一撃男の異世界旅行記   作:鉋なんか

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中身は書ける。
しかしタイトルが思い浮かばない。
次どうすればいいの


(10000文字超えてます)

へんな少女が出てきます。
帝具使いいっぱい出てきます。

作者の好きなキャラもでています


ネタもチラホラ




ではどうぞ



拳を放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめて人間を殺したのは5歳の時だった。

 

 

 

父親に連れてこられてやって来たその場所には4人の人間がほぼ裸の状態で磔にされていた。

 

1人は大人の男、1人は大人の女、1人は年寄り、1人は自分と同じくらいの年頃の男の子だった。

 

 

4人はナニカを発していたが父親の言葉を聞くことに精一杯だった自分にはそれは届くことは無かった。

 

 

父親の言葉を聞き終えた自分は黒くてズッシリとした重いモノを渡された。その時の言葉はよく覚えてはいないが自分は父親の言葉に強く頷いた。

 

 

磔にされている4人に近づく、4人がナニカを言っているのかは分からなかった。

 

 

でも、自分が絶対的優位な位置にいるということは

 

理解できた。

 

 

 

先程渡されたものを老人に向ける。

父親に教わった通りに黒いズッシリとしたものを老人に狙いを定める。外さないようにしっかり近づいて老人の胸の近くにあてる。

 

 

パシュッ

 

顔に何かかかった

 

乾いた音と共に黒と赤の混じった液体が老人から溢れ出す。先程からナニカ発していた3人の声が言葉にできない悲鳴に変わる。

 

 

老人は胸から液体を暫く垂れ流すと口から同じものを吐き出し動かなくなった。

 

それを自分は眺めていた。

 

 

『 』

その言葉と同時に父親は、今まで始めて自分の頭を撫でてくれた。今まで自分のことなどあまり気にかけてくれなかった父親が嬉しそうに自分のことを褒めてくれた。

 

 

次は自分と同じ年頃の男の子を狙った。

 

大人の男と大人の女が必死になってナニカを訴えかけようとしていたが老人の時と同じように外さないよう今度は少し距離を置いて、引き金を引いた。

 

パァン

乾いた音と共に液体が男の子の体から流れ落ちる。老人のと違い流れ落ちる赤い液体には黒は少なく明るい赤が多かった気がした。

『 』

今度は少し怒られた。

 

怒られた理由が分からない自分に父親が手本を見せてくれると言った。

 

父親は大人の男の方に近づくと右足に銃を当て、引き金を引いた。大人の男は今までにないほど大きな声でナニカを叫んだ、言葉にならないナニカを足から血を流しながら叫んでいた。

 

今度は左足、右手、左手と順番に父親は大人の男の身体を銃で撃ち抜く。

 

1発ごとに違う声をあげ、違う表情をし、違う言葉を放つ男を見て父親は笑っていた。

 

男が動かなくなると父親は自分の持っていた銃を渡してくれた。

 

それを自分は女に向ける

 

右足を撃ち抜く

下にズレてしまった。太もも狙うつもりが足の甲の部分を撃ち抜いてしまう

 

左足を狙う

今度は真ん中から少しだけズレてしまった。太ももの中心を狙ったつもりが内側によってしまい、股の肉をえぐる事になってしまった

 

右手に命中する

今度は狙った所にしっかりと当たった。でも思っていたのとは何かが違った

 

左手に命中する

今度は思った通りになった

 

女は磔にされているのにも関わらず自分の身体を大きく揺らす。撃ち抜かれた箇所から流れ出る血液が一瞬増えそして直ぐに元に戻る。女は獣のような声をあげたかと思えば苦痛に染まった悲鳴をあげる、痛みに耐えるようと歯ぎしりをしてもあまりの痛さに嗚咽が漏れる

 

美しかったであろう顔は恐怖、恨み、怒り、悲しみ、涙、よだれ、鼻水、汗それらがグッチャグッチャに入り混じり混沌としていた。

 

