『ありがとう』をキミに   作:ナイルダ

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今回の本編は裁判パートですが、カットが激しいのでおよそ原作と同じであると理解してくれればそれで大丈夫です。


chapter1 イキキルⅣ

ーー苗木視点ーー

 

(学級裁判がついに始まった…。ボクが犯人でないことを証明しなくちゃ…みんなが…!)

 

全員が移動し終えると、モノクマは学級裁判についての説明を再び行う。

 

「それじゃあ、オマエラ…ルールは理解したね。早速始めようかッ!」

 

「ちょっと待って…。あの写真は何かしら。」

 

「それに、そこにある空席は何なのですか…?わたくしたちは15人ですのに…。」

 

苗木は今までの捜査を頭の中でまとめており、霧切たちの話を聞いている余裕は無かった。

16人目の空席についての話を聞いていたならば、冷静になれたかもしれないが…あいにくとそれは叶わなかった。

 

「それじゃあ、改めて…。議論を始めてくださーいッ!!」

 

いよいよ学級裁判の幕は上がる。

 

 

***

 

 

「断言しよう!殺されたのは舞園さやかだっ!」

 

「現場は苗木の部屋だったな…。」

 

「きっと舞園さんは抵抗する間もなく殺されちゃったんだね…。」

 

「それは違うよ!思い出してみてよ…ボクの部屋の状況を……、」

 

 

***

 

 

議論は凶器の話へと移っていく。

 

「舞園さんは厨房の包丁で殺されたはずだよ。厨房の包丁が一本無くなっていたんだ…!」

 

「なるほどな…。」

 

「そんで…、凶器が包丁つーのはわかったけどよ、結局苗木が犯人なんだろ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

「その結論は、また後にしましょう…。まだ十分話し合っていないわ…。」

 

霧切の発言により議論へと戻る生徒達。

 

「で、凶器が包丁だから何なのよ…。」

 

「どーせ苗木が厨房から持ってったんでしょッ!」

 

「それは違うよ!厨房から持ち出したのはボクじゃない…。朝日奈さん…、キミなら証言出来るはずだ…。」

 

証言を進める朝日奈だが、腐川が2人が共犯関係ではないのかと言及する。

モノクマはそれに、実行犯のみが〝卒業〟出来ると答える。

 

「じゃあ、共犯の線はなさそうだな…。」

 

「とにかく、ボクは包丁を持ちだしていないし犯人なんかじゃないよッ。」

 

「じゃあ、包丁を持ちだしたのって…、朝日奈さんなの…?」

 

「ま、待ってよ!私じゃないよッ!食堂にはさくらちゃんといたし…。」

 

「では、食堂にいた2人でもないとなると…。」

 

「じ、実はもう1人…、食堂に来た人がいるんだ…。」

 

「それは誰かしら…。」

 

「えっと…、舞園さやかちゃん…だよ…。」

 

「じゃ、じゃあ…、包丁を持ちだしたのって…舞園さん…?」

 

「そうとしか考えられまい…。今思い返せば、あいつの言動は少し不自然だった…。」

 

「では舞園は包丁を犯人に奪われて殺されたわけだ…。つまり包丁を持ち出せなかったからといって、容疑が晴れるわけでわないということか。」

 

「えっ…!」

 

「やっぱり苗木が犯人なんじゃないッ!」

 

(違うんだよみんなっ!くそっ…どうすれば…。)

 

言い返せない苗木に霧切が助け船をだす。

 

「待って…。今回の犯人は、部屋の持ち主ではあり得ない行動をとっていたわ…。

現場には本来あるはずのモノがなかった…。

苗木君、ここまで言えばわかるわね?」

 

霧切はこれ以上の手助けはしないといった表情で、苗木に話の流れを渡す。

暫く考え込む苗木。

 

(そうか!わかったぞ!!)

 

「現場にはボクの髪の毛が一本も落ちていなかったんだ!」

 

そして議論は再び動き出す。

 

 

***

 

 

「もう一つ、苗木君が犯人じゃない根拠があるわ…。」

 

「聞かせてもらおうか…。」

 

「シャワールーム周辺のことを思い出してみて…。犯人はすんなりシャワールームに入れたのかしら?」

 

「犯人はシャワールームに入る際、かなり手こずったはずよ…。その証拠だってある…、苗木君、覚えているでしょう?」

 

霧切はそう言うと再び苗木に話をふる。

 

「…それって、ドアノブのことだよね…。」

 

「そう、それが苗木君が犯人ではないというもう一つの根拠よ。」

 

「ドアノブを壊すしかねーんなら、壊すんじゃねーの…。部屋の持ち主だからって、あり得ねー程じゃねーだろ!」

 

桑田の発言に対し、霧切はこれまでの事件の流れを整理していく。

 

 

***

 

 

「シャワールームに鍵がかかってたから壊したんだろ?」

 

(今の桑田クンの発言…。)

 

「それは違うよ!

