『ありがとう』をキミに   作:ナイルダ

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本編序盤ですが、タイトルに似つかわしくないコメディー要素を多分に含みます。
終盤に連れてシリアスな話に移行していく予定です。
キャラ崩壊があるかもしれませんがあしからず。


chapter0 再び動き出したモノガタリ 

ーー苗木視点ーー

 

(ここが私立希望ヶ峰学園か…)

 

都会の真ん中に堂々とそびえ立つその巨大な学園の正門前に、彼はいた。

 

(緊張するなぁ…)

 

ここ、私立希望ヶ峰学園は飛び抜けた才能を持った限られた人間しかその門をくぐれない、完全スカウト制の入学制度を採用していた。今は普通科という一般入試も存在するが、特別科は今も昔もその制度である。

そんな特別科の入学式に彼、〝苗木誠〟はこれから参加しようとしていた。

 

(事前にどんな人たちが入学するのか噂程度は調べたけど……やっぱりボクなんかが入学するようなところじゃないよな…。

でも、小学生の時に一悶着あった彼女や、中学校でよく話をした彼女が入学するというのは納得である。なにせ〝超高校級のギャル〟と〝超高校級のアイドル〟なのだから)

 

あまりに広大な土地故に若干迷子になりつつも、苗木はどうにか集合場所に到着した。

苗木が集合場所である正面玄関に着くと、既に10人程の生徒がいるのを確認できた。

 

「キミ!5分遅刻だぞ!」

 

「まだ指定時間の5分前じゃん。何言っちゃってんの?」

 

「学生たるもの、10分前行動は当たり前だろう!」

 

白い制服をキッチリと着こなした生徒と、それとは対照的な派手な制服を着た生徒とが軽く言い合っている。

 

(あれって江ノ島さんだよね! 久しぶりだなぁ……中学に進学して以来音信不通だったから心配してたんだけど。でもまぁ気まぐれな彼女のことだ、元気にやっていたのだろう)

 

苗木は久しぶりの再会だったが雑誌やテレビなどで彼女の活躍は見ており、一目で誰だか判断できた。

そんな若干の感傷に浸っていた苗木に近づいてくる人物がいた。彼女もまた、苗木とは親しい間柄であった。

 

「あのー、もしかしなくても…、苗木君ですか?」

 

少し不安そうな彼女だったが、彼が苗木誠だと確信すると途端に明るい表情を作り苗木に話しかける。

 

「やっぱり、苗木君じゃないですか!」

 

「あっ…舞園さん! 久しぶり、といっても数日ぶりか」

 

実は数日前、お互いに進学祝いとしてお出掛け、もといデートをしていた。

なお、付き合ってはいないらしい。

 

「そんなことよりどうして苗木君がここにいるんですか!? 私、苗木君と同じ高校に進学できなくなって凄く悲しかったんですよ! 希望ヶ峰学園への入学が決まっていたのなら、教えてくれてもよかったじゃないですか!?」

 

「お、落ち着いてよ舞園さん、ボクもギリギリまで悩んでいたんだ。」

 

苗木はこの学園に〝超高校級の幸運〟としてスカウトされた。全世界の学生からたった1人、抽選で選ばれたのだ。

具体的な才能もなければ、そのための努力もしていない。

そんな自分がいくら天文学的な確率で選ばれたとしても、希望ヶ峰学園の特別科に入学することは憚られた。

故に、期限ギリギリまで悩んでいたのだ。

 

「最終的に家族と話し合って決めたんだけど、この前舞園さんに話さなかったのはちょっとしたサプライズのつもりだったんだよ。ごめんね、舞園さんがそんなにボクのことを気に掛けてくれてたなんて」

 

「まったくです! でも本当によかった! また3年間よろしくお願いしますね!」

 

「こちらこそ、よろしくね」

 

舞園との挨拶を終え、苗木は江ノ島に近づいて行く。

 

「誰かと思えば、苗木じゃ〜ん。おひさ〜」

 

「苗木君、江ノ島さんとお知り合いなんですか?」

 

「まあね、小学生だった頃に少しね……」

 

「そうだったんですか…江ノ島さんは私の知らない苗木君を知っている。……江ノ島さん! お友達になりましょう! そして苗木君の小学生時代の事を聞かせて下さい!」

 

「まぁ、全然仲良くなかったけどね〜!」

 

「ひどいな、江ノ島さん…。まぁ、キミらしいか」

 

2人は苗木の発した言葉に異なる反応を示し、その後も色々と言い合っていた。

そして、そんなこんなしているうちに残りの生徒も集合が完了。彼等は体育館へ移動し、入学式が始まった。

 

学園長ーー霧切仁の挨拶などが終わり、第78期生、計16名の希望ヶ峰学園入学が完了した。

その後教室へ移動し、オリエンテーションや自己紹介等を済ませ、入学初日は無事に終わりを告げた。

 

