一撃男の異世界旅行記   作:鉋なんか

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護国機神

 

 

 

 

 

 

少年は階段を登る。

 

 

自身の身長にそぐわないほど長いマントを引きずりながら、ブカブカの帽子を被っている。少年が両手に持っているものは巨大な鍵だ。大の大人の握り拳よりも大きい深紅の宝石とこの世界で最も希少とされる鉱石で造られ、造形こそシンプルであるがこの世界で1、2を争う最高品だろう、現金にしたら山脈のような数の金貨と交換になるだろう。

 

しかし、これは鍵である。

 

 

 

 

鍵であるのだから何かを開ける為のものだ

 

 

 

少年は階段を登り終え、目の前にある巨大な鍵穴に鍵を差し込む。

 

 

 

そうこの鍵は

 

 

 

 

 

この世界、最強にして最高の兵器の封印を解く鍵である。

 

 

 

 

 

 

 

 

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XXII

 

 

 

 

 

ウェイブは地割れの中から這い出て来た男に目を奪われる。

 

先ほどの雷の直撃を受けてか、着ていたジャージは焼かれたのだろうか、その服の下に隠された肉体が泥だらけではあったがあらわになっている。腰には見覚えのあるマントを巻きつけそれ以外の衣服は一切着ていなかった。

 

 

そして、何より一番驚いたこと、それは

 

 

 

 

「うわー、服なくなっちまったな。とりあえず今はこれ、腰にまいとけばいっか。つうか痒いな」

 

 

 

 

 

そんな事を呟きながら目の前の男は体の至る所についた砂埃を手で払う。どこもかしこも汚れてはいるが、火傷や擦り傷などの外傷は一切見えなかった。それどころか「なんか、体軽くなったきがするな」などと言う始末。

 

 

 

(どうすればいい、考えろ!まず俺が一人で突っ走っても一撃で吹き飛ばされるだけ。さっきの衝撃波でブドー将軍は、もう戦えるような状況じゃない。となると、俺とトラフジさんだけでこの男をなんとかしないと。だがどうやって?)

 

ウェイブは数秒にも満たない時間の中で考える。

 

一気に距離を詰めて、正面から一撃を食らわせる?

いやだめだ、一撃当てたとしてもカウンターの一撃でまた空に吹き飛ばされる。

なら一気に距離を詰め、あえて攻撃させ直ぐに避けてカウンターを食らわせるのはどうだ?

これもだめだ、あの男の拳は人間が避けられるスピードではない、それに男の拳は 一撃でも食らえばお空のお星様になりかねない。

なら男の目の前で大地を勢いよく踏みつけて、砂埃を起こし視界を奪い背後から攻撃を仕掛けるのはどうだろうか?

これもだめだ、砂埃のせいでこちらの視界も奪いかねなし、それにそんな砂埃、やつの拳一振りで吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ええい、ままよ」

 

ウェイブは考えるのをやめ、大地を強く踏みしめると、空高く飛び上がった。

高さにして約30メートルに達すると、ウェイブの体は重力に従って落下しはじめた。

 

 

「トラフジさん!」

 

「最大重力‼︎」

 

 

ウェイブはサイタマの動きを封じる為にトラフジに頼む。トラフジはブドーの攻撃を受けてなおかつ無事なサイタマに対して自分が使える最も強い重力をかけ、動きを封じる。どんな危険種であろうと泡を吐いて白目をむき、大地に倒れ伏し、超級の危険種でも一撃で死ぬほどの重力を浴びせる。

 

しかし、体の泥をはたき落しているサイタマにはその重力を浴びて、地面に倒れ伏す様子は一切見られなかった。

 

 

ウェイブはグランシャリオの力を使い加速し、一気に落下し、蹴りの体制に入る。

 

 

ウェイブはサイタマに目を向ける、未だ体についた砂を落としているのに集中して、こちらの様子伺う素振りはない。

 

 

(罠?いや、違う俺の攻撃なんて意味がない、と見せつけたいのか?)

