捻くれ者と強すぎる艦娘。   作:ラバラペイン

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お気に入り登録数がすごく増えていてぶったまげました。
お待たせして申し訳ない。
生存報告代わりと言ったらあれですが続きです。


艦娘のやる事は科学的に考えてはいけない。

 Bチームが一斉に空に向けて機銃を放つ。その命中精度はここら近海の深海棲艦が制空権を最初から諦める程の物である。

 しかしそこは加賀の艦載機、これを躱す躱す。ファンネルみたいな動きしやがる。

 艦娘がトンデモなら艦載機もトンデモだな。機銃の弾避けるってなによ。弾道予測線でも見えてんの?

 

 しかし足柄達も避けられて当然と思っているからか動揺は見えない。

 

『ここまでは予想通り……! 大井!』

 

 お、作戦の開始か? 内容は知らんけど。

 足柄が大井に指示を飛ばす。見れば彼女は魚雷を1本その手に持っており、

 

『はいっ!』

 

 それを海には投げず、天高く放り投げた!

 魚雷はぐんぐんと飛距離を伸ばし、加賀の艦載機達に迫る。……あ、まさか。

 

 傍観者の俺が気付いた事に当事者の加賀が気付かない筈がない。慌てたように艦載機達はその場を離脱しようとするが、

 

『遅いっ!』

 

 足柄の機銃が魚雷を捉える方が早かったようだ。

 

 閃光、そして轟音が鳴り響く。

 

 加賀の艦載機を巻き込ませる様に魚雷を爆発させたのだ。

 衝撃波に煽られドローンからの映像が激しく揺れる。結構離れてたはずなんだがな。というか空中で爆破するとあんなに範囲広いのかよ魚雷って。まぁよく考えるとたった一本で戦艦を真っ二つに出来たりするもんな。

 

 フラついていたドローンをしっかりと配置し直すと、映像には爆煙しか写っていなかった。何も見えねぇ。

 そして焦らす様にゆっくりと煙が晴れていく。

 

 煙が晴れた時、映像に艦載機らしき影は無い。

 お、これはやったか?

 

『やったの!?』

 

 瑞鶴、それ言っちゃダメなやつだぞ。

 え、俺? 俺は思っただけで言ってないからセーフ。

 

『姉さん、どう?』

 

 Romaが姉に尋ねる。

 なんか前に聞いたがItaliaは特に目が良いらしい。艦にそういう逸話があるのかと思ったがそうでも無かったので何故かは知らん。

 

『うぅん、ほとんど落とせたけど2、3機撤退していったわね』

 

 マジかー、あのタイミングで避けるのかよ。

 あ、でも撤退したってことは制空権守れたんじゃないか? 少なくとも一方的な展開にはならなさそうだ。

 

 そしてそれを聞いていた足柄が指示を出す。

 

『つまり今がチャンス! 島風、行って良いわよ!』

 

『やっとしまかぜの出番ですね! 私の速さ、見せちゃうんだから!』

 

 そう言った直後、周囲の連装砲と共にド派手な水飛沫だけを残して島風が映像から消えた。

 

 消えた?

 

 え、どこいった!?

 慌ててドローンをグリグリ操作すると、彼女は既にかなり遠方まで移動していた。速すぎる。

 

『島風に続いて私たちも全速前進! 援護しつつ作戦準備!』

 

 その言葉を合図にBチーム全体の速度が跳ね上がった。

 

 さて、足柄達を見るのは後にして一旦島風を追おう。ドローンの速度で追いつけない為、妖精さんのカメラワーク頼りではあるが。

 この妖精謹製ドローン時速200キロ出るんだけどなぁ……。

 画面に映る島風は最大ズーム状態にもかかわらずどんどん小さくなって行く。や、速い速い。

 

「なあ、これ速さどんなもん?」

 

 俺は隣に座る奴に聞いてみた。

 釣りをしていた望月がモニタを見る。因みに釣果は0だ。

 

「んぁ? あ、島風だ。うっひゃー速いねぇ。で速度? んー、180ノットくらいかな。時速330キロ前後」

 

「さっ……!?」

 

 何じゃそりゃあ。開いた口が塞がらないとはこのことか。あいつ島風じゃなくて暴風じゃねえの?

