兵士達は今日も生きたい   作:よむなのだ

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闘技大会 前

「行方不明者ね…まだあるんだこういうの。」

 

午後から修行のため孤児院を出ようとした時、目に入った掲示板。

 

そこには、名前、特徴、年齢、そして似顔絵。

 

行方不明となった子供達。

 

そのリストが掲示板に貼られていた。

 

「ああ、未だにあるよ。まだほとんどが見つかってねーってのに。」

 

見送りにきた院長が言う

 

「ネモはしってるか?カラン族の子供が行方不明になった話。」

 

「いや、知らない。」

 

「…お前はもうちょっと周りに興味をもて。

全国民に通達されたんだぞ。ネモは記憶力だけはいいから覚えてると思うんだが。」

今、だけっていいおったな。だけって。

 

「うーん。」

 

記憶を巡らす。

 

………あーそんなこともあったな。頭に直接届いたわ。情報求むっ!て。

確か8年前だっけか。

 

「思い出したか?あれな、警護していた兵士が言うにはいつのまにか消えたらしい。」

 

「消えた?」

 

「そう消えた。2週間後には巡回していた兵士によって路地裏に倒れている所を発見されたが、

そのカラン族の子供、行方不明となっていた期間の記憶が全部無かったそうだ。」

 

「…どゆこと?」

 

「わからん。なにからなにまで全部不明。なにもわからないんだよ。24時間パーダを監視できるようなギフターがいればいいんだがなぁ。」

 

「なぜ消えたのか。人為的なものだとしたら一体だれがやったのか。なんのために?2週間どこにいたのか。どうやって生きてきたのか。なぜ記憶がないのか。疑問をあげるだけできりがない。」

 

「そして、行方不明になった子供の中で見つかったのはその子だけなんだ。」

 

「……へー」

そうなんだ。こわいな。

 

「興味ゼロだなおぬし。」

 

「別にそういうわけでもないんだけどな…

とりあえずいってくる。」

 

「引き止めて悪かったな、いってらっしゃい。」

 

「「「「「いってらーー」」」」」

 

 

 

待ち合わせの修練場へむかっている途中、

足まで覆い隠すようなマントを羽織った2人組を見かける。

 

その片方はフードを被っておらず頭部が曝け出されていた。

 

 

 

「師匠?」

 

後ろ姿ではあるが、女性らしい長髪、毛先は綺麗な黒、根本にいくにつれ色が抜けていくように白になる。その特徴的な髪色は師匠のものだった。

 

「どうしたんですか?こんなところで。」

近寄り声をかける。

 

師匠、遠征にいったはずでは?

 

その言葉に反応し彼女が振り返る。

「あぁ?」

 

すみません人違いでした。

 

その顔は師匠とは似ても似つかない凶悪そうな鋭い目つきをした女性だった。

 

「誰だ、あんた?」

 

ドスの効いた声で問われる。

 

怖い!ちゃんと顔確認すればよかった!

「すみません!その特徴的な髪色は師匠だけかと思い勘違いしてしまいました!」

 

師匠の他にもいたんだな。びっくり

 

「……あんたの師匠もこんなへんちくりんな髪の色してるのか?」

 

自分でへんちくりんって言っちゃうんだ。

 

「はい。そうですけど…」

 

「そうか……今度からはちゃんと顔を確認してから声を掛けろよ。」

 

そう言って隣の人を伴い早足で去って行った。

 

行っちゃった。

あの顔の割に親切だったな。

 

……顔で判断するのはよくないね。

 

 

 

 

…数ヶ月後

「さあもう一度……いける?」

 

「ハイ。ワカリマシタ。」

 

「うん。休憩挟んだほういいね。前の遠征から帰って来た時みたいになってる。」

 

「ハイ。ワカリマシタ。」

 

「ラルフさん!この子修理して!」

 

「悪いけど精神的なものは直す事ができなくてね。直るまで放置だね。」

 

「ハイ。ワカリマシタ。」

 

「そんな〜!ネモ!大丈夫!?」

 

「ハイ。ワカリマシタ。」

 

「ねもおおお!」

 

 

「ワカリマシタ…ワカリマシタ…ワカリマシタ…ワカリマシタ… ワカリマシタ……ワカリマシタ…………………………………」

 

