参考URL http://kubinashi.zombie.jp/dic3/ TESV SKYRIM用語集
「なるほど。 両親が外に商売に出かけている間に食料が無くなったのか。そしてここで食料を探しに来たら私を見つけたと……ところでスープも飲むか?」
「んぐ!……いただきます」
めぐみんと名乗った少女が余りにもお腹を空かせていたので、アンジェルモは先程の串焼きに加え水で戻した野菜スープを食べながら話を聞くことにした。見た所、今の彼よりさらに2、3歳年下といった所だろうか。あまり見ない顔立ちだったたが、個人的にはスカイリムのジャガイモ達よりは整った容姿をしていた。
「……あっ、そういえば!!」
表情を緩めながら野菜スープを味わっていたが、突然はじかれたように立ち上がった。何か忘れ物でもしたのかとアンジェルモが視線を向ける。
「いや、あなたの名前です! 私は名乗ったのにあなたの名前を聞いていません! 折角ですから私と同じように名乗っていただきましょうか!」
「えぇ!? あの恥ずかしい名乗りを私もしなければならないのか……」
「最高にカッコいいじゃないですか!? 世間を知らずなあなたは知らないでしょうがさっきのは(紅魔族として)一般的な自己紹介ですよ!? さぁ、男ならさっさと覚悟を決めてください! エルフとして恥ずかしくないのですか?」
「なんだと!?・・・そこまで言われたからには後に引けないな!」
全てのエルフの名誉が私にかかっている!とアンジェルモは半ばヤケクソになりながらカッコいいポーズを考えること。 数秒後、まずマジカの自然回復が早くなるポーションを飲み、足元から小石を一つ拾い上げた後、マジカを炎と雷に変換していく。
そして左手の雷を体を覆うように展開させ、マントのように纏って行く。
雷が身を包み帯電の音が飛ぶ中厳かに言葉を紡いでいく。同時に炎をルーンに変え足元の地面に刻みルーンの上に小石を落とす。
「我が名はアンジェルモ! エルフの優を世に知らしめ、いずれ魔王を討ち滅ぼす者!」
名乗りが終わりビシッとポーズを決める。と同時に石が触れたルーンが起動しアンジェルモの背後が爆炎に包まれる。もし、この場に日本からの転生者がいれば「日曜朝の戦隊モノ」連想したであろう。
「おお、やればできるじゃないですか! 合格ですよ! ただ欲を言えばもう少し爆発が大きかったら良かったですけど……」
「おいおい、私はまだ見習いだ。無理を言わないでくれ」
(結構疲れるから次からマントだけで良いか。だがやってみると意外に楽しかったな)
少し物足りなかったものの、どうやら及第点をもらえたようだ。恥ずかしいのを我慢した分、いい反応をしてもらえてアンジェルモは不思議な達成感に包まれる。
「うん、この世界でも何とかやっていけそうな気がしてきた。 感謝するよ」
「礼には及びませんよ……この世界?」
「き、聞き間違いだろう? それよりスープが冷めるぞ?」
先程の名乗りのおかげで心の距離を縮めることができたらしい。
名乗りのお陰か会話は先程以上に弾みお互いの事を語り合っていく。自分の種族の事、家族の事、魔法の事、時折り攻めてくる魔王軍の事。冒険者になるためにアクセルという町に向かうはずが何故かこの場所に転送されたことなど。アンジェルモは異世界や転生者であることを伏せつつも目の前の少女に話した。
「アクセルってここからかなり離れていますよね? あなたも随分ひどいテレポーターに当たってしまいましたね……」
「まぁ、起きてしまったことは仕方ない。いい機会だから里でもじっくり見て行くことにするさ。外の魔法にも興味があるしな」
「そういうことであれば里まで案内しますよ。お礼は今日の夕飯で結構です」
「ああ、そういえば家に食料が無いのだったな?」
めぐみんの案内で紅魔の里に向かうこと決まり出発の準備を始める。山火事防止のためアンジェルモが火を消す傍ら、めぐみんは食料の残りを片っ端から袋に詰めていった。妹へのお土産にするらしい。
(まだ幼いのにたくましいな……孤児院の子供達を思い出す)
バキッ!!
