常識人は衰退しました   作:makky

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(・ワ・)いちわでおわるといったな、あれはうそだ
(・ワ・)しゅうがくりょこうへんでこのぶんりょう、まほらさいがいまからしんぱいです
(・ワ・)つぎこそしめられるといいななのです


だいじゅうよんわのように

 (ただの西洋魔法使い、というわけではなさそうだな)

 

 白髪の少年が繰り出す石化の魔法を避けながら、エヴァンジェリンは思料する

 

 近衛を攫うのは協会会長の詠春に対する牽制のため、と当初は考えていたがどうやらそう単純な話ではないようだ

 

 (ここを襲えるだけの力があるならば、初めからそうすればいい…だが奴らの目的は近衛の身柄…洗脳して傀儡にでもする気か?)

 

 関西呪術協会の乗っ取り、膨大な魔力を持つ近衛を傀儡のトップとして関東魔術協会と対峙する

 一応筋は通っているがどうにも根拠が薄い、それにまどろっこしいやり方だ

 

 (あるいは、近衛の魔力のみが目的か)

 

 膨大な魔力を必要とする魔法は枚挙に暇がない、実際エヴァンジェリンが使う魔法にも存在している

 近衛の持つ魔力ならば大半の大型魔法は発動させられるだろう

 それに――

 

 (召喚術に使われれば…手に負えんものを呼ばれかねんな)

 

 京都1,200年の歴史の中で、血に塗れた遺物や封じられた妖魔も挙げればキリがない

 そのどれか1つでも呼び出されれば、被害は京都をはるかに超えて日本全土に広がるだろう

 

 「くっ、申し訳ありませんエヴァンジェリン…」

 「抵抗(レジスト)が間に合っていない、か…すまん詠春、私にはどうすることも」

 「いいえ、むしろあなたが無事でよかった…」

 

 少しずつ石化していく詠春、少年は初手で無差別に石化呪文を放ち運悪くその一つが当たってしまっていた

 

 「サムライマスターを無力化できたのは運がよかったと言えるだろうね、できればこのままあなたも無力化されて欲しいけれど」

 「あいにくとそこまでサービス精神旺盛ではないのでな小僧」

 

 次々と魔法――どうやら水系統の魔法を中心に放ってくる少年と、詠春を庇いながら戦うエヴァンジェリン

 経験の差で今のところエヴァンジェリン優勢だがこのままではらちが明かない

 

 「エヴァンジェリンどうか、このかのところに…」

 「行きたいのは山々だが、どうやらこいつは私をここに釘付けにしておきたいようだ」

 

 おそらくここに侵入したのはこの小僧だけではないだろう、シネマ村に現れたというリーダー格の女が何もしないとは考えにくいからだ

 こちらで派手に暴れさせている間に、裏から近衛を攫おうとしていても不思議ではない

 

 「…どうやら限界のようです、すいませんエヴァンジェリン、このかを頼み…ま…す…」

 「あぁ、あとは任せておけ詠春」

 

 それまで必死に抵抗していた詠春だったが、ついに全身が石になってしまった

 最後まで娘の身を案じた詠春を一瞥し、少年に向き合うエヴァンジェリン

 平和ボケしていたとはいえ、関西呪術協会の長の抵抗をたやすく打ち破る技量を持った魔法使いの存在

 この事件がどれほど大規模なものになるのか――

 

 「…まぁいい」

 

 チャチャゼロのフェイントに対応した少年の懐に素早く潜り込み、思い切り蹴り飛ばしてエヴァンジェリンは呟く

 

 「こいつを捕まえてすべて吐かせればいいだけの事だ、裏に何があるかなど興味もないな」

 「トカ言ッテルガ御主人、ココノ長カラサウザンドマスターノ話聞キソビレタノ根ニ持ッテンダロ」

 「な?!んなわけあるか!!そんなしょうもないことで八つ当たりするわけないだろうが!!」

 「アイツニハ似タヨウナコトシテタジャネェカ」

 

 ぐぬぬと言い返せなくなるエヴァンジェリンを、従者のチャチャゼロはケタケタ笑いながら揶揄う

 

