捻くれ者と強すぎる艦娘。   作:ラバラペイン

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前回のあらすじ
休日に釣りをしてたらサンマを釣り上げた八幡と曙。

あれ、でもここ南国だしサンマ釣れるのおかしくね?

まぁ異常があるとしたら北太平洋側だし、俺らの仕事じゃないっしょ!(フラグ)


守るべくはサンマ2

 予定通り釣り上げたサンマは鳳翔さんに渡して調理してもらう。

 そうして頼んだサンマの塩焼き定食は、ミシュランに星を付けさせたら間違いなく三つ星であろうことが確定している逸品であり、この職場で良かったと思うことの最上位。

 俺にとって食事なぞ好物であるラーメン(あと小町の料理)を除けば、食べられて腹に溜まれば良いぐらいの物だったが、思わずその認識を改めたもんね。胃袋の捕まれ方がやばい(マスターボール級)。言っておくが雪ノ下で上手い料理にある程度耐性がある俺でこれだからな。

 

 店内を見ればどこからサンマの話を聞きつけたのかいつの間にやら満席となっており、皆鳳翔さんのサンマ料理に舌鼓を打っていた。時刻は18時を回った頃だが、早くも酒盛りを始めている艦娘まで居る。近寄ると巻き込まれるので触らぬ神になんとやらである。いや酒持ってこっち見るなPola。そのワイン何本目?

 

 そしてカウンター席に座る俺の右に曙、左に伊58。……いつの間に座ったんだろう。58は相変わらずどこからともなく現れるやつである。

 

「提督と曙ちゃん、サンマありがとうでち! こんなに沢山釣るなんてすごいよね!」

 

 サンマの蒲焼きを美味しそうに食べる58がお礼を言う。鳳翔さん何品作ったのだろうか……。

 

「ま、まぁあたしにかかればこんなもんよ!」

 

 褒められ慣れていないからか曙は挙動不審になっている。

 

「正直こんなに釣れるとは全く思ってなかったんだけどな……」

 

 俺も曙もここまで大漁なのは想定外もいいとこだった。

 釣れすぎて在籍する艦娘全員に振る舞えるレベルの釣果とか初体験である。

 

「クソ提督は全然釣れてなかったでしょ。釣ったサンマの8割あたしのじゃないの!」

 

「バカお前3割は釣ったから。舐めんじゃねぇよ」

 

「3割で威張るなクソ提督!」

 

 け、経験の差を自覚してるだけだしぃ?

 

「みみっちい争いしないでほしいでち……」

 

 流石の58も呆れ顔である。

 

「ふんっ。ま、今回は頑張ったほうと言えなくもないわね」

 

 鼻を鳴らしてそっぽ向いてはいるが、流石の俺でも褒められているとわかった。ありがとうございます。そしてそこに追い打ちをかける58。

 

「……曙ちゃんて提督に結構素直だよね?」

 

「なっ!? あたしはいつも誰にでも素直よ!」

 

「これでち」

 

「これって何よ!?」

 

 ギャーギャー憤慨する曙を余所に、はぁやれやれみたいに手のひらを上に向け肩を竦める58。何それ腹立つ。そして俺の方を見て、ニヤリと笑う。え、嫌な予感。

 

「素直っていうのはこういうことを言うでち。……こほん。提督、だーい好き!!」

 

 わざわざ咳払いをしてから俺の左腕に大げさに抱きついてくる58、って――

 

「やめろ抱きつくな離れろあざとい食べにくい!」

 

 あと大変柔らかいです。

 

「それと簡単に大好きなんて言うもんじゃありません。男が勘違いしたらどうするの」

 

 慎重に腕を振って58を振り払い注意すると、意外と素直に離れてくれて一安心。だけど何故かげんなりした顔をしてらっしゃる。why?

 

「こっちもこっちでこれでちた……」

 

 そういやこっちも素直じゃなかったわみたいな顔をされてしまったが、今のを喜んで受け入れたら変態の誹りは免れないと思うしこれは罠だな。

 そして一連の流れを見た曙がなぜか勝ち誇った様な顔をしながら言う。

 

「クソ提督にそういうのは効かないわよ」

 

「いやーうっかりでち……。というか提督たまにお父さんみたいなこと言うよね。――パパ?」

 

「やめろ、その格好でパパはマジで止めろ」

 

 ゾクリと冷たい物が背筋に走るから(逮捕的な意味で)。

 

「えっ、本気で嫌そう!? お、お父さんの方が良かったでちか?」

 

 俺の反応が予想外だったのか慌てる58。

 

「違う、そうじゃない」

 

 スク水セーラーでパパとか如何わしすぎるんだよ!! パパ(意味深)になっちゃうだろうが!

