(・ワ・)えつらんすうもすごいことになってるです
(・ワ・)・・・・・・
(・ワ・)こうしんしなければようせいがすたるというものです
(・ワ・)というわけでこうしんです
だいごわですよ
『キーンコーンカーンコーン…』
「3年!A組!!」
「「「ネギ先生ーっ♡」」」
新年度開始早々喧しい…失礼、騒々しい挨拶から始まったうちのクラス
教卓には正式に担任となったネギ先生が、照れくさそうに頭をかいている
「えと…改めまして、3年A組担任になりました、ネギ・スプリングフィールドです。これから来年の3月までの一年間、よろしくお願いします」
「はーい!よろしくー♡」
とりあえず特に問題なく新学年は始まった
しかし今年度は修学旅行という大きな行事もあるが、新任の先生に任せて大丈夫なのだろうか
そうでなくてもこのクラスは色々とやらかす未来が見えるが
しかし、どうにも嫌な予感がする
そういった遺留物はつけていないが、なんだか想定外のことが起こりそうな予感がして仕方がない
そんな風に考えていると、教室にしずな先生がノックをして入ってくる
「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3-Aのみんなもすぐ準備してくださいね」
「あ、そうでした!ここでですか!?わかりましたしずな先生!」
…一応担任なんだから、そこは把握していて欲しかったなぁ
「で、では皆さん、身体測定ですので…えと、あのっ、今すぐ脱いで準備してください!」
そしてテンパると突拍子もないこと言いだすのもやめてほしい
「ネギ先生のエッチ~~ッ♡」
「うわ~ん!」
『間違えました!』と言って慌てて出ていく先生を確認すると、クラスメートたちは準備を始める
「ネギ君からかうとホント面白いよねー♡」
「この一年間楽しくなりそーね」
…一応担任なんだから、そういうことはやめてやれ
「あれー?今日まきちゃんは?」
「…さあ?」
「まき絵は今日身体測定アルから、ズル休みしたと違うか?」
「まき絵胸ぺったんこだからねー」
「お姉ちゃん言ってて悲しくないですか?」
なんて言う話が聞こえてくる
そういえば佐々木まき絵が来ていない
元気が取り柄のあいつが珍しい
体重測定で大騒ぎしていると
「ねえねえところでさ、最近寮ではやっている…あのウワサどう思う?」
「え…なによソレ柿崎」
「ああ、あの『桜通りの吸血鬼』ね」
少々気になる話題が聞こえてきたので、ちょっと聞き耳を立てる
「しばらく前からある噂だけど…何かねー満月の夜になると出るんだって、寮の桜並木に――」
――まっ黒なボロ布に包まれた…血まみれの吸血鬼が…
まほらチアリーディング兼コーラス部の柿崎美砂のその言葉に、あるものは怯え、あるものは興味深そうにうなずき、あるものはデタラメだと切り捨てた
「――そのとおりだな神楽坂明日菜」
そんな大騒ぎの教室に、めったに聞かれない声が流れる
「ウワサの吸血鬼はお前のようなイキのいい女が好きらしい、十分気をつけることだ…」
「え…!?あ…はぁ」
ありゃーエヴァちゃんから話しかけるなんて珍しーという声が聞かれるが、確かに珍しい
普段は教室でひじついているか、そもそも教室にいないかのどちらかなのだが
すると廊下が騒がしくなる、廊下側にいたメンバーが突然窓と扉を開けた
下着姿のままでだ
「…なにやってんだあいつら」
いくら女子校だからってもうちょい気にしろよ…
しかし『桜通りの吸血鬼』ねぇ
該当者一名、ついでにお供が一体
しかもうれしいことにどっちもうちのクラスメイトときたもんだ
これは笑えるな、はっはっは
…ず、頭痛がする
ほぼ間違いない、今しがた話題に上がった「桜通りの吸血鬼」はあいつに違いない
動機は分かんねぇが、ろくでもないことに違いない
触らぬ神に…この場合鬼か、祟りなし
この件は知らぬ存ぜぬで押し通す
平穏無事が一番だ
――――――――――――――――――――
そう思っていた自分を思いっきり殴ってやりたくなった
「どうした?まさかもう諦めたわけじゃないだろうな?」
立ちふさがるように、黒いローブを身にまとったそいつは言った
「…万事休すだなこれは」
「あうぅ…」
背後で震えているクラスメイト――宮崎のどかが小さく唸る
「何もしてこないのなら…その血、頂くとしようか」
冷や汗が全身から吹き出てくる
今まで遠目から非常識を見てきた
だが今のように、目と鼻の先にまで近づいてきたことはなかった
挽回策を必死に考えながら、こうなってしまった経緯を思い返していた
――――――――――――――――――――
「やべぇ…新しいお菓子の本探していたらこんな時間になっちまった」
すっかり日が落ち夜空には満月が覗いていた
早く帰んねーと門限に引っかかっちまう
と思って桜並木の街道――桜通りを小走りで進む
「吸血鬼…吸血鬼か…」
後々話を聞くと、あの時クラスメイトが騒いだのは佐々木まき絵が桜通りで倒れて見つかったからだそうだ
ネギ先生は貧血だろうと言ったらしいが
「本当に血を吸ってるのか…?」
だがそうすると吸血鬼による実害が出たことになる
昨日の今日だから、すぐには動かないだろうが学園も何かしらの対策をとる
…はずだ
さすがに動かないなんてことはないだろう、と考えながら走っていたせいか
「おぉあ?!」
「きゃ…!」
目の前を歩いていた誰かに危うくぶつかりそうになる
「す、すみませんちゃんと前を見ていなくて…って宮崎じゃねーか」
「ふぇっ…は、長谷川さんでしたか…あふぅ」
「いや人の顔見て脱力されても困るんだが」
「す、すみません…てっきり吸血鬼さんかと…」
なんだよ吸血鬼「さん」って
「つーかいつのもメンバーはどうしたんだよ一体」
「えっと…用事があるから私だけ先に…」
「おぉう…そうか…」
気が弱そうなんだがこういうところはアグレッシブだなおい
「まあ分かった、どうせ一緒の道だから一緒に――」
ザァァァっと、風が桜通りを吹き抜けていく
「――ほう」
背後から、声がする
幼さを残しながら、威厳を含んだ冷酷な声
後ろをゆっくりと見てみれば――
「――25番長谷川千雨」
ああ――
「27番宮崎のどかか…」
本当に今日は――
「悪いが少しだけ、その血を分けてもらおうか」
最悪の厄日だぜクソが!!