 補足すると艦娘鎮守府における駆逐艦の平均最高速度は110ノット程だ。

 速さ自慢は伊達じゃないわけか。

 

 見れば島風は、速過ぎてもはや"航行"してるとは言い難い。波の隆起を使って海上を水切りの様に跳ねていたり、波の弱い所では膝を上手く使って衝撃を逃がしたりと、さながらスキーのモーグルを見ているようだ。

 

 さて実際の軍艦と艦娘の違いで最も大きな所は、俺は浸水量だと思う。つまりサイズだ。大きな軍艦だった頃は当然それなりの体積を水中に沈めなければならず、それにより自分から生まれる波の抵抗が原因で速度には限界があった。

 が、艦娘となった今は違う。艦種にもよるが艦娘は靴底に当たる部分だけが接水しており抵抗なんて殆ど無いに等しい。故に島風は、水の抵抗という柵を捨て去り、極めて暴風的な速力で目標へと向かう。

 

 この速度ならもう間もなく接敵するだろう。

 お、噂をすれば。

 

『曙ちゃんと夕立ちゃん、見っけ!!』

 

 言いつつ島風は連装砲で先手を打つように砲撃を開始した。

 

 ドドドドドドッ!! という連続した砲撃音が鳴り響き、曙達に砲弾の嵐をお見舞いする。

 はいここでうちの艦娘の非常識ポイント。

 

 ーー砲撃を連射できる。

 

 機銃じゃないぞ、主砲での砲撃だ。実際の艦なら砲塔のサイズにもよるが装填20秒旋回10秒とかかるあの主砲だ。それをウチの艦娘達はまるで拳銃のように気軽に撃ちやがるのだ。

 

 移動速度がやたら速いとか、命中精度が凄いとかならまだ練度で済むかもしれないが、連射速度が変わるってどういうことなの。艤装に干渉してないかそれ。流石に戦艦は連射とまではいかないが、それでも敵である深海棲艦よりは圧倒的に速い。流石は殻を破った艦娘か。

 

 さてそんな砲撃を放った島風なわけだが、当然のごとく相対する曙達も同じことが出来るわけで。

 同じく連射し、迫り来る命中弾を自らの撃った弾で撃ち弾き、それにより島風と曙達の間で激しい火花が飛び散る。

 飛んでくる弾を撃ち抜くってお前ら……。

 

 島風は島風で当たらないことは分かりきっていたのか速度を落とすことなく更に2人に近づいて行く。このままだと激突する様な勢いである。

 もちろんそんなヘマをやらかす艦娘はウチには居ない。

 180ノットという速度の中では最早目前に感じるであろう曙と夕立を視界に納めた島風は、砲弾を撃ち弾き、時に躱しながら、ついに2人の艦娘の間を通過した。

 

 二本の魚雷という置き土産を残して。

 

『『りっ、離脱ー!!!?』』

 

 すれ違いざま、島風のマイクが曙と夕立の叫びを一瞬拾う。ドップラー効果付きで。

 

 直後、連装砲が海面に着水した瞬間の魚雷を撃ち抜いた。

 ドゴボム!! と少しくぐもった様な爆発音が鳴り響き、敢えて着水させたこと、魚雷が二本であったことが合わさり、想像以上にド派手な水柱が上がった。

 

 因みにこの時、島風は進行方向しか見ていない。本人は違う方向を見ていても正確に射ぬけるのが自立砲塔の長所だな。

 さて離脱した曙と夕立がどうなったか気になるところだが、今は島風だ。

 

 爆発に気を取られている隙にかなり遠くまで行ってんだろうなと思っていたが、意外や意外。島風は少し離れた程度の場所で再び戦闘に入っていた。

 

 相手は勿論、木曾である。

 

 〼

 

「…………お、……きたね、きた来た! ぃよいしょっと」

 

 横に座る望月の釣竿に何かヒットしたらしく、力が入っているとは思えない気の抜けるセリフと共に何かを釣り上げた。片手で。

 少し離れた所の海面から決して小さくない水柱が上がり、時間差でドサッと、俺たちの背後に何かが叩きつけられる音がした。

 

 恐る恐る後ろを見やると、カジキだった。

 

