魔法に導かれた超戦士 作:冷輝
一話
「…………ここは」
どこだ、と言いたいが、声が出ない。記憶を辿ろうとしても、ぼんやりとし、はっきりと思い出せない。
(デバイスはある。良かった)
彼の命綱とも言える大事なデバイスがあるだけでも、安堵する。
それにしても、ここはどこだろうか。管理局ではないことは確かだ。管理局なら、温みのある何かは存在せず、無機質さを感じさせる。
ドアらしき物も、取っ手がついていることから、自動ドアではない。
ガチャ。ドアが開く。
「あ、良かった。目覚めたんだね」
君が助けてくれたのか? と、言おうとしたが、声が出ないことを思い出す。
「水、あるよ。飲む?」
こくりと、首を縦にふり頷く。今は飲みたい。感謝を伝えたいと思う。
久し振りに飲んだ水は美味しかった。水のありがたみを思い知らす。
「ありがとう」
今は感謝を伝えるだけで良いだろう。彼は判断する。
この少女が見付け、運んだのは別の誰かということもある。
「ちょっと、お兄ちゃん達呼んでくるから待っててね」
「うん」
いつも通りの愛想笑いで返す。
自分は助けられた身。相手を損ねるような真似は駄目だ。
*
彼らと接してみたが、自分が居た環境とは思えない程、綺麗で優しかった。あそこが土と例えるなら、ここは快晴か。
倒れていた怪しい自分。不思議なことに何もしなかった。ありがたかった。
これからどうするのか、と問いかけられたとき、言えなかった。ただ、一言。
「逃げただけだ」
言うのが精一杯だった。何もかも話したかったが、あの時の恐怖が蘇る。
全てから逃げた。父の死に直面した幼い頃、信じられずに引き籠もった。まだ、父の死を受けきれずにいる。
変わりゆく母が信じられず、何かに怒りをぶつけることもなく、母の傍に居た男共に震えていた。
クラスメイトに裏切られ、バカバカしくなってきた。
本にあるような、何かを解決したことはない。流され続け、結局、一方的な決別することしかできなかった。裏を返せば、それも、逃げたことだ。
嫌だ、と思いながら、口にすることはなく、でも、嫌で。どうにかしたくても、それをする術はない。
「そうなんだね」
察してくれ、それ以上言わないでくれたのが、良かった。
*
好意から、暫くはこの家に居ることにした。
今まで溜まった、疲労やストレスがここではない分、自分としては随分、ゆっくりな生活を送ることができている。
さすがに、何もしないというのは、嫌だったが、手足が自由に動けるまでは大人しくしていた。
「それで、アリサちゃんって、幽霊だけど、優しいんだ。今度、紹介するね」
「幽霊と友達か。これも凄いな」
とは言っても、僕と同じ同年代の少女の話を聞くことぐらいはできる。彼女にとって、何気ない日常の話でも、僕にとっては新鮮だ。特に、最近話題に出る、アリサちゃんという幽霊の話だ。イギリス生まれのIQ二百越えの天才児らしい。外れにある、廃ビルに居て、犯人を祟ったとか。
聞けば、霊力という力らしい。聞けば聞くほど、魔法とはほど遠い力だと分かる。特定の人物を祟る。体が透けている。物体をすり抜けることができる。尚、霊力が高ければ、自由に調節は可能らしい。
「後ね、運動は苦手でも、機械いじりやゲームが得意って言ったら、笑ったんだよ? しかもそれが、そうには見えないから!」
「うーん。確かに、そう見えないな。どちらかと言えば、読書家タイプ?」
「それも、よく言われるんだよねー」
量が少なく短い、ツインテールには活発な印象を与えるが、制服姿と白いカンカン帽を足すと、おとなしめに見える。良いとこのお嬢様の印象を与える(実際、お嬢様に近い)。
「あ、今度話してよ」
「それなら、質問形式で頼む。そっちの方が答えやすいから」
「そうだね」
*
彼らには、教えていなかった。
いや、そろそろ良いだろう。特に、あの少女の素質は、適応するデバイスさえ渡してしまえば、一流と同レベルの魔力になる。腕前は別としてだが。
とは言っても、これは仮の理由に過ぎない。本当は、巻き込みたくない。彼らみたいな、良い人を失いたくない。
