サルモール魔道士の異世界滞在記   作:半日本人

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お待たせして申し訳ありません。
UAやお気に入り件数が増えとても嬉しく思います!

本作品は爆焔より更に前の時代設定です。
主人公がカズマ達と出会うのいつの事になるやら…



9話 紅魔の里の変わり者達

アンジェルモが学校に通い始めて更に数か月が経過した。

 

いつもよりゆったりと朝食を終えて外に出ると雲一つない青空が広がっていた。

日差しの暖かさと心地良い風の気持ち良さに大きく伸びをし、固まった体をほぐしていく。

 

今日は学校もバイトも休みの日。

後は、生活の合間にコツコツ付呪しておいた装身具を魔道具屋に納品すれば今日は1日中自由だ。

 

魔道具店の商品にアンジェルモが作った装身具が加わったのは最近の事

新しい商品のアイデアに煮詰まっていたひょいざぶろー。

付呪した物をどう売るのか困っていたアンジェルモ。

利害が一致した2人が協力関係を築くのは当然の成り行きだろう。

結果、手数料として装身具の総売り上げの3割をひょいざぶろーに渡すことを条件に、アンジェルモは販売手段と残りの売り上げを得るというwinwinな関係が生まれた。

 

 

アンジェルモが製作した装身具にはこの世界には無い≪水中呼吸≫が付呪されている。

この付呪は比較的単純で、質の低い吸魔石であっても、十分な効果を出すことができる。

それにより生産コストを抑えて安い価格で販売できるようになった。

よって彼の装身具は、入手しやすい価格と独自性によって、船乗りや漁師を中心にじわじわと評価されていった。

最近では、とある宗教団体からも付呪された指輪や首飾りの予約が多数来ていてしばらくは、売り手に困ることはなさそうである。

 

 

(生活面でも心配事が無いし、天気もいい。こんな日はアーリエルの加護がありそうだ!)

 

暖かい陽気に当てられ、鼻歌交じりに道を歩いて行く。

今ならインペリアルやノルドにだって親切にしてやれると思えるほど彼は上機嫌だった。

 

 

 

同時刻   族長の家の前にて

 

「それじゃあ、行ってきます!お昼はどっかで食べて来るから!」

 

休日にも関わらず友人と遊ぶことなく部屋にいる娘に注がれる両親の視線。

それから逃れるようにゆんゆんは外へと駆け出して行った。

自分に家が見えなくなる距離までひたすら走ったのを確認して大きく溜息を吐く。

「はぁ・・思わず飛び出してきちゃった。これから何しよう・・」

 

外には出てきたものの特に予定は決めていなかったため途方に暮れてしまう。

こういった時、普通は友人宅に押しかけて遊びに誘ったりするのだが今の彼女には友人と自信を持って呼べる者が存在しない。

敢えて親しい者を挙げるとすればライバルの少女と異邦人の少年があげられるのだが・・

 

「・・やっぱりライバルは慣れ合ってはだめだよね。アンジェ君はいつも忙しそうだし。・・アンジェ君か」

 

ゆんゆんの脳裏に浮かんだのは彼が転校した日の記憶。

珍しいエルフの転校生が来るということで担任がホームルームを切り上げ男子の教室を見に行った時の事。

まさか全校生徒が自分を見に来ると思っていなかったであろう彼の顔は血の気を失い、所在なさげに辺りを見回していた。

あのプレッシャーの中で里の名乗りを上げるなど自分と同じ感性を持つ彼はさぞ心細かったことだろう。

 

「最初は凄く心配したけどそれでもアンジェ君はちゃんと名乗り切った・・ううん、それだけじゃなくてみんなと仲良くしたいという意思表示までして・・」

 

ああやって意思表示をしたからこそ、変わっていると言われながらもクラスに受け入れられいつの間にか友達もできていた。

ならば自分も勇気を出せば友人くらい作れるはずだと決意を固める。

 

「そうと決まれば早速練習ね!あ、でもいきなり人間は厳しいからまずは動物から・・」

 

決意を固めたゆんゆんは里のはずれに向かって歩き出す。

時間を潰すための手段として友達と遊ぶはずが、いつの間にか友達を作ることが目的となっていたがその事をツッコんでくれる存在はこの場にはいない。

 

 

1時間後  里外れの草原にて

 

装身具の納品も終わり食料を確保すべく草原へとやって来たアンジェルモは、うなだれて負のオーラを出している知り合いの姿を見つけていた。

(ゆんゆん? こんな所で一体何をやっている?)

