・本編にて行っていた78期生たちの映画撮影ですが、当二次小説の世界で公開されたのはゲーム版の『ダンガンロンパ』と同じ内容となっております。
つまり、〝1テイク目〟において負傷した江ノ島が復調した後、撮影し直した2テイク目以降が映画に使われております。そして〝1テイク目〟は闇に葬られた──…という設定になっております。
・この『1テイク目の映像』は、ダンロン3で言う所の『洗脳ビデオ』的な効力を持っております。それ故、危険物として扱われています。
・王馬小吉の他者への呼称ですが、「ちゃん」を付けることは承知しております。当二次小説では同級生にのみ適応ということにしておりまして、江ノ島たちに対しては「先輩」と付けさせていただきます。
ーー江ノ島視点ーー
「ま…コロシアイとは言っても、尺の関係上〝あの映画〟みたいに何でもありのエキサイティングなものは無理なんだけどね」
画面越しのモノクマは、ショボーン…といった感じでうなだれている。
「でも安心してね! 代わりと言っちゃあなんだけど、クライマックス的な盛り上がりは演出してみせるからさ! キミたちはのびのびと他人を疑って、蹴落としあってくれればいいから!」
コロコロとテンションが移り変わる。誰かが喋っているのか、AIなのかは判断できない。しかし、この掴み所のない感じは間違いなく……〝絶望〟のソレだ。
「……。あのさー…ガヤの一つもないなんて、あまりにも主催者に失礼なんじゃない? 『ここから出してーーッ』とか『ふん…コロシアイなんて馬鹿らしい……』とかさ! ちょっとは雰囲気を出そうよ!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「
「まったくもー…。葉隠クンみたいなポンコツキャラとか、十神クンみたいな噛ませキャラとか……一人くらい招待した方が良かったよ」
いやはや、この場にいる全員に無視されてもへこたれないそのメンタリティだけは超高校級モノだ。アッパレ。
「はぁ…。●●スター感謝祭とかさ、●●ヒーロー大集合とかさ……人気者ばっかり集めると、存在感がお互いに邪魔しあっちゃってまともに目立てないんだよね。適度に主役を引き立てるモブキャラがいないと、物語は幅が出ないんだよね」
いい加減面倒になってきた…。適当に相槌でも打っとくか。
「でもそんなの関係ないクマーーッッ!! 今回はchapter5も6もないクマ! なんだったらchapter2すらないクマ!」
さっきのしょぼくれた感じは一切なく、モノクマは「うぷぷ」と笑う。
「何故なら……そうッッッ!!!」
高らかに声を響かせ、楽しげに嗤う。
「この舞台こそが、すでにクライマックスなのです!!!!!」
******
モノクマは、以下のように説明した。
1.参加者の中に招待状の送り主がいます。ミナサマには、この『送り主』が誰なのかを当てていただきます。その人物を殺すことこそが、今回の目的となります。
2.これ以降、『送り主』のことは〝クロ〟と呼ばせていただきます。
3.〝クロ〟が一人でなかった場合、主犯格を一人決め、その人物が〝クロ〟となります。
4.『3』にあります主犯格の定義は
5.証言台を模した机の上にはそれぞれ一丁のピストルがございます。如何様にもお使いいただけますが、危険なものですので取り扱いにはご注意を。
6.『5』にありますピストルには一発の弾丸しか入っておりません。万が一マトを外した場合は、鈍器としてご活用ください。
7.ミナサマには多数決で〝クロ〟を決めていただきます。
8.〝クロ〟の処刑方法は決まっておりません。ご用意しておりますピストルを使うもよし、持参した武器を使うもよし。どうぞご自由に殺してください。
9.ミナサマがいらっしゃいます当会議室からの退室を禁止いたします。
10.通信機器による外部との連絡を禁止いたします。
11.『9』、『10』に反した場合、厳格な措置を取らせていただきます。尚、命の保証はございません。
12.正しい〝クロ〟の処刑が完了した場合、ミナサマには『プレゼント』を差し上げます。加えまして、『9』、『10』にございますルールも解除されますので、近くの出口よりご帰宅ください。
13.正しい〝クロ〟を指摘できず誤った人物を処刑してしまった場合、ミナサマに差し上げる予定でした『プレゼント』を世界中に拡散いたします。
*****
モノクマが告げたルール。それに対して各々がとった行動はバラバラだった。
周りを見渡す者、目の前のピストルを触る者、目を瞑り考えを巡らす者、底知れぬ笑みを浮かべる者──しかし、沈黙だけは共通していた。
誰もが出方を伺った。
最初に発言をし主導権を握るのか……、他者の振る舞いを見て自分の方針を決めるのか……
この場にいるほぼ全員がリーダーシップを取れる人材であるが故に、硬直した。
アタシは瞬時に思考を巡らせる──
アタシは疑われる。そして、率先し疑ってくるのは恐らく〝宗方京助〟。ではコイツの味方につくであろう人間は?
