サルモール魔道士の異世界滞在記   作:半日本人

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中世の時代はお湯の張ったお風呂はかなりの贅沢品で普通は焼けた石に水をかけたサウナ風呂が一般的であったとか。雪国スカイリムでも天然温泉はあってもお湯張りの風呂はなかったと思われます。井戸で水を組むのは重労働でしょうし・・きっとそんな世界から来たアンジェルモにとって銭湯は最高の贅沢かもしれません・・




11話 プチ贅沢なひと時

第四紀 %#の月 δθ日  スカイリム  ドラゴンブリッジにて

 

 

「あぁ、するとあれは聖蚕の僧侶だったのか。それならこの橋を南に下って行ったぞ」

 

「流石だな!情報感謝する。膝、大事にしろよ?」

 

町の衛兵から情報を仕入れたプリズナーは同伴者の所へと向かう。

宿屋のフォー・シールズの屋根の下の日陰に日光を避けるように彼女は立っていた。

 

「随分とかかりましたわね。成果はありまして?」

 

「ああ、あの橋を渡って南に行ったみたいだ」

 

「では急ぎますわよ。お父様たちに先を越される前に!」

 

プリズナーの腕を掴んで急かす手は雪のように白く、フードから覗く目赤く光っている。

何よりその口から時折見える鋭い牙が彼女が人間ではないことを示していた。

 

「だがセラーナ、日はまだ高い・・それではお前が――」

 

「御心配には及びませんわ。それに私のことは私が1番分かっておりましてよ?」

 

「やれやれ、強情なお嬢様だ・・・」

 

一見、良家のお嬢様に見えるこの女性は、強大な力を持つ吸血鬼ハルコンの1人娘である。

吸血鬼ハンター集団のドーンガードに協力していたプリズナーがとある遺跡で『星霜の書』と共に閉じ込められていた彼女を助けたのがきっかけとなって知り合った。

その後、危険を覚悟でドーンガードの下にいたプリズナーを訪ね、父ハルコンの野望を止めるべく共に旅をしている。

彼女自身も強力な吸血鬼であり強力な破壊魔法と死霊術を使えるが、気になる物を見つけるとすぐ触ってしまう困った一面も持つ。

多くの人と出会ってきたプリズナーの中でもダントツ1位の個性的な旅の相棒だ。

 

なるべく彼女の影になるように先に進んでいくと前方から人影が見えて来た。

その個性的なシルエットを確認し2人は顔をしかめる。

「あら?あなたにお客様のようですわよドラゴンボーン?」

 

「くそ!ミラーク卿だか知らないが面倒な!いずれソルスセイムに乗り込んで目にもの見せてやる・・・!」

 

セラーナが素早く破壊魔法を放つ準備を終え、プリズナーも盾と剣を構える。

世界を救い、戦争を終わらせても尚、英雄はこうして剣を振るい続ける。

新たな脅威は着実にスカイリムを包み込もうとしていた。

 

 

 

 

異世界 紅魔族の里 学校の男子教室にて

 

「――という夢を私は見ました。夢はそこで終わりましたが、個人的にはその仮面の変態集団が命と引き換えにあの野蛮な筋肉ダルマの膝に矢を撃ち込みたまたま通りかかった黒衣の魔法使いとお供の魔闘士が止めを刺して終わるという展開になればいいと思います。・・・先生いかがですか?」

 

「・・・2点。個人的な願望が全面に出すぎだよ、君はその戦士に個人的な恨みがあるのかい?いつもの君らしくもない」

 

「ぐ・・憎しみに囚われてポーションを失うとは!?」

 

「憎しみによる悪堕ち展開は見てる分には楽しいけど実際されると凄く面倒だからね・・仮に君がそうなっても僕は手加減しないからそのつもりで。それじゃあ、今日の授業はここまで!アンジェ以外は急いで帰る準備をしなさい」

 

そういうと担任は黒板に書かれた「今日見た夢の続編を!」をという文字を消し始めた。

 

その数分後、鐘の音が鳴ると共に生徒たちはいそいそと帰り支度を始める。帰りの挨拶と諸発表もそこそこにクラスメイトたちは一足先に家に帰って行く。

 

「それじゃ、お先に『聖剣の賢者』!補習と風呂掃除頑張れよ!」

 

「じゃぁな、『聖剣の賢者』。魔王軍との戦い今度詳しく教えてくれよ」

 

「おい、その呼び名やめてくれ!? まだ未熟者なのに賢者・・うっ!? 胃が・・」

 

先日の魔王軍との戦闘で成果を出したことで里の若者たちから二つ名で呼ばれるようになり周囲から面白半分に呼ばれるようになった。

彼らからすれば100%善意から付けたカッコイイ名前なのだが、実力差を考えて暗殺という手段を使った自分からすると良心の呵責と期待の重さで胃がストレスでマッハな状態である。

 

「僕はいいと思うよ賢者。教師の知らない魔法を使えるからあながち間違いじゃないし。それに君の先生である僕は自動的に『大賢者』を名乗れるからね!」

 

「味方が誰もいない・・あぁ、今無性に母上に会いたい気分だ・・」

 

友人たちは帰り、担任は課題を取りに職員室へ。

教室に残されたアンジェルは自分の机に突っ伏し、1人しくしくと涙を流した。

 

 

 

 

2時間後 紅魔の里 銭湯「混浴温泉」にて

 

ここは、紅魔の里随一にして唯一の銭湯である。

名前こそ温泉と付いているが湯は水を火炎の魔法で温めた物。あと混浴でもない。

そんな銭湯で今、アンジェルモは床をデッキブラシでこすっていた。

 

「・・・よし!ご主人、準備ができました」

 

「おうわかった!少し離れてろよ?・・穢れを清める清流!≪クリエイト・ウォーター≫!」

 

デッキブラシを担いだアンジェルモが離れると大量に水が流れ込み、汚れや残った洗剤を見る見る洗い流していく!