そもそもシャワールームに鍵が付いているのは女子の部屋だけだよね…。」

 

「じゃあ、どうして開かなかったのぉ…?」

 

「ドアの建付けのせいなんだ…。」

 

「は…?ドアの建付け?」

 

「ボクの部屋のドアは建付けが悪かったんだ…。モノクマが証人だよ…。」

 

モノクマは苗木の発言に賛成の意を示す。

 

「犯人はそれを鍵のせいだと勘違いをして、ドアノブを壊そうとしたのよ…。」

 

「しかし、どうして苗木君の部屋ですのにそのようなことを…?」

 

「犯人は現場に関して重要なことを知らなかった…。」

 

苗木は考えをまとめて発言する。

 

「犯人は現場が舞園さんの部屋だと思い込んでたんじゃないかな…。」

 

「そう…、正確には苗木君と舞園さんが部屋を交換していたことを、犯人は知らなかったのよ…。

そして、現場が舞園さんの部屋であると勘違いをした…。」

 

「ドアが開かない理由を知っていたボクなら、そんなことしないはずだよ…。」

 

苗木が犯人ではないという結論に至る生徒達。

しかし、議論が振り出しに戻り数名の生徒たちは焦り出す。

 

「どなたか…、些細なことでもいいので、疑問に感じていることはないのですか?」

 

セレスの発言に暫しの静寂の後、朝日奈が応える。

 

「疑問ならあるよ!えーとね…、そもそも犯人はどうやって苗木の部屋に入ったのかなーって。」

 

滞りかけた議論はどうにか動き出す。

 

 

***

 

 

「舞園さんは怯えていたんだ…。だから、舞園さんが犯人を部屋に入れるだなんて…」

 

「彼女が怯えていたことが…、ウソだとしたら?」

 

霧切の発言に、苗木は必死に反論する。

しかし、霧切が見せたソレに言葉を失う。

霧切は鉛筆でこすり、文字の浮かび上がったメモ帳を見せた。

 

「このメモ帳が置いてあったのは、苗木君の部屋のデスクよ…。

これを事件前に残せるのは、苗木君の部屋に入ったことのある人物だけ…。

これを書いたのは苗木君?」

 

「い、いや…、違うけど…。」

 

「それはそうとして…、仮にそのメモを受け取ったとしても、その人物は苗木君のいた舞園さんの部屋に向かうのでわ?」

 

止まりかけた思考を再び動かす苗木。

 

「ボクと舞園さんの部屋のネームプレートは入れ替えられていたんだ…。」

 

「つまり、舞園のネームプレートがある部屋には、本当に舞園がいたわけだ…。」

 

「じゃあ、メモ通りに動いても、犯人は問題なく苗木君の部屋に行けたんだね…。」

 

「そう。それじゃあ…、ネームプレートの交換を行ったのは誰なのかしらね…?」

 

この時既に、苗木の頭の中には最悪の答えが浮かんでいたのかもしれない。

 

「ネームプレートの交換が出来たのは、ボクか舞園さんだけだ…。

でも…、どうしてそんなことを?」

 

「彼女は部屋の交換を隠した上で、自分の部屋に犯人を呼びたかったのよ…。

この理由を知るには、彼女が犯人を部屋に招き入れた後に何があったのかを知る必要があるわ…。」

 

そうして議論は、部屋で何があったのかということに移っていく。

 

「あの部屋では最初に、舞園さんと犯人の争いがあったのですよね…?」

 

「現場に落ちていた模擬刀は、その争いに使われたのか?」

 

核心に迫るにつれ、議論は加速していくーーー

 

舞園の手首の骨折、模擬刀の鞘の傷、ーーー

 

 

***

 

 

「舞園さんが模擬刀を使ったとは考えられないわ…。」

 

「はぁ!?なんで考えらんねーんだよッ!」

 

「舞園さんの手の平には金箔が付いていなかった…。」

 

「つまり、模擬刀を使ったのは犯人の方ということかッ!」

 

「じゃあ…、舞園さんが…、包丁を…?」

 

「包丁で襲いかかられた犯人が模擬刀を使った…。つまり最初に襲いかかったのは…。」

 

「…ま、舞園さん!?」

 

「彼女はただの被害者…、というわけではなかったみたいね…。」

 