 

 

 

 

 

「ハッ!俺はなにを!?」

 

確か俺は師匠と修行しててそれで……………な、何も思い出せない。

 

「あ!気がついたみたいだね。よかったぁ…また前みたいになってたから心配したよ。」

 

「前みたいに?」

 

なんか思いだせそうな…………

 

「うんわからないならそれでいいよ。さぁ、続きをやろう。」

 

「ちょお!!」

 

いきなり師匠が木刀を自身の頭に振り下ろす。自分が防げるか防げないかの絶妙な速さで。自分の事は完全に見極められてるみたいだ。

 

それから数時間めちゃめちゃ修行した。

 

 

 

風呂も入りさっぱりした後、唐突に思い出す。

 

「あ、そういえば、師匠、兄弟とかいます?」

 

「?いないけど、どうかしたかい?」

 

じゃあほんとにたまたま、同じ髪色だったのか

 

「いや、前に師匠と同じ髪の色をした人がいたんで兄弟かなんかかと。」

 

「…そんな人いるんだね。珍しい。

 

そ、れ、よ、り、も。闘技大会がもうすぐ開催されるよ!!」

 

「闘技大会ですか?」

 

毎年やってるあの?

 

「そう、出場してみない?ネモもそれなりに強くなったし。

いいとこまでいけると思うよ?」

 

この師匠がそれなりに強いだって!?

 

あれ?もしかして俺強いのか?

 

「それって賞品とかあるんですか?」

 

「あー…うん、まぁ、あるにはあるけど…うーん………ゆ、優勝すればわかるよ!」

 

やけに歯切れが悪い。

え、なに、なにがもらえるの。

私、気になります。

 

「そんなこと聞くってことは見に行ったこともないのかい?」

 

「そうですね。その時は大体寝てました。」

 

みても面白いとは思わないだろうし。

だったら寝てるほうがいい。

 

「ああ、なんな凄くネモっぽい………

まぁネモ次第だから。大会までしばらくあるし、ゆっくり考えといて。」

 

「わかりました。師匠が言うなら考えときます。」

 

どうしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さあさあさあさあさあさあ!!!!

年に一度の催しが今年もやって参りました!!!

みなさんお楽しみ!!!

闘技大会の始まりだああああああああ!)

 

頭に直接響く声。非常にテンションが高い。

 

「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」

 

約5万人は収容できる観客席が兵士を含む観客で埋まっていた。

 

(本日司会進行を務めさせていただきますは、私、

貴方の脳に直接お届け!

リリィでございます!皆々様!本日は思いっきり楽しんでいって下さいな!!!)

 

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」

 

闘技場の控え室にまで届くような凄まじい熱気である。

心なしか室内の温度まで上がってる気がする。

 

(この闘技大会でしのぎを削るのは約1000名ものエントリーした選手の中から予選を勝ち抜いた12名によるトーナメント戦です!)

 

そんなにいたのかエントリーした人。

よく勝ち抜けたよ。

 

…師匠の、おかげだな。

あと俺の頑張り。主に俺の頑張り。よく日々を生き抜いている俺。よくやった俺。

 

(ちなみに試合はチューズ研究所が製作した

"投影機"と"かめら"という機械によって全50ヶ所で試合が中継されます!どうやって作ったんだそんなの!って感じですがあの研究所ですからね!もう何でもありです!闘技場に入れなかったあなたも楽しめます!またまたチューズ研究所製作の"まいく"という機械で私の声も聞こえます!まじでどうやって作った!!!)

 

チューズ研究所の技術力はせかいいちぃ。

 

(続いて試合のルールをご説明します!武具などは木刀のみ可。そしてギフトの使用は自由となっております!存分にやって下さい!

あまりに殺傷能力が高いギフトを持っている方はエントリー時に除外されておりますのでご安心を。特にトラウィス様とかアシャタ様とか。体術だけだから!とか通じません。

毎年エントリーしてくるの本当に自重してほしいと心から思っております。

 

 

勝敗については、相手選手が闘技台から落下した場合と、審判によって相手選手が戦闘不能と判断された場合、そして相手選手が降参と宣言した場合に勝利となります。

 

相手が死亡する寸前、または死亡したなどの重傷を負わせた場合は加害者側が負けとなります。あくまでこれは見世も…競技ですので熱くなりすぎないようくれぐれもご注意下さい。

 

尚、死んでしまった場合ですが、大丈夫。

我々があなたを生かします。

審判には序列36位、時間停滞のルベド様

そして最高の医者、ラルフ・クレトス様が控え室にいらっしゃいます。

ね?安心でしょ?)