 

「いいじゃない、お父さん?」

 

 曙は弱点見つけたみたいな顔で嬉々として呼ぶんじゃねぇ。ニヤニヤしやがって!

 

「お前それ外で絶対やんなよ!?」

 

 思わず声を荒げる程度には、この環境でパパはまずい。ここなら百歩譲ってまだいいがうっかり本土でポロっと言われたら俺の人生が終了しかねない。どう見てもパパの年齢じゃないし。

 

「流石にわかってるわよ」

 

 まぁ曙は口こそ悪いが分類的には真面目側なので心配はしていない。……だ、大丈夫だよね? まだニヤついてるんですけど……。

 俺が怯えていると、背後から気の抜けた声をかけられる。

 

「あぁ、いたいたぁ。司令かーん、サンマさんきゅー」

 

 声の方に振り返れば、そこには我らがサボりの同sもとい伝道師、望月さんが立っていた。

 

「望月か。お前もサンマ食ったのか?」

 

 わざわざ店にやって来るほどサンマ好きだっただろうか。いや普通の艦娘なら来るけどこいつはなぁ?

 

「ここで寝てたらなんか騒がしくなってきてさー、起きたらこれじゃん? ラッキーだったよねぇ」

 

「あぁ、最初からここに居たのね……」

 

 そういえば初めてこいつ見たときもここで寝てたな……。なに、ここに住んでんの?

 

「そーゆーこと。あー、食べ疲れー」

 

 言いつつ俺の肩に寄りかかって、否のし掛かってくる。

 同じ接触でも先程の58と違いそこには可愛げと言うものがカケラもなく、楽をする為に体重を預けてきているから普通に重い。ただただ重い。

 

「いや重いから。まだ椅子あるじゃん、曙の隣に。そっち行けよ」

 

 俺は曙の隣を指差す。

 

「カウンター席って背もたれ無いんだよねぇ」

 

 丸椅子だからな。ってそんな理由で俺は今重い目に遭ってるの?

 

「曙に乗しかかれ」

 

「勝手なこと言うなクソ提督」

 

「もっちーこんばんわ!」

 

 58はよくこのタイミングで挨拶出来たね?

 

「おぉ、ゴーヤばんわー」

 

「こいつら全然話聞かないね?」

 

 暖簾に腕押し感が凄いんだが。

 

「さっすが鳳翔さんだよねぇ。なめろう超うまかったー」

 

 なめろう、そういうのもあるのか……。

 望月の話を聞いた曙も同じことを思ったのかやや思案顔になる。

 

「うーん、なめろうか。あたしも頼もうかな」

 

 あっ、もう望月の体勢については話が終わったことになりましたね……。被害が自分に来ないように流す気だ。

 しかしなんとかこの荷物(望月)を誰かに押し付けたい所。

 俺はちらりと58の方を見てから、

 

「58、望月をあげよう」

 

 直球勝負を仕掛けてみる。

 

「いらないでち!」

 

 ダメかー。笑顔でキッパリ、当然の如く断られてしまった。

 まぁ伝説ポ◯モンに初手モンスターボー◯を投げるぐらい雑な振りではあった。

 

「だってさ? やっぱあたしの脱力心を受け止められるのは司令官だけだぁ。これが信頼ってやつだよねぇ」

 

「いやそんな信頼はいらん。速やかに降りて床で寝ろ」

 

 というかなんだ脱力心って。適当な造語を作るな。

 

「あーひどーい」

 

「クソ提督サイテー」

 

「曙はそこで便乗してくんな!」

 

 (なじ)るところを見落とさない奴だな。

 

「提督もいい加減諦めるでち」

 

 おかしい、驚くほどに味方がいねぇ。

 

「そうだぞー諦めろー」

 

「え、これ俺が悪いの? 嘘だろ?」

 

 しかも当の望月はこの流れに然程興味無いっぽいのがより腹立たしかった。もう半分寝てるし脳死で喋ってんだろこいつ……。

 

 ――で最終的にどうなったかといえば。俺の席のすぐ後ろにもう一つ椅子を持ってきて、背中合わせでお互いを背もたれにするように座る形で落ち着いた。何この構図……。

 

「というか望月は食べ終わったんだろ? さっさと寮に帰れよ」

 

 なんでわざわざこっち来たのか。

 

「食べたすぐ後って動きたくなくねー?」

 

「ぬぅ」

 