 

ウェイブはこのまま行っていいのか考える、しかし考えている間にも男との距離は縮まるばかりだ、このまま行けば確実に男の顔面に決まる。嫌な汗がわきでる。

 

 

(いや、だめだ。何を弱気になったんだ俺!)

 

ウェイブは一瞬目を閉じる、そしてこのまま決める事にする。おそらく、多分、絶対に止められるだろうが、そんな事は気にしない。全力でこの男を倒すだけ。

 

母ちゃん、爺ちゃんごめんな。俺、帰れそうにないわ。でも俺は最期の時まで帝国の為に戦ったんだぜ。

 

 

覚悟を決めて目を開く

 

そこには、未だ身体中の砂を落としている男の姿はなく

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な握り拳に掴まれた男が目の前に迫っていた。

 

「は?」

 

ウェイブはそう呟くと、未だ迫る巨大な握り拳に勢いよく吹き飛ばされ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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XXIII

 

 

 

 

 

 

帝都 宮殿最上階 展望台

 

本来であれば、その場所は皇帝が帝都を一望する為に作らせたものであり、臣下が私用で立ち入ってはならない場所である。そんな場所にやつ───この国の腐敗の原因、オネスト大臣はいた。

 

豪華絢爛で尚且つ自分の体重を支えることのできる頑丈な椅子に深く腰を下ろし、右手に持つ──遠くから見れば棍棒を持っているのではないかと錯覚してしまうほど巨大な───ローストチキンを頬張っていた。

 

 

そして目の前で繰り広げられる圧倒的、蹂躙を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

サイタマは地面から生えてきた手になすすべなく掴まれた。そして勢いよく空に放り投げられると、幾多もの爆撃がその身を襲った。

 

 

帝国最強の超兵器と呼ばれる帝具の中で随一の力を持ち、始皇帝の血を引くものにしか使うことのできない最強の帝具

 

護国機神“シコウテイザー”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くっっっく、ぶっホォ!イッヒヒヒヒwwwwwwwwww。ああ可笑しい、吹っ飛んだ吹っ飛んだwwww為すすべなく、吹っ飛んだ、あーヤバイ、腹が、腹がよじれるwwww 」

 

大臣は笑いながらもまた一口、その大きい口でローストチキンを頬張る。そしてズキリとした痛みが頬に走り、男に叩かれやっと腫れが治り始めた頬を撫でる。

ジュクジュクとした痛みが未だ頬にはあり、先ほどまでの笑みが嘘のように消え、今度はぎりっとした表情を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シコウテイザーの至る所から発せられる何千何万発とい小型ミサイルの爆撃を受け、サイタマは重力に従って落下していく。

 

しかしシコウテイザーはその落下を許さない。

 

サイタマの数百倍はあろう巨大な拳を握りしめ、サイタマが正面に来た瞬間、正拳を食らわせる。シコウテイザーのその拳はスタイリッシュがプログラミングした何万人もの達人級の武道家たちの正拳を完璧に再現したものであり、その威力は凄まじいもので殴られたサイタマは音を置き去りにし帝都の遥か北に吹き飛んでいった。

 

 

 

 

しかし、サイタマは直ぐに帝都へ戻ってくることとなった。

 

ドロテアがシコウテイザーに施した自動展開型魔術の1つが発動した。正拳がサイタマの命中した瞬間、不気味な魔法陣を展開し、そこから現れた黒い人の腕を象ったタールのようなものがサイタマの体には巻きついてた。巻きついた黒い腕はどこまでも伸び地平線の先まで勢いよく吹き飛ばされたサイタマの勢いを少しずつ減らし、伸びきったゴムが戻るかのように、音を置き去りにして帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だ目の前で行われている惨劇を受けている男のせいで普段であれば十分に楽しめていた食事がここ何日か苦痛を伴うものとなっていたからだ。食事だけではない、ここ何日も自分がしなければならない書類仕事に追われ自由な時間が奪われた。それに捕まった役人、武官文官、政務官の中には少し拷問をされただけで自分との関係をポロっと口にするような不届きものいて、そいつらを優先的に例の被験体にするよう手配した。

