高みを行く者【IS】   作:グリンチ

68 / 71
お久しぶりです。
長い間放置して申し訳ありません。
次話はなるべく早く投稿します。
しかし、4-1投稿までは期間をあけます。 理由は次回にでも。

あかん、久しぶりの投稿で心臓ばくんばくんいってる。

それとユーザーネームを真面目なものに改変しました。
旧 アヅラン・ヅラ
新 グリンチ

流石に勢いで付けた名前があまりにあれなもんで・・・
復活で区切りがいいので、すみませんがお願いします。


3-10

少数側が捕虜を得るほど大勝する、普通に考えれば夢物語だ。

相当な無茶をする必要があるが、度重なる問題から潤に無茶をさせないよう見張る人が多すぎる。

千冬もその傾向がある中、敵を確保するとなれば、これはもう一計案じるしかない。

こちらが引くタイミングを、敵が引くタイミングを合わせる。

それには第一段階として相手の撃破、簪の消耗、真耶の増援タイミング、その全てを調整する必要がある。

 

難しいが不可能ではない。

 

 

 

 

 

二手に分かれていたファンネルが海上を行く。

片方は戦闘を通り抜け二機目を狙い打つ。

足止めが最大の狙いのため、そちらのほうは適当に。

本当の狙いは先頭をひた走るリヴァイブ。

海面から発せられる太陽光の反射を利用しながら接近していたファンネルが、コ状になってその中間からビームを迸らせる。

エネルギーの束が宙を行き、突出していた、恐らく機動特化型の一人に殺到した。

接近するにはまだ時間がかかる間合い、突然の攻撃を受けたリヴァイブの一人は当然混乱――――するどころか逆に速度を上げて突き進んできた。

セシリアのティアーズと違い、本体の防御力不足を補うべく防御壁を張る事を想定しているヒュペリオンのフィン・ファンネルは、相応に大型であり、幾ら小細工をしたところで隠し切ることは不可能。

目に見えるものを回避しきるのは、強化人間にとって難しいことではない。

その辺りは流石と言える。

 

――コレだけ撃ってきて掠らせるので精一杯かよ!

 

なんという分かりやすい性格だ。 察する圧から三下としか思えないような絵に描いたような雑魚の言う台詞を感じた。

リヴァイブ側のパイロットが確認できる情報には、直撃した時に比べて極めて微小と言えなくも無いダメージ結果が表示されている。

フィン・ファンネルから射出されるビームの威力を考えれば、今の攻撃は装甲を掠めた程度と認識したのだ。

サブスラスターからアラートがでているが、飛行に支障が出ていない以上気にもとめなかった。

もしも、このリヴァイブのパイロットが楯無か千冬だったのなら、その絶技に舌を巻いただろうその攻撃を、それだけで済ませてしまった。

実際、画面で戦闘をモニターしていた千冬は声を出して笑ってしまった。

彼女ら曰く『何故そんな事が出来る?』

 

戦場ではミスを多くしたものから順に離脱していく。

しかし、強化人間の彼らは些細なことは気にしない。

ただ目の前の敵をどのように攻略するか、その程度の考えしかもてない。強化人間に弾雨の中を颯爽と突き進み、気持ちよく接近を果たせている、そう妄想する。

そういう風に作られているのだから。

恐怖し動けなくなったら、金をかけた手間が無駄になる。

使い潰してやろうとする意志には辟易するが、利用できそうなので利用する。

潤の経験と、強化人間に対する理解、そこから生まれる推察は見事に的中した。

 

「よし、さすが。 ……敵が一定のラインを超えてきたので迎撃を開始する。 簪は――」

「どうしたの?」

 

潤と簪がゆっくり前に出始めた時、最奥に陣取るリヴァイブが変なものを取り出した。

ボール、のような何かだ。

サッカーボールを持ち運ぶボールネットを髣髴とさせる。

 

「いや、後ろの奴……、なんだ、あれ。 ――記録装置? いや、爆弾? それにしても気配が……」

 

最奥に居座るリヴァイブが、そのボールのような変な物を持ち上げている。

まるで手を水平にしながら、円形の大きなバケツを持って廊下に立たされている小学生のような格好だ。

補助的な新兵器かと思っていたが、それにしては攻撃的なものを感じる。

 

「変なぶそ――」

「――! 龍咆だぁ!」

 

