里の学校は女子クラスは割と調べやすいのですが、結局男子クラスのデータが見つけ切れませんでしたのでオリキャラが何名かいます。
7話 異文化コミュニケーションで生まれるもの
◇第4紀 404年 南中の月 28日 シロディール~サマーセット島の連絡船にて
月明かりが照らす船上に1人スフィリアは立っていた。仲間の葬儀を終え、幼馴染の遺品を届けるサマーセット諸島への旅の途中である。スカイリムからここまでの船旅の疲れが残っていたがどうしても今は眠る気にはなれなかった。
先程見た奇妙な夢が原因である。
「久しぶりに顔を見られてうれしかったのに……あの子が小さくなってたり、熊モドキにコテンパンにされてたり、挙句の果てには野菜と戦ってたり。何をやってんのかしらホント……」
サイジックのウィザードが言っていた通り枕元に魂石置いて寝た、夢に出て来た幼馴染。コーマ族?とかいうシェオゴラスの信者としか思えないノリの集団の世話になり、サルモールとしての自覚が段々と壊れて行くのを見るのはとても複雑なものがある。
「ふふっ、でも、未知の物を見て目を輝かせる所は昔と全然変わってなかったなぁ。……どこへ行ってもあの子はあの子ね」
2人が初めて出会ったのはもう10年以上も前に遡る。彼女がいた孤児院に母親に連れられたアンジェルモと出会ったのが切っ掛けだ。孤児院の出資者である彼の母親が院長と話をしている間、彼と遊んであげたことが切っ掛けで交流が始まったのだ。
年下で、良家の子息らしく引っ込み思案。いつも自分の後を付いて来た彼をいつしか弟のように思ったのはいつの頃からだったか……。何かを教える度に目を輝かせていた彼の顔が夢の光景と重なった。
(あの子も向こうで頑張ってる……なら私もやるべきことをしないとね)
静かに対抗心を燃やし船室へと戻って行くスフィリア。先程まで彼女の心を覆っていた不快感はもうどこにもなかった。
◇異世界 紅魔族の里 アンジェルモの家 玄関前
午前4時。東の空が白み始め、石の上で座禅を組んでいるアンジェルモの姿が徐々に照らし出されていく。
「…………ふう」
顔に差す光で時間の経過を悟り息を吐き緊張を解く。彼が行っていたのは主に聖堂司祭が行う《瞑想》である。術者の体内に魔力を流し込む治癒の魔法の性質を応用した訓練で、体内の魔力の流れを意識することにより素早くに大気中から取り込んだ魔力を体内に巡らせるための訓練である。
スフィリアと比べ魔力量が少なかった彼にとって、魔力消費の効率化と魔力の回復速度は生命線といえる。だから生前は、暇を見つけてはよく行っていた訓練の1つである。
族長の家に泊まらせてもらった頃は睡眠の妨害をしないようにで一時的に中断していたが、一刻も早く生前の力を取り戻すべく訓練を再開したのだ。
体内の魔力の流れを確認した後は紅魔の里を地図を片手に《消音》効果のあるブーツで全力で走る。《灯火》の魔法で近くを照らしながら息が切れるまで走り、疲れが溜まったら回復魔法を精細にコントロールすることで溜まった疲労を回復して再びに全力疾走していく。彼の《灯火》を人魂と勘違いした農家の主人に魔法で吹っ飛ばされそうになるハプニングがあったが、何とか五体満足で家に帰って来ることができた。
体が温まると仕上げに碧水晶の短剣→ドーンブレイカーの順に切る・刺す・剣の腹で打つという動作を体の各部を想定しながら振う。
「ふん! せい! ……あの熊め! アルトマーは同じ相手に二度と負けないからな!」
なお仮想敵は一撃熊である。記憶力が良いアルトマーは過去の屈辱を決して忘れたりしないのだ。
◇2時間30分後 アンジェルモの家 キッチンにて
登校の時間も迫った頃になると、昨日の残り湯で汗を洗い流し弁当作りを始める。
《火炎》で薪に発火させ陶器の鍋に族長宅からもらった米と水を入れて火にかける。
その間に牛肉をリーキと一緒に真鍮鍋で炒め、火で炙ったニンニクと塩で味と風味をつけ、放置して冷ます。
米が炊き上がり《氷雪》を軽く当てて熱を取り容器の底に敷き、先程炒めたリーキと牛肉を上に入れれば変則的な『焼肉弁当』の完成である。
「これが焼肉弁当…………?