 

 

「まったく、苦労しましたよ。私を大臣の座から引きずり降ろそうとする文官の目を掻い潜り、一気に増えた犯罪者たちを密かに、それでいて大量に宮殿へ運び込むのは」

 

 

 

 

しかし、目の前に広がる自分の駒が繰り広げる殺戮ショーを眺め、再び笑みを浮かべる。ドゴォン、バゴォン、ズドォンという、従来では考えられないほどの巨大な音が響くごとに煮えくり返っていたハラワタが少しずつであるが収まり、時々見える爆風や閃光と、いとも容易く破壊される街並みが自分の手に入れたものの大きさを実感させた。

 

 

「まったく、招集した帝具使いどもはまったくもって役に立たないとは情けない。仮にも帝国の帝具使いを名乗るのであればもっと強くあってもらわなければ」

 

ローストチキンを骨まで食べ終えたオネストはテーブルの上に置いてあるもう一本のローストチキンを掴み、そのまま口へ運ぶ。

 

 

「ブドー大将軍がいなくなったのは良いとして、あのエスデス将軍率いる三獣士がこうも簡単にやられるとは、誤算でしたが」

 

大臣は少し眉を細める しかし、細めるだけだ。

エスデスとは互いの利害関係が一致しただけの関係で馴れ合うつもりなどさらさらない。いなくなってしまえば代わりを探すのに少し苦労をするだけ、代わりが見つからない訳ではない。

 

 

一際巨大な閃光がほとばしり、周囲に巨大な突風を巻き起こす。

 

 

それにエスデスの代わりとなるには十分な戦力は手に入った、いやエスデス以上と言ってもいい。

 

 

流石、帝国随一の科学者と西国一の錬金術師、あれだけガタついていた巨大兵器をこうも改良を施すとは。私の想像を遥かに超える代物を作ってくれたものだ、まったくもって素晴らしい。

この処刑が終わり、反乱分子や革命軍(ゴミ)を一掃したら、2人には手厚い支援をしよう。

 

 

 

ローストチキンの骨をバリボリといった心地よい音を立てながら噛み砕き、ふと思った。なぜあの2人は未だ来ないのだろうか?

 

シャワーを浴びたら直ぐに来ると言っていた2人。スタイリッシュの性格からいって、過去最高傑作と謳ったコレの実践など何を差し置いてでも見たいものであろう。ドロテアでさえ、食事の時間を忘れて、体が老化するのに気がつかないほど没頭し、遂に完成したコレが動くのを開発者の1人として是が非でも見たいものであろう

 

 

ではなぜ2人は来ないのだ?

 

 

 

大臣はそれについて考えるのをやめた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、正確には

 

 

自分の視界が急に暗くなり、血生臭くぬるぬるとした世界へと一瞬にして放り込まれた事に思考をうつしたのだ

 

 

そして数秒も経たずに大臣は、四肢を裂かれ、身動き1つ取れない状態へ陥り、確実に溶かされていった。

 

 

 

 

 

 

『コレデ、イイ』

 

 

 

『アトハ、アイツヲ、コロスダケ』

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイタマは腰に巻きつけていたマントをなんとか外れないように縛ると、先ほどまで自分を一方的に殴っていた巨大兵器に目を向けた。

 

 

先ほどまではあまりの猛攻ゆえ、落ちそうになったマントをしっかりと縛ることはできなかったが今は違う、絶対にこのマントは落ちない。そう確信したからこそ、目の前の巨大兵器に目を向けることができるのだ。

 

 

 

 

 

いや、訂正しよう

 

 

 