簪の腰を抱えて急速旋回を実施、突如質量を持った圧縮された空砲が海面に着弾し、巨大な水しぶきを吹き上げた。

両手に持った特長的な円状の何かは、どうやら中国の第三世代兵装である龍咆のようだ。

ただし威力が相当に違法改造されており、高出力低燃費の特性が更に際立っている。

最新技術をこうもあっさり流出させるんじゃないと悪態を付きそうになったが、ISそのものを流出させた国家があった事を知っていた潤は、取り敢えず目の前の戦況に集中することにした。

 

「なんで中国の武装が……」

「亡国機業、随分手広くやっているようだな。 簪、現在地から三百二十度反転、最高速で一秒前進した後、大きく弧を描きながら連中の上を取ってくれ。 俺は砲撃手の注意を引くために正面に出る」

「大丈夫?」

「弧状に移動しつつ、接近戦を挑んでくる無傷の奴に春雷で砲撃支援を頼む。 奴がそのまま無視してアリーナに向かう様なそぶりを見せたら一対一を維持するように苦心するように。 その場合は敵味方入り乱れての乱戦に持ち込むことにしよう」

「うん。 ……え、乱戦?」

 

こちらが少数での乱戦はどうなのか? 簪の目は如実にそう言っていた。

潤は言われる前に、乱戦に持ち込むための行動を起し始めた。

問題があろうとも消耗しないと逆に不味いのだ。

計画的に。

問答無用で行動を始める潤を目にし、簪は困惑しつつも二手に分かれる。

その潤と簪を目にしながら、リヴァイブ四機の動きも急激に変わった。

そもそも彼女らの目的は二人を撤退させずに釘付けにすること。

今回の目的は、戦場に出るだけで戦術レベルに支障を与える二本の柱、小栗潤、織斑千冬のどちらかを無力化することだった。

 

「DLlvBV1Op0C2BYzHL7AYL4qz0dfLjamR!? Kn1SFK8lruC9Rg9pi3t+YvtUxqmB8YDovOPnrWrHFJE=! uA931iUodCi2IwOu5UtvcZDWjOVgKmgpzlhjjs0T7h8dW2AEtpzhZN/n5WABj76yGMa6qkLnuYMZNmuugVZdv5P44/x4hpcOHkQyLNIbql/TEmihi64ZOQ==!?」

「Oj8PZHG/+wdsFsb81h4Y+mCA4pvjvIhR。 l4vqg/NSiwpdMCEldcerWSEyjfh8MgX/、tfEBEhSOWIGpsb4gjPDuzNZGpWUy5Jv4/iUHiMKOr1jAANqxG2pCG/LAJF9nG6S2Gz+SifWwiJA=。 o3KpYQgrcSBnu3mB5ye7BbDKM+79Df/opEHMmnQrhTsbP0e1n8iYXlGXu84F82olTzoscIKK9b9Voowam+M4iA==」

 

潤が思考に走るノイズ――戦闘中のブーストの意味不明な思考――に顔をゆがめた。

思考を読まれたことに対する警戒だろうが、最早潤にすら不協和音にしか聞こえない。

左右の龍咆の射出元から散弾のようなものが射出され――ているらしい。

目にも見えないその砲撃を『散弾』と予測され、完全に回避されてしまうのがどれ程恐ろしいかは実際その場にいなければ分からないだろう。

数十に散らばる弾雨を、事前に弾道を読みきった潤は最小限に動きで回避しつつ接近する。

初撃の一回でドリーと同じ素質を潤も持っていると判断したリヴァイブたちは、散弾での攻撃すら回避されるものと予測していたのか、回避行動で移動に制限がかけられている内に上を取る挙動を見せ始めた。

しかし、それらの動きも簪から放たれる春雷によって出鼻をくじかれる。

いいタイミングで振ってきたいい援護射撃に、潤は軽く口を吊り上げた。

その光景を見て砲撃方として距離を取っていた一機も、このままでは命中弾を得られないと判断したのが接近し始めている。

 

「よし、簪はそのまま側面上から援護射撃、折を見て逆サイドに抜けるまで最大速度で突っ切ってくれ。 その間、攻撃よりも回避に集中するように。 援護はする」

「……なにそれ?」

「慌てずじっくり、調子にのさせず、余裕を与えないように焦らしていこう。 相手の思い通りにさせない事を第一優先にしてくれ」

「何か考えがある、……って、そう、信じていい?」

「勿論」

 

連中の癖を、潤はとてもよく知っている。

ブーストプランの連中は三十分が戦闘限界時間だが、それ以前に集団で戦線に投下したことが極めて少ない。

なぜかというと、連中は癖が強すぎるせいで仲間割れをしょっちゅう起こすのだ。

ブレインになってマシになったが、ブーストの連中は調子に乗っているときは互いを利用しあうようにギブ&テイクが成立するが、もし仲間が足手まといと彼らが判断したら――。