1人暮らしを心配してくれたゆんゆん母によって少しの米と料理の作り方が書いたメモを渡されていた。料理名以外はまともだったので再現はできたが、実物を知らないアンジェルモの不安は拭えない。
「…………まぁ、学校でめぐみんやゆんゆんに確認すればいいか。例え失敗していたとしても今の私は子どもだからおかしくは無いはず…………うん、そうに違いない」
不安をひとまず先送りにし、ゆんゆんが選んでくれた紅魔族のローブに袖を通し始める。黒地に青のラインの落ち着いた色合いであり、フードとマントを留め具で着脱できるようになっていた。いずれは状況に応じて様々な付呪のフードやマントを付け替えることできるだろう。
何より特筆すべきことはこのローブそのものにも着用者の魔力を制御する魔法がかけられており、タムリエル大陸ではそうみられない、全ての分野の魔法を効率良く扱えるようになる優れものであった。紅魔族の魔法技術の高さが窺える品である。
(…………おっと、感心してる場合じゃないな。手続きがあるから急いで行かないと!)
指ぬきの紅い手袋を付け、トレーニングで馴染んできたブーツを履き、勉強道具と弁当を肩掛けバッグにしまう。
(そういえば魔王軍に出くわすかもしれないな? 一応、腰に下げておこうか)
左腰のベルトに短剣を差しこみ、戸締りをし玄関を出る。異世界の学校生活に期待で胸を膨らませ足取り軽く学校へと向かって歩き始めた。
道を進んで行くと遠目にそけっとがポストを確認しているのが見えてきた。
「そけっとさん、 おはようございます!」
「おはよう、アンジェルモ君! 今日から学校だったわね。 少し早い気がするけど?」
「早めに登校して先生方との打ち合わせをしないといけないのです。 それに冒険者カードも作らないといけませんからね」
「ああ、なるほどね…………ところでその服は貴方が選んだのかしら?」
「いいえ、族長のご息女のゆんゆんさんが…………この服がどうかしましたか?」
「あ、ううん気にしないでね!? ちょっと興味が湧いただけだから! こ、個性的でいいわよ?」
「あ、ありがとうございます。では、私はこれで…………っとその前に」
周囲を見回し《生命探知》を唱えると白いオーラがアンジェルモの目に可視化される。
つまり何者かが姿を隠して潜んでいるのだ。その正体に心当たりがあったアンジェルモは嘆息しつつも、変性魔法の《念動力》で数メートル先の小石に手をかざし手元に引き寄せ始めた。
「ええ!? なにそれ凄い! どうやって動かしてるのっ!?」
『…………!?!?』
見たことがない魔法に興奮したそけっとの声と隠れている存在が息を飲む微かな音が聞こえた。
アンジェルモは無言のままかざしていた手の向きをオーラが見えていた場所に向け……
「おっと、手が滑りました」
「あ痛った―――!!?」
突如引き寄せていた小石を逆に《念動力》でその場所に向け飛ばした。
ゴッ!という衝突音と何者かの悲鳴、そして何かが倒れる音が繁みの向こうから聞こえた。
2人は顔を見合わせ、そして互いにうなずく。
「それではそけっとさん、私はそろそろ学校に行きますのでこの辺で失礼します」
「ありがとう助かったわ! …………さぁ今日こそ正体を暴いてやるわよ!」
そけっとが木刀片手に茂みの方に駆けて行くのを確認してアンジェルモも学校への道を急ぐ。
背後で鈍い音と爆発音が聞えたような気がしたが、優先すべきものがあったので振り返る事はしなかった。
30分後 里の魔法学校 職員室にて
「…………というわけで今日からこちらで学ぶ事になったアンジェルモ君です。里の外から来たから慣れない事もあると思いますので、先生方はフォローをお願いします」
「我が名はアンジェルモ、本日よりこの学び舎の一員となりし者! 教官方、ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」
校長の紹介を受け紅魔族流の名乗りを上げると教師一同拍手で歓迎してくれた。
皆が服装をチラチラ見てくるのが気にはなったが、名乗りが無事終わりアンジェルモはホッと安堵の息を吐く。
「君はかるせる先生のクラスになる。先生、後は任せましたよ」
「分かりました校長。では、アンジェルモ君は僕について来てくれ」
片眼鏡をかけた男性教師が近づいて職員室奥の部屋の中へ案内される。
小さな部屋に中にはいくつかの書類と事務用品、そして水晶が取り付けられた何かの装置があるだけである。
「アンジェルモ君、今から君の冒険者カードを発行する。必要書類を準備するからこの椅子に座って待っててくれないか?」
「了解しました、かるせる教官!」
「ははは、もっと肩の力を抜いてくれ。少なくとも里の子は先生と呼ぶ。君もそう呼んで構わないよ。…………さて資料は確かこの辺に置いたはずなんだけど?」