 

控え室の選手一同が頷く。

ラルフさん。本当にお世話になっております。

 

時間停滞のルベド。対象の時間を数分の間止めるとかいうとんでもギフトを持っている。

 

(そして、今回の闘技大会。優勝者には恒例のあれ、さらにはなんと!なんと!

 

お肉が貰えます!お肉です!お肉でございます!!あの貴重な!豚さんの!!お肉!!!

私も食べたことがありません!!!7年間もこの司会進行1人でやってるんだから食わせてくれてもいいじゃん!食わせろ!肉!

あっテレパシー切るの忘れてた…まぁいいか)

 

(((((よくねぇよ)))))

この司会、7年間も務めているせいか言いたい放題である。

 

(ルール説明は以上となります!

大変お待たせしました!

いよいよ闘技大会の始まりです!

早速ですが、第1試合を開始します!

呼ばれた選手は闘技台へと上がって下さい!)

 

トーナメント表を見る。

 

「はぁ…」

 

何度見ても変わらない

 

(さてさて、第1試合はと……

おおっとこれは!!!

初っ端から熱い試合が見れそうだ!!

まずは右コーナー!!!!

序列第1位!もはや説明不要!

いい加減出ようとするのあきらめろ!

アシャタ!!の弟子!!

 

ロ、メ、リ、アアアアアアアア!!!)

 

「「「「うおおおおおおおお!!」」」」

 

観客の雄叫びを背にしながらロメリアは闘技台へと上がる

 

どっかで見たことあるとおもったら

 

(非常に珍しい女性兵士です!!

 

なんと今年で15歳!若い!若いぞぅ!

非常に羨ましい!!

あんな可憐な少女でも強さは一流!予選では立ち向かう相手を己の拳のみで落としてきました!それも全て一撃です!!

なんというパワー!

一体どれほどの鍛錬を積んできたのか!!

その可愛らしいお胸は鍛錬の代償か!?

 

……ヒェッ

せっ成長期なんだからまっ、まだまだ成長の余地はあるとお姉さんおもっ…ヒィィィ!!)

 

進んで死地へと突っ込んでゆく司会、

勇者である

 

そろそろか…

 

「つっ、続きまして左コーナー!!

なんとなんと!

あの序列第3位が弟子をとった!

最強無敵!無敗の女王!人類の到達点!神の最高傑作!

もうこの人だけでいいんじゃないかな。

弟子にしてもらいたい人ランキング第1位!

称号はまだまだありますがこのくらいにしときましょう!)

 

うちの師匠、凄すぎ…

ふははははは羨ましかろう?

あの人の弟子。俺だけなんだぜ?

 

みなさんご存知!ラン・ケイ!!!!!)

 

「「「「うおおおおおおおお!」」」」

 

いよいよだ。

木刀を持つ手に力が入る。

せめて1回戦は突破したいよな。

ラン・ケイの弟子として。

期待は重いが…

ああ、やってやろうじゃないか。

 

(の弟子!!!ネ、モオオオオオオオオ!!)

 

「「「わあああああああ!!!」」」

 

競技台へ向かって歩いてく

 

(彼についてですが……そう、彼は彼女ではなく、彼だそうです!!彼女ではなく!!

性別詐欺も甚だしいですね!!!)

 

……そんなに男っぽくないのかね。

 

(彼は既に…おや?正確には年齢がわからない?えーと……多分16歳だそうです!!

二次性徴はどうした二次性徴!!!

背も男にしては小さい!!かわいい!!

我々女の立つ瀬がないほどだ!!

ずるいぞ!ぶーぶー!)

 

競技台へ上がる

ロメリアさんとの距離は5メートル程。

 

(ほんとに女じゃないのか!?本人に聞いてみよう!!)

 

ん?

 

「うー、とぉう!!」

 

何かをこちらに向かってぶん投げる司会

 

ん!?

