ネフィリムさん   作:モサモサ

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二話

○月Д日

 

最近ネッさんがカラオケに連れて行けと煩い。近所迷惑になるからと大声で歌うのを自粛しているのだが、どこから聞きつけたのかカラオケの存在を知ったネッさんが連れていけとせがむのだ。いい加減鬱陶しいが、生憎と今の俺には金がない。こないだの10万で俺の懐はスッカラカンである。

というか、仮に金があったとしても、得体の知れないモンスターであるネッさんが町中を歩けば、普通に騒ぎになる。山から連れて来た時は日が落ち始めた頃だったのが幸いして誰にも見つからなかったが、昼間っから表に出れば一躍トップニュースである。そんな話をしたら、「分かった。騒ぎにならなければ良いんだな?」と言って部屋の隅に行ってしまった。何をしているのかは分からないが、ろくでもない事でないことを祈る。

 

 

 

 

 

○月δ日

 

ネッさんには驚くべき能力が備わっていた。なんと、体を縮小して手の平サイズまで小さくなれるのだ。しかも何故か重量まで変わっている。

とにかく、これなら騒ぎになる事もあるまいとネっさんを拾った山へと出かけた。あそこは人がほとんど来ないし、騒ぐには丁度良い場所だった。

試しに何曲か歌うと、ネッさんは大喜びで俺を煽て始めた。それがエネルギー補給のためだと分かってはいたものの、悪い気はしなかったった俺は一日中歌って過ごしたのだが、そのせいで喉を痛める事となった。今度からはのど飴を常備しよう。家に帰ってから元のサイズに戻った所、ネッさんが心なしか大きくなっているような気がすると言い出した。計測の結果はほとんど誤差の範囲だが、これで成長しているのだろうか?

 

 

 

 

 

○月◇日

 

昨日も山で歌う。というか、ここ最近の休日はほぼ山で歌ってるな、俺。端から見たらどんだけ寂しい奴だよ。しかも最近じゃあ、山から変な声が聞こえるとかいう都市伝説まで出回る始末だ。

 

しかし、そんな日々もこれまでだ!何と、本日ネッさんが小遣いを貰ったのだ!……うん。俺じゃなくてネッさんが。

何はともあれ、これで一々山に行かなくて済むぜ!やったー!

 

ちなみに、歌う場所が山からカラオケに変わっただけで、やってる事は変わらない寂しい奴だということに気づいたのは、カラオケに行った帰り道だった。

 

 

 

 

 

○月@日

 

唐突だが、うちの学校は明後日から8月の終わりまで夏休みだ。これが何を意味するのかといえば、ネッさんからの歌のおねだりが増えるということだ。

今までは週に1~2日だった歌の日が、ほぼ毎日となる。ばか正直にそんなことをしてみろ。普通に喉が潰れる。何か対策を考えねばな。

 

 

 

 

 

○月&日

 

帰宅途中で事故にあった。それも全治2ヶ月とかいうふざけた規模で。夏休み全部返上じゃねえかバカヤロー。原因は相手側の運転手の不注意だ。

普通なら日記を書く気分になどならないだろうが、俺はそんな事はなかった。何とこの怪我、ネッさんなら直ぐにでも治せるのだという。そのためには人間を辞める事になるらしいので、丁重にお断りしたが。

 

マスターも守れない欠陥兵器で済まないとか謝られたが、ネッさんは別に悪くないだろう。というか、ネッさんがいなければそもそも俺は死んでいるのだが。あの事故にあった時、ネッさんは俺を守るために咄嗟に俺と一部融合し、命を繋ぎ止めてくれたのだ。

その事に感謝こそすれ、責める理由はない。これに関しては、母は良くやったとネッさんを褒めてたし、普段はネッさんにビビってる父も本気で感謝していた。

 

 

 

 

 

○月¥日

 

偶然にも、ネッさんも知らない新たな能力を発見した。融合した影響なのは知らないが、何と俺とネッさんの体を交換できるのだ。

両親や友人、ネッさんもお見舞いに来てくれるとはいえ、日がな一日ベッドの上で過ごさねばならない日々はかなりの苦痛だった。そこで冗談半分に、「ネッさんと体を交換できたら動き回れるのになー」なんて言った次の瞬間、俺とネッさんの体が入れ替わっていた。