 

ただならぬ感じに思わず身を隠して様子を窺がうと乾いた笑いを彼女は浮かべていた。

 

「ああ、なんで逃げちゃうんだろう・・・もういっそ一撃熊とかでもいいかな・・」

 

『ああもう!どうして逃げるのよ! こうなったらもう一撃熊でも・・』

 

彼は以前そけっとが似たような事を言っていたのを思い出していた。

もし、その時と状況が同じだとするとゆんゆんが今している事は・・・

 

(ははあ、狩りか?意外とゆんゆんもお転婆なのだな)

 

てっきり虫も殺せないと思っていたのにやはり彼女も紅魔族なのだと感心する。

だが、流石に魔法すら使えない女の子がモンスターと戦おうとしているのは危険すぎて見過ごせないと陰ながら手を貸すことを決めた。

そして現れたモンスターの敵意を削ぐべく、≪魅了≫を無音の唱えで詠唱し何時でも放てるようにしながら息を潜めて待った。

 

 

 

 

10分ほど経過し、ゆんゆんのテンションが下がる中、不意に彼女の正面の草むらが揺れる。

 

(よし、今だ!)

 

空いた手に握りこんでいた石を別方向の草むらに投げ、大きな音を立てさせる。

音に驚いたゆんゆんは思わず視線を音がした方向に向けると同時に背後を幻惑魔法の光が駆け抜けていき草むらに着弾。光が破裂し周囲を魔法の輝きが包んでいく。

 

「ひゃあ!? 今の音何!?」

 

流石に着弾音までは消せず驚かしてしまったが彼女が振り向いた時にはすでに光は霧散していた。そして目の前の草むらを掻き分け小さな影が姿を現す。

 

「――!!」

 

ゆんゆんが息を飲み、出て来た影を凝視しているのが見える。

一方、アンジェルモからは遠すぎてシルエットしか確認できないが、背中に何かを背負った、鳥のような影に心当たりがあった。

大人しい上に大量の経験値が得られ、食べても美味だというお得なレアモンスター。

 

(おお、カモネギ!ゆんゆんは凄くついてるぞ!さぁ、逃げないうちに早く!)

 

幻惑魔法により大人しくなっているカモネギをゆんゆんは震える手で抱き上げる。

そして片手がカモネギの頭へと伸びていき、恐る恐る頭を撫で始めた。

 

「はわわわ・・全然逃げて行かない!? こ、この子となら友達になれるかも?」

 

「・・・はぁ!?」

 

さっさと倒して経験値を貰いおかずとして持って帰ると思っていたのにまさか展開。

隠れていることも忘れ、思わず声が出てしまった。

彼女が友達に飢えていた事は知っている。しかし、まさかモンスターで妥協しようとするほど深刻だとは誰が予想できただろうか。

 

(ゆんゆんはアレと仲良くするつもりか!?ならまずい!そろそろ魔法の効果が・・・)

 

幻惑魔法の効果は一時的なもの。

今は心を無理やり落ち着かせ敵対心も警戒心も抱かずにされるがままである。

その効果が切れると一体どうなるのか。

想像してほしい。我に返ると見たことが無い大きな生き物にがっしりと抱きかかえられ、その生き物が紅い瞳をランランに輝かせこちらを見つめている状況を。

 

「あれ!? 急にどうしたの!? ちょっとそんなに暴れると・・・ああっ!?」

 

身の危険を感じたカモネギは必死の抵抗をし、ゆんゆんの手を振りほどき草むらへと一目散へ逃げて行ってしまった。

後には、ショックの余り放心状態になったゆんゆんと、余計な希望を持たせてしまった罪悪感に頭を抱えるアンジェルモの2人だけが残された。

 

 

 

40分後 里の定食屋にて

 

ショックで座り込んでしまったゆんゆんを何とか説得し、町の定食屋へ2人は来ていた。

注文を終えて、お互いに気まずい沈黙が続く中、意を決してアンジェルモが口を開く。

 

「その・・すまない! さっきのカモネギに私が魔法をかけたせいで・・」

 

「え!? あ・・もしかして幻惑魔法?」

 