片眼鏡をクイッとあげて柔らかな笑みを浮かべると、かるせるは書類を探すべく机の引き出しをあさり始めた。そんな彼を目で追いながらアンジェルモは自分が過ごした訓練所の教官の事を思い浮かべる。
(教官は常に威圧感が凄かったから肩の力を抜きようが無かったのだが…………この人とは大違いだ)
勿論、軍と民間では教育のスタンスに違いが出るのは頭では理解できているが、それと慣れは別物である。
しばらく考えにふけっていると書類の束を抱えたかるせるが戻ってきた。
「お待たせ! それじゃあ一番上の書類に身長、体重、身体的特徴を書き込んでくれ。下の冊子は冒険者の心得が書かれたガイドブックだから大切に保管するように」
「はい、ええっと身長は172センチ、体重は族長の家で量ったら53キロだったか? 歳は12で見た目は金色の肌に銀髪の碧眼…………」
生前と比べて随分と小さくなったものだと思いながらも必要事項の記入し、漏れが無いかを確認をしてもらう。
無事許可が下り、水晶に手をかざすと機械が動き始め備えつけられていたカードに文字が自動で書き込まれる。
「さぁ、カードの記入が終わったけど先にステータスを見せてもらうよ?」
機械からカードを取り数値を確認したかるせる。その目が紅く輝きを帯びる。
「おお! 魔力は生徒の平均より劣るけど知力は上位の子にも匹敵するね! 生命力と筋力はそこそこで敏捷性はかなり高い。器用度は並みで幸運はかなり低いね? いや、魔法の素質で僕たちに迫るエルフがいるとは驚いたよ!」
紅魔族には及ばないものの魔法の素質はこの世界でも十分に通用するものであったようだ。
カードの説明もそこそこに里の皆と同じアークウィザードへとジョブチェンジを行う。
これにより転校手続きは全て終える事ができた。
「ところでこのスキル欄にある『高貴な生まれ』って何だい? 君だけが使えるユニークスキルのようなんだけど…………被魔法ダメージ増加と魔力高速回復は何となく分かるのだけど」
「恐らく私たちの血に眠る力の事でしょう。力を活性化させることによって空気中の魔力を吸収する速さを大幅に増加させることができる能力です。反動が大きいので1日に1度しか使えないのが欠点ですね」
「つまり君たちアルトマー族は魔力量の少なさを回復速度で補っているわけだね? 実に興味深いな…………」
「残念ですが我々の掟で話せない事もありますが、それ以外なら何時でもお訊きください」
かるせるが自分に興味を持ち始めて来たので、ボロが出ないように釘を刺し深入りしないようにする。その後、出来上がった冒険者カードを首から下げ男子のクラスへと2人で向かった。
◇5分後 男子クラス前の廊下にて
「えー、早速ですが今日僕たちのクラスに新たな仲間が加わります。里の外から魔法留学に来た子ですのでみんな仲良くするように―――」
扉を挟んだ向こう側で担任が話す声と子供たちの歓声が聞こえてくる。
様子を探るために耳を澄ますと男子に混ざって女子の話し声までする。
(…………男女別のクラスって聞いたぞ? さっき時間割を確認したが合同授業では無かったはずだ。 一体何が起きてる?)
「ああ、アンジェルモ君ちょっと…………」
少し離れた所で校長先生がニコニコ手招きしているのが見えた。すぐに近寄って要件を確認する。
「いや、大したことは無いんだが、女子クラスの子供たちも君を見たいらしくてね! わざわざホームルームを切り上げて覗きに来てるみたいなんだよ。 多分教室の窓からこちらを見ているんじゃないかな?」
「え…………そんなことのためにわざわざ!? 授業の準備とかは無いのですか!?」
「勿論私たち教師は教室の後ろの方に既に待機している。朝私達にした以上の派手なのを期待しているよ!」
「わざわざプレッシャーをかけに来たのですか!? お待ちを! まだ話は―――くそ! 教室に入られてしまった!」
紅魔族の名乗りには覚悟が必要なのにわざわざペースを乱して行く校長。彼に悪気が無いのが余計に腹立たしい。
「あ、アンジェルモ君そろそろ頼むよ!」
しかも最悪のタイミングで出番が来てしまった。
「くっ! 神々よご加護を…………」
泣きたくなる気持ちを堪え、騒がしくなった教室へと足を踏み入れた。
(紅魔族イッパイ…………目が光るコワイ…………聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない…………)
教室に入るとたくさんの視線が自分に集中し、どこを見ても赤く光る目、目、目。
皆が盛り上がる名乗りをしなければいけないというプレッシャーに加え物理的に眩しい視線。先程ペースを乱された事と相まって頭が真っ白になっていた。
(何とかしないと! 何とか…………む?)