思い出に浸りそうになる中、背後の枝が折れた音で現実に引き戻される。目を上げるとめぐみんが青ざめた顔をしながらこちらの背後を見ていた。
(……熊?)
「なな、なんでこんな所に!? この前、大人たちが課外授業のために全滅させたはずですよ!?」
「おい、熊を全滅させたとか随分と物騒だな!? 恨みでもあるのか?」
なおスカイリムなら大人たちの方が全滅する場合が多い。熊1頭に全滅させられた狩人のキャンプなどさして珍しくない。とはいえある程度の戦闘に長けていればさほど苦戦せずに倒せる相手ではある。安堵の息を吐きながらアンジェルモはめぐみんを庇うように立つ。
「めぐみんは下がってくれ。 熊ごとき私1人で楽勝だ。 ふふふ……女神アクアから貰った剣の切れ味を試すのにちょうどいい!」
「女神アクアの剣とか持っていると頭おかしくなりますよ!? あと良くないフラグ立てないで下さい! 私まだ死にたくありません!」
里で学んだ『戦闘中に絶対言ってはいけないワード』が出たことで嫌な予感にめぐみんは囚われていった。そして最悪の事態に備え、助けを呼びに行くことを決意する。
「アンジェ! 助けを連れてくるので10分ほど足止めをお願いします! 一撃熊相手に無理をしないでとにかく生き延びてください!」
「おい、アンジェって呼ぶのはやめろって……。 はぁ、行ってしまったか……」
森の奥へと消えていく小さい背中を見送り、≪エクストラポケット≫からドーンブレーカーを取り出す。
≪アイアンフレッシュ≫を唱えて体を魔法の鎧で包みドーンブレーカーを鞘から抜き放ち両手で構える。抜き放った刀身が太陽光のように輝き照らす。
「一撃熊だか、一発熊だか知らないがこれでもくらえ!!」
気合と共に全力で振り下ろした一撃は、突進する熊の肩を捉え閃光と共に炎上させる。
同時に突進をまともにくらったアンジェルモは茂みにふっ飛ばされる。
魔法のおかげでダメージは深刻ではなかったもののその衝撃に思わず呻く。
「っつうう! なんて力だ! だが結構ダメージは!……あれ?」
手ごたえを感じながら視線を向けた先にいたのは肩にうっすら血を滲ませ、全身に軽い火傷を負った怒り狂った熊の姿だった。
「くそぉおドーンブレーカーめ! ちっとも役に立たないじゃないか!? くそ! やはりデイドラなんか信用するべきでは無かった!」
想定が完全に狂ってしまい八つ当たりの叫びが森の中に響き渡る。
あの後何度切り付けても結局致命傷には至らず逆に手痛い反撃を食らってしまい、戦法を変えるしかなかった。
とはいえ鎧の魔法に加え受けた傷の回復にマジカを使ってしまい、反撃のためのマジカが回復するまで必死に逃げまわるしか無かった。現在はポーションで透明化して木の上に身を潜めている。
(おいおい……どうしてこっちに来るのだ!? 姿は見えないはずなのに!?)
ムンダスでは動物やモンスターの多くのが視聴覚に頼っているためか、姿と足音を消せば探知の魔法がない限り見つかることは無い。
しかしこの世界では姿が見えなくても匂いで相手を感知する獣や、生命力を感知できるアンデットなど隠れることが難しい相手がたくさんいる。
不幸なことに異世界から来たばかりの彼はそのことを知らず、木の上から降りるタイミングを完全に逃してしまった。
そして今やその木さえも一撃熊の強靭な前足によってミシミシと不穏な音を立てていた。
(冗談じゃない! 折角、新たな生を得たのにこんな所で無駄死にできるか! 皆の分まで生きなきゃ!)