 

 

それが暫く続いて女は遂に糸が切れた人形のように動かなくなった。

 

 

 

「お母さん‼︎」

 

不意に背後から声がした。

振り向くとそこには磔にされていた男の子よりも一回りほど小さい女の子がいた。

 

女の子は母親だったものに向かって走り出す。

 

腰のあたりまである長い黒髪は美しさを有していた。身につけている薄いピンクの仕立ての良いドレスはその子の家がどの様なものだったかを証明し、まん丸でぱっちりとした蒼い目は涙に溢れていてその雫が美しい少女の顔をより一層美しく見せる様に引き立たせていた。

 

 

ドクン

 

 

 

胸の高まりを感じた。

父親に肩を叩かれる。

ナニカを囁かれる。

 

 

ドクン ドクン

 

 

胸の鼓動が更に高まる

 

 

 

磔にされていた女は既に地面に降ろされ力なく体を横たえていた。その上に覆いかぶさるようにして泣く少女。

 

 

 

 

父親はまたナニカを呟く。

 

それと同時に壁にかけてあるさまざまな道具と隣の部屋にある大きなベットを指差した。

 

 

そして、兵士たちと一緒に部屋を後にした。

 

 

俺はそれを見計らって、未だ自分の母親だったものに泣きすがる少女に向かって───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

「うっわー、シュラのやつだいぶ飛んでったな。イゾウのやつは、って木にひっかかってら。死んだか?江雪ぶっ壊されてるてわかったらどうなるか気になるけど、まあ関係ないっしょ」

 

少女はそう言って吹っ飛ばされたシュラとイゾウのことを一旦忘れ、時計塔にめり込んだ上半身を無理矢理引きずり出す。

 

 

「うーん、あの力だとすると±10くらい?7ならなんとかできるけど、6は厳しい5だとしたら今すぐダッシュで帰りたい」

 

 

身体に着いた土埃をはたき落としポケットからメモ帳を取り出す。無印のメモ帳は片手に収まる程度のサイズだが五センチほどの厚さがあった。

少女は躊躇なくそれを本体から引きちぎり、ばらまく。

 

 

「あの馬鹿どもを利用してなんとかノルマ達成できると思ったんだけどなぁー、少し考えが甘かったか…」

 

 

 

ばらばらになったそれらは意志があるかのように広場の上空へと飛んで行き、しばらくすると空中で解けるようにして消え、広場全体に見えないドーム状のものを形成した。

 

 

 

「こっちのメンバーも少し多かったし、転生者もいるし、もしかして最近起こってる例の件って、いやそれは考え過ぎ?」

 

少女はぶつぶつ呟きながらもどうするか考え、ポケットの中からポケットの体積以上のものを取り出す。

 

数十センチのプロペラがいくつもついた機械。

自分と全くもって同じサイズのマネキン。

明と大きく書かれたスクロール。

 

 

「結界はがっちりじゃ無くて緩めに設定、音は4分の1カット、建物への配慮は5、外の様子を確認する為の分霊は10… 死ぬかもしれないからやっぱドローン、一応分霊は100分の1を東西南北に1人置いておいてっと。バフはあまりかけすぎると相手が本気になってこの国ごと滅びかねないし、かといってデバフ使うとあいつらに馬鹿にされるから、今回は無し。一応精神は明王クラスに設定、無いとは思うけど薬、毒、媚、脳、洗、の一つを感知したら自爆、威力は国家破壊クラスを想定。取り敢えず最低30分稼いで無理そうだったらやられたフリしてトンズラしよう」

おっ、あったあった

 

 

 

そう言って少女はお目当てのものをポケットから取り出す。

 

 

 

 

金の装飾が施された長さ3メートルほどの異様に長い真紅の竿

 

 

 

 

 

 

