「ああ、わたしも想定外だ」
「だがしかし、きてしまったからにはしょうがない。何事もなくこの世界から立ち去ってもらうしかないな」
「しかし、この世界は可能性が高い」
「そうだ、だが例の転送装置はもう既に設置済みだろう?」
「はい、彼女たちの家、学校、よく行く場所含め千ヶ所ほど」
「少し少ない気がするが、それで確かめられるな」
「まぁいざとなればわたしが泥試合をしよう」
「いつもいつも本当にすみません」
「貴殿にはほんとうに頭が上がりませんなぁ」
「こんど、いっぱい奢ります」
「いやいや、気にするな、それがわたしの仕事だからな。それにもうあの女にあの娘たちのような犠牲者を出させたくはありませんから」
兎小屋
B級ヒーローは仕事があまりない。
正確にいえば、ヒーロー協会から直々に頼まれる仕事はあまりない。
理由は簡単だ、例えば怪人が現れたとしよう。
怪人は人の体を簡単に切り裂くことのできる爪を持ち、空を自由に飛べる翼を持つ。人の数倍から数百倍、あるいは数万倍に至る膂力を持ち、並みの刃物を突き通さない硬い皮膚を持っている。
これに対してヒーロー協会が出す答えはこれだ
S級ヒーロー、1人で大丈夫。
A級ヒーロー、とりあえず、いちばん近くにいる人、行って。
B級ヒーロー、チーム組んで倒して。ムリだったら時間稼ぎよろしくね。
C級ヒーロー、論外。
S級ヒーローの仕事は単純明快だ
怪人が出現したら現場へ行けばいい。
そこで怪人を倒す。ただそれだけだ。
それに、災害レベル鬼や竜の出現時にはヒーロー協会から直々に依頼が来る。
A級ヒーローの仕事はまだ分かりやすい
怪人が出現したら現地へ向かい、怪人の災害レベルと自分との力量、現場へ集まった他のヒーローの力量、現場の地形、その他複雑に絡み合ったものを考慮し怪人を倒せそうであれば倒す。
また倒せないにしても他のヒーローが来るまでの時間稼ぎや周囲の人が逃げるための時間稼ぎ、また会話などの時間稼ぎをしつつ、次に戦うヒーローの為に怪人の情報を引き出すのだ。
格上の怪人を倒す事でA級上位を目指そうとする者も多く、そういった意識の高いA級ヒーローにはS級ヒーローに頼むまでもないレベルの依頼がヒーロー協会から優先的に依頼されることがある。
それに、ヒーロー協会のイメージアップのため、各方面からのイベントやテレビ、雑誌等の出演取材依頼がヒーロー協会を通してくるからだ。
C級ヒーローの仕事はS級ヒーローより難しいがA級よりは簡単だ
週に一度のヒーロー活動を行う。
ただそれだけ。
C級ヒーローは怪人と戦うのに相応しい隠れた才能を持つもの、ある特定な環境下においてのみ、C級の範囲を超えA級、あるいはS級並みの力を発揮できるものもいる。
しかしその才能を発揮したとしても、よくて災害レベル虎までにしか通用しない事が多く、特殊な環境下過ぎてそろわない事もある。
もちろんその中でもごくごく少数のヒーローは災害レベル虎以上の怪人にも対応ができるが、その人材はここでいうC級ヒーローの部類には入らないバランスブレーカーであり、その事に関しての説明はここでは割愛させてもらう。
つまり、九割九分が一般ピーポとなんの変わりもない人間が締めるC級にヒーロー協会が直々に頼むような依頼はまずないのだ。
偶に頼まれるものと言えば、S級やA級がめんどくさがってやらない調査報告くらいだ。
C級は各々が自分に適したヒーロー活動を行い、その存在価値を高めればいいのだ。
それに比べてB級は、一番と言っていいほどめんどくさい。
B級はA級よりも下だがC級よりも上、ちょうど真ん中なのだ。
ヒーローの殆どがS級はバケモノであり別格であり、下手すれば怪人と同等の力を持つと認めているので、ここではB級ヒーローをヒーロー協会の中間とする。
B級は何をするのか、この部分が複雑だ。
怪人退治?