〝雪染ちさ〟、〝村雨早春〟……この辺りか。ただし、雪染は担当する生徒たちの味方につく可能性もある。
次。アタシが味方にできるであろう人間は?
〝塔和モナカ〟、〝白銀つむぎ〟……この辺りだな。〝王馬小吉〟は……多分ダメね。ヤツには曲げられない信念がある。他人に何か言われた程度でその信念は揺るがない。たとえ、死地に追い込まれようとも……
ま、話の流れ次第で味方につけられるかどうかってとこね。今考えてもあまり意味はない。
残りの人物──〝天願和夫〟、〝松田夜助〟。
〝松田夜助〟……面識はある。映画撮影の後、ミライ機関に拘束されたアタシの監視役の一人。機関の職員として〝超高校級の希望〟、〝超高校級の絶望〟の能力解析プロジェクトの主任でもあった〝元超高校級の神経学者〟。
人柄は、あまり社交的ではない。ただ、集団を黙らせるだけの覇気は持っている。侮ることはできない……
しかし……、しかしだ。この状況で積極的に動く人間かと言われたら、答えは〝No〟だ。どういった理由でヤツがこの場に招待されたのか知らないが、今に限っていえば宗方寄りの人間だろう。アタシ的にヤツの立ち位置は……とりあえず王馬と同じ。
あとは……そう、
──答えは出た。
『最年長であり、アタシと宗方が対立した際に中立に立てる〝天願和夫〟を議論の進行ポシションに据える』
アタシは思考を切り上げ、場の主導権を握るべく行動を起こす。
しかし、それは叶わなかった。
その場を覆う静寂を破り、空気を支配したのは────
バンッッッ!!!
馬鹿でかい炸裂音が鳴り響く──
それは、アタシの左隣に佇む人間の仕業──
用意されたピストルが火を吹いた音──
天井には弾痕──
ソイツは一発しか入っていないと言われたピストルを天井目掛けて撃った。
絶対的に有効な威嚇射撃──
誰もが虚をつかれ、一堂の視線を集めた。勿論、アタシも例に漏れず。
この場のイニシアチブを取るには充分だった。
しかし、それだけでは飽きたらなかったようだ。
ソイツは左隣にいる〝白銀つむぎ〟へと銃口を向けた。
「ちょ、ちょっと! こっちに向けないでよッ!?」
本気の焦った顔。白銀は懸命に命乞いをしてみせる。
「ごめんなさい! ごめんなさい! 確かに
「うーーん。何のことだかわかんないけどぉ…、大丈夫だよ! お姉ちゃん! このピストルには一発しか入ってないってモノクマが言ってたし」
「それってクロ側の主張だよね!? 本当かどうか疑ってかかるところだよね!?」
「大丈夫。その確認もちゃんと含まれてるから」
「全然大丈夫じゃないよ!? さっきと同じように天井に撃てばいいんじゃないかな!?」
「えー…でもぉ…モノクマが雰囲気を大事にしろって……」
「真に受けなくていいから!!」
漫才を繰り広げる二人の間に、一人が割って入った。
「ちょっと! 私の生徒を傷つけるのは許さないよ!」
〝雪染ちさ〟が、威勢よく啖呵を切る。
しかし、渦中の人物は事もなげに標準を移動させた。
「じゃあ、あなたならいいんだよね」
不気味な笑みを浮かべ、ソイツは引き金を引く。
「え……」
まるでソレが、ごくごくありふれた日常であるかのように平然と、ソイツは引き金を引く。
──カチッ
乾いた金属音が静寂の中で反響する。
結果から言えば、弾丸は一発しか入っていなかった。
雪染ちさは生きている。
ただピストルが使われた。そして、それを実行した人物がこの場を支配した。
一体誰がこの展開を予想できた……?