一千年前に誕生し、今もなお帝国最強の超兵器として君臨する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女が普段は使うことのない帝具(ゴミ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェルシーは革命軍情報局からの直接の依頼で4日ほど前から普段のチームのメンバーと離れ、帝都に潜伏することになった。

 

 

 

情報局が言うに帝都内にいる密偵と連絡が一切取れなくなった、おそらく帝国の人間に捕まったと思われるので新たに革命軍から密偵を任命、派遣するまでの5日間の間帝都で密偵の代理をしてもらいたい、と言うものだった。

 

 

 

隠密を得意とするチェルシーからしてみればこの手の依頼は珍しくない、密偵からの連絡が一斉に取れなくなったのは少し珍しいが無いわけではない。革命軍も組織として大きくなってきた、その分帝国も革命軍に対して強い警戒を持ち始めているのだろう。

 

 

 

普段の暗殺とは違った楽な任務。

後任がつくまでの間の時間稼ぎ。

ただ町の様子を調べる楽な仕事。

 

(どこか適当な宿屋探して帝都見学でもしようかなー)

 

 

そんな事を考えながら普段よりも軽い足取りで帝都の門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

そして1日もしないうちに後悔することなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門をくぐった先はチェルシーの知らない世界だった。

 

 

とは言っても門の先が科学と魔術がしょっちゅう交差する馬鹿みたいに高いビルや風車が建ち並ぶ人口の9割が学生の世界であったとか島国の半分以上を人を食い殺す巨大な蟲が跳梁跋扈しその巨大な蟲を倒すために常に常住戦陣する武士がラッキースケベとシリアスを繰り返す和の国であったとかでは無い。

 

 

 

 

街並みの殆どがチェルシーの知っている帝都であったが中身が全くもって別物だった。

 

 

 

 

まず最初に目に入ったのが門をくぐってすぐの所で直立不動の姿勢を保つ男。肩まで伸びた長い髪を左右を真っ二つにするかのようにバリカンで刈り、帝国でもあまり見ない逆モヒカンという髪型の男が二の腕を組み門から入ってくる人々をギロリと睨みつけていた。その鋭い眼光はあまりの威圧感により敵兵の戦意を削ぐといわれ、出陣した戦場では常に勝利をもたらす。革命軍でもどうにかしてこちらに取り入れようも模索している人物の1人、反大臣派でありながら未だ存命のミカン将軍。

 

(普段は西の異民族と戦ってるミカン将軍が何で帝都に⁉︎)

 

よく見ると至る所に武装した兵士たちが待機していた。

とあるカフェでは近々革命軍と合流する筈だったナカキド将軍が兵士たちと共にサンドイッチを頬張っていたり、少し離れた場所ではヘミ将軍が部下数名を叱りつけていた。

 

 

あまりにも変わりすぎていた光景に目を奪われたチェルシーはついつい周囲を見渡してしまう。

 

「ッつ─────!?」

 

 

敵を見つけた危険種の様な血走った目のミカン将軍と視線が合う。

 

 

チェルシーはすぐに自然な形で目を逸らし相手に違和感を感じさせないように女の子の足取りでその場を離れる。

 

 

一瞬とはいえ鷹のような鋭さを持つミカン将軍と目があってしまった事に後悔し、気持ちを切り替える。

 

いかにも『はじめての帝都で右も左もわからない』女子を演じ近くのスイーツショップに視線を移したと思えばすぐに隣の洋服屋へと視線を向ける。

 

 

面白そうなものを見つかれば視線を移し近くまでよる、また別の面白そうなものがあればそちらに近づく、早鐘のごとく鳴り打つ心臓を抑えながらそれを繰り返しチェルシーは門を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

門を後にしたチェルシーがたどり着いたのは帝都のメインストリートだった。いつも通り人でごった返していが、しかし道行く人々の顔はチェルシーの知っているいつも通りではなかった。

 

(いつもなら表情暗い人が多いのに…。)

 

「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。並みの危険種じゃあ傷一つつけることのできない頑丈なロープ、そこのお兄さん一本いかが?」