B級上位ランカーである黒服集団を見てほしい
B級一位かつA級にいっても充分に通用する超能力者を筆頭に常に複数人で行動している。この事からB級は怪人退治に複数人で立ち向かわないと行けないのが見てわかる。
週一のヒーロー活動?
とあるB級上位のヒーローを見てほしい。
彼はC級1位になった時、週一の活動のノルマから解放されたことを少しばかし喜んでいた。
筋トレ?
とある黒いタンクトップのヒーローを見てほしい
常にタンクトップを着ていて筋肉が隆起しているが、その筋肉は金属ほどの強度もなければ人間の限界を超越しているわけでもない。
存在価値を示す?
とあるハゲマントを見てほしい
ハゲている
S級ヒーローの鬼サイボーグの金魚の糞をして順位を上げているといわれている、あとハゲてる。
つまりだ、B級ヒーローの殆どはただ少し強い人間が少しすごい武器を持っていたり、少し凄い特技があったり、少し武器の扱いが上手かったりするだけなのだ。
そんなのが怪人退治に出かけたらどうなるか、もちろん少しは役にたつだろう。数人でかかればA級がくるまでの時間稼ぎぐらいには。
1人で行けば、下手をすれば死ぬ。
S級ヒーローのようにヒーロー協会に特別待遇をしてもらえるわけでもない。
A級ヒーローのようにしょっちゅうテレビやラジオに出演できるわけでもない。
C級ヒーローのようなヒーロー活動ではランキングが下がってしまうし、そもそも来るかもしれない依頼すら来なくなってしまう。
ではどうすればいいのか。
殉職者率No. 1のB級ヒーローは
パイナップルの格好をした服を作りそれをコスチュームとして名前を売るか、怪人が出現した場所に行き市民の避難誘導をするか、何人かの同じレベルのヒーローで集まってパトロールに出るか、いざという時のために機械の体のメンテナンスをするか、
ヒーロー協会、幹部に呼び出されて、お使いに似たメンドクサイ私用に付き合わされた時、後々のことを考えしっかりと受けるかだ。
──────────────
とあるカフェ
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか」
「後で2人来るんで、6人で、席お願いします」
店内に入ってきたのは年ごろ三十代前半といった所で少し背の高い男、背が高いだけで全体的に肉はあまりついていない中性的、悪くいえば痩せ型で不健康そうであった。
しかし遠目から見てもわかる、もちもち頬は、十代の少女を思わせるほどのハリとツヤを持ち肌に気を使っている事が一目瞭然だった。
男は店内を見渡しその内装を確認する。
少し強いコーヒー豆の香り、店の奥からする胃袋を直接刺激する美味しそうなパンの匂い。
窓の外から入ってくる白い光と電球の淡いオレンジ色の光が店内の明るさをちょうどいい感じの環境を作り出し、所々に置かれた観葉植物は青々として、よく手入れをされているのがわかる。
壁に飾られている風景画も、どこで描かれた物かは分からないが美しく、目を楽しませてくれる。
カウンターの奥にある棚にはいくつものコーヒー豆が種類ごとに容器に保存され、シンプルなデザインのコーヒーカップがいくつも置かれていた。左奥の方の棚にはお酒のボトルがいくつも置いてあり、男のアイリッシュコーヒーが飲めるかもしれないという期待が高まった。
「わかりました、それではお席へ案内させていただきます」
「あっ、はいありがとうございます。おい行くぞ」
店に足を入れただけでこの店に魅了されてしまった男は店員さんの声で我に返り、あわてて外にいる3人を呼ぶ。
「ザギ」「ア゙、ヴィセドナカディボルザァギガイドゥ」「シャシャシュブリョファ・レデョデェグルンベリャフォンフォ」