 「…一応こっちはまじめに戦っているつもりなんだけどね」

 「ふん、坊やより腕が立つのは認めてやるが年季が違うんだよ小僧」

 

 体の所々に傷を負いながらも、白髪の少年は戦う意思を失っていない

 

 「さっさと仕留めておきたいというのにすべてずらされる、()()()()使()()()()()()()()()()()()()()

 「吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)にそう言ってもらえるとは光栄だね」

 

 致命傷にならずともまともに受ければ行動不能は間逃れない攻撃のすべてを、目の前の少年は凌ぎ切っていた

 名無しの魔法使いができる芸当ではない

 それに――

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()のも興味深いな」

 「…見透かされるとは思っていたけど、初めからかい?」

 「当然だろう、私の2つ名が他に何かを貴様も知っているだろう?」

 

 人形使い(ドールマスター)の彼女からしてみれば、目の前の少年の異質さは嫌というほど伝わってくる

 しかしこれほど高度な幻像(イリュージョン)を使いこなすような魔法使いに、エヴァンジェリンは心当たりがなかった

 

 (長く学園に閉じ込められていたとは言え、こいつの事は全く耳に入らなかった…タカミチかじじいあたりが知っていれば話すはずだが…)

 

 それがなかったということは学園上層部、ひいては魔法界全体でも名の知れない存在ということになる

 

 (向こう(魔法世界)から来た新米魔法使いか?ヤツの目的次第だが可能性はそちらの方が高いか…だが)

 

 どうにもこいつの裏にはもっと大きな何かがあるように思えてならない、かつて世界中の魔法使いたちから追われていたエヴァンジェリンの本能がそう訴えかける

 

 「…本気で僕を止めようとするなら、もっと威力のある魔法を使えばいい。けれども今のところ1度も使っていないのを見ると…この場所に損害を与えることを避けているようだね」

 「……」

 「聞いていた人物像よりもだいぶ人間味があるけれど、こちらとしては好都合だったよ」

 「…まるで私を出し抜ける自信があるとでも言いたげだな」

 「まさか、この体ではどうあがいても、あなたに勝つどころか傷を負わせるのも困難だろうね」

 

 ――だから、勝ち逃げさせてもらうよ

 

 瞬間あたり一面を覆う石化魔法

 

 目くらましかっ!!

 

 とっさに少年のいた場所に氷柱を飛ばすが――

 

 「…一手遅かったか」

 

 その場には小さな水たまりが残るだけであった

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 「大分手を焼いたけれども、ようやくこのかお嬢様を確保できましたわ」

 

 本山に程近い川縁で事件の首謀者天ヶ崎千草は、使い魔である熊に近衛木乃香を抱えさせそう言った

 

 

 

 新入りに吸血鬼の相手をさせているうちに、近衛木乃香がいる大浴場へと侵入した千草

 そこには数日前自身を妨害してきたツインテールの少女もいた

 

 死角から使い魔に襲わせたものの信じられない速度で反応され、前回同様使い魔は消し飛ばされてしまった

 

 『またアンタね!木乃香は渡さないわよ!』

 

 剣――ではなく特大ハリセンを構え木乃香を守ろうとする明日菜

 

 『残念やけど、あんたには眠っていてもらいますわ』

 

 新入りの石化魔法とやらを拝借して、札に込めた術を発動させる

 

 『アスナー!』

 

 煙に身を包まれ服が少しずつ石化していく明日菜を呼ぶ木乃香、これで勝負は――

 

 『あれま?』

 『やあん!なによこれー!』

 

 ――服だけが石化し何故か全裸になっただけで、普通に動ける明日菜がいた

 

 『なんや?利きが悪かったんか?いやどちらかというと…ま、ええか』

 

 塞ぎ込んでいる明日菜をしり目に、大型の使い魔に木乃香を攫わせてその場から離脱させる

 

 『ま、待ちなさい!!』

 

 何とか立ち直り、木乃香を取り戻そうとする明日菜だったが

 

 『水妖陣』

 

 新しい札を取り出し発動させると湯船から大量の腕が伸び――

 

 『ぎゃはははは!!』

 

 なぜかくすぐりだしてしまったのである

 

 『うーん使い魔がきれいに消えてしもたんのも合わせると、抵抗というより無効化やろか』

 『なにのんきに考察してんのよー!止めなさいよこれ!』

 

