捻くれ者と強すぎる艦娘。   作:ラバラペイン

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ほい早く上げたぞ!
作品全体で見ると構成力のガバさがバレる頃。
設定以外行き当たりバッタリだからね、しょうがないね。

……いやマジで反省点ですねこれ。


青葉ノートそのにっ

 所変わってここは食事処鳳翔。朝は騒がしいのが苦手な艦娘が、夜は飲兵衛な艦娘が集まる軽空母鳳翔さんの営む軽食屋兼居酒屋です。まさに和風といった店構えであり、木製の横開きの扉やそこに掛かった暖簾といった外観だけを見ると、まるで回らないお寿司屋さんのようです。

 とはいえ実際はそんな格式張ったお店ではなく、店主が鳳翔さんなだけあってとても優しい雰囲気のお店となっています。

 

「おぉ……、なんか凄いお店だな……」

 

 店構えに萎縮してしまったのか司令官が二の足を踏んでいます。ヘタレっぽいムーブです。

 

「入り口の雰囲気だけ見るとそうですが中に入ると印象が変わりますよ? 早く入りましょう!」

 

「あっ、お、おい」

 

 司令官の手を掴んで店の中に入ります。

 因みにまだ開店はしてませんが、食べ物が無くても居心地が良いので割と皆出入りしていたりします。ほら、座敷席で望月さんが寝ていますね。

 

「すみませーん、鳳翔さん居ますかぁ?」

 

 店の奥に向けて声をかけると、

 

「はーい、少し待って下さいね」

 

 厨房からそんな声が聞こえて来ます。

 それから少しするとパタパタと可愛らしい足音を立てて奥から小走りで鳳翔さんがやってきました。

 

「あら、青葉さん。提督も! おはようございます。今日はお早いですね」

 

 青葉はともかく司令官が来たことに驚いた様子です。

 

「はい! それで、申し訳ないんですがテーブル一つ使っても良いですかね?」

 

 出来れば朝食も、と頼む青葉でしたが、

 

「それは勿論大丈夫です。けどごめんなさい。まだお米が炊けてなくて、すぐ用意出来るものがあまりないんです」

 

 さ、流石に早く来すぎましたか。青葉失敗です!

 

「あーいや、別に朝一回くらい抜いても良いんだが」

 

 あっ司令官、そんなこと言ったら……。

 

「駄目です! 朝ご飯はちゃんと食べないと力が出ませんよ。すぐ何か用意しますから、ちゃんと食べて下さいね?」

 

 鳳翔さんの世話焼き心に火をつけてしまったようです。さっきまでと打って変わって子どもを叱るような表情になった鳳翔さんに司令官もたじろぎ、

 

「あ、はい……」

 

 その返事を聞いて満足そうに厨房に戻って行く鳳翔さん。それを見送りながら司令官がポツリと。

 

「なんか、俺の母ちゃんより母ちゃんしてるんだけど……」

 

「そう思うのも無理は無いです。鳳翔さんは全ての空母の母と呼ばれる艦娘ですよ? 加賀さんだって頭が上がりません!」

 

「かが、……加賀…………あぁ、あの青いの」

 

「いや司令官青いのって……。いや青いですけど。袴スカート青いですけど」

 

 というか一回秘書艦してましたよね? それでそんな朧げな感じですか……。

 

「いや俺人の顔覚えるの苦手だし。でも加賀は覚えてる方だぞ? あれだ、感情表現が苦手そうなのに妙に感情が伝わってくる奴だ」

 

「あー、なんとなーく言いたいことは分かりますが」

 

 加賀さん表情はあまり変わらないですが言いたいことは割と言いますし。更に言えば表情も"あまり"変わらないだけで、よく見ればかなり正直な反応をするんですよねぇ。

 しかし司令官は人の顔を覚えるのが苦手、と。まぁ皆個性強いですし嫌でも覚えるでしょう!

 

「それじゃ司令官、お座敷に座りましょうか。えっとあそこは望月さんが寝てるので……あっちですね!」

 

 司令官はチラと望月さんの方を見て、

 

「羨ましい……俺も寝てたい……」

 

 などと呟いていました。この2人合わせたら面白、ゲフンまずいことになるのでは……? まぁ今は置いておきましょう。

 

「ささっ司令官、こちらへどうぞ!」

 

 司令官をお座敷に促してから青葉も座布団に座ります。

 2人とも座ったことで漸く一息ついたのか、司令官は深くため息をつきました。

 

「……ふぅ、この座布団座り心地やべぇな……」

 

「あー、わかりますわかります。なんでも鳳翔さんの手作りらしいですよ?」

 