 

 

――弱点を突くのが戦の常道。 恨むなよ……。

 

 

ブーストプランで生まれ、戦うことでしか自分の存在価値を表現できない連中は、潤からすれば仲間といえなくも無い。

思うところはあるが、敵として出てきた以上、その特性を利用して踏み潰してやろう。

 

 

 

そこから先は世界各国の軍人から、ISが空の主力と見据えられるに相応しい光景が繰り広げられた。

ISと戦闘機の大きな違いは、武装の多彩さと旋回速度である。

特にヒュペリオンの機動力は群を抜いている。

仮に戦闘機が後方から空対空ミサイルに晒されたら逃げるしかない。

Gで身体が壊れそうになっても着弾すれば死ぬのだからそうなるし、実際ISが出現するまではステルス機などで接近し、ミサイルを発射して即離脱する戦闘スタイルが理想だった。

ISの場合は、真横ないし鋭角に回避運動を行ってミサイルを撃墜できる。

この一連の流れが戦闘機と違って段違いに速い。

IS万能論などといった風潮が出来るのも頷ける。

数が揃えられないので、『ISがあればなんでも解決する』、そんな主張はナンセンスだと潤は考えているが。

 

 

潤と簪の息の合った高機動高速戦闘は、防御戦闘に必要とする物を完全に供えていた。

遠方と下方から迫り来る砲撃を回避するため常に動きつつ、飛び掛ってくる三機を春雷とビーム・ライフルで牽制して再度距離を取る。

やや団子状になりながら三機を引っかきまわした二機は、やや離れていた砲撃支援型の一機に対して急接近した。

潤が挨拶代わりにビーム・ライフルで攻撃するが、巨大なシールドとなっているアンロックユニットに阻まれてまったく歯が立たない。

ヒュペリオンとほぼ同時に体勢を整えていた打鉄弐式から続けざまに春雷が放たれるが、コレもシールドに阻まれる。

が、更に旋回した潤のヒュペリオンから放たれる蹴りには対応できなかった。

 

「簪、合わせろ!」

「うん!」

 

体勢を崩した一機に春雷を直撃させ、接近してきた近接型のリヴァイブに押し付けた。

衝突して絡み合った砲撃方と汎用型、二機のリヴァイブが海に落ちる。

あまりに攻撃が単調なので面白いように誘導が成功し、あたかも掌の上でハイなタンゴのダンス教室をさせているかのようだ。

あまりに上手くいっているせいか、二人だけで演習をしているかのようで、簪はちょっとだけ愉快になって潤のほうを見た。

潤も上手く戦況が動いていることに満足しているのかうっすら笑っている。

目が合った。

必要としてくれているのが分かって、一緒に戦えているのが嬉しくて、踊っているかのような気分になった。

 

「――潤!」

「急速旋回!」

 

共に再旋回を始めたヒュペリオンと打鉄弐式。

高低差を利用して落下しながら攻撃してきた近接型をバッと散開して回避、素通りして後方のもう一機に波状攻撃を繰り出した。

同じ高機動型で合わさった以上の連携がある。

トーナメントで実際に行った経験が生きた。

確かにブーストプランの連中は驚異的だ。

前回の学園祭みたいに少数で多数を相手取るならば、普通の代表候補生以上の性能を発揮するだろう。

ラウラが攻め切れなかったのも頷ける。

あれらはそういう風に作られているのだから当然だ。

期待された性能を期待されたとおりに発揮しただけにすぎない。

しかし、型にはまらなかった場合、意図も簡単に敗れてしまう。

今はそういう状況なのだ。

 

先ほど二人に無視されるかのように素通りされた近接型が、自分を無視するとは何事かと怒り狂うかのように接近してくる。

潤がそれに対抗すべく、三百六十度反転し目の前に躍り出る。

ようやく自分の戦いたいように戦えるとリヴァイブのパイロットが獰猛な笑みを浮かべるも、それが崩れるまでほんの僅か。

直角に上昇して空に逃げるヒュペリオン。

何事かと目を見開くも、考える暇が無かった。

ヒュペリオンの機体に隠されていた山嵐、――六機八門のミサイルポッドから放たれた最大数の計四十八発のミサイルが全て突き刺さったからだ。

黒い煙を上げてパイロットの一人が墜落していく。

トドメとばかりに潤もミサイルランチャーを叩き込む。

明らかなオーバーキル、目を覚ますのも時間が掛かるだろう。

溺れ死ぬには浅瀬過ぎるこの海は、IS学園のホームグランド。

一度堕ちれば死ぬ前に回収可能と来ている。

接近戦型のリヴァイブが一機敗北したことを契機に、戦況が大きく変わった。

 