周囲が気になる振りをして何とか時間を稼いでいると窓の外に知った顔が見える。
ハラハラと見ているゆんゆん。真剣な表情で見ているめぐみん。2人の指には自分が渡した指輪がはめられていた。
こちらの視線に気づいた2人の口がそれぞれ動く。ぎゅっと服を握りしめたゆんゆん。自信に満ちた表情でこぶしを突き出しためぐみん。声は耳には届かなかったが気持ちは心に伝わった。
『1人じゃないよ! お願い、頑張って!』
『一撃熊に向かって行ったあなたはそんなものじゃないでしょう?』
(…………やれやれ、あの子達にまた助けられてしまったな)
心から温かさが全身へと広がり、震えが止まる。体が動く。視界に色が戻っていく。舌が動く。準備は整った。
「我は外界より来たりし者―――」
すぐに《雷のマント》を唱え自分の周囲に火花を纏わせる。魔法に驚いた何人かの生徒が息を飲むのが聞こえる。
「一族の秘術を操りし者にして、聖剣を賜りし者―――」
顔を隠すように《火炎》を上に向けて放射し、懐を《エクストラポケット》に接続し中からドーンブレイカーを取り出す。光り輝く剣の出現に周囲は色めき立つ。
「やがて、魔王を撃ち滅ぼし戦火を断つ者となる我が名を聞けっ!」
宣言と共に顔を隠していた《火炎》をドーンブレイカーで切り払いそのまま高く掲げる。
「我が名はアンジェルモ、やがて平穏を掴む者! 汝らの同門の士となり、友情を誓う者なり!」
ポーズを決め、心に決めた誓いをストレートに叫ぶ。
やり切ったという思いと共にポーズを崩し視線を戻すと子どもだけでなく教師たちの動きも止まったままだった。
「…………あっ、もう一つ覚えていて欲しい事があります。私のアンジェルモという名前は言いづらいですよね?」
生前を含めて初めての試み。自分から歩み寄るための最善と思える方法。
「なので、もしよろしければア…………アンジェとお呼びください。よ、よろしくお願いします……」
(くう…………自分からこう呼んでくれというのは中々勇気がいる…………しかも男女どちらとも取れる名を…………)
生前は散々な目に遭った呼び名ではあるが、ひょいざぶろーによるとこの里のセンスと合致した呼び名でもあるため親睦を深めるきっかけになるかもしれない。自分の感情にさえ目を瞑れば万事上手く行く。そう思っていても羞恥心でどうしても視線を下げてしまう。
「「「「うぉおおおおおおおお!!」」」」
「!?!?」
が、突如教室を震わせる絶叫が起こったかと思うと大勢の生徒にもみくちゃにされていた。
「我が名はえすとる! さっきの名乗り痺れたぞ、あんじぇ!」
「我が名はあるえ、君は中々に面白い子だね?いつか君の話を小説にしてみたいものだ」
「さっきはあんなにばっちり決めたのに最後は顔を真っ赤にしながら『あんじぇとお呼びください』なんて・・ギャップに萌えるわ!」
「ねぇ、エルフの耳はすぐ取れるってパパから聞いたんだけど引っ張ってみていい?」
「やめて下さい!? 何ですかそのデマは! ファルメルじゃあるまいし!」
「変わった格好にダガーまで差してるからゆんゆんみたいな変わり者かと…………思ったより普通で良かった!」
「ちょっと?!どさくさに紛れて私の悪口言ったの誰!?」
「転校生よりも上手く名乗れていないゆんゆんは間違いなくおかしいと断言できますよ」
騒ぐ生徒、それに便乗する教師、野次馬見物しに来る里の
散々弄られ我慢の限界が来たアンジェルモが幻惑魔法で生徒を鎮静化させるまで騒ぎ続くのだった。
「アンジェ君は便利な魔法を持っているんだね。授業中みんなが騒いだらまた頼むよ」
「俺のクラスも頼んだぞ!」
「いえ、お2人が責任を持ってやってください!それにぷっちん先生は女子クラスですよね!?」
To be continue…
初体験編だと自己紹介が多いので名乗りだけで文字数が凄いことに…………次話からは自己紹介が減る分話を進められればいいな…………と思っています。