巨大怪人だ

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまでのシコウテイザーの姿は甲冑をその身に纏い、真紅のマントを羽織っており、胸の中央部分にある巨大な目玉を除けば、威厳ある皇帝、もしくは軽装備の将軍だろう。

 

 

 

 

甲冑箇所が所々剥がれ落ち、その下に隠された人の体で言うところの筋肉のような部分があらわになった。

 

甲冑の内側にあった人のような部分は膨らんでおり。周囲に高温の蒸気を発し、その姿は異常で メギッ バギッ と言ったオルゴールを巻きすぎた時に聞こえるような音が鳴り響く。

一際でかい音が胴体と両肩、膝の部分から聞こえ、その部分にあった甲冑が一気に弾け飛び宙に舞う、そして甲冑のあった場所には巨大な目玉がそれぞれあった。

 

ずりゅずりゅとなにかを引き抜くかのような気持ちの悪い湿った音が不快感を与え、その音の発生源である巨大な尻尾が姿を現した。

 

所々機械の名残を残す箇所もあるが鋭利で長い爪、肉を切り裂き細切りにする牙、ギョロリとサイタマの方を凝視する7つの目玉、今にも襲いかかってきそうなほどの前屈みの姿勢、そして狂気に満ちたオーラ。

 

 

そう、巨大な怪人の姿にシコウテイザーはその姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイタマはシコウテイザーの事をよく見ていなかった為、シコウテイザーは器械(巨大兵器)だと思っていた。しかし先ほどまでそれがあった場所には、そんな兵器のようなものはなく巨大怪人が咆哮を上げていたところだった。

 

「あれ?怪人だったっけ、……まいっか」

 

そう呟き足に力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

ミサイル発射管を全て開く。

 

 

 

人で言うところの肩甲骨と背骨の部分にある発射管は左右200門。

そこからシコウテイザーに内蔵されている全てのミサイルが発射する。

 

 

 

音速の速さを持って敵に突っ込んで行くもの。

空中を飛行しながら龍に似た異形の化け物に変化するもの。

ある一定の割合で混ぜると黄金ですら溶かしてしまう液体を魔導の力で無理やり隔離し、目標の手前で合成される工夫が凝らされたもの。

飛行中に発光し、雷、炎、酸、冷気などを帯び加速するもの。

飛行中に分裂し、小型のミサイルとなって再度敵に向かっていくもの。

どろっとした敵の動きを封じる為だけに造られた液体の入ったもの。

ある一定の生物が嫌いな周波数の音を半永久的に発するもの。

上空から一気に落下し途中破片となり、鉄の雨を降らせるもの。

目標の近くになると、紫やピンク、深緑などと言った毒ガスを撒き散らすもの。

 

 

 

種類にして50は下らない数のミサイルが合計400門の発射管から数十万発放った。

 

 

 

 

 

あるものは殴り飛ばされ、あるものは蹴り飛ばされ、またあるものは地面に叩き落とされ、またあるものは蹴り返される。とある科学者があまりに優秀すぎたせいか、数十万発のミサイルは一発も漏らすことなく対象に向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

真っ黒な闇を孕んだ巨大な高エネルギーの塊を放つ

 

一撃で山脈を崩し、湾を干上がらせ、天候を変え、巨大なキノコ雲を作り出し、数十万の命をいとも容易く刈り取り、この世の地獄を作り出す一撃。

 

 

 

 

蹴り飛ばされ、打ち上げられ、人の身では決して訪れることもできない、はるか上空で爆発。

 

 

 

 

 

 

 

(なぜだ、なぜコイツは余に歯向かう)

 

 

 

 

少年は理解できなかった。

 

 

 

あの時も、今も、目の前の男が自分に楯突くということを

 

 

 

 

シコウテイザーの喉にあたる部分が一気に膨らむ、その膨らみが一気に喉を上昇し、口へ届く。

 

シコウテイザーの口にあたる部分からどろっとしたま緑の液体を滴らせる巨大な肉団子が吐き出された。

 

 

「真・近衛兵、発射‼︎」

 

