんねーわ。取り敢えず最初はAチームから観戦するべく、再びAチームに向けてドローンを移動させる。

 さて映像はこれで良いとして音声どうするかと考えていると、釣りポイントを探していた望月に声を掛けられた。

 

「しれーかーん、ちょっとこっちぃ」

 

 望月はすでに釣りポイントを見つけたのか発着場の淵に座って釣竿を構えており、その体勢でちょいちょいと手を振っている。尚流れ弾に即座に対応する為、艤装装着状態である。

 

「どした?」

 

 お前が来いやと思わないでもないがそこは望月だから仕方ない。モニタ(片手で持てるくらいの小型サイズだ)とドローンのリモコンを持って望月の近くまで歩み寄る。

 

「ぃひひっ、司令官無線機忘れたでしょ。しょーがないからあたしが半分貸してあげるよぉ」

 

 そう言ってイヤホンを片耳だけ外してこちらにフリフリと向ける望月。

 

 えっ。

 

 それ受け取るともしかして片耳イヤホンって奴になるんじゃないですかね?

 

 リア充御用達の。

 

「い、いや遠慮する。別に音声聞こえなくても問題ないし、なにょより恥ずかしすぎるだろ」

 

 噛んじゃったよ。

 そんな俺を見て望月はケラケラと笑う。

 

「うはぁ司令官キョドりすぎ。いい加減慣れればぁ? これ終わった後とか大破した娘とか来るんだからさぁ」

 

 そ、そうなんだよなぁ。

 いやマジで気が重い。

 もう空しか見られなくなるからな。

 

「それに聞こえてませんでしたー、とかバレたら曙とか怒るんじゃない? 知らないけど」

 

 それを言われると辛い。

『はぁ? なんで無線機忘れてんのこのクソ提督!』と言われるのが容易に想像できる。容易過ぎて未来予知と錯覚するレベル。

 ……だがなぁ。

 奉仕部での経験から人を不必要に遠ざけることはしなくなったが、だからといって近づくこと近付かれることに慣れたわけじゃ無いんだぞ……。

 勿論片耳イヤホンの光景を見て馬鹿にする様な奴は艦娘には居ないから、本土でするような心配はいらないが、……絵面酷くない? 俺だぞ?

 と、俺がまごついていると、望月がなにやら妙な表情で唸りだした。

 

「んー……、あー……、……よし」

 

 それから何か決めたような顔になった望月は俺にすっと近づく。

 

「なんか面倒だから無理矢理やるねぇ」

 

 え、ちょっ待って。

 

 そう止めるも俺の腰のベルトを片手で掴み、一瞬俺自身を持ち上げてから自分の左隣に座らせた。艤装をつけているからこそ繊細な力加減が光る鮮やかな動き。なおこの動作の時も、釣竿は手放していなかった。

 

「それからー、ほいっ」

 

「んぐっ」

 

 そして俺の右耳にイヤホンを突っ込んだ。意外にコードが長く、お互いがピッタリくっつくようなことは無かったが、やはり少々恥ずかしい。

 

「司令官は色々考えすぎなんだよ。もっと気楽にいこうぜぇ?」

 

 いやお前は色々雑すぎるけどね?

 

「……善処する」

 

「あ、それやらないやつ」

 

 バレテーラ。流石望月。

 

 

 幸い望月は外見的に幼いので、横に座っても過剰にドキドキすることは無さそうだ。俺はシスコンであってロリコンではないのである。

 というわけで片耳から聞こえる音声に集中する。

 今聞こえてくるのは、……Aチームの音声か。それに合わせモニタの映像もAチームをズームした。妖精さんナイス。

 

『ーー作戦を纏めるぞ。まず砲撃戦の最中に夕立が先行、それを曙が援護しながら相手に近づき、敵を撹乱する。何をしても良い』

 

 この声は木曽だな。作戦ももう纏めに入っている。危なかった、聞き逃すとこだった。

 

『その隙に俺が接近して魚雷。加賀は相手空母の艦載機を抑える。こちらの空母は加賀1人だから大変だと思うが、なんとか頑張ってくれ』

 

 空母的には加賀vs瑞鶴&龍驤だからな。

 

『そうね、五航戦の子も最近はやるようになってきたから、鎧袖一触とはいかないかもしれないわね。龍驤もいるし、気を引き締めるわ』

 

 さっきはあんなに睨み合っていたのに何だかんだ認めているんだよな。

 

『加賀さん、それ本人に言ってあげたら良いっぽい!』

 

『嫌よ』

 

 この即答である。

 

『……それから相手戦艦や重巡を倒す決定打がこちらには魚雷しかない。だが戦艦を潰せば先がグッと楽になるからな、気張るぞ!』

 

『ふん、任せなさい!』

 

『ワクワクしてきたわね! 頑張るっぽい!』

 

『それから言うまでも無いが向こうの姉さん、じゃない雷巡には気をつけろよ。んで他はいつも通りだ! ……それじゃ、行くぞ!』

 

『『『はい!(ぽい!)』』』

 

 カメラが引き、進行を開始したAチームを映し出す。

 取り敢えず一言。

 相変わらず加賀さんは本人の居ないとこでデレてんのかと。

 

 さて次はBチームか。この調子だと作戦会議は終わってそうだな。そう考えながらドローンを移動させる。

 カメラにBチームが映る頃には案の定進行を開始しており、瑞鶴と龍驤を囲む輪形陣で海上を進んでいた。

 

「望月」

 

「んー」

 

 俺が名前を呼ぶと望月は無線のチャンネルをBチームに切り替えた。釣りしながら。

 

『ーー作戦が上手くいってもいかなくても、まずは木曽を落とすわよ!』

 