「それどころか…、まるで自らが殺人を行おうといていたようだな…。」

 

次々と脳内で鳴り響く言葉に、苗木は動揺を隠せない。

 

「ネームプレートの交換の申し出は彼女からでしたわよね?もしかすると、苗木君に罪をなすりつける為にそうしたのかもしれませんわね…。」

 

状況証拠を淡々と述べていくセレス。

その一方で、苗木の頭の中は真っ白になる。

議論は舞園の行動とその理由についての言及へと移っていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ…!そんなはずがない…!だって……ッ!」

 

苗木の反論はモノクマによって遮られる。

 

「そんなこと話してていいのー?早くクロを決めないと、時間切れになっちゃうかもよッ!!」

 

「………。」

 

「苗木君、今は議論に集中して…。犯人を突き止めなければ、全てが終わってしまうのよ…。」

 

みたびの静寂がその場を支配する。

苗木は挫けることなく再び考えを巡らせる。

 

(新しい手がかりなんてもう…。いや…、待てよ…。確か……、)

 

「手がかりなら、まだあるかもしれない…。舞園さんが残したダイイングメッセージだよ…。」

 

「ダイイングメッセージ…、舞園さんの背中にあったあれね…。『11037』と書かれた血文字…。」

 

「その前に、そのダイイングメッセージは舞園さん自身が書いたのですか?」

 

セレスの問いに苗木は落ち着いて答えていく。

 

「舞園さんの左手の人差し指が血で汚れていたのは、ダイイングメッセージを書いたからだよ…。」

 

「それで…、その『11037』って何なんだ?」

 

「考えてみたんだけど、その文字列に意味は見いだせなかったんだぁ…。」

 

「当たり前よ…。だって数字じゃないもの。」

 

止まりかけた議論は霧切によって進められていく。

 

「あの血文字…、時計回りにひっくり返すのよ…。」

 

そこには犯人の名前が書かれていた。

 

「…このダイイングメッセージを180度回転せせると…『LEON』って文字が見えてくるんだ…。

これって…桑田クンの名前だよね…!?」

 

「なっ…!!」

 

桑田は短いうめき声を上げる。

 

「な、なに言ってんだよ…たまたまだってーの…。たまたまそう見えただけでッ!偶然の産物だってーのッ!」

 

興奮状態の桑田に霧切が追撃をかける。

 

「偶然ではないわ…。彼女の体勢で文字を書いてみればわかるはずよ…、字が反転してしまうことがね…。」

 

「そんなん、後からなんとだって言えるだろーがッ!」

「オレが犯人だぁ!?テキトー言ってんじゃねーって!!」

 

尚も霧切は追撃の手を緩めない。

 

「じゃあ、どうしてあなたは証拠を処分しようとしたの?

苗木君…、あなたも気付いているでしょ…。」

 

「焼却炉の前に落ちていた、ワイシャツの燃えカスのことだよね…。」

 

「ワイシャツの燃えカスだけじゃ、誰のモンだかわかんねーだろ!」

 

「確かにこれだけじゃ、桑田クンのモノだとは言い切れない。

だけど、他の状況からならわかるかもしれない…。

ワイシャツを処分した方法…。

これがわかれば犯人を割りだせるはずだよ…。」

 

桑田を置き去りにし、議論は尚も加速する。

 

 

***

 

 

「成る程なぁ…。つまりッ!トラッシュルームの鍵を自在に開閉できる掃除当番が犯人ってことになるよなぁ!!」

 

「なるへそ、なるへそ…って…ブヒッ!!」

 

苗木はトラッシュルームで何があったのかを落ち着いて考える。

 

(焼却炉での証拠隠滅方法こそが…、桑田クンが犯人であることを示しているんだ…!)

 

「焼却炉に近づけねーならッ!証拠隠滅なんてできねーーッ!!」

 

「それは違うよッ!」

 

苗木はトラッシュルームで起きたであろう出来事の推理を話していく。

 

「い、いや…、ちょっと待てって…!」

「そ、そうだ!焼却炉と鉄格子がどんだけ離れてると思ってやがるッ!」

「ガラス玉を投げてスイッチを押すなんて…、そんなん不可能に決まってんじゃん!」

 

桑田は必死に反論するも、苗木は言葉を続ける。

 

「いや…、〝超高校級の野球選手〟である、桑田クン。キミだったら…、不可能じゃないはずだよ…。」

 

「バ、バカ言ってんじゃ…ねーって…!」

 

苗木の意見に賛成の色を示す生徒達。

 