男に続いて店の中に入ってきたのもこれまた3人の男だった
濃い紫色の髪をしたツインテールの店員は3人が店内に入ったのを確認し、男たちを空いている席に案内した。
一方カウンター席では
「だから言ったんだよ、ぼくはね、鰊は好きだけどミキサーにかけて原型がとどめてないほどにしたのは食べたくないって。そしたらそこの店員さんがね、『お客さんこれは鰊は鰊でも、DHA、EPA、ビタミンAやビタミンE、ビタミンD、たんぱく質、脂質、カルシウム、ビタミンB2が通常の鰊の10倍含まれている美食鰊です』って言うんだよ。ぼくは信じられなかったんだよ、あの一尾17350円の美食鰊をミキサーにかけるってことが、あっ、でもその食べ方が美食鰊を美味しく食べる方法であるなら店員さんの好意は嬉しいものなんだけど、僕はさ、やっぱりそのまま食べたいわけなんだよ……ねぇ?きいてる?」
「うん、きいてるよ、7つ集めると、どんな願いでも叶うオレンジに輝くセリ科の植物を育てて集めるんでしょ。g2にキングを」
白黒の小柄な男性は隣に座っている大柄な真っ白な男性に問いかけてみるが、真っ白な男の気は目の前にあるチェス盤とカウンターの向こう側にいる、少女の頭の上に乗った白い巨大なまんじゅうの様なものに向いていた。
「c6にビショップ、チェック」
男の声に反応して自動で動くチェスのキング、その動きが止まった瞬間、白い大柄な男性の声でも白黒の男性の声でもない声が、少女の頭の上から聞こえその声に反応した駒が動き、大柄な男性をさらに追い詰めた。
「あ、アァアァッ‼︎」
「……話し聞いてないでしょ。まぁいいや、笹子さんカフェモカお代わり」
「すいません、うちにはカフェモカはないです」
「…え?…あぁああア‼︎ッっツい癖で!!」
大柄な男性は何とか自分のキングを逃がそうとするが、とうとう追い込まれ始め絶叫をもらした。
白黒の小柄な男性はいつも通っているカフェのつもりで注文をしたのだが、目の前の少女の困った顔を見て、ここがいつものカフェではない事を思い出し絶叫した。
「ぽ ポーンをe4へ」
「ふーむ、h1にクイーン、チェック」
「g3にキング」
「g1にルーク、チェックメイトじゃ」
少女の頭の上にのっている毛玉は遂に追い詰めたとばかりにドヤ顔をし、それと対照的に真っ白な大柄な男性の方はチェックメイトになりながらもまだ何とか現状を脱出できる方法はないかと頭をフル回転させていた。
そして何か思いついたのか目をキラーンと光らせた。
「………、すいません、パンケーキ4つ、あとケーキのお代わり2つ」
「かしこまりました、少々お待ちください」
少女はその注文を受け棚にある注文票へ注文を書き込む。
棚は少女の背後にあるので、少女が注文票へ注文を書こうとすると少女は180度回転することになる。少女の頭の上にのっている白い毛玉も必然的に180度回転することとなり…
「ちょっと待てチn、『はーくしょん(棒)』あぁぁああああああ‼︎、」
「あー、くしゃみでチェス盤がー。これは最初からやり直さないとだなぁー(棒)」
白い毛玉が大柄な男性の策に気づくには遅く、音がした方を向き、少女の頭から飛び降りた毛玉を待っていたのは盤から全ての駒が落とされた3時間の結晶だったものだ。
「きみはほんと負けず嫌いだね」
「そんなことないよ、いまのはたまたまだよ、たまたま」
「たまたまで駒全部チェス盤から押し出す奴があるかぁ!」
白い毛玉は怒りを表現したいのかポヨンポヨンと跳ねながら口をあんぐりと開け目を吊り上げた、しかしまんまるデフォルメのそれはおこっていると理解していても可愛かった。
水色の髪の少女はそのやりとりを見てくすりと笑う。
