会議終了後、朝食を食べる為に食堂に来た俺。同じく会議をしていた他の艦娘達はまだ他にも仕事がある様だ。俺も朝食を食べたら執務室で書類仕事が待っている(嫌だが)。
間宮さん(実は艦娘らしい)にカレー定食を頼み、なるべく目立たないよう隅に座る。いや本当はね? ベストプレイス見つけてそこで一人で食べようと思ってたんだけど、食器持ち出そうとしたら怒られた……。なので仕方なくここで準ぼっち飯という訳だ(ちなみに真ぼっち飯があり、そちらは本当に独りで食べることを言う)。
カレーが出来るまで手持ち無沙汰なので、何となく食堂の中を見渡す。数人の駆逐艦他艦娘がちらほらいるくらいで、朝食のピークは過ぎている様だ。 緩やかに進む時間の中スマホを片手に時間を潰す。因みにこのスマホだが当然正規品ではなく、位置情報や送受信した内容を傍受されない様ダミーにすり替える特殊な加工がなされた一品である。その為ネットサーフィンくらいは出来るのだ(場所が場所だからクッソ重いが)。
まとめサイトをぼーっと読んでいると声を掛けられた。
「提督、またぼっちでご飯でちか?」
「げっ」
カツ丼の乗ったお盆を手に持ちながら声を掛けてきたのは伊号型潜水艦、伊58。潜水艦は基本的にスク水セーラーの様な服装で、非常に目の毒である。いやマジでどこ見れば良いのか。
こいつはどういうわけか俺に絡んでくる艦娘の一人だ。いつもいつもという訳ではないが、偶にふらりと現れては軽く雑談をして帰って行く。何がしたいのかわからん。接点なんか無かった筈なんだが……。
今までのことを軽く想い出していると、失礼な反応でちね、とか言いながら俺の隣に座られた。
「いや、……なんで隣に座る?」
「ゴーヤも朝御飯でち」
そうじゃなくて。そうじゃなくてね?
「他に席いっぱい空いてんだからよそのテーブル行けよ。せめて前とかさ……」
スク水少女が横に座ってるとか今までしたことないタイプの緊張感なんだけど。
「あ、提督のご飯出来たみたいでちよ? 早く取りに行くでち」
お願い、話を聞いて!
そんな想いを込めて睨んでも何処吹く風。釈然としないまま席を立ち、間宮さんからカレーを受け取った後、58の隣、には戻らずに向かいに座った。
「提督は照れ屋さんでちね!」
うるせい。
なんか恥ずかしいので黙っていると、何を勘違いしたのか一気に暗い表情になった。
「その、……本当に迷惑だったら向こうで食べるけど、えぇと……」
…………あぁもう。
「少しでも迷惑だったら最初の時点で突き放してる。あんまり近づかれると困るけどな。お前は自分の恰好がどういう物か自覚するべきだ」
「……!」
俺がそう言うと途端に表情を明るくした。
「やっぱり提督は照れ屋さんでち! ……でもこの恰好そんなに変かなぁ? 潜水艦は皆こんな感じだよ?」
変というか、こう、男の子は困っちゃうよね。本当誰だよこんな制服(?)考えた奴は。けしからん。ありがとうございます。あ、伊19、てめーはダメだ。あざとい。58もあざといが奴は桁が違う。
「いや、変なわけじゃない。むしろよく似合っ……ところで58は今日はオフなのか?」
っぶねー、もしこいつが一色だったら凄まじい振られ長文を頂く様なことを言うとこだったわ。ギリギリ会話を変えることに成功、
「んん〜? 提督ー、今なんて言いかけたんでちか? よく似合、なんでちかぁ? ねぇね提督ー!」
ダメでした。
「はいはい世界で二番目に可愛いよー」
「わぁ適当でち!? しかも一番じゃない!?」
「お前結構図々しいな……そう簡単に一番の小町を超えられると思うなよ? 千葉の兄妹舐めんな」
「しかもシスコンだぁ!」
「バッカお前妹が大事で何が悪い。というか艦娘とか皆シスコンみたいなもんだろうが」
「そうでちた」
58の出番はまだ続く