「ふ、ふ、ふ、ふざけんな…!オレは…オレは…!」

「犯人なんかじゃねえっつーのッ!!!」

「つーか、今の推理だって、ぜんっぜん間違ってんだよッ!!」

 

考えることを止めた桑田は、感情的になり叫び続ける。

苗木は桑田を説き伏せるべく、今回の事件の全貌を話していく。

 

 

***

 

 

「ーーーーー。これが事件の全貌だ。そうだよね?桑田怜恩クン!」

 

「どう、桑田君?何か反論はある?」

 

「反論があるかって…?」

 

暫くの沈黙の後、桑田は大声で叫ぶ。

 

「あるよ!あるあるッ!あるに決まってんだろぉぉがッッ!!」

「今のだって全部憶測じゃねーかッ!証拠がねーだろうがッ!証拠がよぉぉッ!!」

「証拠がなけりゃ、ただのデッチ上げじゃねーかッ!んなモン認めねーぞッ!!」

 

聞き入れようとしない桑田に、苗木は事実を突きつける。

 

「ボクの部屋のドアノブはネジが外されていたけど、どんな道具を使ったんだろうね…?」

 

「そんなもん…工具セットを使えばいーだろ…。」

 

「そうだね…。だけど、ボクの部屋の工具セットは使われていなかったんだ。

犯人は舞園さんの部屋だと思い込んでたから、工具セットがあるとは思わなかったんだろうね。

だったら犯人は、誰の工具セットを使ったのかな…?」

 

「アホアホアホーーッ!!」

 

「きっと犯人は自分の工具セットを使ったはずだよ!」

 

「アホアホアホーーッ!!」

 

「桑田クン…、キミの工具セットを見せてくれるかな…?ボクの考えが正しければ…、」

「その工具セットのドライバーには、使用された痕跡が残っているはずだッ!!」

 

「アホアホ…あぁ?」

 

「言っておくけど…、なくした、なんて言い訳はなしよ。」

 

「ア…ホ………アァ………ーーーアポ?」

 

桑田はそれきり黙り込んでしまった。

 

「ふん…。反論は出来ないようだな。」

 

「これで終わり…ですわね…。」

 

今まで沈黙していたモノクマがしゃべり出す。

 

「うぷぷ…、じゃあ、そろそろ投票タイムといきましょうかッ!!」

「オマエラ、お手元のスイッチで投票してくださいッ!」

 

 

***

 

 

待つこと数秒…、ルーレットが動き出す。

そしてそれは、桑田の顔が映し出された場所で止まる。

 

「うぷぷ…、大正解ッ!今回、舞園さやかさんを殺したクロは…、桑田怜恩クンでした-!!」

 

驚きの声を上げる数名の生徒達と、諦めの表情をする桑田。

 

「だってよ…。し、仕方ねーだろ…。」

「ヤるしかなかったんだからよーーッ!」

 

苗木は自分の推理が正しかったことがわかると、舞園のことを考える。

 

(あの映像を見てしまったせいで…、こんなことに…。悪いのは…モノクマだ…ッ!)

 

「苗木クン、舞園さんに裏切られちゃって…〝絶望〟した?」

 

モノクマの質問に苗木は叫び声を上げる。

 

「お前の…、お前のせいでッ!」

 

今にも飛びかかりそうな苗木を霧切が止める。

 

「もう少しで校則違反だったよ…。

まぁ、いいや。それじゃあ、気を取り直して…。

学級裁判の結果、見事にクロを突き止めましたので…、クロである桑田怜恩クンのおしおきを行いまーす!!」

 

「ちょ、ちょっと待てって!!オレは仕方なくやったんだ!!」

 

「命乞いなんて聞きませんッ!これがルールなんだからッ!!」

 

「や、やめてくれッ!!」

 

「それじゃあ、逝ってみよう!おしおきターイム!!」

 

「イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ…!!」

 

 

 

桑田の叫び声など露程も聞かず、モノクマは何かのボタンを押す。

すると、どこからともなく飛来した金属の枷がガッチリと桑田の首を固定し、突如裁判場の横に現れた空間へと容赦なく引きずっていく。

その後、桑田はフェンスで囲まれた野球場のような場所の真ん中に磔にされる。

そこへ生徒達が集合する。

これから何が起きるのかと、誰も桑田から目を離せない。

そして、全員が揃うと〝ソレ〟は始まった。

凄まじいスピードで連射されるボールは悉く桑田へと命中していく。

そして数秒後、土煙が晴れるとそこには……

 

 

『服がボロボロになり、体中に痣ができた血まみれの桑田怜恩』

 