 

その言葉と同時にその肉団子がバラバラに分裂し、異形の兵士になる。異形の戦士の見た目は人を無理やり虫にしたかのような姿であった。

顔は蝿のようであり、目は虫のそれでいて口は蠅の口吻そのもの、背中は蜻蛉の羽のようになっており飛行速度は常人の目では追いつけない。

左腕は鍛え上げられた人のそれであったが、右腕は個体差があり、蟷螂の鎌のような腕をするものもいればクワガタの顎のような形をしたもの、蜂の針のように液体を滴らせた針を持つもの、剣のように鋭い腕を持つもの様々だった。

 

その数およそ1000

 

 

 

 

 

 

『この国は他の国と比べてとても豊かです、それだからこそこの国を狙おうと模索する輩は後を絶ちません』

 

 

大臣、お前の言っている事は正しいのか?

 

 

『やつは、再びこの帝都にやって来ます。ですが今回は前回のようには行きません。この国の全ての民が陛下の味方です』

 

大臣は満面の笑みを浮かべてそう言った。

 

 

 

 

 

シコウテイザーは肉団子を何度も吐き出す。シコウテイザーの内部にある全ての肉団子を吐き出す。

 

この国に忠誠を誓った近衛兵たち、貴族の地位を奪われた没落貴族たち、大臣との関係を暴露しそうになった官僚たち、厳しくなった法案により警備隊に捕まり罪の免除という甘い誘惑に負けた罪人たち。

 

スタイリッシュとドロテアの改造により異形の姿となった人々をシコウテイザーは全て吐き出した。

 

 

 

 

『いざとなれば、このスイッチで…』

 

何が正しい、余はやはり大臣に騙されたのか?いや大臣が余を裏切るわけがない、いやでも、、大臣は裏切らない。だが、やつは確かに余を殺すさんだん…だいじんがうらぎる?裏切らない裏切らない、裏切らない、なぜそう言い切れる?大臣は裏切らないから。最初から嘘だとすれば?大臣は裏切らない。なぜ、裏切らないから。ウラギラナイ、誰が悪い?大臣?目の前のオトコ?ダイジン?大臣はウラギラナイウラギウラギラナイウラギラナイウラギラギララナイギライウラギラナイウラggggggggggggggg……

 

 

 

「ガァァアあああああああああ」

 

痛い痛くて痛くて何も考えられない、思考を放棄してしまう。大臣が裏切ることは決してナイ。、そういう考えないと頭がガンガン響く、どうすればこの痛みはおさまる⁉︎、アgiイたい、殺す

目の前のおとko、。殺すそれしか考えられない。

 

 

 

痛みで動けないシコウテイザーを尻目にサイタマは異形の兵士たちを次々と落として行く。数万の死体が秒ででき上がる。

 

 

 

 

 

次の一撃で殺す。

 

 

 

 

大地を震わせる勢いで地面を思いきり踏み込む、その瞬間目の前の男は瓦礫とともに空中へ浮いた。

 

シコウテイザーにインプットされた動きで構えを取る。

 

 

拳を握り力を込める

 

 

拳を引き更に力を込める

 

 

拳をひねり腕にある噴射口から爆発力を生む準備をする

 

 

拳を放つ、腕と肩にある噴射口からエネルギーを噴射させ一気に拳を放つ。ミギリッ、バギュリと言った壊れたような音が聞こえ右腕損傷甚大、再使用不可と言った文章が操縦室にいくつも現れる。

 

 

シコウテイザーにインプットされた皇拳寺の達人の動き、本来は機械でありそんなことはできるはずがないのだが2人の天才により、完璧な形で再現された。

 

 

 

 

名前をつけるとするならば『至皇帝正拳』だろう、力強く流れるような動作で放たれるそれは、千年続きこれからも繁栄して行く帝国を阻むどんな壁も粉微塵に砕いてしまうような未来を彷彿とさせるものであった。

 

 

 