「bNAZ1antgddIAOmHa47w+ZNP+r43y7aMBRx3c4pOQVjYLkgAEJyJxcR9vss2DQrSyLbDukFVtcM=!」

「……なに? なに、この騒音?」

「気にしなくていい。 雑音は雑音だ(鬱陶しい、と言っているが、翻訳すると追求が面倒だ)」

 

口から出た鳴き声に、簪が整った細顔を顰める。

潤は慣れた顔なのが心を揺さぶるも、戦闘中だったこともあり、そのまま流した。

 

「pVusMHR2VrXZ6lmbyMPyGVF93TwM21gd1nLedQi4wHs=!」

 

目の前で獲物がウロウロしているのに、狙い撃っても全く当たらない。

何もかも上手くいかない状況に、とうとう痺れを切らしたのか海から再び空に戻った砲撃型の一機が、全砲門で一斉射撃を開始した。

その適当に過ぎる攻撃を、見えない攻撃であっても潤と簪は難なく回避する。

と、いうより、砲撃はあらぬ方向に飛んでいったのでかわすのは楽だった。

狙いは、高機動型と汎用型。

つまり、味方だった。

 

「……え、え? なんで? なにが起こったの?」

「よし! 上手く行き過ぎてこちらの思惑から外れたが、実戦なんてこんなもんか。 簪、残弾やエネルギーはどうだ」

「残弾はまだまだ大丈夫だけど、補給は必要かなって……、だけど……。 けど、味方を平気で……?」

 

潤はもう敵を敵としてみてなかった。

簪の春雷と山嵐を大量に使わせたことを確認し、退却する理由をなんとか見出して胸をなでおろした。

そんな二人の目の前で、生き残ったリヴァイブ三機が生き生きとした表情で味方同士殺しあっている。

あるあると言えるのは、同類かかつての研究者ぐらいだろう。

潤は壮絶に殺し合う襲撃者を尻目に、簪に用意周到に計算して割り出した位置へと付くように指示を出し、後々のことを考えながら観戦する構えに入った。

 

「IqTREJHj6L6aBYKNBhFnZw/HPJZs72su! ああ、もう、暗号化メンドくせぇ! 死ねぇ、トリアァ!」

「LS+dw+zDC+jCAumXKWfRdA==? だけど、メンド臭いのは同感。 それと、煩いのはお前だろうが、デュオ!」

「邪魔、邪魔、煩いお前が一番邪魔なんだよデュオ! お前もついでに堕ちとけ、トリア! うざいんだよ」

「ヘン! この野郎!」

 

危険領域と安全領域のギリギリをうろつく潤に誰一人目もくれない。

その視線の先には、恐らくIS学園の一年において最上級クラス、ラウラ、シャルロットレベル以上の三人が激戦を繰り広げている。

高機動戦を主体とした一人は見事な対狙撃制動を見せ、隙を見いだせば火のでるような勢いで果敢に責め立てる。

砲撃型も負けてはいない。

懐に入られる前に後方に対して瞬時加速を行い、様々な銃火機を駆使して火の壁を生み出して迎撃する。

どちらも勇猛にして果敢。

汎用型の奴も二人をいなしつつ漁夫の利をねらうことに余念がない。

片方に決定的な契機が生まれようものならすぐさま妨害行為を行う。

標的の二人はそれを忌々しく感じ、時折彼女のISを叩き落とさんとするが背中を撃たれかねないので大きく動けない。

三つ巴のドッグファイトは完全に拮抗していた。

しかし、ISのエネルギーもそうだが、彼女らにはもっと切迫したタイムリミットが存在している。

 

「――うっ!?」

 

変化は唐突だった。

砲撃型を使用していた一人が、足をぴーんと延ばして仰け反り、身体をガクガク揺らして痙攣し始めた。

それこそ潤が待ち続けた勝利への布石。

ブーストプランには色々な欠点がある。

早く戦力化したための代償ともいえる負の遺産だ。

団体行動できないゆえに単一で動くしかなく、最終的に使いつぶすしかなくなる点。

その上、副作用を抑える薬が切れると役に立たなくなる。

使い潰したり、捨て駒にしたりするのが運用法となるが、金がかかるくせにリターンは少ない。

そんな技術など廃れて当然であって、すぐさまブレインと呼ばれる次のプランが考案された。

次の問題は、副作用が切れる時間に個人差があったこと。

解決方法の模索もされなった大問題だ。

足並みがそろえられない軍隊なんて民兵との違いが見いだせないレベルでひどい。

 