敵との戦いの中に散っていった3人。悲しみを背負いながら生きている1人。
誰に対しても『異世界に行って油断していたら熊に殺されました』など言えなかった。
「……屍をさらすのはお前の方だ! 熊め!」
隠れるのはやめ、マジカを弓へと変化させると更に強度を上げるべく収束させていく。獲物の姿を確認した熊は更に激しく木に攻撃を加え、木の上から振り落とそうとしてくる。
「くっ……、はん! 訓練の方がきつかったぞ!」
振り落とされないように木にしがみつきながらも矢を筒から取り出し矢じりを薬瓶の中に浸す。
その時、一撃熊が全体重をかけた一撃を出すべく後ろ足で立ち上がり全身をさらした。
「好機! くらえ!」
放たれた矢は後ろ足の関節部。つまり膝に当たり麻痺の毒が全身へと回っていき全身を硬直させたまま真後ろに倒れていった。
しかし同時にボロボロだった木も限界を迎えて倒れアンジェルモも投げ出されてしまう。
「ガッ!? く、くそ、早くアイツに止め……を」
受け身を取り損ね立ち上がることができない中、霞んだ視界の端で一撃熊が起き上がるのが見えていた。
その視界が突然、摩訶不思議なポーズをとった黒髪の青年によって塞がれる。
「……待たせたな、エルフの子よ! 救世主の登場だ!」
「な、何者!?」
思わず突っ込んでしまい、すぐにしまったと顔をしかめる。その青年が恍惚とした笑みを浮かべ始めたからだ。
「我が名はぶっころりー!紅魔族随一の靴屋の倅にして上級魔法を操る者!」
(あぁ、戦闘中でもこのノリなのか! 助けるなら急いでくれ!)
熊が起き上がり焦るアンジェルモを余所にぶっころりーは余裕の表情で詠唱を始める。
「血に飢えし黒き魔獣よ、我が灼熱の魔手にて灰燼と化せ……≪インフェルノ≫!!」
熟練者魔法をはるかに凌ぐ魔力が収束し、爆風と灼熱の炎が一撃熊を飲み込んで黒焦げにしていく。
「嘘だろ……? アイツを一撃だと!?」
アルトマーはタムリエルで最も魔法の才能を持つ種族である。子どもの時から人間の並みのウィザードよりも高度な魔法扱っており、それはアンジェルモとて例外ではなかった。
しかし、自分が苦戦した相手を人間の、しかもただの靴屋の倅が簡単に倒してしまったのだ。しかも先程彼は突然自分の目の前に現れていた。もしかするとタムリエルでも貴重な≪テレポート≫まで使える可能性があった。エリートの代名詞だったサルモールとしてのプライドが粉々に砕けてゆくのをアンジェルモは感じる。
「アンジェ、無事ですか!? すみません、このニートが中々捕まらなくてですね……空を見上げてどうしたんですか?」
「……いや、目にゴミが入っただけだ。うん、それだけ。それより名前の呼び方なんだけど・・」
「やあ、君がアンジェちゃん? 子どもだって聞いていたけど一撃熊相手にあそこまで粘れるなんてすごいじゃないか! それにさっき変わった魔法を使ってたね? さっき俺も助けるタイミングを窺っていたんだけど良いものが見れた。 あれもエルフ族の秘術なのか?」
「……こんな風に女に間違えられるからやめて欲しいと……おい、そのいかにも『面白いことを聞きました』って顔はなんだ?……やめろよ? 絶対広めるなよ?……こっちを向けめぐみん!」
異世界でも頑張れそうだと思って。
やっぱり無理かもしれないと考え直して。
今日はもう疲れたからとりあえず明日考えようと思った忙しい異世界初日。
里へと歩いて先導してくれているめぐみんとぶっころりーの背を見ながら今日の寝床がどうなるかの心配をする異世界初心者であった。
To be continue…
二話経過しましたが一日目はまだ終わってないというスローペースです。めぐみんやぶっころりーの口調には注意していますがいかがだったでしょうか?もし違和感がありましたらご指導いただけると幸いです。
因みにドーンブレイカーは片手剣ですが子供の筋力ではきついので両手で振り回しています。
用語・設定辞典は少し遅れます。