(ここが学生寮か…。数名でルームシェアとかじゃなくて個別に部屋が与えられるなんて…すごいなぁ)

 

特別科の生徒達には個別の部屋が与えられる。

その部屋は簡易なものではあるが、キッチリと整理されており清潔感のある立派なものであった。

しかし、部屋をゆっくり見ることなく苗木はすぐにベットに横になる。

 

(はぁ…なんだか疲れたな。……それにしても、凄く個性的な人たちだったなぁ。〝超高校級の野球選手〟〝超高校級の探偵〟〝超高校級のスイマー〟〝超高校級の占い師〟〝超高校級の御曹司〟〝超高校級の文学少女〟〝超高校級の軍人〟、エトセトラエトセトラ……。戦刃さんが〝超高校級の軍人〟だったことには驚いたよ)

 

苗木は今日の出来事を思い返しながら、これからのことを思案する。

 

(明日から始まる新しい学校生活。自分なりに頑張らなくちゃね! 舞園さんや江ノ島さん、戦刃さんだっているんだ。まぁ、なんとかなるかな。ボクの取り柄は人よりも少し前向きなことなんだから!)

 

色々と考えている内にいつの間にか眠ってしまった彼ーー苗木誠は、これから起こる希望ヶ峰学園での激動の日々を想像できるわけもなく、安らかに寝息をたてていた。

 

 

 

 

 

季節は瞬く間に過ぎ去り、78期生の入学から1年以上が経過した。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

ーー苗木視点ーー

 

(ボクたち78期生が入学してから1年以上経ち、みんなで無事に進級できた。それにしても、この1年は辛いことも楽しいことも沢山あった。それでもみんなとしっかり前を向いて一歩ずつ進んでいる)

 

苗木の言う〝無事〟という表現は、テストの点数や出席日数等の単位などもあるが、もっと別の重要な意味合いが込められていた。

実は進級する直前に、世界中で〝絶望〟を名乗る暴徒達による同時多発的なテロ行為が発生したのだ。

そしてその発端は、希望ヶ峰学園に在学していた〝超高校級の絶望〟江ノ島盾子であった。

しかし〝超高校級の希望〟苗木誠の活躍により、〝人類史上最大最悪の絶望的事件〟は世界が転覆するという最悪を避けつつも、大きな爪痕を残し決着した。

その後、世界は〝ミライ機関〟という希望ヶ峰学園OBを中心に結成された組織により、思っていたよりも早く復興へと向かっていった。

詳しいことはいつか、時間があるときに誰かが語ってくれるだろう。

 

そして、江ノ島盾子は苗木誠による監視の元学校生活へと戻り、クラスメイトとも和解を果たした。

世界中で起きたテロの首謀者であったと知り皆驚いていたが、苗木の仲介もあり収集に至ったとか。

そんな激動の日々は落ち着きを取り戻し、普段の日常が穏やかに過ぎていた。

 

そんなある日の出来事であった……

 

 

 

 

 

「「「映画を作りたい?」」」

 

「そーそー! 映画ッ! 私様が思い出作りに何かしたいと考えた結果、その考えに至ったのだよ!」

 

唐突に、江ノ島は78期生で映画を作ろうと言い出した。

 

「急にどうしたの江ノ島さん?」

 

(気まぐれな江ノ島さんらしいけど、どうしんだろう……。素直にみんなと思い出を作りたいと言った彼女を喜ぶべきかな? あのときからは考えられない成長だよね)

 

〝絶望〟を名乗っていたときを知っているが故に、皆少し警戒した様子であった。

 

「ちょっとみんなヒドくねッ!? 私様直々に提案してやってんのに!」

 

「つか唐突すぎんだろ!」

 

「そうだよ! 順を追って詳しく説明してよ!」

 

急な事に裏に何かあると勘ぐったり、若干混乱する生徒達。

 

(みんなの意見ももっともだよね。でも、江ノ島さんの意見は尊重したい)

 

「みんな落ち着いてよ。江ノ島さんもちゃんと説明してほしいな、真面目に聞くからさ」

 

ミライ機関からも江ノ島を一任されている苗木に言われ、落ち着きを取り戻す生徒達。

 

「まったく。絶望的に脳味噌が足りてない連中ですね」

 

どこからともなく取り出したメガネを掛け、大きなため息をつく江ノ島。

 

「江ノ島さんもいちいちみんなを挑発しないで」

 

苗木がなだめながらも江ノ島は説明を始めた。

 

 

***

 

 

「ーーーーーってなわけよ!わかったか愚民ども!」

 

「おい、貴様今なんと言った!!」

 

「まぁまぁ、落ち着いてくだされ十神殿」

 

「そーだよ! いちいち怒鳴らないで!」

 

「朝日奈っちも声が大きいべ」

 