 

しかし、その拳は男の放った拳により吹き飛ばされてしまった。

 

 

至皇帝正拳が弾き飛ばされ後ろに倒れるシコウテイザー、その姿は腐敗し腐りきったこの帝国の姿そのものと言っても過言ではないだろう。ゆっくりと、それでいて確実に倒れるシコウテイザー、しかしその目には未だ倒れたく無いという意志が残っていた。

 

 

『奥の手発動、護国豊穣』

 

 

右足を無理やり後ろに下げ、何とか崩れたバランスを元に戻す。そしてボロボロになり使えなくなった右腕やミサイルを弾き返され損傷した箇所を奥の手の護国豊穣で元どおりにする。奥の手護国豊穣はシコウテイザーの受けた損傷魔導の力で全て回復させた。

 

 

 

万全の姿になったシコウテイザーはもう1つの奥の手を使う。

 

 

 

『奥の手発動、民ノ力』

 

 

 

シコウテイザーは尻尾を勢いよく天に伸ばし、勢いよく地面に突き刺した。地面に突き刺さった尻尾は遥か地下深くまで突き刺さると、植物の根のように少しずつ細くなり分散していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったいどうなっているんだ?」

 

西の異民族の兵士はポツリとそう呟いた

 

 

数日前から国境沿いに展開されていた帝国の兵士たちの姿が消え、前線を広げるために帝国へ攻め入ろうとしたところ、この出来事に遭遇した。

 

兵士たちの目の前には少しずつ枯れて行く木々があった、雪を被り緑が隠れてはいるが少しずつ目に見えてかれている。そのせいか被っていた雪は落下している。

 

「うっわやべぇ」

 

そう言った兵士の1人が帝国の領内に一歩足を踏み込んだ、次の瞬間兵士は地面から現れた巨大な何かに包まれて「カヒュ」っという声を漏らしその生涯を終えた。

 

次々と地面から現れたそれに狼狽える西の異民族の兵士たち、1人が捕まりそれを助けようと2人が帝国領内に入る。それが続き1分間のその交戦で西の異民族の兵士達は7割近く死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャハハハハ、奪え奪え、野郎ども‼︎」

 

そう言って海賊たちは帝国の港街を荒らし回っていた。

海賊たちの憎っくき敵である帝具使いウェイブが消えた情報を手に入れた海賊たちは今がチャンスとばかりにここ数日暴れまわっていた。もちろん帝国の湾岸警備隊はいるが海賊と湾岸警備隊では数が違う。湾岸警備隊の連中は1人1人が鬼のように強いが1人で海賊船5隻も沈めさせることはできない。だから100隻の海賊船で港街を攻めても湾岸警備隊が5隻沈めている間にこっちの略奪行為は終わってしまうのだ。

 

今日もまた数万人の海賊たちが港町に乗り込み、略奪と強姦、そして殺しを楽しんでいた。しかしそれは直ぐに終わった。

 

 

「なっ、なんだあの化け物は⁉︎」

 

1人の海賊がそれに捕まり物の見事にミイラとなった。

次々と地面から現れたそれは老若男女問わず人間を捕まえる、しかし1つだけ違う点がある。それはお年寄りや子供には少しの間、弱い力で巻きつきすぐ離し、海賊や海賊に乗じて街を荒らす帝国の害虫には力強く巻きつきミイラにするというものだった。

 

1分間という短い時間ではあったが、海賊の殆どがミイラとなり海にいた海賊たちも海中から現れた巨大なそれに船ごと握り潰された。

 

 

 

「海龍様の祟りじゃ」

 

誰かがそう言った、そして港町の人々の全てがそれを確信した。

ぬるりとした鱗を持った先ほどのそれは彼らが想像するものの中では海龍の鱗に見えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都へ向けて進撃をしていた革命軍はここ数日間で初めて巨大な敵と対面した。

 

 

地面から現れたそれは革命軍の各々に巻きつきその力を奪っていった。

 