 くっ、それはちょっとわかる。俺も昔よく小町に牛になると注意されながらもダラけたものである。

 

「えっ、なんで今クソ提督押し黙っちゃったのよ?」

 

 今の論破される所じゃなくない? と曙。

 

「ダラけたい気持ちが理解出来ちゃう提督にもっちーを追い払うのは一生無理という話でち」

 

「何それバカなの?」

 

「うるさいぞ外野」

 

 悔しいので次の面倒な作戦とかに望月をねじ込むケツイを漲らせる俺であった。

 

 

 さてそんなこんなで、アホな雑談をしつつ食事を楽しむ。パーソナルスペースの狭い艦娘達にヒヤヒヤさせられることは多々あれど、概ね穏やかな夕食だったと言えるだろう。もっともこんな感想少し前ならあり得ないが、艦娘は距離感云々言っても聞かない奴が多すぎてなぁ……幾ら俺でも流石に慣れる。一人が気楽なのは変わらないがな。

 

 しかしながら穏やかな時間というものは唐突に終わってしまうものであり、俺のこのサンマタイムも、一本の電話によって強制終了させられたのである。

 

 俺が鳳翔さんの作ったサンマの塩焼き定食を食べ、余りの美味さに感動――イメージ映像では服が弾け飛んでいる――していると、ポケットの端末が震え始めた。

 

「っと、ちょっと電話だ」

 

 隣で食べていた曙と58に一言告げてから席を外す。脱力していた望月はそのまま俺の抜けた席にベシャっと倒れこんでいた。怠惰。

 

 〼

 

 店の外に出つつ電話に出る。

 太陽が沈んだ空には、まばらに浮かぶ雲の隙間から月が見え隠れしていた。

 

「もしもし?」

 

 ディスプレイに映し出された通話相手の名前から面倒ごとの予感はプンプン漂ってきていたが、出ない訳にもいかない。

 

『おお、繋がってよかった。久しぶりだな比企谷少佐』

 

「と言っても2ヶ月ぶりくらいでしょう。――安仁屋大将」

 

 案の定、俺を提督にした大将――安仁屋大将であった。前回の定期報告以来だったかな。

 

『そうだったか? まぁいい。緊急の要件がある』

 

「はぁ、なんでしょうか」

 

『実は太平洋北部の辺りに妙な動きをする深海棲艦が現れてな。その撃滅を頼まれて欲しい。今のところ自発的に攻め入ってくる様子はないが、かと言ってその海域は重要な補給路があるから放置する訳にもいかん』

 

 太平洋北部という単語を聞いてサンマはフラグだったのかよと思いながら、淡い期待を込めて質問する。

 

「一応聞きますがそっちの艦娘でなんとか出来なかったんですか?」

 

 まぁ出来るならこんな電話かけて来ないだろうが。

 

『それが妙に手強い為こちらの艦娘では押し返すのが精一杯のようでな。その上軽く戦闘を行うとすぐ撤退していく為こちらとしても扱いが難しい。相手の底が見えない状態で深追いするのも危険だ。勿論時間をかければこちらだけでの対処も無理ではないだろうが……』

 

 場所が場所なだけに急ぐ必要がある、と。なるほどねぇ。

 ちなみに大将の言うこちらの艦娘とは、本土にある複数の鎮守府全体の戦力を指す。一般的な、逸脱しない強さの艦娘達で構成されている。

 

『そしてここからが最初に言った妙な動き、という話に繋がるのだが……』

 

 そこで一旦言葉を区切り、

 

『偵察によるとその海域の深海棲艦は、高頻度で仲間割れの様な行動をしているそうだ』

 

 と、繋げた。

 仲間割れか。行動原理が人間艦娘憎い沈めぇ! な深海棲艦同士ですら確執やらがあるのだとすれば、世の中本当に面倒臭く出来ているな。

 

「はぁ、なるほど。深海棲艦も一枚岩じゃないとかですかね」

 

 というか深海棲艦がその海域でドンパチ仲間割れしてるからサンマが南に逃げたのでは……? やべぇ繋がっちまったよ。

 

『かもしれん。とにかく、本土の艦娘だけでは対処出来ないから比企谷少佐の艦娘に任せるというのがこちらの決定だ。本来太平洋中部以下を担当する君達に頼むのは忍びないのだが……』

 

 底の知れない相手を放置するのは気が気じゃないだろうし仕方ない。

 

「仕事ならやりますよ。ただこっちは幾ら強くても人数がカツカツなんで、多少は前線を押し返されると思って下さい」

 

 具体的にはうちの艦娘一人当たり排他的経済水域1.5個分くらい押し返される。やだ一人のカバー範囲広すぎ。

 

