「此度の土地確保、ご苦労であった。」
それだけ、たったそれだけを告げてこの国の王様は謁見の間から立ち去った。
「…これにて謁見は終了した。早急に立ち去れ。」
大臣の言葉を受け私達は玉座に背を向ける。
トラウィスは大臣に聞こえるよう思いっきり舌打ちした。ほんとにこの人は…
「ほんっとぉーーーーに感じ悪いのう!うちのおうさまとだいじんは!外に出ない癖に上からものいいよってからに!もっと愛想よくできんのか!」
「レイ様!」
謁見の間を出てすぐにレイ様が叫ぶ。
さすがに聞こえる!絶対聞こえてるから!!
「それだけか!!たったそれだけなのか!!!死んでいった兵士達に贈る言葉は!!ふざけるな!そんな陳腐な言葉で片付けられるほどあやつらの命は安いものではない!!!お前らは血も涙もないのか!
この!ばかやろーーーーーーう!!!」
「レイ様…」
出撃前、兵士1人1人に声を掛けていたのを思い出す。たわいもない話であったが兵士達の緊張はほぐれていただろう。
「ふー、叫んだらスッキリしたわい。イブキ!おんぶ!」
了承する前にレイ様は背中に飛び込んできた。
…かわいい
「それにしても、上層部の奴らはまともな奴はおらんのかの?おうさまはあんなだし、だいじんもあんなだし、アシャタも呼ばれておったのに当然のようにサボるし、研究所のやつらはなんか不気味だし。この国、大丈夫なのか?」
最後は完全に偏見だと思います。
「…あの王様、ほんとに生きてるんですかね?」
突然、トラウィスがそんなことを言い出した
「トラウィス、それどういうこと?」
思わず聞き返す
「どういうこともなにもそのまんまの意味だ。顔を見たか?一切生気を感じさせねぇあの顔を。大臣も同じだった。」
「むむむ、言われてみれば確かに。いつもあんな顔だから特に違和感がなかったわい。」
王様が生きていない?そんな筈ない。死んでいるなら動いて喋る筈がない。でもあの顔。
「もしかしたら比喩でもなんでもなく、血も涙もないのかもしれないっすね。」
トラウィスの言葉に背筋がゾクっとした
「おやおやぁ〜みなさんそんな所で集まってどうしたのですかぁ〜?」
突然耳に届いたねっとりした声に背筋がピンと伸びる
おひゃあ!落ちっというレイ様の声を聞いて慌てて背中に抱え直す
「ふひぃ。危なかった。ん?
うへぇ、苦手筆頭のチューズ所長じゃ。」
心底嫌そうな顔をしてるのが想像できる声音だ
「ただ雑談を交わしていただけだ。」
「そんなところでぇ?ですか?謁見の間の真ん前ですが。雑談に興じるにはちょっと、どころかかなり不適切じゃあ、ありませんかねぇ。」
「…急を要する雑談だったんだ。ここじゃないとできない雑談だったんだ!必要な雑談だったんだ!!!」
それ雑談?
「それほんとに雑談なんですかねぇ?まぁいいです。わたくしは謁見の間に用があるのでそこ通して下さいな。」
うわ、なんかシンクロしちゃった。地味に嫌だ。
チューズ所長はそう言ってそそくさと謁見の間に入っていった。
「あやつ、まーたなんか変なものを開発したのかの?」
研究所は魔物の素材を利用して様々ななにかを日々開発している。魔物は死んでも能力によってはその性質が残っているので武器や防具にもなり得る。魔物の死体は余すことなく有効に扱える。…まぁ魔物の肉をたべたら死んじゃうけど。
「今度はどんなものなんでしょうね?」
前は、全てを絶対に貫く槍と全てを絶対に防ぐ盾を開発していた。
というか開発したものをあの王様に見せるのだろうか。
"もしかしたら比喩でもなんでもなく、血も涙もないのかもしれないっすね。"
不意にトラウィスの言葉がよぎる。
…今夜は眠れそうにない。
「じぃやーーーーー!!今回は上手くやれたかな!?」
「えぇ、ええ、少々言葉足らずな気はしますが王様にしては頑張りました。えらいですぞ!!」
「そうだよな!そうだよな!ふー
ほんと緊張するわー。ほんと序列5位が目の前とかまじ怖すぎ。」
まじであいつの顔超怖え。絶対1人は殺ってるよ。少なくとも殺ってるよ。
それにしても
「…なんだよ兵士のほとんどが死んだって。何言えばいんだよ。なんもいえねーよ。実際に戦場にいったわけでもねーのに。言えることなんて、なにもねぇよ。
…じぃや。死んだ兵士の家族にちゃんと伝えてくれよ。あんたの家族は立派でしたって。」
…………俺には、なにもできねぇ。
「は。了解しました。」
「あーあほんと世の中くそだわ。」
「しつれーい。おうさまー新作できましたよー。」
「まじで!?今いく!今すぐいくからちょっとまってろ!!!」