 いやいやいやそんなほっそい釣竿とほっそい腕でどうやってカジキ釣ったんだよ。そもそも望月の体重じゃこいつの方が海に引きずり込まれるだろ! ……と思ったがちゃっかり錨を降ろしてやがった。そういえば艤装出してましたね。カジキも片手で釣れる訳だよ。

 しかし望月的にも流石に予想外だったようで、

 

「う、うおー、カジキ釣れちゃったよ。見て見て司令官、カジキだよカジキ!」

 

 そう言って俺の袖を掴んでブンブン振ってくるのである。見てる、見てるから。普段だらだらしてるやつがそういうことするとやたら可愛いから止めろ。

 

「お前これどうすんの……?」

 

 未だ背後でビチビチしているカジキから目を逸らしつつ訊く。

 

「そりゃもちろん食べるでしょ。鳳翔さんならきっと捌ける!」

 

 鳳翔さんにかける期待重すぎない?

 などと思っていると望月は糸を引っ張ることでカジキを手繰り寄せ、その口から針を手際よく外した。

 マジでカジキの口って尖ってんだな、これもう武器じゃん。

 

「うん、カジキ釣ったし今日のF作業終わりでいーや。…………んー、帰って寝たいな」

 

 俺も俺も。

 ってそうじゃねぇ。

 

「お前帰ったら誰が流れ弾処理するんだよ……いや今まで飛んで来たことねぇけどな?」

 

 距離もあるし、うちの艦娘優秀だし。

 

「わかってんよー……。っくぁー……ふ」

 

 言ってから欠伸をしつつ艤装に寄りかかるようにダラけ始める望月。視線は海に向けているようだが……。

 

 ところで何故俺がこんなにも悠長に望月と話していられるかと言えば、島風と木曾の戦闘が膠着状態に入ったからである。

 

 そう、膠着状態。

 島風と木曾の戦闘はまさにそう表現出来る光景だった。

 実力では木曾の方が圧倒的に上、それは間違いないはずだ。しかし島風は持ち前の速力を駆使し、

 躱す。

 躱す。

 躱す。

 その小さな体を捻り、魚雷をばら撒き、砲弾を絶え間なく撃ち、速度を落とさず、木曾の移動を制限し、その場に押し留めることに心血を注ぐ。それは必ずしも倒すことを目的としていない動きだ。つまり、時間稼ぎ。

 その為木曾も木曾で攻めあぐねている。たまにあらぬ方向に砲撃を放ったり不可解な動きをすることがあるため裏がありそうではあるが。無傷だし。

 

 対する島風は、押し留めることには成功しているものの少しダメージを受けている様に見える。小破、ないし小破未満といったところだろうか。あの速度で動き回る島風に掠っただけとはいえ命中させているんだから、木曾の命中精度半端ないな。

 

 え? 音速を超える砲弾を撃ち抜けるんだから180ノットくらいなら当たって当然だって? 俺もそう思ってたんだが、『一度撃たれたら軌道の変化しない砲弾』と『砲撃のフラッシュを見てから回避できる艦娘』じゃ後者の方が当たりにくくて当然、だとさ。何なのお前らみんなウメハラなの? 見てから回避余裕なの? ってあれはデマだっけか。

 

 ともあれ島風は恐らく作戦だったであろう木曾の足止めに成功しているため映像に動きが無いのだ。いや動いてはいるけど。

 

 んー、この2人はまだしばらく大きな変化は無さそうだし、曙達の様子を見ようかね。結局あの後どうなったのか気になるし。

 

 俺はドローンを操作し曙達の元に向けて飛ばす。離脱した2人が島風を追わなかったと言うことはBチーム本隊に攻撃を仕掛けに行ったはずだ。

 そして辿りつき映し出された映像を見て、俺は非常に困惑することとなった。

 

 夕立、小破。

 曙、中破。

 足柄、小破。

 Roma、大破。

 Italia、中破。

 瑞鶴、中破。

 龍驤、小破。

 

 やべぇ展開進みすぎててコメントできねぇ。

 俺が望月の釣ったカジキに気を取られている間に一体何があったんだよ……。




戦闘描写下手でごめんね。
これ終わったらイチャイチャするから許してくだちい。

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