 

「各員は、武器をとり一番近いやつに攻撃しろ!」

 

「守るな、攻めろ!捕まった奴の救助を優先しろ」

 

「敵は硬い、攻撃力の乏しい武器を持っているものは下がれ、混戦で邪魔になるだけだ!」

 

 

何千本といったそれらに絡まれ革命軍の人間は次々に倒れていく、しかし

 

誰一人として死ぬものはいなかった

 

それは革命軍の1人に襲いかかった、万力のような強さでその1人を縛り付き、ビクンとその身を震わせ地中に戻っていった。それの繰り返しである。数十万人いた革命軍の兵士たちのうち5割の兵士たちがそれに絡まれた、最初の方に襲われたものの何人かは骨折こそしていたがそれ以上ひどい怪我をしたものはいなかった。

 

 

 

 

 

「被害がその程度で済んだのはよしとするか」

 

「元帥殿、妙ですよね」

 

「あぁ、確かに」

 

「帝国の生物兵器であるならば革命軍の兵士である我々を殺さないのはおかしいですし、かといって危険種だったとしても人間を食わないのは変です」

 

「だな」

 

「それに、絡まれたものの全員が『この国のために力を貸してくれ』って幻聴を聞いています」

 

参謀と元帥は頭を悩ませる、このまま帝都へ行くべきか、それとも戻って力を溜め直すべきか。

 

しかし数日後には彼ら革命軍は全員残らず帝都へ行くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ましたタツミに『レオーネが財布を盗み、その財布を取り戻すためだけに帝都から数十キロ離れたナイトレイドアジトまで男が殴り込みにやってきた』と大まかな事を聞いたナイトレイドのメンバーは未だ爆睡中のレオーネを尻目にこれからの事を話しあっていた。

 

 

「まさか、レオーネが財布を盗んだせいでこんな日が来ようとは、私がもっとしっかりと注意しておくべきだった」

 

「ナジェンダさん仕方ないですよ、帝都でスリなんてよくある事ですって。それに姐さんの手グセの悪さはいつものことだし」

 

自分がしっかりと部下にトラブルを巻き起こすなと言っておけばよかったと今更ながらに後悔しているナジェンダに対し、ラバは何とか励まそうとするが今回は無茶だった。

 

 

にへらにへらと笑っているレオーネの顔にマジックでバカ と書くマイン。それをオロオロしながら止めようとするシェーレ

 

タツミはブラートに裸にされていた。

 

注(目立った外傷がないかもう一回確認する為、他意はない)

もう一度言う、他意はない。

 

 

 

 

 

そして、巨大なそれが地面から突き出てきた。

 

 

 

 

 

その巨大なそれとの戦闘は戦力が大幅に減少したナイトレイドにとって今までに類を見ないほどのピンチであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国の至る所でその尻尾はエネルギーを集めた。

生物の生態エネルギー、植物の生命力、温泉の効能、危険種の力、電気、風力

 

ありとあらゆるものを蓄えた。

 

 

そして、そのエネルギーを確認し、驚愕する。

(エネルギー充填率、計測不能か…)

 

皇帝は壊れきった笑顔を作る。未だ集まるそのエネルギーはシコウテイザーと直結している自分の体に激痛を走らせ、身体中の血管がいくつも切れているのではないかと思わせるほどの痛みを与える。崩れゆく意識の中でカッと、目を見開き頭に浮かんだ言葉を発す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『奥の手発動‼︎国家総動員砲』

 

尻尾から巻き上げられたエネルギーはシコウテイザーの体を壊しつつ、そのエネルギーを圧縮させ放たれた。

 

何者にも形容し難いそれはとにかく白く美しく、目を引くものであり、時流れを感じさせないものであった。

 

白いそれは触れたもの全てを分解する。

今にも落下してきそうな星のかけらでも、人々の命を一気に奪い去る巨大な津波でも、何十万もの凶悪な危険種の群れでも、数千万もの敵国の軍隊であったとしても何も残さず消す。