「そういえば、こんど僕のカフェで採れたての新鮮夏野菜を使った新メニューを出そうと思うんだけど何かいいアイデアないかな?」
「急に話を変えるね、そうだね…やっぱりトマトと茄子を使った夏野菜パスタなんていいんじゃない?」
「定番ですね」「定番じゃな」「定番だね」
「君たち、ぼくに対して少し辛辣じゃないかな?」
水色の髪の少女、白い巨大な大福、質問してきた当の本人にそれぞれ、そう言われ、「そういう君たちは何かいいアイデアあるの?」から話が続き、少女を除く3人(?)の新メニューの企画会はこれから一波乱起きるまで続いた。
3人(?)から少し距離を置いた水色の髪の少女は注文票を確認し、先ほどの4人の男性を案内し戻ってきた少女にできたてのアイスとホットのココアを1つずつ渡す。
「リゼさん、あの窓際の席の方々の注文です」
「あの白いワンピースの女の子と白いマントの男の席だな?」
「はい、よろしくお願いします」
2つのココアを受け取った少女はそれらをお盆にのせ、窓際にいる男と少女のいる席へ足を運んだ。
|M0)チラッ
o((oMo彡 0M0))o キョロキョロ
(=゚M゜)ノ ---===≡≡≡ 卍 シュッ! ♢K ♢Q♢J
ヽ(゜M゜)ノ = 3 = 3 = 3 orz orz orz
|M0)チラッ
サイタマは少し心が折れかけていた
趣味でヒーローになって数年
仕事でヒーローをやって数ヶ月と数週間
こんな事は今までなかった。
それに、こうなる筈ではなかった。
「おじちゃんがあの時しっかりと捕まえていれば、今ごろ ゴット・シグマはお家に帰れたのに」
そう言いって手元にある白い兎の写真を悲しそうに見つめるのは今回の依頼主の孫娘である。
サイタマは数週間前の猫探しの事件同様、ヒーロー協会幹部に呼び出された。今度こそ怪物退治だろうと思っていたのだが、今度は兎を探して欲しいというものだった。
今回は前回の猫探しの一件よりも少し楽になるはずだった。
なんと飼い主である少女は兎がゲージから脱走しても直ぐに捕まえられるように首輪に発信機を着けたのだ。
しかしその発信機は半径100メートル以内に対象が居ないとレーダに映らない(ここではドラゴン◯ールレーダーの劣化版を想像して欲しい)そのため自分の足で探さないといけないのだ。
最初は車で探せばいいと思ったらしいが、どうやらこの兎は狭いところが好きらしく、レーダー反応がある場所はことごとく路地裏で車での追跡は無理だそうだ。
それに彼女両親は仕事で忙しく途中までは手伝ってくれた彼女の祖父の部下も最近増え続ける怪人事件の後処理の仕事があり、手が空いていないという。
そこで、手の空いているB級のサイタマに白羽の矢が立ったのだ。
そしてサイタマは兎を見つけた。
路地裏の換気扇の下、白いモフモフした何かが息を潜めていた。
少女はサイタマに息を挟めるように人差し指をたて口にそっと当てる。そっと近づいて換気扇の下に手を伸ばし兎に触りそうになると
少女の上に巨大な影がかかる。
身の丈3メートルの一つ目小僧のような青い肌の筋肉質の怪人。
「つーかーまーえーぐぼらっぼおぉおおおおおおツ」
異様に発達したその巨大な右手は少女の体をすっぽりと覆うほどのサイズがあった。
しかしサイタマの強烈な一撃によりその手は吹き飛ばされ、怪人は葬られた。
そして
「キャー」
怪人の出現により恐怖で少女が叫び
それに怯えた兎が逃げ
「ウサギガニゲテル!」
どこからともなく都会から田舎に越してきて数週間しか経っていないような少女のような声が聞こえて
レーダーから反応が消え、また探す事になる。
『 やった!兎 を見つけた。
あっ!野生の怪人 が現れた!
いけ、サイタマ !
少女は、叫んだ!
サイタマ の攻撃
やった!野生の怪人 を倒した!