 

「キョロクの西瓜、一個銀貨3枚!安いよ!今なら縄一本つけちゃうよ!」

 

「ひーもひもひもひーもひもー、ひーもひもひもひーもひもー、ひーもひもひもひーもひもー、ひーもひもひもひーもひもー…」

 

一部除いて活気に満ちていた。大臣による恐怖政治が人々の生活を苦しめている帝国で商人がこんなにも活気付いている場所はチェルシーが知る限りキョロクくらいだ。

 

 

取り敢えず何か冷たい物が欲しい、常に棒付きキャンディーを口に加えてはいるが今はこの人だかりで発生した熱をなんとかするものが欲しかった。

 

頭の中で帝都の地図を思い出し自分のいる場所を把握する。

 

そして近くに冷たい甘味が有名な店があった事を思い出す。

 

目的地をそこに決め、人混みをかき分け、

 

 

 

 

 

 

3人の黒服に囲まれてながら店の甘味を楽しみつつ店主と雑談をしている青に近い水色の髪をした長髪の女性を見つけ

 

 

 

 

 

 

華麗なUターンを見せ、喉の渇きを潤せないまま帝都メインストリートを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程見たものが夢であったと願いながら現実は非情である事を改めて知ったチェルシーが次に訪れたのは貧民街であった。

 

ここはいつもと変わらず雑草根性丸出しの賑やかさがあったが普段は至る所にいるゴロツキが全くもって見られなかった。

 

歩きながら聞き耳を立てていると『警備隊がゴロツキから子供を守ってくれた』とか『町の治安が良くなった』とかの話は聞き取れたが門の近くにいた兵士たちによる戦争の準備だとか帝都近郊に出た凶悪な危険種を討伐するとかの話は聞こえなかった。

 

 

 

 

 

太陽が西に傾き、帝都に夜がやってこようとしている時、チェルシーは1人公園のベンチに腰を下ろし熱心に何かを書いていた。

 

 

いや、正確には書いては乱線でかき消し、また書いてはかき消しての繰り返しだった。

 

乱線だらけになった紙をぐしゃぐしゃにして潰し、チェルシーは呟いた。

 

「どうせ信じてもらえない…」

 

 

ため息交じりのそれはチェルシーの内心を物語っていた。

 

帝国の将軍ほぼ全員が帝都に召集された。

理由に応じては信じてもらえる。

 

エスデス将軍が帝都にいる。

エスデスならありえる。

 

 

しかし

 

 

帝都の治安が良くなっている。

帝国の帝具使い全員が集められている。

宮殿を囲む壁の一部崩壊。

歴代最高額の黄金10万の賞金首の存在。

宮殿上空の危険種の数が激減している。

悪徳貴族の大勢が捕まった。

 

これらはどう考えても信じてもらえない。

むしろ大臣が死んだ、と伝えた方が信じてもらえるのではないかと思うがあの大臣が死んだとは到底思えない。

 

 

夕日が完全に沈み周囲の電灯に明かりが灯る。自分がこの公園に来てかなりの時間が過ぎたのを感じた。ベンチから立ち上がり、どこか泊まれる場所を探そうと公園を後にしようとする。

 

 

 

 

 

「あの、」

 

不意に声をかけられた、チェルシーはゆっくりと振り向く。

相手は若い警備隊の男だった。

かなり疲れているのか目の下にはくっきりと真っ黒なクマが出来上がっていて、それが不気味さを醸し出していた。

 

「はい、何でしょうか?」

 

チェルシーは不気味な警備隊の男に警戒をされないように自然体を演じる。もし、自分の正体がバレたのであれば目の前の男を殺して直ぐにでも逃げないと。

 

「このぐしゃぐしゃの紙、貴方のですよね?ポイ捨てはいけませんよ」

 

チェルシーは一瞬ポカンとするが先程自分がぐしゃぐしゃにした紙の事を思い出す。そして自分の正体がバレてないことに安堵する。

 