少女の兄も、薄々気付いていたりはするだろう。だが、もう隠せなくなってしまった。まさか話すだけで覚悟を決めるとは、思いも寄らなかった。
「さて、と。それでは、教えてもらうよ」
尋問と近いような雰囲気を持つのは気のせいとは思えない。
「ああ。どこから話せばよいか分からないが、僕が居た世界について話す」
「やはり、そうか。調べてみたが、一致しなかったからな」
手始めに話すとしたら、管理局、魔法、魔導師だろう。
「僕の居た世界。ミッドチルダという世界は、地球に販売されているゲームの魔法とは違う、魔法が存在する。これは実際に見てもらった方が早い」
S2Uを起動し、非常用として使用する誘導型の魔法を出す。
「今、出したのは、非常用の灯りとして使用することが多い誘導型の魔法だ。それで、僕が持っている杖が、S2Uという名前のデバイスだ。デバイスは、魔導師にとって負担を軽減する便利な道具扱いだが、殆どの魔導師はデバイスを持つ。持っていれば、自分の身は守れるからな」
「……凄い」
「これ位なら、リンカーコア……MPみたいなものだ。リンカーコアがあり、習えば、誰でも出来るレベルだ」
「さっき言った魔導師は、魔法を使用する人のことを言うのか?」
「ああ。だが最初は、魔法を使用しても、正式に魔導師とは名乗れない。経験を積んでから、魔導師と名乗れる。大体、十五歳くらいだな。例外はあるが」
「例外?」
「……最近、犯罪が増加し、魔導師の平均年齢が、下がってきている。今では、素質さえあれば、デバイス渡して、魔導師だ」
「は?」
「魔導師を束ねているのが、管理局。ここで言う、警察、裁判、軍隊が一つになった巨大な組織だ。S2U。説明してくれ。言語を日本語に変えろ」
《了解》
本来ならストレージデバイスという、一般的に普及されているデバイスであり、僕の最後の誕生日プレゼント。父の旧友を名乗る青年が、ストレージからインテリジェントデバイスへと変えた。
《管理局の目的は、次元世界の平和維持です。ここで言う次元世界とは管理世界のことです》
「管理世界?」
《次元を移動する技術があり、それによって他の世界の存在を知り、かつ管理局に所属している世界のことです。地球は、条件を満たしていないため、管理外世界となります》
「実際、管理外世界ほど、良いのはない。他の世界を知らず、平和に生きてゆける。管理世界にならずにすむのだから。……この辺りも頼む」
《了解。管理局は多数の闇を抱えています。犯罪増加、魔導師不足、魔導師の年齢低下、魔法を使える、使えないかの違いによる差別など、キリがないほどです。もし、地球が管理世界となったのであれば、管理局に従わなければなりません。リンカーコアがある人は、即座に魔導師の道しか歩めません》
「だから、だ。因みに、地球は第九十七管理外世界だ」
《マスター。次は……ロストロギア検知しました》
「嘘だろ? 名前は何だ?」
《ジュエルシードです。場所はここから南です。ロストロギアというのは、失われた文明の発明物です。使い方を誤れば、一つの次元世界を滅ぼす危険な代物です》
こういう異常事態に、冷静過ぎる自分が今では恐ろしく見える。
《高町なのはを連れていきますか? 彼女に、レイジングエンジェルを渡せば、一気に殲滅できるかと》
「止めておけ。管理局にバレたらまずい。この時点でバレるかもしれないが。一人で対処できるレベルであれば良いんだが」
「クロノくん、私もいくよ。お兄ちゃん達から言われたんだ。絶対に、彼一人で抱え込むな、って」
「…………良いだろう。ただし、レイジングエンジェルの指示を聞け」
「ありがとう! クロノくん」
《マスター。惚れましたね》
(S2U。馬鹿なことを言うな! そして、聞こえるように言うな。恥ずかしくなる!)
二人以外空気!
現在の変更点
・S2Uがインテリ。
・主人公:クロノ・ハーヴェイ。ヒロイン:高町なのは。
・ユーノ登場しない。
・レイジングハート→レイジングエンジェル
・とらは3要素あり。