 お、これは足柄だな。声からやる気が伝わってくる。あ、カツサンドあざーす(もぐもぐ)。

 そんな足柄の言葉に反応したのは瑞鶴だ。

 

『えぇ、加賀はなんとか私達で抑えるから頑張って!』

 

 さっきはぶっ潰すとまで言っていたのに随分と弱気な発言、……ではない。彼我の実力差を明確に理解しているだけである。それに口では抑えると言いつつもその表情は隙あらば倒すという気概に満ちていた。

 

『うちが軽空母とはいえ、二人掛かりじゃなきゃ抑えられんって、相変わらず無茶苦茶なやっちゃなー加賀は』

 

 楽しげに言う龍驤だが彼女も軽空母ではかなり強い部類だ。

 

『カガーもキソーも確かに強いけど、戦艦としては、駆逐艦の2人も怖いわ』

 

 そう声を漏らしたのはRomaだ。まぁ戦艦はそうだろうな。やたら速くて弾が当たりにくいのに接近してきて魚雷だけ当てて去っていくのがうちの駆逐艦だからな。ニュータイプかよ。

 そんなRomaの言葉にItaliaが反応する。

 

『アケボノーとユウダーチね。接近してきた時に上手く捕まえられれば良いんだけど……』

 

 艦娘鎮守府の駆逐艦に戦艦が取れる策は一つ。相手が接近してきた時にこちらも近づき、掴む。そこまで至近距離になったら魚雷は撃てないし、接近戦で駆逐艦は絶対に戦艦に勝てない。あとは煮るなり焼くなりである。勿論そう簡単にはいかないが。

 ところでユウダーチってなんかサウダージみたいだな。

 

『あんまり気圧わなくていいんですよ。失敗してもフォローしますし。それにItaliaさんやRomaさんは射程が凄く長いですから、多少距離があっても相手空母を直接狙えるじゃないですか!』

 

 大井が不安がるイタリア組を励ます。

 実際Aチームの加賀を落とすことが出来るとすれば、空母組かこのRoma達だ。重巡や雷巡、駆逐艦はまぁ、木曽に抑えられるだろう。

 

『そう……そうね。よし、カガーを落とす気で行くわよ、姉さん』

 

『そうね!』

 

 大井のフォローもあってか士気が上がった様だ。

 

『作戦的に木曽をなんとかしてからでお願いね!』

 

 軽く釘を刺す足柄。

 Bチームの作戦は聞きそびれたんだよなぁ。

 まぁ正直、うちの艦娘同士の演習の場合、まず最初の作戦通りにことは運ばないけどな。お互いピーキーすぎて。

 

『島風の速さ、頼りにしてるわよ!』

 

 今回の作戦は島風が鍵なのかな?

 足柄も鼓舞が上手いな。

 

『にっひひ、今日も島風が一番速いところ、見せちゃうんだから!』

 

 ふむ。島風が演習に参加している回は今までも何度か見ているが、凄まじい速さで落とされたり、活躍している時タイミング悪く別の艦を見ていたりして島風がどう戦ってるのか見れたこと無いな。

 よし、今回は島風がキーらしいからな。服装はおかしくともしっかり見ててやるぞ。『今日も〜見せちゃうんだから』というセリフが無線で聞いているであろう俺に向けてじゃない事を祈る。今日から見るから許せ。

 

 それから少しして、足柄が声をあげた。

 

『……来た! 観測機が相手を捉えたわ!12時の方向、複縦陣!』

 

『真正面!? 随分大回りしてきたなぁ。予想じゃ9時10時くらいの方からかと思っとったけど』

 

『なんでもいいけど早く構えて! 攻撃隊、発艦始め!』

 

 矢筒から矢を束ねて掴み、一気に撃ち放つ瑞鶴。お前はライディーンかと突っ込みたいが、艦娘では常識らしい。解せぬ。

 矢は途中で艦載機に変化し飛んで行った。

 

『おっと、せやったな! 攻撃隊、発進!』

 

 龍驤は指先に勅令と書かれた光を灯し、それを開いた巻物状の甲板に滑らせる。すると式紙が現れ、これもまたすぐに艦載機に変化しつつ飛んで行く。

 

 瑞鶴と龍驤が艦載機を飛ばしたわけだが、機種は見ただけでは分からない。まぁ艦攻3割残り艦戦とかかな。

 

『向こうからも来たよ!!』

 

 島風が叫ぶ。妖精さんがカメラの向きを変えると、確かに加賀が飛ばした艦攻が飛んで来ていた。だが数が少ない。瑞鶴と龍驤の艦戦がある程度は落としたり追い返したりしたのだろう。勿論瑞鶴達の艦載機も減らされているはずだが。

 

『ごめん! 全部は引き止められなかった!』

 

『堪忍な!』

 

『謝る必要は無いわ! むしろ大分数が減ってるし大手柄よ! 皆! 対空射撃用意!』

 

 謝る空母組をむしろ褒める足柄。そして対空射撃の指示をする。

 この時の為の輪形陣と言っても過言ではない。

 

『ついでに魚雷、撃っておきますね』

 

 機銃を空に向けつつ魚雷を海に投げ込む大井。その数10本。セオリー通り扇状に撃っているが、まぁ当たらないだろう。大井としても分かった上で牽制用として撃ったようだ。

 

 因みにこの鎮守府において、開幕魚雷を普通に撃つ事は少ない。

 魚雷とは、海に撃ってよし放り投げてよし直接ぶつけてよしの万能兵器なんだそうだ。

 

 それで良いのか酸素魚雷。




正直人数多過ぎて何書いてるかわからなくなりそうです。
読み辛かったらごめんなさい。

矛盾点が出る可能性が非常に高いので、これっておかしくねぇ? ってのを見つけたらバシバシ報告下さい。

泣きながら修正します。

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