『それは分かっているとも。何人出せる?』

 

「まぁ詳細な資料を送ってもらわないと何とも言いがたいですが、そちらの艦娘で押し返せる程度なら……えー3、4人くらいじゃないですかね」

 

 少なく感じるだろうが、慢心無しのオーバーキル編成だ。何せこちらで普段組む艦隊の編成艦数と同じなのだし。

 

 

『……それで事足りると言うのだから、相変わらず君達の練度は凄まじいな。一応大本営に送る報告には12名と記載しておきたまえ』

 

 大将からいきなり書類のねつ造を指示された、のだがこれには深い訳があった。

 こういう時、異常な強さを隠す為に人数や工数を盛ることを予め大将と決めてあるのだ。理由は大まかに二つあり、現在の強さが正確に理解されてしまうとこちらの仕事が増えてしまうからというのが一つ、うちの鎮守府で特攻かけて深海棲艦を全滅させろとか言われない為というのが一つだ(言われても無理だし)。

 大将曰く、大本営が想定していた以上にこちらの艦娘は強いらしい。現実離れした戦力を目の当たりにした大本営がトチ狂わないとも限らない。

 故に戦力にサバを読むことで実力を誤認させているわけだ。

 さらに言えばその齟齬を敢えて訂正しないことで今後の手札に繋げるとかなんとか……大将も大将で暗躍しているようだ。

 とはいえ複数の鎮守府が連合艦隊を多数組んでやっと追い返すレベルを、ただの1連合艦隊でなんとかする、と言うのだから、なんなら盛り足りないまである。

 

「うす。まぁ強いのは艦娘の功績で俺はなんもしてませんがね」

 

 本当なーんであんなにモリモリもりもり強くなるのか。サイヤ人かな? いやあいつらピンチにならねぇけど。

 

『そうかね? 君が入った当初と比較してもかなり強くなっていると思うが』

 

「だとしても艦娘が勝手に頑張ってるんでしょうよ」

 

 いやマジで。あいつら休日にも訓練してるから。

 娯楽届いてから少しは休む様になったけどさ……。

 

『はっはっは! そういうことにしておこうか』

 

 ただの事実なんだが。

 

『ではすぐに詳しい資料を端末に送る。よろしく頼むぞ』

 

 そう言って大将は通話を切った。

 

 さてこれから送る艦娘を考えるわけだが、最近俺の仕事増えてない? ちょっと前までは遠征以外の編成なんかは大和あたりが決めてたのに……。

 一度『艦娘の言うことに口を出さない』に抵触するだろと突っ込んでみたが、艦娘の判断でお願いしてるので大丈夫です(意訳:文句言わずやれ)と言われてしまった。くそう。

 ……お、データが端末に届いた。

 届いた資料を見ながら概要を把握していく。資料には期日や敵艦の情報、海域の特徴や周囲の島など地理的情報がそれぞれ写真付きで記載されていた。マメだな、とか思いつつ資料を読み進める。

 うわぁ、化け物然とした駆逐艦とか久しぶりに見た。こっちじゃ大体が姫級鬼級(最低でも人型)だからな。俺はむしろこっちのが怖く見える。サイズもでかいし。

 他には空母に戦艦――あとは姫級が2体報告に上がってるのか。とはいえこの程度なら古参一人(一隻?)で何とかなりそうなのがうちの艦娘のバグってるところ。四人もいらねぇな……。あいや、妙に強いんだっけ? なら良いか。

 

 通話を切った場である食事処鳳翔の前で顎に手を当て思案する。深海棲艦の挙動が怪しいのは事実だし、割と容赦無しで行くのが無難か。慢心して怪我させるのもバカらしいし、俺はまだ見たことないがもし突然変異種とやらならマズい。

 そういえば、明日あたり長期遠征からあいつが帰ってくるんだったか。気分的には憂鬱だが、タイミング的にはありがたい。帰ってきて早々で悪いが今回の任務に突っ込もう。

 

 って俺今日オフのはずなのに仕事してない? おかしくね? 悔しいので今日の秘書官(俺がオフでも一応居る)の龍田にも事の次第を話して巻き込んで愚痴ってやる(ただの報連相とも言う)。

 

 明日遠征から帰ってくる苦手な艦娘、天龍についての相談もしたいしな。うん。

 




お待たせしてすまぬ……
遅くなっても続きは書いているので気長に待っていて下ちい。
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総合評価:16443/評価:8.18/連載:60話/更新日時:2025年10月14日(火) 23:11 小説情報


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