 

……がいた。

誰も声を上げることが出来ない。

そんな中、モノクマは1人興奮気味だった。

 

「エクストリーーームッ!!!」

 

目の当たりにした絶望に、恐怖の声を漏らしていく。

 

「あれもこれも…、外に出たいと思ったオマエラが悪いんだよ!外の未練を断ち切れば、こんなことにはならなかったのにね…、うぷぷ…。」

 

「こんな場所にいきなり閉じ込められたら…、誰だってそう思うでしょっ!!」

 

「ふーん…。まあ全てを知ったとき、オマエラは今がどれだけ幸せかを知るんだろうねッ!」

 

それだけ言うと、モノクマはどこかへ消えていった。

その場を動けないでいた苗木に霧切が歩み寄る。

 

「どうしたの?霧切さん…。もしかして…、舞園さんのこと…?」

 

「ええ…そうよ…。舞園さん、彼女はきっと…死の間際にあなたのことを考えていたはずよ…。

彼女が最後に考えたのは、あなたをどうやって助けるか…だったはず。

あなたがどうなっても構わないのなら…、ダイイングメッセージなんて残さなかった…。

彼女は迷っていたのよ…。だから失敗してしまった…。」

 

「どうしてそんな話を…?」

 

「あなたは乗り越えられる人間だから…。」

 

苗木は暫く考えると、霧切に告げる。

 

「ボクは乗り越えなんてしない…。全部引きずって…、みんなの想いを引きずったまま前に進むんだッ!」

 

「そう…、期待しているわ…。」

 

霧切はそう言うと、小さく笑った。

 

「苗木君、もう一ついいかしら…。」

 

「何?」

 

「どうして私が舞園さんの話をするとわかったの?」

 

「あぁ、それは…、」

 

苗木は懐かしむように答えた。

 

「エスパーだから。…冗談…、ただの勘だよ。」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

突然、校内放送が鳴り響く。

それは聞き覚えのない声だった。

 

「はい、オッケイでーーすッ!chapter1撮影完了ですッ!

正面玄関の扉は開いていますので、そこから出てきてくださいーー。」

 

あまりにも唐突な出来事に、苗木の頭は真っ白になる。

そこへ、イタズラが成功した子供のような笑みを浮かべた霧切が近づいてくる。

 

「さぁ、苗木君。帰りましょうか。」

 

「えっ…はっ………えぇ!?ど、どういうことなのッ!!」

 

苗木をはじめとした混乱する生徒達をセレスや大神が落ち着かせる。

 

「どういうことって…これは映画撮影なのよ?」

 

「舞園さんや桑田クン…、それに江ノ島さんだって…!!」

 

「江ノ島さんと言っている時点でまだ混乱しているようね…。取り敢えずここから出ましょう。」

 

霧切そう言い、一同はエレベーターへと乗り込み、学園の外へと移動を始める。

 

 

***

 

 

学園の外に出るとそこには……

 

 

〝元気な姿の舞園さやかと戦刃むくろ〟と〝顔面痣だらけの桑田怜恩〟

 

 

……がいた。

 

「舞園さんッ!!」

 

苗木は舞園の姿を見つけると、彼女の元まで走り寄る。

 

「舞園さんッ!無事だったんだね!?」

 

「はい、私の体に異常はありませんよ。」

 

心から心配する苗木に、申し訳なさそうに返事をする舞園。

 

「おい!苗木!舞園ちゃんよりオレの心配しろよッ!痣だらけなんだぞッ!!」

 

先程とは一転穏やかなムードに包まれる一同。

そこへ、77期生のメンバーがやって来る。

 

「みんなお疲れ様!」

 

「凄い臨場感だったよー。」

 

「まっ、あんだけのことすりゃーな…。」

 

次々と激励と感想を述べていく77期生。

 

「みんなありがとう…。」

 

苗木は全員が無事であるとわかり安堵する。

そして当然の疑問をぶつけた。

 

「ねえ、舞園さんの死体とかって…何だったの?ボクの見間違いだったとか…?」

 

「いいえ、見間違いではありませんよ!それじゃあ私が何をしていたか、お話ししますね…ーーーーー」

 

 

 

 

 

chapter1  END




ーーウサミよりーー

ミナサン、こんにちはでちゅ!
舞園さんたちが無事で安心しまちたね!
安心したところで、仕事を始めまちゅよ!


以下ウサミファイルより抜粋

・chapter1の撮影が完了する。

・舞園さやか並びに戦刃むくろ、桑田怜恩は存命。


それではミナサン!また今度も会いに来てくだちゃいね!
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