「――走れ宮崎!!」
「…ふぇ?!」
呆けていた宮崎の手を引いて走り出す
(不味いっ…このタイミングで来られるとはっ!!)
甘かった、昨日の今日だからと油断していた!
無理をしてでも早く帰るべきだった!
(考えろ!考えろ!考えろ!いつもと違う、宮崎も一緒に逃げられる方法を!)
「鬼ごっこか?生憎と――」
後ろから聞こえてくる声をひたすら無視しながら走り続けるが
「付き合ってやる気はないのでな!」
バサッと何かが羽ばたくような音がする
「は、長谷川さーん!あ、あの人と、飛んできてますよー!」
「んなっ?!」
宮崎がそう叫ぶので首だけ回してみてみると――
飛んでいる
黒いローブをまといながら、確かに飛んでいた
――その一瞬のスキが、命取りとなったのだろう
「――油断大敵だぞ?」
「は?…ってうぉあああ?!」
至近距離から声が聞こえたと思ったら真横に黒ローブがいて転ばされた
何言ってるのかわからねぇと思うが、何をされたのかは分かった
そして転んだことで完全に逃げられなくなったことも――
「さて――」
黒ローブはあたしたち2人の目の前に立って
「――チェックメイト、というやつだ」
黒い帽子の下から嗤いを覗かせた――
――――――――――――――――――――
人気のない桜通りで、あたしたちは絶体絶命のピンチを迎えていた
(どうする!使えそうな遺留物はない!どうする…どうする!)
「手古摺らせてくれるなよ?私も余裕はないのでな」
そう言いながら近づいてくる黒ローブ、後ろの宮崎が顔を伏せる
――せめて宮崎だけでも…!
(にんげんさんおなやみですか?)
そう決心しようとしたところに気の抜けた声が聞こえてくる
…そうだ!
(ああそうだ!頼む!宮崎を助けられる遺留物を――)
(そういうことでしたら)
(おまかせあれ)
(ついでににんげんさんもたすけてやるです)
お、おう…ついででもなんでもいいから頼む
(ひさかたぶりのしんどうぐ~)
(われわれのどうぐ、おやくだち)
(さしあげさしあげ)
そう言ってするりとあたしの左手にそれを出してきた
六角形の柱のようなキーホルダーサイズの――
(っておいこれどっかで触ったことあんぞ)
具体的に言うと、特にこれといって面白みのないお土産店のキーホルダーコーナーで
(小さなおみくじキーホルダーじゃねーか触った感じ)
(おーさすがにんげんさん)
(さわっただけでわかるとはさすがです)
(いいから!使い方の説明!)
今褒められてもうれしくねぇんだよ!
(ちいさなおみくじ『くるくるみくじ』)
(ふればくるくるふくがくる)
(だいきち・ちゅうきち・きちにしょうきち)
(でももしかしたらうれしくないかも)
(きょうにだいきょう)
(ひいたものが)
(にんげんさんのしあわせです?)
…待て、おい待て
(ハズレ付きかよ!?選りにも選って?!)
(すりるはひつようですので)
(さいきんのこどもたちはぬるまゆにつかりすぎです)
(かつのがあたりまえなじんせいは、そんざいしないというのに)
現代社会に嘆いている場合か!!
(…万が一凶とか大凶引いたらどうなるんだよ?)
(0えふにかぎりなくちかいじょうたいをそうぞうしていただければ)
(ふざけんじゃねぇ!!)
「神への懺悔は終わったか?」
なんてバカやってるとすでに黒ローブが目の前にまで来ていた
(…えぇい!一か八かだ!!)
左手に持ったそれを3振りほど上下させる
すると中から一本おみくじが出てきた
(大吉なんて贅沢は言わねぇ…せめて小吉以上を…!)
伸びてきた手から逃げるように、あたしは目を瞑った
あたしの賭けの結果は――
「――
この場に乱入してきた、どことなく頼りなかった新担任によってはっきりとした
(か、勝った…!)
左手におさまった遺留物から覗く『吉』の字が、それを指し示す
「
――満ちる月下の大通りで
今、二人の
「くるくるみくじ」
お土産屋さんあたりで時々見かけるキーホルダーサイズのおみくじ型の遺留物
三回振るとおみくじが一つだけ出てくる
その結果によって振った本人の運勢が大きく左右される
ちなみに大吉は童話災害一歩手前くらいの幸運が降ってくる
半面大凶は0F一歩手前くらいの悪運が降ってくる