ふと、目が覚めた。
すると
眩い金色の光を放つなにかが自分の目の前に浮いていた。
……何これ。
未だ目の前でふよふよと浮いている。
……え、何これ。
!?
それはゆっくりと、ゆっくりと自分に近づいてきている
避けようと体を捻ろうとするが動かない
なぜ!?
動こうともがいていたがついに
なにかは自分の体に入り込んだ。
!?
「なになに!今度はなにさ!!」
「「「ねもうるさぁーい……」」」
「あ、ごめん。」
自分を固めるように手足に絡み付きながら寝るこども達に反射的に謝る。
……お前らかよおおお!
今入った?俺の中に入った!?
ペタペタと空いた手で体を確認する。
特に異常はなさそうだ。
でもさっき完全に…
そうか。
「夢か。」
疲れが残ってるな。明日死ぬ(ような目にあう)からしっかり体を休めないと。おやすみなさい。
色々おかしい気がするが気にしない。
夢だもの。きっと。夢だもの。
「ねもおきろーー。とぉうーー」
「ぐふ!」
意識の覚醒と共に腹へ割と深刻なダメージを感じる。
「おきた?ねもおきた?」
「…おはよう。ポポ。もうちょい、平和に、起こして、ほしかったかな。」
いくら5才の男の子といえど体重を存分に乗せたボディプレスの威力は凄まじい。
「だってねもぜんぜんおきないもん。ほらはやくはやく。あさごはんだよ。」
あんなことされるまで起きないってどんだけ眠り深かったのだろうか俺は。
「おーけー分かった。すぐいくからさきいってて。」
まだちょっとダメージ残ってるから。
ポポは、はやくきてねーと食堂に向かった。
「それにしても。」
夜中のあれ。
ほんとになんだったんだ。
夢、だったのか?それとも寝ぼけてた?
…考えたってしょうがないか。
くぅ。
うむ。昨日の晩飯も食わずに寝ちゃったからな。さすがに腹が空いた。
成長期なのだからしっかり食わねば!
成長期!なのだから!
目指せ高身長!せめて師匠の背を超えるのだ!
…さっさと行こう
「すげーー!」「ほんとに?ほんとに!?」
「うそじゃない!?」「まじなの!?」
「みたことない!」「おいしい?」「たぶんおいしい。」「きっとおいしい。」
「「たべたことないけど。」」
食堂はいつもの7割増しくらい騒がしかった。一体どうしたんだ?やけにみんな興奮しているが。
「お、やっときたかネモ!おはよう!よく眠れたか?」
子供達に全方位囲まれている院長が大声で聞いてくる。
「ああ、よ「ねもきたーー!!」「おそーい!」「ほらはやくはやく!!」「にくだってにく!!」「はじめての」「おにくーー!」「いもじゃないたべもの!!」「そのなも…」
「「「おにく!!」」」
さっきまで院長を囲っていた子供達が自分に殺到する。めっちゃ仲良いなお主ら。
というか
「おにく?」
その呟きに院長がにたぁと笑う。
ちょいキモである。
「そう。おにくだ!あのお!に!く!だーー!」
これ以上ないってほどのしたり顔だ。
子供達も続くようにしたり顔を自分に向けて来る。仲良いなおまんら。
「…魔物の肉じゃなく?」
「馬鹿!んなわけあるか!!それはそれはもーう貴重な豚さんのおにくだよ!!!」
「…ほんとに?」
「疑心暗鬼だな!いいから食うぞ!腹減ってるだろうに。ほら座れ座れ!」
いわれるがままにテーブルの前に座る
しばらくすると、
「これが、お肉だ!!!!!」
「「「おーーーーーー!」」」
自分に加えて子供達が歓声を上げる。
テーブルの真ん中には、どどーんと、
滲み出た油でてらてらと輝く、こんがりと焼けた肉の塊が置かれる。
生唾を飲む音が鳴る。
いつも騒がしい子供達は黙って肉を見つめている。
院長のにやにやが止まらない。
院長は無言でナイフを取り出す。
それを肉の塊へと
刺し入れた。
油がじゅわっと、切り口から溢れていく。
俺達の唾液もどんどんでてくる。
ナイフはすこしずつ肉へと埋まっていく。
そして
ついに塊から肉が切り分けられた。
その断面は綺麗な桃色をしていた。
とても食欲がそそられる。
とうとうよだれをこぼす子供達。
それからしばらくして、
人数分の肉を切り終えた。
人数が人数なので1人の量は一口分しかないがそれでも肉は肉。はじめてのにく。
まだかまだかと子供達はギラギラとした目で院長をみる。怖い。
「くっくっく…そいじゃお待ちかねのお肉、
いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
子供達は一斉に肉を食らう。
辺りは沈黙する。時が止まったように。
「どうだ?はじめてのおにくの味は?」
非常にうきうきしている顔で院長は問う。
「「「「うめぇぇーーーー!!!」」」」
「なんだこれなんだこれ!」「うますぎる!」「ほっぺたおちちゃう!」「にくだああああああ!」「まるで、あぶらのほうせきばこやー!」「どういうこと?」「ぼくもよくわかんない。」「もっと食べたい!」「もうないの!?おわり!?」「ざんねんながら…」
「われわれはひとくちでたべてしまった。」
「はんぶんだけたべるというせんたくしもあったというのに。」「なんとおろか。」「なんとあさましい。」「だが。」「しょくん、われわれにはいもがある。」「いもを、かじれ。」
食堂に喧騒の嵐が起きた。
うまい。たしかにうまい。いままで食べた事ないってくらいうまい。でも…
「院長、この肉どうやって手に入れたの?」
まさか盗んだのか?まぁそんなことしないと確信してはいるが。院長の身体能力的にできそうってのが恐ろしい。
「あー……それは秘密だ。でも盗んではいねぇからな。そこは信じてくれや。」
「そこは信じてるから大丈夫。あとなんでいきなり肉なんて貴重なものを?」
これが一番気になる。今日は特別な日だったりするのだろうか?
「そりゃお前の為だよ。修行。聞いてる限りかなり大変そうだからな。景気付けにと思ってな。あとは昨日のお礼。それで?どうだったお肉?」
……………
「ありがとう、父さん。
肉、すげー美味かった。」
恥ずかしくて院長の顔を直視できない。
おそらくにやにやとした顔を晒していることだろう。容易に想像できる。
「おう。そいつはよかった。」
安心するような、温かい、優しい声音だった。
「それでそれで!?どんな味なんだよお肉は!!美味しいだけじゃよくわかんねぇよ!俺だけ食えなかったからな!頑張って交渉してきたのに!あと今父さんっていったよな!?もっかい言って!もっかい聞かせて!
ほら!父さんって!親父でも可!!!」
くそうぜぇ!
肉の味、何故かは分からない。分からないが、少し、懐かしいと、そう感じた。