日は沈み、真っ暗になった頃に汽車は学校の最寄り駅に到着した。
「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっちだ!」
2メートルどころか3メートルをゆうに超える大男が大声で誘導していた。ハリーから聞いていたハグリッドらしい。そんな中、人の波に揉まれてなかなか出てこれなかったアミリアとラウラは最後の方になってようやく汽車から降りて来た。
「ハリーたちどこ行ったのかな?」
「さすがに先に行っただろう。私たちも行こう。入学早々怒られたくはない。」
「アミリアは怒られるの平気なんじゃないの?」
「平気でも面倒だ。受けなくていい説教なんて受けないに越したことはないだろ。」
「…そうだね…」
ラウラはなんとも言えない表情になりながらもアミリアと小舟に乗った。魔法がかかってるらしく、オールを漕いだりしなくても進む舟に乗って少し経つと、大きな城が見えてきた。
「あれがホグワーツかぁ…」
「ああ…これからが楽しみだな。」
「…アミリアが楽しみとか言うとすっごく不安なんだけど…」
ラウラの不安はよそに小舟は岸に到着し、前を歩く生徒たちについていき食堂前までやってきた。そこにはホグワーツの変身術の教師であるミネルバ・マクゴナガルがおり、これから食堂の中で組み分けを行うことについての説明があった。それが終わると、準備ができているかを確かめるからと、マクゴナガルは一度扉の中に入った。
「…ラウラ、何故さっきから私の腕を掴んでいるんだ?」
「アミリアがなんかうずうずしてるからだよ…すぐご飯みたいだし探検とかはまた今度にしてね?」
「ああ、そういえばそうだな。…確かランディさんが料理屋を目指すきっかけになった料理だったか…楽しみだ。」
アミリアが自由なのはいつものことなのだが、いつも以上に興味の移り変わりが激しいところを見るとテンションが高いらしいと、ラウラは感じた。
少ししてマクゴナガルが扉を開いてついてくるように言った。生徒たちが食堂に入ると、先ず目に入ったのは一面の星空が映し出された天井だった。
「うわぁ…すっごい…ね、アミリア。」
「ああ…魔法でここまで表現できるのはすばらしい…尊敬するよ。私はこういう…なんていうか、魅せるようなものは苦手だからな。」
「いや、魔法の話じゃなくって普通に綺麗だなって話だったんだけど…」
微妙にズレた感想を話すアミリアと、これ以上アミリアのテンションが上がると手に負えなくなりそうで不安になってきたラウラは立ち止まった新入生たちの一番後ろで同じように待機する。全員がそうして動きを止めたところで教師が座る長机の前の椅子と帽子が置かれ、それが突然歌い出した。内容としては学校にある四つの寮、グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンの特色のようなものと、組分けの方式を歌ったものだ。そしてそれが終わると組み分けが始まった。椅子の横にマクゴナガルが立ち、生徒を呼び出していく。
「アボット・ハンナ!」
「…ハッフルパフ!」
マクゴナガルがさっきまで歌っていた組分け帽子を呼び出した女子生徒にかぶせると、寮の名前を叫んだ。数人がそうして呼ばれては組分けをされていくと、ラウラが呼ばれた。
「あ、もう私か…」
「ファミリーネームがBからだからまあ早いだろ。ほら。」
アミリアに押されてラウラは前に歩いて行った。そしてマクゴナガルに促されて椅子に座り、帽子をかぶせられた。…が、しばらく座っても何も起こらない。帽子は不規則に少し揺れるだけだ。五分ほどたって席からざわざわと声が聞こえてきた頃に、そわそわしてきていたラウラの頭の中に声が響いた。
『…むぅ…何百年と生徒たちを見てきたが君のような者は初めてだ…』
『…びっくりした…!頭の中でも喋れるんだ…時間かかってるけど、もしかして魔法の才能が無さすぎて振り分けられない、とか?』
『いや、そういうことではない。才能という面から見ればかつてないほどのものだが…そこではない…君を読み取る前の第一印象と読み取った後の結論に違いがありすぎる…』
『第一印象と…違いがある?』
『間違いがあるのかと何度も確かめたのだが…君の第一印象は理由はわからぬが間違いなくスリザリンだと感じた…断言できるほどのものだ。しかし、君の尊重するものを見ればスリザリンからはかけ離れておる。レイブンクローは無いがハッフルパフともグリフィンドールとも…』
『うっ…勉強のことはできればほっといてください…これでも頑張ってるんだけど…それにしてもスリザリンにハッフルパフとグリフィンドールか…その中なら…』
