カマンガーさん、オラリオへ行く。   作:ひきこもごも

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プロローグ

ヘスティアにとって、その日はいつもと変わらない一日だった。

 

神界から下りてきて、眷属も出来ないまま友神のところで過ごしていたのは2週間ほど前までのこと。今は遂にそこからも追い出され、廃教会を仮住まいとしながら勧誘を行っていた。

今日の勧誘の結果もいつも通り。一人の収穫も得られず、帰路へとついていた。

 

「むぅ、今日も駄目だった。一人ぐらい話を聞いてくれても、良いじゃないか」

 

 

廃教会の扉を開け、地下へと下りていく。居住スペースとなっているそこにたどり着いたとき、ヘスティアは不満げにそうひとりごちた。

 

とはいえ、この結果も仕方ないことだろう。ファミリアに入ろうとしているものも、どうせなら条件の良いファミリアに入りたいというもの。未だ眷属が一人もいなく、なんの蓄えもないファミリアに進んで入ろうとするものなど、相当の変わり者か、もしくは相当なお人好しのみといったところだろう。

 

 

「さて、ご飯にするかな」

 

帰宅してから一息ついたヘスティアは、本日の糧であるジャガ丸くんをいくらか取り出し、食べ始める。一つ食べ終わる頃、途端にヘスティアの胸に寂しさがこみ上げてきた。

 

 

「……早くボクも、一緒にご飯を食べるような家族が欲しいなぁ」

 

 

 

 

それは果たして、その呟きによってなのか。それとも単なる偶然なのか。とにもかくにも、その瞬間。とある奇跡が起きた。

 

 

突然何もなかった空間から、眩いばかりの光が溢れる。それと同時にとてつもない爆音と爆風が起こる。

 

 

何か、物凄いことが起こっているような感覚。それを感じたヘスティアは、眩しさに瞳を閉じ吹き飛ばされないように壁にしがみつく。

 

「い、いったいなんなんだ!?」

 

 

光と音が収まり始める。ゆっくりと目を向けると、そこには初めて見る青年が立っていた。褐色の肌をしたその青年は、パッと見た感じどうやらヒューマンのようである。

 

 

ヘスティアが様子を窺っていると、その青年はゆっくりと瞳を開き、やがてヘスティアを真正面から見据えた。

 

 

「き、きみは?」

「お、まさかまた召喚されるとはな。俺の名前はアーラシュだ」

 

 

生気に満ちた瞳をしたその青年は、ヘスティアに向かってそう自己紹介する。そしてにかりと笑顔を浮かべ、未だ唖然とするヘスティアに向かって、再び口を開いた。

 

 

「よろしくな、マスター!」

 

 

このようにして、東方の大英雄、アーラシュ=カマンガーは迷宮都市オラリオへやって来たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、あんたの話を聞いた感じじゃ、ここは俺がいた世界とは全くの別物らしいな」

「ってことは、異世界から来たっていうのかい?」

「ああ、そうなるな。俺のいた世界では、少なくとも現代に神はいなかった。古代には地上に神がいたが、普通に物凄い力を振るってたらしいしな。そこらへん、この世界とは全然違うだろ?」

「うん、そうみたいだね。君はどうやら嘘はいってないみたいだし」

「お、神様ってのはそういうのがわかるのか」

 

 

対面してから少しの沈黙が流れたあと、事情をつかみ損ねているらしいヘスティアをみて、取り敢えず話し合うことがお互い先決だろうとアーラシュが提案したことにより、話し合いが始まった。

 

話をするにつれて、どうやらここが自分のいた世界とは大きく異なっているようだと気付き、アーラシュはヘスティアにその旨を告げた。

 

 

その後、ダンジョン、ファミリア、神の恩恵などなど。聞き覚えのない単語を説明してもらい、それを新たに知識に加えていく。アーラシュは、しばらくこの世界についての情報を聞いた。

 

 

「まあ、どうやら今回の現界はマスターもいないみたいだし、聖杯戦争でもなさそうだ。原因はわからんが受肉もしてるみたいだし、なんかわかるまで自由に過ごしてみるか」

「あっ。……そ、そのだね」

 

 

そこまで話すと、ヘスティアが何かを思い付いたかのように口を開きかけ、少しためらう。それに気付いたアーラシュは、ヘスティアを見やり、少し思案したあと口を開いた。

 

 

「そういやあれだ。俺にはこの世界であてにするものが何もないんだが、あんたの『ファミリア』だったか?それに入れてくれないか?」

「えっ、ほ、ほんとかい!?」

 

 

ヘスティアにとってそれは、願ってもない提案だった。見た感じからも分かる気さくな雰囲気と、少し話しただけでわかる人の良さを持っている目の前の青年が、自分のファミリアに加わりたいといっているのだ。経済的にもそうだが、なにより家族が欲しかったヘスティアからすれば、本当に嬉しい話だった。

 

 

「あ。で、でもね」

 

 

勿論それはヘスティアにとって望ましいことなのだが、それが本当にアーラシュのためになるのか。事情も詳しく知らない青年を、自分の欲望のままにファミリアにしていいのか。そんな思いが胸を掠め、ヘスティアは自身の現状を話すことにした。

 

 

 

「僕のファミリアっていっても、まだ一人もいないんだ。お金も冒険のノウハウとかも、何一つ蓄えがある訳じゃないし。その、だ、だから」

「神の恩恵ってのはどこも変わらないんだろ?別に俺はあんたのファミリアで構わないさ」

「そ、そうはいっても」

「わかったわかった、もうはっきり言う。俺はお前のとこが良いんだ。それなら問題ないだろ?」

 

 

 

そう言ってニカッと笑うアーラシュをみて、ヘスティアは何か暖かいものか胸に込み上げてくるのを感じる。そうして、それに自らの微笑みを返した。

 

 

「わかったよ。うん、じゃあボクからもう一度はっきりと言うよ」

 

 

そう言って、ヘスティアは一度大きく深呼吸すると、いつの間にやら真剣な表情でこちらを見つめていたアーラシュの瞳を真正面から見つめ返し、口を開いた。

 

 

 

「アーラシュ君、僕の家族になってくれるかい?」

「おう、もちろんだ」

 

 

 

これが『ヘスティアファミリア』の始まり。そして、とある世界で東方の大英雄と語り継がれる男の、もう一つの世界での英雄譚の幕開けであった。

 

 

 

 

 

 

 




勢いだけで書いたものですので、書きだめもなにもありません。そもそも続けるかどうかも、筆者のリアルスケジュールと需要次第です。
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