「あはは、すみません以後気をつけます」

 

チェルシーは自分の正体がバレる前に目の前の男がもっている紙を取り返そうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

男はぐしゃぐしゃの紙を広げて乱線でかき消された文章を見てしまった。

 

 

男が笛を自分の口につける前に一気に距離を詰める。懐に隠し持っていた7センチほどの細い針で男の頭を突き刺す

 

 

 

 

 

「しまっ、『ピィイイイイイイイ』」

 

 

 

夜の公園に警備隊の笛がこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

XIII

 

 

 

 

チェルシーは現在、帝都で一番大きい公園に潜伏していた。数日前自分の失敗のせいで帝都警備隊に追われる身になり周辺では手配書が発行され、近衛兵も周囲を警戒しているほどだった。

 

 

しかし現在までチェルシーが警備隊の目から逃れる事が出来たのは彼女が持つ帝具、“変身自在”ガイアファンデーションがあったからだろう。

 

彼女の帝具ガイアファンデーションは無機物有機物に問わず持ち主をあらゆるものに変身させることのできる化粧品型の帝具で自分より大きいものにも小さいものにも変身できる。

 

そして今彼女が変身しているのは木である。

 

帝都のこの公園ならさして木は珍しくない、一本増えたところでさして違いに気付くものはいない。

 

 

 

しかし警備隊にバレなかったとしても不眠不休でほぼ飲まず食わずはきつかった。変身を解除しようと周囲を確認すると必ずどこかしらに警備隊の姿が見え変身は解除できなくなり、粘り強く警備隊の姿が見えなくなるのを待ち続けた。

 

 

 

警備隊の姿が見えなくなり周囲を見渡す。

数日前、少し降った雨で喉を潤していらい何か飲んだ記憶はない。食べ物といったらガイアファンデーションの箱の中に入れておいたキャンディーをバリバリと噛み砕いて食べたことくらいだ。ふらふらの状態で再び周囲を確認する。誰もいない事を確認し少し体を休めるために近くの木に体を預け眠ることにした。

 

 

 

 

 

ドゴォン バゴォン ドザツ

 

三つの馬鹿みたいにデカイ音が聞こえ寝ていたチェルシーを一気に覚醒させた。

 

音を一切立てることなく起き上がり周囲の状況を確認する。

太陽が未だのぼりきっていないことから時間帯は朝である事を確認し、身を伏せる。

 

 

ズドォオオオン

 

 

地面が大きく揺れ、巨大な岩が勢いよく地面に落ちたかのような音が辺りに響いた。

 

そして嵐のような暴風がチェルシーの体を吹き飛ばした。巨大な質量を持つもの同士がぶつかり合う音が響き渡り、その都度都度、人の体を吹き飛ばすほどの爆風が巻き起こる。チェルシーはなんとかして近くにあった木の枝にしがみつくが、その木が地面ごと離れてしまうためどうしようもなかった。しかし数秒後には地面から離れた木やえぐれた大地や粉微塵に砕けた岩石は時間を巻き戻したかのように元のあった場所へと戻って行った。

 

 

岩石は土の中に潜り、巨大な木が宙に浮き土がその根を埋めた。吹き飛ばされた木々の葉は規則正しく自分の元いた場所へ戻っていく。

 

数日前自分が座っていたベンチは原型を留めていなかったが空中で木片が集まると元あった場所へと戻っていった。

 

 

 

 

そして再び吹き飛ばされる。

 

 

 

 

今度はあまりの風圧の勢いで木にしがみついている余裕は無く、その体一つが宙に浮かんだ。

 

 

鳥類に変身しようにも上下前後左右から荒れ狂う風のなか飛べる鳥類に心当たりは無い。心当たりがあったとしても、目も開けられないほどの暴風で小道具が多いガイアファンデーションなど使える訳がない。

 

 

何も出来ないと悟ったチェルシーはせめて情報だけでもと思い、なんとか目を開ける。

 