『ほう、どれかと問われればグリフィンドールがいいのかね?君ならばスリザリンでもハッフルパフでも偉大な魔法使いになれるかもしれないが…』
『んー、偉大になるとかはあんまり気にしないかな…それより、お母さんとお父さんもグリフィンドールだったらしいしどうせならね。』
『ふむ…ならば…』
「グリフィンドール!」
ようやく組が決まってまだ周りはざわざわしていたがグリフィンドールの席から拍手が起こった。ラウラが席に着くと、上級生らしい双子が時間がかかった理由を聞いてきたがすぐに組分けが再開されたので後でということになった。
「フラム・アミリア!」
それから間も無くアミリアが呼ばれた。手っ取り早く終えて早くご飯を食べたいとか考えながら椅子に座って帽子をかぶせられた。
『ふむ…ふむ…』
『ん?この声は、組分け帽子…か?』
『…君ならばどの寮に入りたいと思うのかね?』
『ん?それは…まあ、ラウラ…わたしの友人がグリフィンドールに行ったからな…あまり別れたいとは思わないが、なぜそんな話を?』
『本当ならばあまり言うべきでは無いのだが…人によっては必ず向き不向きはあるが、君ならばどの寮でもうまくやっていくだろう。ならば、希望した寮に入れた方がいいのでは無いかと思ったのだ。…手段を選ばないところはスリザリン、知識を求めるところはレイブンクロー、正々堂々としているところなどはハッフルパフ、そして、勇敢で大胆なところはグリフィンドールだ。』
『…それはわたしの希望でいいのか?』
『…まあ、いいだろう。』
『ええ…それでいいのか…?』
「グリフィンドール!」
どちらかと言えば自信家とも言えるアミリアにしては珍しく戸惑いながらグリフィンドールの席に向かう。座った席の隣には笑顔のラウラがいた。
「アミリアもグリフィンドールでよかったー…別のとこだったらどうしようかと…」
「ああ、とりあえず7年よろしくだな。」
軽くそんな話をしている間にも組分けは進んでいった。その結果、汽車の中で同席したハリーとロン、さらにハーマイオニーもグリフィンドールになっていた。
……………
全員の組分けが終わってから校長のダンブルドアが面白おかしく、軽い挨拶をするとテーブルの上に置いていた大皿に様々な料理が並んでいた。
「これが…なるほど、美味しそうだな…」
アミリアは呟いてから料理に手をつけ始めた。それを見てラウラも食べようとしたところで隣の席の双子から声をかけられた。
「ラウラって言ったっけ?」
「え?あ、うん、ラウラは私だよ。上級生の人…かな?」
「ああ、そうだよ。」
「ついでに三年だ。俺はジョージ・ウィーズリー。こっちがフレッド。」
「よろしくな、ラウラ。」
「うん、よろしく。…二人そっくりだね…見分けつかないよ。…あ、ウィーズリーって、もしかしてロンのお兄さんってこと?」
「ああ、ロニー坊やに先に会ってたんだな。」
「まあ、我々兄弟の大事な六男だからな。仲良くしてやってくれよ。」
「六男⁉︎そんなに多いの⁉︎」
「ああ、俺たちの家族は六男一女なんだ。」
「俺たちは四と五だ。」
「すっごい多いんだね…」
「まあね。あ、そんなことより聞きたいんだけど、なんで組分けあんなに時間かかったんだ?」
「組分けに五分もかかるなんてまず無いぜ?確か…俺たちの僚艦のマクゴナガル先生が生徒の時組分けに五分かかったとか聞いたことはあるけど、それぐらいだ。」
「ああ…んー…なんか、色々言ってたけど…組分け帽子に思うところがあって、レイブンクロー以外で迷ったって言ってた。何度も確かめ直したって。」
「レイブンクロー以外か。」
「レイブンクロー以外な。」
「…な、なんかそう言われると居心地悪いんだけど…暗に馬鹿にされてるとかない?」
「「ないない。」」
「そ、そう?」
「あー、ところで気になってんだけど、隣…ラウラの知り合いだよな?話してたし。」
「うん、そうだよ。」
「なんか、さっきからずっと一人で食べてるけど機嫌悪いのか?」
「…これはほっといていいよ…」
「いいのか?」
「…うん…うん……なるほど…いい…」
「自分の世界に入ってるだけだから…」
「そ、そうか…」
「…食べるのが好きなのか?」
「うーん…興味があることには全力だからなぁ…逆に言えば興味無いことは適当に流してたりするけど。まあアミリアが興味あることの中でも、人間が考えた文化で一番いいのが食文化だって言うぐらいには食べるの好きだけど。」
「…いいな……これは……ランディさんが料理を作るのに夢中になるわけだ…」
隣で自分のことを話されていてもアミリアは全く聞いていなかった。