「まじかよスゲーな……。なんか恐れ多くなってきたぞ」

 

「気にせず素直に使った方が鳳翔さんも喜ぶかと。……さて」

 

 そう雰囲気を変えるべく区切る様に言えば、先読むように、

 

「本題か?」

 

 と司令官が聞いてきました。やはりこの司令官、頭は悪くないようです。

 

「やっぱりわかっちゃいますか? ただの雑談ではないと」

 

「そりゃまぁ。今までわざわざこんなことする艦娘は居なかったからな。雑談なら別に執務しながら出来るし」

 

 そう言う司令官に青葉も苦笑しつつ返します。

 

「それはそうなんですが、そんなこと言ったら真面目な艦娘に怒られちゃいますよ? まぁそんなわけで、軽くインタビューさせて下さい!」

 

 青葉が意気込むように迫ると、司令官も面倒くさそうにではありますが了承してくれました。

 

「正直嫌だけど、店の奥からいい匂い漂ってきてるしな。今店出たら鳳翔さんに申し訳ないから仕方ない。何聞かれるか検討つかないから怖いけど」

 

 ほんとに正直ですね!?

 いえ、この調子でインタビューも正直に答えて頂きたいものです。

 

「質問の回答如何によっては、司令官を送り返さないといけないかも知れませんねぇ♪」

 

 そう冗談めかして言う青葉に(まぁ冗談ではないのですが)、司令官も軽い調子で返します。

 

「マジかよこっわ。軍学校卒業しないで着任したせいで最終学歴高卒だからそれはヤバい。これでクビになったら小町からゴミいちゃんじゃなくておニートちゃんって呼ばれちゃう」

 

 まぁ妖精さんが見える時点で軍は絶対に司令官を手放さないでしょうが。

 

「小町さんとは?」

 

「あぁ、可愛い妹だ」

 

 それでゴミいちゃんと。ってなかなか酷い文字り方ですね!?

 

「なるほど! あ、もう一つの写真立ての子ですか?」

 

「…………お前結構がっつり部屋漁ってんのな……。そうだよ」

 

「司令官によく似ていらっしゃい「そうだろ!?」た……」

 

 普段からは考えられない速度で被せて来ましたね……。司令官はシスコン、と。

 

「いやーなかなか理解して貰えなくてな。うん、俺と小町はちゃんと似てるんだよ。目以外」

 

「あぁ、司令官の目って確かに独特の淀みがありますよね!」

 

「淀みって……。腐ってるとは言われた事があるけど淀みはなかなか無いんじゃないか?」

 

 いや知りませんが。

 

「司令官の顔がまぁまぁ整っていること、目が変なことは分かります!」

 

「真っ正面から笑顔で目が変って言われると、結構刺さるな……」

 

 おっと、傷つける意図は無いのです。

 

「大丈夫ですよー、艦娘は人間を外見で判断したりしませんから!」

 

 そもそも人間の容姿の良し悪しとか大雑把にしか分かりませんからね。言ってしまえば我々軍艦ですし。軍艦の女の子なのです。好きになれるかは中身で決まります。

 

「……これを言ってるのがそこらの人間の女だったら、『はっ、そんなこと言っても最後は顔だろ』とか鼻で笑ってるとこだが……、実際に俺の目を見てドン引きした艦娘って居ないんだよなぁ。逆に俺が困惑してるくらいだ」

 

 電にはむしろ体調を心配されたしな、と司令官。

 

「えぇ……、人間から見たらその目ってそんなにおかしいんですか? 青葉にはよくわかりませんが……」

 

 変とは言ったものの嫌うほどじゃないですよ?

 

「まぁ目を見たやつが悲鳴を上げたり、うわってキモがられたりはしょっちゅうだったな」

 

 そ、そこまでですか。

 

「うーん、青葉にはそれほどの物には見えませんがねぇ。なんだかだんだん味があるように見えて来ましたし。艦娘から見て問題ないなら今はいいんじゃないですか?」

 

 我々艦娘だって千差万別ですからね。

 

「いやそもそもそこまで気にしてないしな。嫌われるのも避けられるのも慣れてるし。むしろ避けない艦娘に戸惑うわ」

 

 どうしましょう、司令官の闇が深いです。

 

「ま、まぁそれは置いておきましょう! じゃあまずは軽い質問からいきますね? 今日で大体着任してから一月になりましたが、お仕事は慣れましたか?」

 

 そろそろ鳳翔さんの料理も届きそうなので、まずは軽く行きましょうか。軽くと言っても、青葉はメモ帳を取り出して記者モードです!