 面倒なお目付け役やなぁと思いつつも、目標を達成した千草は笑い続けている明日菜をしり目に額に通信用の札をかざす

 

 『新入り、こっちは終わったからそっちも上手い具合に離脱しぃや』

 

 なかなか無茶な指示を出しつつも、さらに札を取り出し協会本部を後にする

 

 『ちぃとは時間稼ぎになるやろ、あの吸血鬼相手にどこまで持つかは分らんけどな』

 

 呪文を唱えハラリと札を落とす――

 

 ――巨大な結界が一帯を覆ったのは一瞬後の事であった

 

 

 

 

 「驚きました、僕の石化魔法以外にも切り札を準備していたんですね」

 「急ごしらえやけどな、何体か使い魔も置いて来とるし多少の時間稼ぎにはなるはずや」

 

 例の吸血鬼がおらんければ新入りにも無茶させんで済んだかもしれんのになぁ、と少年を心配しながら千草は言う

 

 「言うてあんまり猶予はないで新入り、余計な邪魔が入る前にこのかお嬢様を祭壇まで「待て!!」…ん?」

 「…どうやら思った以上に早く対応されたようですね」

 「せやけど例の吸血鬼はおらんようやな、まずまずといったところや」

 

 声のした方を見れば結界に閉じ込めておいたはずの魔法使い――ネギと木乃香の護衛刹那・明日菜が走りこんできた

 

 「そこまでだ!!お嬢様を放せ!!」

 「…あんたらもだいぶしつこいなぁ」

 「天ヶ崎千草!!明日の朝にはお前を捕らえに応援が来るぞ!!無駄な抵抗はやめ投降するがいい!!」

 「ふふん…そうせかさんとウチは逃げも隠れもせんで」

 

 

 「どうせ朝までには全部終わっとるしな」

 「できればアンタらに痛い目見てほしくはないんやけど、仕方あらへん」

 「これもウチの悲願のためや」

 「このかお嬢様の力、存分に味わってもらうで」

 

 木乃香の額に札を張り呪文を唱える

 

 木乃香が光りだし周りに召喚陣が現れ――

 

 

 「さぁ――本物の百鬼夜行と行きましょか」

 

 

 無数の鬼を従えて天ヶ崎千草は狂気の笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 事態は刻一刻と悪化していった

 100体を超す鬼を足止めに残し、天ヶ崎千草たちは木乃香をどこかに連れ去ってしまった

 

 エヴァンジェリンは協会本部に残っていた使い魔残党を処理すると言い残し、結界に大穴を開けてネギたちを外に出したためしばらく到着することはない

 つまり現状――この3人と1匹で危機を乗り切らなければいけないのだ

 

 「…『2手に分かれる』、これしかありません」

 

 取り囲む鬼の目をくらませるためにネギが発動した障壁の中で、刹那はそう言った

 

 「私が1人でここに残り鬼達を引き付けます、その間にお2人はお嬢様を追ってください」

 「えぇっ!」

 「そんな刹那さんっ!」

 「任せてください、ああいう化け物を退治調伏するのが元々の私の仕事ですから」

 

 そう言う刹那だったがどう見ても多勢に無勢でしかない、自殺行為なのはネギたちも分かりきっていた

 

 話し合いの末召喚された鬼達を送り返せるアーティファクト『ハマノツルギ』を持つ明日菜も残り、ネギとカモミールが木乃香救出に向かうこととなった

 そして勝率を少しでも上げるため、カモミールはさらなる一手を打った

 

 仮契約(パクティオー)――明日菜・のどかに続いて(一応木乃香とも中途半端な仮契約はしているが)3人目の仮契約者となった

 

 天ヶ崎千草の野望を阻止し、木乃香を救い出すために

 

 ネギ・スプリングフィールドは使い魔カモミール・アルベールとともに飛び出していった

 

 戦いの終わりは近い――




(・ワ・)きょうはいりゅうぶつしょうかいこーなーはおやすみです
(・ワ・)そもそもにんげんさんいちどもでてこなかったですな
(・ワ・)われわれのでばんもぜろでした、じかいにきたい
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