最年少の少女がこの空気を掌握することを。
────〝塔和モナカ〟は、ただ嗤っていた。
*****
ーー???視点ーー
およそ一週間前、一枚の招待状が届いた。内容はともかく、その招待状によれば12月24日──クリスマスイブに用があるみたいだった。
モナカの答えは至って単純……〝No〟だ。招待には応じない。
だってその日は特別な日だから。
モナカが大好きで大好きで大好きで堪らない──
──〝むくろお姉ちゃんの誕生日〟なんだから。
*****
なんて絶望的なんだろうか。
12月24日。その日、むくろお姉ちゃんには
もしかしたらモナカ
でもダメだった。モナカたちには言えないみたい。
うーーん。フェンリル関連のお仕事なのかも……
あーあ。折角みんなでお部屋を飾り付けて、ケーキ作りの勉強をして、むくろお姉ちゃんに喜んでもらおうとしてたのに。
というか、なんだかみんながすごく優しい。
多分、モナカが不機嫌そうな顔をしていたからだと思う。
モナカを恐れているような、よそよそしい優しさ。
そんなに怖い顔してたかな……?
***
暇だ。むくろお姉ちゃんのお誕生日会が頓挫して以来、とにかく暇だ。
あーーあ。なにか面白いことでもないかなー……と考えていた時に思い出す、あの招待状。
…………。
行こうかな、塔和タワー。
……ん? ちょっと待って、思い出した。
確か〝塔和タワー〟って、クソみたいな父親と馬鹿みたいなお兄ちゃんが
ふーーん……なるほどね、ちょっとは面白いことになりそう。まあ、暇潰し程度には楽しめるかな。
こうして、モナカは
*****
ーー江ノ島視点ーー
いやはや、驚嘆に値する。
これだけのメンツを前にして、ヤツに一切の気後れはない。〝塔和モナカ〟は空気を支配した後、こう続けた。
「弾数はモノクマが言った通り一発みたい。じゃあ、部屋から出ないほうがいいって言うのも多分本当で、誰かが死なないとココから出られないのも本当っぽいねー」
あくまで事実確認。モナカにとって、先の一幕はその程度の認識でしかない。
「うーーん。でもぉ、どうやって〝クロ〟を突き止めればいいのかな?」
「いや、プランないのかよ」と、アタシが面食らうと同時に、宗方が切り込んでくる。
「この手の議論であれば、そこの〝元黒幕〟がよく知っていると思うが。まあ、江ノ島が〝クロ〟である可能性は高いが…〝クロ〟に喋らせるのも悪い手ではない。ボロが出てくれれば儲け物だ」
嫌な振り方だ。
アタシに発言を促すというある種のマウントを取りつつ、『江ノ島盾子には前科がある』と印象付けてやがる。
「先に言っておくけどさ、今回の件…アタシは何も知らないから。てか、先入観に囚われてると足を掬われるんじゃない?」
「いいや、これは先入観ではない。貴様は信用に値しないという事実だ。実際、在学中に二度……貴様は世界を危機に晒した。〝人類史上最大最悪の絶望的事件〟のトリガーを引き、さらにはその続きをも企てた。まったく……今考えてもミライ機関上層部の判断は甘すぎる」
これはこれは……随分と嫌われたものね。
てか、ミライ機関にまで言及する必要あんの……?