 

そして見てしまった。

 

 

 

 

バゴォ ガガガガガ ギュォ バッ

ブゥンンン ピチュン ドガゴガゴ

ドドドドドドドドドドドドド

べャギ ジャギン ビギィ ザシュ

ズビュン ガリュン ビシューーン

ザザザザザザザザザザッ

ドゴォン ガゴォン

ドスッ

ズシィッ グラッ パラッ

 

ガシィ

ズゥドオォン

 

 

バゴォ

 

 

帝都内部で尋常じゃないほど手配書を撒かれている男と自分よりも背の低く腕も脚も細い華奢な肉体をした浅葱色の髪の少女が真っ赤な竿に二匹の蛇が巻きつくようにデザインされたものを使ってこの嵐のような現実を起こしている事を。

 

 

(ーーははは、これはきっと夢だわ。やっぱ私疲れてる。目が覚めたらきっといつもの場所で目を覚ますはず)

 

数日、飴以外のものを食べていない空腹や水もろくに飲んでいない事による喉の渇き、顔にちょくちょく当たる細かい砂粒や土の匂い、風で今もなおめくれ上がっているスカートに対する羞恥心。

 

それらを全て夢だと思い意識を手放したチェルシーは

 

突然誰かに抱きかかえられ、公園の中から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

その数十分後、バリィンというガラスの割れるような音が辺りに響き、帝都一広い時計塔広場は帝都一広い荒地に変貌した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM 08:35 サイタマ 帝都時計塔広場 突破

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

XIV

 

 

 

『らせつよんき』

 

 

この言葉を聞いても帝国の臣民の9割がなんと事だからわからないだろう。

 

らせつ、という単語から動物か植物かはたまた食べ物か想像は出来ない。強いて言えば、よんきのよんという単語から何かが4つあるのだとは想像ができるだろう。

 

 

 

 

知ったかぶりだったら『ああ、らせつよんき、あぁあれね、知ってる知ってる…』とでも言うのだろうか。

 

 

 

 

 

 

では残りの1割に聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

『暴力の化身』『悪魔』『バケモノ』『変態集団』『鬼』『悪鬼』『弟子』『いつか実験したみたい』『大臣暗殺の際の最後の関門』『地獄の処刑人』『帝具使いよりも警戒すべき相手』『武術に優れた暗殺者』『隠密を得意とする鬼』『いつのまにか背後にいる幽鬼』『大臣お抱えの秘密兵器』『人間殺戮マシーン』…

 

 

 

 

 

羅刹四鬼

 

 

 

 

 

真の名は『皇拳寺羅刹四鬼』

 

 

 

 

皇拳寺

帝国最高の拳法寺であるその場所は古くから帝国臣民と密接な関係にある

 

 

少し裕福な家庭であれば息子や娘に護身術を習わせたいと思い皇拳寺行かせるほどだ。そこでお金を払い基礎的な護身術を優しく学び家に帰る。

 

 

 

皇拳寺の有段者であれば帝国軍に採用されやすい、そう聞いて皇拳寺にやってくる者も大勢いる。少し力の強い少女や帝都で一旗あげたい少年、田舎の方では強いと言われているおっさんなど様々なものが集う。

 

 

しかし皇拳寺そんな奴らには優しく無い

初日から百人組手、永遠と続く座禅、雑巾を使った寺の清掃、先輩後輩の絶対の関係、段保持者の上下関係、絶対遵守の戒律、それらが夢を見ていた者たちの目を覚ます。

 

 

吐くほどの練習をしても実力の見込めない者は技1つ教えてもらえない、何十年も皇拳寺に通ってやっと初段になった者だって大勢いる。

 

 

やってられっか、そう言い放ち皇拳寺を後にする者は後を絶たない。

 

 

才能のあるがゆえにはどんどん上の段位に上がり皇拳寺の秘術を多く学ぶ機会が与えられるものもいる

 