当然ながら大混乱&大慌ての俺達だったが、そこで騒ぎを聞きつけて看護師が駆けつけてしまった。しかしここはネッさんの意外な演技力で何とか事なきを得たのだが、依然として状況は改善しないままだった。

先程は俺がネッさんと入れ替わればいい、等と言った為に入れ替わったので、もう一度入れ替わるように言ったり、強く念じてみたのだが、結局元には戻らなかった。そこで今度は俺の体に移ったネッさんが、入れ替わるように念じた。すると、一瞬の暗転の後に視界が見慣れた物へと戻っていた。どうやら体の交換権は俺の体にあるようだ。

しかしこの能力、中々に面白いのでこれからも頻繁に使用していくことになるだろう。

 

 

 

○月Ψ日

 

ネッさんが美食趣味に目覚めた。

事の始まりは、俺がネッさんの体で見舞いの菓子を食った時の事だ。菓子を食った一口目で違和感を感じ、二口目で確信した。まったく味がしなかったのだ。この事についてネッさんに訪ねてみれば、そもそも味ってなんだ?という質問が帰って来た。

 

ネッさんの体には味覚が存在しない。元々知性を得ることなど想定されていない戦闘兵器なのだから、当然と言えば当然だが。

生まれて初めて味のある食事をしたネッさんは、始めは戸惑いつつも次第に夢中になり、そして食後には「今までこんなにも素晴らしいものを知らずにいたとは……!」と凄くショックを受けていた。それからというもの、ネッさんは俺が飽きてしまった病院食を、俺の代わりに毎回食うようになった。退院したら、ネッさんと一緒に食巡りをするのも良いかもしれない。

 

 

 

 

 

○月♪日

 

特に書く内容の無い入院生活が終わり、ついに退院日がやってきた。

ネッさんと融合した影響かは知らないが、心なしか事故前より体が軽い気がする。今なら何でもできそうだ……等と調子に乗ったのが災いしたのか、退院当日に事故に巻き込まれた。幸いにも俺を含めて怪我人は出なかったが、ちょっと俺の幸運値低すぎやしませんかねぇ。

 

 

 

 

 

○月#日

 

ネッさんを連れて海に行ってきた。

既に夏は終わりを告げ、秋にまで食い込んでいるが、今年は一度も行っていないのだからと、まだ暑いうちに行っておく事にしたのだ。

しかし浜辺まで来た所で、普段は腐るほど居る海水浴客がいない事に気づく。そしてクラゲが大量発生しているから遊泳禁止、などという看板もついでに見つけた。

 

落ち込みつつも折角来たのだから海釣りでもしていくかと、借りた釣竿で糸を垂らしていると、ネッさんが沖合いからサメを捕まえてきた。俺にどうしろと言うのだろう。というか、水中活動も可能なのか。便利な体だな、ネッさん。

 

 

 

 

○月Φ日

 

ネッさんが野良犬と間違われて保健所に連れていかれた。字面だけ見たら笑えるが、実際に遭遇した俺としては笑い話にもならない。

大体いつも一緒にいるからか、俺の中ではいつの間にか居ることが当たり前になっていたみたいで、周りの目を気にするという事を忘れていた。その結果ネッさんは野良犬扱いで保健所送りになったわけで、流石に反省しなければならないだろう。幸いにもネッさんの聞き分けが良かったから怪我人も出ていないが、ネッさんが本気で抵抗したら確実に死人が出ていたのだ。

 

保健所に相談したら、今度からはしっかり首輪をつけるようにと厳重注意を貰った。当然ながらネッさんは物凄く微妙そうな顔をしていた。いくら兵器でも、流石に首輪は嫌らしい。勿論のこと、今後もネッさんに首輪をつける予定は無い。ようはバレなければ良いのだ。

 

それはそれとして、母から今回の騒動の罰として、俺は来月の小遣いカット。ネッさんは来月いっぱいに渡って食事量に厳しい制限言い渡された。ショックで二人そろってガチ泣きした。

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