ざんねん、兎 は逃げてしまった。 』
このやり取りを20回ほど繰り返した。
追いかけては見つけ怪人が現れ、兎が逃げる。
そしてあてもなく探し続ける。
延々と続くこの作業、見つけては息を潜め、邪魔な奴が現れ、そして兎は逃げる。
そして数十分前、遂に兎を追い詰めた。
路地裏に逃げ込み換気扇の下に隠れた兎を今度こそ逃さないように周囲を確認する。近くに来ていた怪人をサイタマが音を立てず早々に倒し、兎が逃げても直ぐに追えるように路地の奥がどこに繋がっているのか確かめた。
幸いな事にサイタマが路地の奥である右に曲がる場所を確かめたところ路地の先を右に曲がった所に道はなく行き止まりで真っ白な壁しかなかった。
念には念をいれ、サイタマは奥、少女は手前から少しずつ近づき、挟み撃ちにする。そっと換気扇の下に手を伸ばす少女。すぅすぅと寝息を立てている兎には逃げる様子は一切ない。
音を立てないように慎重に慎重に少女は身を屈み手を伸ばす…
「へっくしゅん」
くしゃみが一発
飛び起き逃走する兎。
兎はそのまま顔に手を当てているサイタマの股下を通り抜け、路地裏を駆け抜け右に曲がる。
急いで追いかけるサイタマと少女
そしてその先に続いていたのは行き止まりではなく
木組みの家が街の至る所に建ち並び、足元の全てが石畳に覆われた
人口よりも兎が多い街だった。
◇◆◇◆◇◆◇
ここは木組みの家が建ち並ぶ石畳みの街にある喫茶店、ラビットハウス
お昼を過ぎ、昼下がりの午後といった時間帯
土曜日でこの時間なら、いつもはもう少し人がいてもいいのだが、今日は先程きた4人客(後で2人来るらしい)を含め9人しかいなかった。しかもそのうちの7人は男だ。
その中の1人にとてつもなく怪しい奴がいた。
入り口に一番近い窓際の2人用の席
チノより少し小さい白いドレスのようなワンピースを着た少女、それと一緒に座っているのはスキンヘッドの男。
白くてムダに長いマントと真っ赤な手袋をした全身黄色の男だ。
見るからにして怪しい。
「おまたせいたしました、アイスココアとホットココアです」
怪しいこの男の事を少し考えながら、少女の方にアイスココア、男の方にホットココアを置く。
男と一瞬でも目があい、うっすらと男から懐かしいような、臭いが漂ってきた。
魚の生臭さと血の臭いを足して二で割ったような臭い。
何処かで嗅いだことのある臭い。
その時脳裏に何かが浮かんできた。
魚のような生臭さ・血・少女
そう、あれは昔私かまだ幼かった頃。
親父の友人の漁師が家へ遊びにきた時。そうだ、あの時これに似た臭いを嗅いだなぁ。そう、あの日は、親父の友達が鮪の粋のいいのを空輸してくれて。親父との久々の再会を祝して、その鮪を生きたまま解体してくれたんだっけな。その時の鮪を解体するところを直で見せて貰った時に、たしかこんな感じの臭いがしたっけなぁ、なつかしいな。たしか、あの時食べた鮪は今まで食べた中で一番うまかったかな。
サイタマにこべりついた魚型の怪人の臭いで、リゼは幼いころのよかった記憶を思い出し、久しぶりに鮪の寿司を食べたくなった。
そんな中、目の前に置かれたホットココアを見ながら
(アイスココア頼んだの俺、なんだけど)
サイタマはそんな事を思っていた。
──────────────
一方そのころ
「いやぁああぁぁああぁあぁあぁあぁぁー」
とある金髪の癖っ毛の少女は街のどこかで兎に追われていた。
「なんで、こーなるよ⁉︎」
うすい青色をした首輪をつけた兎は、左足の付け根に真っ白な体毛の中には少し黒い毛が白い毛に埋もれるように混ざっており、それがΣのように見える。
「こぉなぁいでよぉおぉおぉおぉおっ‼︎」
その体格は未だ大人兎よりも一回りからふた回り小さい、にも関わらず、その体からは考えつかない跳躍力で金髪の少女との距離を詰めていた。
「たすけてぇぇええぇええ!」
少女は後ろを振り返ることなく全速力で走る
兎の恐怖により足を止めることなく、普段の何倍もの速さで、疲れを知らずに
少女の叫びは響き渡たる
日曜日だというのに、
外に出ている人がまるでいない街中に
誤字脱字等がございましたら、是非ご指摘の方をお願いします。
3月までには投稿したい。