 

そして

 

 

絶対遵守の戒律を破り皇拳寺を破門にされる輩もいる。

 

 

 

皇拳寺で習った護身術のお陰で命が救われたと言う臣民は多い、逆に皇拳寺を破門にされた有段者が暴威を振るう事件はさらに多い。

 

 

 

 

そんな帝国臣民にとって毒にも薬にもなる皇拳寺。

その奥深くに羅刹四鬼はいる。

 

 

 

 

今は大臣に雇われて各地で暗殺や護衛などを行なっているが昔は破門された有段者が暴れ回り皇拳寺の品位を下げる者を殺す事を専門とする集団だった。

 

 

 

羅刹四鬼の強さを証明するこんな話がある。

 

 

 

『羅刹四鬼に追われたものは

 

 

必ず死が待っている

 

 

5以下は無知、侮り、挑む

 

 

6、7無謀、遊ばれ死ぬ

 

 

8、9逃亡、恐怖に怯え

 

 

師範代ならわかるだろう?

 

 

自ら膝を折り頭を垂れろ

 

自分の行いを後悔せよ

 

さすれば苦痛の無き死が待っている』

 

 

 

 

昔、百人組手に顔を出した羅刹四鬼の1人がいっぺんに100人を相手にした事がある。そして全員を瀕死の状態に追い込み、当時調子に乗っていた有段者の集団をたしなめた。

 

 

しかし、羅刹四鬼の強さはそれだけでは無い。

 

 

 

 

 

足音を立てない歩行術

飛ぶハエの目玉を爪楊枝で突き刺す胴体視力

数時間息継ぎ無しで水中に潜むことのできる潜水能力

相手の呼吸の仕方、足運び、目の動きその他諸々で相手の実力を図る観察能力

数えればきりがないほどの能力

それら全てが備わっているからこそ羅刹四鬼なのだ。

 

 

 

 

 

 

だから羅刹四鬼は強い。

 

だからこそわからなかった。

 

 

 

 

この男の強さが

 

 

 

一般人と同じ呼吸、武道のぶの字も知らないような足運び、落ち着きのない仕草、どれをとってもザコだ。

唯一の警戒するべき点は服の上からでも分かる筋肉だろうか、だとしても皇拳寺の有段者にも劣るのではないかと思うほどのものしかなかった。

 

 

 

 

(だけどこれは、)

(明らかに…違う、)

(例えるなら、服)

(好きになる以前に引くは…)

 

スズカ、メズ、シュテン、イバラは直に触れることで理解した。自分たちが戦おうとしていた存在のデカさを

 

 

そして理解できなかった。

自分たちが4人がかりで抑え込んでいる男が危険種ではなく1人の人間であるという事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

XV

 

 

 

「久しぶりにいい運動になったな」

 

そんな事を呟きながらサイタマは体についた土を払いつつ歩く。先程の少女、名前は聞いていなかっだが今まで戦ってきた中でかなり強いということがわかった。

 

(殴られた時、久しぶりにうっ、ってなったよな。結構痛かった…)

そっと殴られた箇所を触る。もう既に痛みはないがタンスの角に小指を三連続でぶつける程の痛さだったのを覚えていた。

 

(あと、殴った時に殴りきれなかった?のがわからん。あれがバングの言ってた 受け流す ってやつなのか?)

 

正確には彼女は殴られた時の勢いの9割を地面の奥深くに拡散して自分のダメージを軽減させていたのだが、サイタマはそこまでの事はわからない。

 

フッ、とサイタマは笑みを浮かべる。

 

 

久しぶりに戦いの中で感情が湧いた。

 

自分にはまだ戦いの中で感情が沸くことがあったのか、そう思わせてくれる一戦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『透視、結果。隠し武器特に無し。やれ』

 

 

ふっと、前から声がすると急に周りが見えなくなった。

 