宗方がアタシの前歴について述べると、それに食いつく人物が現れる──
「ねえねえ…江ノ島先輩のあーだこーだって、映画の中の話でしょ?」
──王馬だ。
コイツはアタシが希望ヶ峰学園に在学している時のことを知らない。故に、当然の疑問だな。
「〝超高校級の総統〟……王馬小吉。貴様と同様、江ノ島盾子も犯罪者ということだ」
「は? 今何か言った? 白髪のおにーさん?」
「あの映画はフィクションではなく、江ノ島盾子は世界を絶望させようと目論んでいた。これは紛れもない事実であり、許されざる犯罪行為だ。そして、秘密結社〝DICE〟もまた、犯罪行為を是とする集団。そのリーダーでもある王馬小吉──貴様も、貴様の仲間も全員、裁かれるべき犯罪者」
いつもおちゃらけていて、掴みどころのない王馬。滅多なことでは本心を語らないヤツが、宗方を睨みつけている。
目は口ほどに物を言うと言うが、相当キレてるな。どうやら仲間への侮辱は逆鱗に触れることと同義のようだ。
「改めて、オレの考えを言おう」
しかし、王馬の視線が宗方の演説を止めるには至らない。
「今回の一件、〝クロ〟の可能性が最も高いのは〝江ノ島盾子〟……貴様だ。そして、次点で〝白銀つむぎ〟、〝王馬小吉〟といったところだな」
随分と口が回っていらっしゃる。まるで、用意された台本に従って完璧に演じているかのように。
てか、白銀も議題に引き摺り込まれたわね。前科者を〝クロ〟候補として挙げるのは理解できるが……、なんか気持ち悪さを感じる。
「だ、だからわたしじゃないんですって! 確かに、
「よく分かっているじゃないか。貴様は犯罪者で、信用などないと」
おー…怖い怖い、てかどんだけ憎いんだよ。
「うぅ……」
涙目になる白銀。そんな彼女に、助け舟が現れる。
「宗方くん! さっきから言い過ぎよ!」
白銀と王馬たち、79期生の担任──雪染ちさが反論する。
「確かに、二人ともやっちゃいけない事をしたし、してきたわ。でも、私は知ってるの……二人が、本当はとってもいい子なんだって」
「雪染、今は少し静かにしていてくれ……」
「ううん、黙ってなんかいられない……。だって二人は、私の大切な生徒なんだから!」
雪染ちさは、懸命に白銀と王馬を庇う。
どうやら雪染は自分の生徒たちの味方らしく、宗方サイドの人間ではなかったようだ。
アタシとしては嬉しい状況──宗方のストッパーとしてはこの上ない。
「雪染先生……ッ」
白銀は責められて悲しいのか庇ってもらえて感動したのか、大号泣している。
しかし、宗方と雪染が対立する構図となるのは意外だ。
てか、心なしか宗方の顔がこわばっているように見えるのは……気のせい? ……そういえば駅で二人が鉢合わせた時、確か宗方の方は驚いたような反応をしていたな……
駅での反応──
王馬、白銀への追求の妨げ──
──宗方は雪染がココにいることを嫌がっている。
なぜ?
一体なぜ……宗方は雪染と会った時に驚き、雪染が反抗の意を示すであろう…彼女の生徒たちへとヘイトを向けた?
宗方と雪染の間には恋仲だという噂がある。これは、ミライ機関の人間であれば多くが知るところ……。だからこそ、二人の対立は意外なのだ。彼女の人間性を知っていれば、生徒たちを糾弾するのは悪手であると分かるはず……
宗方はココに集まるであろう人物を知っていた……?
招待状を送った人物か、共犯者……?
何かしらの理由で、アタシを含めた前科者たちを糾弾したい……?
だからこそ、雪染がココにいることを煙たがっている……?
だからこそ、当初の筋書き通りに前科者へのヘイトを向けたがそれを邪魔されやりずらさを感じている……?
恋人であればこそ、本当に大切に想っていればこそ、この場には呼びたくなかったはず。
ま、確認すればいいことね。
「ちょっと痴話喧嘩を遮っちゃって申し訳ないんだけどさ、全員の招待状を確認しない?」
以下とある少女の記憶ノートより抜粋
・12月24日は誕生日。
・モノクマが舞台を整える。
・塔和モナカが行動を起こす。
・宗方京助が流れを作る。
・雪染ちさが生徒たちを庇う。
・江ノ島盾子が──…(字が掠れていて読めない)