 

頭上に飛んできた何かをキャッチする

 

もしかして、これ、まいく?

 

司会のリリィを見る。

 

手を口の前に持ってきて開いたり握ったりを繰り返していた。

 

喋れってこと?

 

司会がさっきまでやっていたようにまいくを口の前に持っていく

 

「えと、おとこ、です。」

 

やばい、なんか無駄に緊張した。

これでいいの?

 

司会を見ると親指を立てていた。いい笑顔。

満足したのか親指を立てるのをやめ起立する。

そして、こっちへ、ほら!みたいな。

大きく体をつかってジェスチャーするリリィ。

 

投げろと?いいの?これ?貴重なもんじゃないの?

されど続くジェスチャー、ちょっと疲れてる

…テレパシー使えばいいのに

 

…そい!

 

司会に向かってぶんなげる

 

(よっしゃ!いいよーいいよー!おーらい!おーらぃっだぁ!!!)

 

頭にクリーンヒット!

痛そう(他人事

 

正面に向かい直すとロメリアさんが自分に向けて親指を立てていた。憤りを感じていたのだろう。清々しい顔だ。

 

(いつつっ…本人がおとこといっているのできっと男なのでしょう!

私は信じないがな!女として認めんぞ!)

 

つまりさっきのくだり必要なかったよね?

 

(さあ、選手が出揃いました!!

いよいよ始まります!!

審判の合図で試合開始です!

そいじゃもういっちょ……

え?投げちゃだめ?持ってく?

 

えー少々お待ちください。今まいくを審判にお渡しするので…)

 

あれ独断でぶん投げたのかよ!!!

 

えっ?こっから降りて持ってけって?高くない?ねぇ高くない?無理くない?6mくらいあるよ?ちょ、おすっ、押すな馬鹿!待って!ほんとにまって!投げたの謝るから!ごめん!ごめんなさいいい!!

もたもたもたもた。しばらくかかりそう…

 

時間空いたな。あの日のお礼をしときたいけど今から戦うって時に言うことじゃないし…挨拶でもしとくか。

 

「ロメリアさんよろしくお願いします。」

 

「あっ、こちらこそよろしくお願いします!

あのケイさんのお弟子さんですからね…きっととんでもない化け物なんでしょう。全力でいきます!!!」

 

「あはは…お、お手柔らかに。」

師匠の名声がすげぇです…

 

(審判にまいくが渡りました!それでは、審判!お願いします!)

 

「ああ、任された。両者、準備はいいか?」

 

「「はい」」

 

「うむ、

 

それでは。」

 

木刀を両手で握りしめ中段に構える

 

相手は徒手空拳のようだ。

 

 

「はじめぃ!!!!」

 

瞬間

 

ロメリアの姿が視界から消える。

 

!?

 

一体どこに!

 

…下!

 

ロメリアは既に目の前にいた。

それも拳を構えながら。

 

まずい。

 

避ける?いや間に合わない

 

焦るな。慌てず。

 

木刀を横に構え、片手を樋に添える

 

よし、間に合う

 

拳はもう迫っている。

 

そして、体を捉えようとする拳を木刀で受けなが…………

 

 

あっ

 

あまりの衝撃に耐えきれず触れた瞬間に粉々になる木刀

 

…うっそーん

 

ロメリアさんの顔を見ると真っ青になっていた

 

 

…期待に応えられなくてごめん。でもさ。

ロメリアさん。君なら優勝できるよ。

その拳で。うん。

……誰が、触れただけで木刀が粉々になるなんて予想できるよ?

全力で振り抜かれた拳は急に止まることができない

 

今からそれを身に受けるのか。

 

師匠、ごめん。俺、死んだ。

 

とうとうその拳は腹へと突き刺さる。

 

ボッ!

 

人間の体ってそんな音でるんだ。ふしぎー

 

風を切って空へすっ飛んで行く。

 

「そら、きれいだな。」

 

目には青い青いどこまでも広い空が映る

 

…案外俺の体、丈夫だな。

師匠が鍛えてくれ、て、よかっ……

 

 

気絶する寸前、誰かに抱えられたような気がした。

 

 

 

ネモ、本戦出場、一回戦、敗退。

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