説明を終えたはいいが、煽り口調の江ノ島に十神がついにキレる。江ノ島のキャラはもはや隠されることがなかった為、十神とはよく衝突していた。

とはいえ十神自身も先の件は彼なりに決着がついており、江ノ島の能力自体は認めていたのだが…そりが合わないのはどうしようもない。

 

「つまり、学園を舞台としたボクたち78期生全員が出演する映画を作りたいんだね?」

 

「そーそ! 苗木は話がわかるなぁ。つーわけで学園の許可も取ってあるし、77期生の奴らの協力も取得済み!」

 

絶望的なまでに有能な彼女はすでに手を回しており、後は出演者の承諾だけであった。

その出演者の承諾が最も重要であるのだが、全ては彼女の計算の内だった。

外堀が埋まっていれば断りにくく、苗木が江ノ島のプラス方面の改心に協力的なことに加え、その苗木の賛成により他のクラスメイト達も賛成するであろうと。

 

苗木は入学当初こそ才能故に一部のクラスメイトと壁があったが、彼の性格や根気強さによりクラスへと溶け込んで行った。

そして彼の存在が78期生の中で確固たるものになったのはやはり、江ノ島が引き起こそうとしていた〝あの事件〟であった。

今や78期生にとって苗木誠という人物は、癖のあるクラスメイト達をとりもつ重要な存在である。

 

「うーん、みんなはどうかな? もう色々と許可も取っているみたいだし、ボクはいいと思うけど。」

 

苗木が賛成の意思を示しながら、他のクラスメイト達に尋ねる。

 

 

 

「ふん! 俺が主演なら出てやらんこともない」

 

「びゃ、白夜様が主演! 苗木! 白夜様が主演なんでしょーね!」

 

「素晴らしいぞ、江ノ島君! みんなとの友情を確かめようではないか!」

 

「まあ、兄弟が賛成なら俺も別に構わねーぞ」

 

「ボクもやってみたいなぁ! どんな映画なんだろう」

 

「私も賛成だよ! 面白そうだし!」

 

「朝日奈が賛成なら、我も吝かではない」

 

「占いに映画を撮るべきだと出ているべ! 俺の占いは3割当たる!」

 

「映画ですか。破産した主人公が一発逆転を賭けたギャンブルストーリーとか、面白そうですわね」

 

「僕にも映画出演の依頼が来るとは! これはよいネタになりそうですぞー!」

 

「舞園ちゃんとオレがダブル主演の恋愛もの! これで決まりだな!」

 

「私は大丈夫ですけど、霧切さんはどうするんですか?」

 

「そうね、すでにこんな雰囲気だし…、水を差すような真似はできないわね。私も別に構わないわ」

 

「盾子ちゃんがやりたいことなら、私は賛成だよ」

 

 

 

(みんな乗り気みたいだね。色々と話が飛んでいるけど、配役とかどんな映画にするかはこれから話し合っていけばいいか)

 

「とりあえず、みんな賛成ということでいいのかな?」

 

苗木は興奮気味の78期生をなだめながら、江ノ島に今後のことを尋ねる。

 

「それで、今のところどんな予定なの?」

 

「絶望的なまでに完璧な私様はすでにッ! シナリオも作っているのだよッ!」

 

 

 

声高らかに、彼女は言った。

そして彼女の計画は、再び動き出す。

その結末が〝希望〟か〝絶望〟か……

今は誰にも分からない。

江ノ島本人でさえ。

しかし、そんなことを彼らは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

そして彼女は告げる。

 

 

 

 

 

その映画の、その計画のタイトルを……

 

 

 

 

 

『映画ダンガンロンパ

ーーー希望の学園と絶望の高校生ーーー』




ーーウサミよりーー

ミナサン!こんにちは、あちしでちゅよ!また会いに来てくれて嬉しいでちゅ!
今回は天の声さんから仕事を任されているので、ミナサンとらーぶらーぶできなくて残念でちゅ。
では、気を取り直してこちらでちゅ!

『ウサミファイル』(テッテレー

あちしが天の声さんから頼まれた仕事は本編の内容の重要事項や事実の確認でちゅ!先生としてミナサンに恥じない働きを約束しまちゅよ!


以下ウサミファイルから抜粋

・78期生の入学式が執り行われる。

・苗木と江ノ島は既に知り合いである。尚、過去に何やらあった模様。現在詳細は非公開。

・苗木と舞園は既に知り合いである。舞園は特別な感情を抱いている?現在詳細は非公開。

・1年目終盤、世界中でテロ事件が多発。その発端は江ノ島である。

・苗木の活躍により、人類史上最大最悪の絶望的事件はどうにか防がれた。現在詳細は非公開

・苗木誠は〝超高校級の希望〟である。

・江ノ島盾子は〝超高校級の絶望〟である。

・ミライ機関により世界は既に復興している。

・江ノ島発案の映画撮影が計画される。

・江ノ島は何かを企んでいる模様。現在詳細は不明。


それではミナサン、また今度も会いに来てくだちゃいね!
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