「そう、私が皆を大人しくさせるのに使っているあれだ。てっきりモンスターを狩りに来たと思ったから逃げないようにしたんだが・・むしろ余計なおせっかいになってしまった・・本当にすまない」

 

「ううん、アンジェ君は悪くないから!そうよね、あれだけ逃げられたのに急に懐かれるわけないよね・・」

 

「・・なぁ、もし悩みがあるなら私に話してみないか?・・どうしてモンスターと友達になりたかったのだ?」

 

更に落ち込むゆんゆんに対し話題を変えるべく、先程の行動に至った経緯を訊く事にした。

 

 

 

20分後 同 定食屋にて

 

「・・・なるほど、人間はハードルが高いからまずは動物と思ったと。・・むしろ言葉が通じない分、難易度が高いだろう?」

 

「そ、そんな事ないよ!ほらこの本にも『言葉や種族を越え友情が生まれる』って書いてあるでしょ?」

 

「本のあとがきに『素人がやると食われる危険性があります』って書いてあるぞ!真似しちゃダメだからな!」

 

ゆんゆんが持っていたの本は転生者より持ち込まれた物で、聖者ハタマ=サノリが動物と心を通わせていく記録が書かれている。彼は猛獣に重傷を負わされながらも動物を愛し続け、最終的には動物の王国を築いた人物だ。

 

「そんな人の真似をゆんゆんができるわけないじゃないか!サボテンとは違うのだよ!サボテンとは!」

 

「ちょっとサボテンを馬鹿にしないで!? 植物にだって心があるのよ!それを容赦なく磨り潰して、変な薬を作ってるアンジェ君は心が貧しいんじゃないの?」

 

「な、なんだとー!?」

 

売り言葉に買い言葉と段々ヒートアップしていく2人。お互いの息が切れ言葉の応酬が止まると周囲の囁き声が耳に入って来た。

 

「ーー族長の娘さん・・・また彼と一緒に」

 

「里一番の変わり者に、新参の彼。やっぱり変わり者同士気が合・・」

 

「「・・・・・」」

 

騒ぎすぎて周囲の注意を引いてしまった事に反省し、料理が運ばれて来るのを大人しく2人は待つのだった。

 

 

 

 

 

「そもそもゆんゆんは難しく考え過ぎじゃないか?里の風習にしても友達を作るにしても。もっと肩を力を抜くといいぞ… お!?この唐揚げ結構いけるな!」

 

「私からするとアンジェ君は考える事を放棄してる気がするよ!段々里に毒されていってるし…」

 

「『郷に入れば郷に習え』という言葉もあるだろ?どうしても譲れない物でなければ相手に合わせるのが仲良くなるコツだ」

 

運ばれて来た料理を食べながら、他者との付き合い方を説いて行く。

 

彼が所属していた部隊が多種族構成であったため変な習慣に耐性があり、好奇心旺盛な性格も相俟って異文化への順応が早かったのもある。

 

唯一相容れないものはタロス信仰ぐらいだろう。

 

「私と1つしか違わないのに色んな経験してるんだね。ちょっとうらやましい…」

 

「…まぁ、それでも私は変わり者扱いだからな。だからゆんゆんも余り気を病む必要はないぞ?変わり者同士仲良くやっていこう!」

 

「え!?それってもしかして…」

 

「ほら、難しく考えるな。暇な時は一緒に楽しく遊ぶ。ただそれだけだろ?」

 

緊張で肩に力が入ったゆんゆんをリラックスさせるように笑いかけ片手を差し出す。

 

暫く自分の手と相手の手に視線をさまよわせていた彼女はやがて目を閉じて深呼吸を2回。

そして意を決して差し出された手を掴む。

 

「あの!ふ、ふつつかものですがよろしくお願いします!」

 

「……」

 

類は友を呼ぶというなら変わり者扱いの自分は新たな変わり者を呼ぶのだろうか。自分が知り合った者の多くが里屈指の変わり者達である事に気付きアンジェルモは思わず頭を抱えるのだった。

To be continue…




アレクサン「ねぇ!パパ!この子家で飼っていい?」

マッドクラブ「……」


野生動物やモンスターをペットにできるスカイリムの養子。

人間ビックリ箱なドヴァーキンすら出来ないのに一体どうやっているのでしょうね…
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