お金が無くてお先真っ暗的なのじゃ無くて物理的に見えなくなった。何かが身体中を締め上げているのだろう。動けないこともないが首や口元を押さえつけられているため少し息苦しい。

 

 

 

 

 

サイタマはそう思うと直ぐに左手で首元を右手で口を覆っている何かを掴み一気に引き寄せそれを何か確認する。

 

 

 

 

「いたたたたたっ、髪引っ張んな」

「なんて馬鹿力だッ」

「イイ!スゴくイイッ!」

「チッ!」

 

 

なんか4人いた。

 

 

1人は褐色の肌で道着の下にある下着代わりの白いビキニが丸見えで頭に蹄鉄をつけた小柄な少女。

もう1人は腰に酒と書かれた壺をさげている髭が異常に長く後ろで髪を三つ編みにしている筋肉質で上半身裸の大男。

異様な声を出したのは顔に大きな切り傷のある4人の中で唯一のまともに服を着ているが一番まともじゃ無い顔をしている黒髪ポニーテールの女。

ボクサーが履くようなパンツ以外他には何も着ていない4人の中で最も露出度が高く両目が何故か黒く染まっている大柄の白髪男。

 

 

 

4人は足を思いっきり地面に突き立てていた、地面のタイルが割れて大地にめり込むほど、しかし4人のそれを無視してサイタマは一気に引っ張った

 

 

 

 

足が地面から抜け一気に男の元へと体が引っ張られる。

 

サイタマの元へと瞬きのする暇もなく引き寄せられたのだ

 

 

 

 

え、?どうすればいいの?これ?

 

 

引っ張った方であるサイタマはそう思った、しかしサイタマはある事に気がつき次の行動に移った。

 

 

 

4人はやばいと思って自分の髪を手刀で切ろうとする。しかしそれよりも早く、4人の鍛え上げた洞察力を持ってしても捕らえられないスピードで男の拳は振るわれた。

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

本来であれば腕を前に出し殴られる前に防御をするのだが

 

 

(はやい!)

(重いィ⁉︎)

(らめぇぇぇぇぇえええ)ブシャ───

(な⁉︎バケモンがっ⁈)

 

意識は間に合う、しかし体が余りにも遅すぎた。脳が体に命令を送ろうとした瞬間、腹部あるいはアゴあるいは胸あるいは頬に強烈な一撃を食らう。

 

 

息を飲む暇もなく羅刹四鬼は勢いよく四方八方に飛んで行く。

 

額に巨大なボールのようなものをつけた人間を巻き込んで。

ピエロの服装をしたデブを巻き込んで。

80年代の臭いがプンプンするバニーガールのような姿の眼鏡っ娘を巻き込んで。

胸の部分が満月のように大きく丸く空いた服を着ている黒髪のおかっぱの男を巻き込んで。

 

 

赤や青、緑や黄色の色鮮やかな魚が積まれた店へ

長さも太さもバラバラなロープが売ってある店へ

小洒落たカフェへ

甘という字が暖簾に書かれた和風の店へ

 

 

 

飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ はぁ はぁ、すぅーーう、はーー」

 

 

 

 

 

 

サイタマは切れた息を落ち着かせるために大きく深呼吸をする。先程の出来事のせいで身体中の血液が一気に頭に上がったのではないかと錯覚させらほどだった。

 

 

 

そして確かめるようにして自分の頭を確かめる

 

 

(希望はまだある 筈)

 

 

 

 

 

 

AM 09:00 サイタマ帝都メインストリート移動中

 

 

 







次回予告


ついに宮殿の前にたどり着いたあの男

その行く手を阻むのは‼︎



南と西と東に待機していた将軍率いる
約70万の軍

物量vs.質
果たしてどちらが勝つのか⁉︎



あと他に
なんか全身が黒い不審者
腕があーんなことや、こーんな事になってしまう少女

頭部が禿げてきた事を気にすらおっさん
謎の仮面を付けた生物
ジャッジメント ナイト オブ サンダー






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