 

四人のうち一人(近接型)を戦闘不能にし、苛立たせて仲間割れを引き起こす。

薬切れをねらって三人のうちだれか一人(砲撃型)を戦力外とする。

二人のうち一人(高機動型)をあらかじめスラスター不調に追い込んでおく。

 

 

『数が下回った相手を囲んで棒でたたく』人類史に名だたる戦術家であるハンニバルもフリードリヒも、これ以上の戦術を見いだしていない。

全てはこの時のため――機、舞い降りる。

 

「簪、此処で決めるぞ。 山嵐を指定した範囲に全弾ランダムにばら撒け。 その後、二秒後に指示する座標と角度に春雷を全弾発射しろ」

「わかった」

「いくぞ、ビーム・コンヒューズ」

 

ビーム・サーベルを手から放れても出力維持可能なようにして放り投げる。

この攻撃で潤と簪を思い出した汎用型は、雨の様に降り注ぐ山嵐を前に後方に下がるしかない。

邪魔者はいなくなり、事はスムーズに運ばれる。

ビーム・サーベルへ攻撃、ビーム・ライフルを乱射。

エネルギー同士が過干渉をおこし、ライフル状のエネルギーが形状を崩して広がり一機のIS、高機動型に直撃した。

彼女にしてみれば誰を狙うにしても上方向に逸れているといった意味不明な方向に、まさかの切り札である剣を放り投げ、さらにはビーム・ライフルを刃に直撃させて反射させるといった意味不明な行動の末の直撃。

これは仕方がないものだろう。

 

 

問題があるとするならば。

 

彼女のISが最初に潤のファンネルシャワーを浴びていた機体だったということだ。

 

「こんな小細工……、テメェも、う、え、ああああぁぁぁぁ」

 

小規模な爆発の後、ダメージの少なさだけはしっかり確かめ、怒り心頭で小癪な攻撃をしてきたヒュペリオンに接近。

――しようとしたが、ISが非常に不格好な前周りをした上で逆周りと側転を繰り返し始めた。

見るとサブスラスターから煙が上がっている。

 

そして、海上に巨大な爆炎が生まれ、発生した衝撃波は海面を揺らした。

簪に指示した春雷がメインスラスター含め、高機動型に着弾して発生した爆発だった。

 

「最初のファンネルの攻撃って……」

「ああ、サブスラスターを狙っていた。 穴が小さすぎて頭痛がするほど大変だったが、その価値はあったようだ。 スラスターが不調を起している状態での高機動戦に加え、弱いといえもう一度衝撃を加えればああもなる。 手足によるAMBACを機能不全にするには充分だ。 ――さて、溺れたお嬢さんを救助して差し上げないと。 ……不測の事態が起こった場合、捕虜の確保を最優先として速やかに戦闘区域から離脱してくれ」

「……また、無茶、するの? 絶対止めるよ?」

「万が一の万が一が重なることは実際良くある。 残弾ももう無いだろ? それに、遅延戦術を取って援軍を待つのは常道だ」

 

なるべく早く救援を引き連れて戻ってきてくれれば、それだけ危険も減る。

そういたずら小僧の様に笑われては、ジト目の簪であっても追撃の言葉が出なかった。

 

 

 

実際、この後直ぐにでも敵の援軍があることは承知の上だった。

 

 

 

適当に四人を蹴散らして、簪にはとっとと帰ってもらって、狂犬と蝶の奴と戦う想定だった。

捕虜を持ち帰ってもらって。

今回の目標は撃退でなく、捕虜の確保。

理由を付けて簪に奇麗に帰ってもらうのが至上の目標である。

そのための残弾ゼロ、そのための消耗。

 

「よしいいぞ。 今回は完璧じゃないか」

 

――私の仲間は誰一人やらせない

 

「貴様との決着も付けられれば、尚更完璧になろうというもの……。 来いよ、狂犬」

 

靄がかかって見通すことが出来ない真っ黒な心。

意志だけははっきり潤の心にダイレクトに突き刺さる。

まるで降り注ぐ雨の様に、落ち行く流星の様に、合計三十程の煌きが頭上に広がる。

可変装甲の展開、そして高高度からの襲撃は、戦いの第二幕、その幕開けだった。

 




復ッ活ッ

作者復活ッ!

作者復活ッ!

範馬刃牙復活ッ!

範馬刃牙復活ッ!

範馬刃牙復活ッ!

感想お待ちしてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。