 

「なにこれ二者面談? ま、まぁいいや。……仕事は何だかんだ慣れてはきたか。というか書類がな、俺の所に届く時点で大分まとめられてるから仕事がしやすいんだよ。文書も見やすいし」

 

 あー、それは大淀さんの功績ですね。大淀さんの存在は秘匿情報で名簿にも無いので司令官は知らないでしょうし、まだ教えることも出来ませんが。

 

「書類仕事に慣れてる艦娘が居ますからね!」

 

「ほー、ありがたい話だな」

 

 なるほど、ここでそれは誰だ? と聞いてこないのがこの司令官ですか。基本的に自分からは干渉してこない、と。

 

「だからまぁ、仕事に関しては意外にも楽といえば楽だな。偶にアホみたいな量の書類がくるから油断

出来んが……。ま、そういう時は程よくサボる」

 

「ダメですよサボっちゃ!?」

 

「いや、そもそも俺本質的には仕事嫌いだし。働きたくない」

 

 とんでもないことを宣う司令官にツッコミを入れようとするとそれよりも早く、

 

「今あたしは新しい司令官を全力で支持することを決めたぁ!」

 

 顔だけ起こした望月さんからの熱いエールが届きました。聞いていたんですね……。

 

「えっ、な、誰? ちくわ大明神? あ、また寝た。畜生羨ましいな」

 

 そして言いたいことだけ言って再び眠る望月さんに、司令官も戸惑い(と羨望)を隠せていません。

 ところでちくわ大明神ってなんですかね?

 

「こ、こほん。まぁとにかくそんな感じだ」

 

「締めが雑!? 雑ですよ司令官!」

 

 何もとにかくじゃないです!

 

「い、いいんだよ。そもそも俺がこんなに長く会話すること自体がレアなんだぞ? 感謝してほしいくらいだ」

 

 えっ、司令官が起きてから30分経ってないですが、ここまででもう長い扱いなんですか!?

 

「まだインタビュー始まったばかりですよぉ!」

 

 司令官、ほんとに手強いですね!?

 ……や、今のは割と望月さんのせいですが。

 

「お、料理来たみたいだぞ?」

 

 あぁあー……。タイミングが……。

 もう、仕方ないですね。青葉もお腹空いてきましたし。

 

「と、とりあえず一旦休憩にしましょうか……」

 

 まだ何も始まってませんが…………。

 食器の鳴る音の方へ視線を向けると、鳳翔さんが料理の乗ったお盆を二つ持ってこの卓までやって来ました。

 

「お待たせしました。こんな物しか用意出来なくて申し訳ないですが……」

 

 そう謙遜する鳳翔さんですが、お盆に乗った料理はとても美味しそうです。

 

「スクランブルエッグにトーストとサラダ……。ありきたりな筈なのに滅茶苦茶美味そうだな……。まさかこの和風店でこういう物が出てくるとは思わなかったが」

 

 確かにこの純和風な店内で食べると違和感がすごい料理です。

 

「鳳翔さんは料理の腕前がもう神様レベルなので、作れるものは和食に限らないらしいです」

 

 この間ピザ焼いてるの見ました。

 

「そんな、神様だなんて……。青葉さん、大袈裟ですよ?」

 

 大袈裟じゃないんですが……。鳳翔さんは謙虚ですねぇ。

 

「お飲み物は何にしますか? 麦茶と紅茶とコーヒーくらいしかありませんが……」

 

「あ、青葉は紅茶でお願いします!」

 

「はい、青葉さんは紅茶ですね。提督はどうしますか?」

 

「あー……、じゃあ、コーヒーを」

 

「はい。お砂糖はどうなさいます?」

 

 はっ、そういえば司令官超甘党だった気が。

 

「あ、砂糖は10本で」

 

 うわぁ。司令官、うわぁ。

 

「はい?」

 

 ほ、鳳翔さんの笑顔が固まっています!

 

「10本で」

 

「提督?」

 

 ダメな子を叱るような声色に流石の司令官も気づいた様子。

 

「…………5……さ、3本でお願いします」

 

「はい。提督は甘いのがお好きなんですね。でもほどほどにしないとお体を悪くしますよ」

 

 鳳翔さんの真剣に気遣う態度に司令官も素直に謝ります。

 

「うす、すんません」

 

 この僅かな時間で随分と力関係がはっきりしましたねぇ……。

 

 っと、冷めちゃいますね。

 飲み物が届くのを待ってから、切り出します。

 

「じゃまぁ、頂いちゃいましょうか」

 

「おう」

 

 両手を合わせて、

 

「「頂きます」」

 

 




ちなみに食事シーンは全カットです。
次回、打って変わってヘヴィな質問が八幡を襲う

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