 

 

 

 

 

 

サイタマは目の前に迫る白い巨大なエネルギーに対して諦めを感じていた。もう無理だどうしようもない。

 

先ほどの黒い巨大な攻撃の時だった、迫り来る大量のミサイルの時だって、結構キツかった。

 

虫みたいな怪人をとにかく沢山相手にした時は何度も攻撃を受けた。さっき殴り返したときだって、そのせいで力があまり入らなかった。

 

 

 

 

 

もう諦めよう

 

 

 

サイタマは諦めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

ボロボロでなんとか腰巻きとして機能していたマントが闘いで吹き飛ばされないように抑えていた手を離す。

 

 

 

ハラリとサイタマの腰から布が一枚落ちる

 

しかしサイタマは気にしない、隠す事を諦めたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に迫る巨大な白に向かって拳をぶつける。

 

 

 

「マジ殴り」

 

 

 

 

 

 

結果論として男に迫っていた白は、帝国全土にそのエネルギーをばら撒きながら吹き飛ばされた。

 

高エネルギーでかつ高出力だったそれはほんの数秒間ではあるがその一撃と拮抗していた、しかし土台が保たなかった。

 

シコウテイザーはボロボロになりながらも後ろに倒れた、先ほどの国家総動員砲で自分のエネルギーを全て使い尽くしたのだ。

 

それに

(余は、いや私は間違っていたのだ大臣に言いように使われていただけなのだ)

 

皇帝は確かに聞いた、エネルギーを溜めている時、帝国の各地から集められたエネルギーと一緒に聞こえてくる、民の声が。

 

 

(父上、余はやり直せますか?)

 

 

少年は今は亡き父親の事を思いながら、スッと倒れた。

 

 

 

 

 

 

AM 11:35 サイタマ 帝都 宮殿 敷地内 全裸

 








設定(?)


真・近衛兵

災害レベル虎

一匹一匹が素早く、それでいて強い。薬や魔術、錬金術で強制的に能力の底上げをされており寿命は短い。シコウテイザーの中では眠っているため寿命は関係ない。
A級ヒーローでは絶対に勝てない、しかし数日もすれば寿命で死ぬ、被害は甚大だろうが呆気なく死ぬため災害レベルは低め。

目は複眼ではない、しかし瞬きをする必要もなく連続で数時間は余裕で飛べる。ビルとビルの隙間を練った飛行も可能でどちらかといえばそっちの方が得意。

スタイリッシュとドロテアに改造された人間、オネストがこっそり宮殿内へと運びこんでいた。
シュラと同室だった貴族などもこの中にいる。ほとんどは罪人、近衛兵は割合的には少ししかいない。というか殆どがサイタマ捜索のため外へ出払っている。





護国機神 シコウテイザー

災害レベル鬼

タツマキ風に言えば、でかいだけのただのマト

攻撃力はあるが操縦者の精神や周りに被害を出してはいけないという観点からして低め。






護国機神 シコウテイザー

粛清モード

災害レベル龍

数万発のミサイルや多種多様な魔導団を搭載、それでいて災害レベル虎の真・近衛兵を数万匹吐き出す。
巨大な尻尾はその土地の生物や植物、ありとあらゆるものからエネルギーを吸い上げ国家総動員砲として放つことができる。自国の土地では能力が上昇し、自国を侵略しようとするもの、他国のもの、国家に反旗をひるがえすもの、国民の安全を脅かすものには容赦なくエネルギーを吸い取る。
国民からはある一定量しか吸わない、病弱なものや弱っているものには少しあげる。






護国豊穣は誤字ではありません。シコウテイザーが護国機神なのでそこからとりました。国家総動員砲は国家総動員法からとってます、読み方はそのまま、えげつない威力でギアスのフレイヤよりは範囲は狭いが砲と言っているがビーム兵器、巨神兵の攻撃に近いです。





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