 

「流石ですね、まるで女神アクアを彷彿とさせる魔法です」

 

「アンジェ、冗談にしては質が悪いぞ!?あぁ、縁起でもない・・・!」

 

転生の場でアクアが見せた水の魔法を思い出すかのような見事な魔法。

そう褒めたつもりであったのにご主人は顔を青ざめさせて身震いしている。

 

アンジェルモにとっての彼女はデイドラよりも遥かにマシな神としてのイメージしかない。

それに加え彼女の信徒であるアクシズ教徒の実態を知らないのも大きい。

それ故、時折このような認識の違いが現れてしまうことがある。

幸い大きなトラブルにならないのはこの里の気質と、彼が少々残念な奴だと認知されているからであろう。

 

「ああ、こっちはもう済むから表でかあちゃんの手伝ってくれ。 床磨きご苦労さん!」

 

「分かりました。何かあったら呼んでくださいね?」

 

掃除を終えてガラス戸を開けて脱衣所に出ておかみさんの姿を探す。

彼女はちょうど牛乳瓶を冷蔵庫に補充している所であった。

 

「おかみさん、中の掃除が終わりましたので何か手伝えることはありませんか?」

 

「あらぁ、いつもありがとね! それじゃあこれを詰めるのを手伝ってくれるかい?」

 

「もちろん、お安い御用です!」

 

サルモール魔導士がタオルを頭に巻き、風呂掃除などの肉体労働に汗を流す。

頭の固い上司が見たら卒倒しそうな光景がそこにあった。

 

「後、鍵はどこに・・・あぁ、あそこですね・・≪念動力≫!」

 

「んまぁ、ありがとうアンジェちゃん!相変わらず便利な魔法ね!」

 

「・・いえ、その・・お褒めいただきありがとうございます・・」

 

魔力で器用に物を引き寄せる彼の魔法におかみさんは感心した声を上げる。

その声にアンジェルモはくすぐったいような照れ臭いような気持ちになる。

 

「おかげで夕方の営業に間に合いそうだよ!バイト代は期待してかまわないよ!」

 

「感謝しますおかみさん!・・それでは、そろそろ時間になるので片づけに・・」

 

「おや、もうそんな時間かい?それじゃあ今日もご苦労さま!」

 

「はい!お疲れ様でした! あっ、後でこちらを利用させてもらいますね!」

 

 

1日の疲れを広い湯船にゆっくり浸かりながら癒すという贅沢。

任地のスカイリムでは味わうことがなかったこの至福の時が彼のお気に入りになっていた。

一刻も早く家に帰り、入浴をしたい。そう考えるとアンジェルモの手は更に早く、道具を片付け始めるのだった。

 

 

40分後 再び銭湯「混浴温泉」にて

 

「おや、最近『聖剣の賢者』と呼ばれて有頂天になっている転校生じゃないですか?」

 

「そういう君は『水平線』と男子に評判のめぐみん ―― ≪オークフレッシュ≫!」

 

「あいたぁー!? 指が!? 指がぁあ~!?」

 

魔法で固くなった脛に思いっきり蹴りを入れてしまっためぐみんが足を抱えて転げまわる。

その姿に何故か罪悪感を覚え、すぐに助け起こすことにした。

 

「すまん、つい反射的に!今、痛みを取ってやるから・・・≪治癒の手≫!」

 

アンジェルモの手から放たれた光が足に当たり徐々に腫れと痛みが引いていくのをめぐみんはポカンと見つめる。

 

「ち、治癒の魔法!? あんじぇは僧侶の魔法も使えるのですか!?」

 

「流石に病を癒したり、呪いや毒の除去は無理だ。精々傷を塞ぎ、シールドを張り、弱いアンデットを払うぐらいだ」

 

「本当に頭痛くなるぐらい非常識ですね・・」

 

納得いかないという表情で考え込むめぐみん。その後方から遅れて彼女の家族も合流する。

奇遇にも一家みんなで銭湯に入りに来たらしい。

 

話をしていく内に折角だからとひょいざぶろーに誘われて一緒に入浴する事に決まり、2人は更衣室へと入って行くのだった。

 

 

 

「あんじぇ!?お前・・ふんどしをはいているのか!?意外だな・・」

 

「ほ、ほら?その格好でここにいると風邪を引きますよ!? 早く入りましょう!」

 

自分を見つめる視線に耐えきれなくなり、アンジェルモは逃げるように浴室に戸をあけるのだった。

 

20分後

 

「・・・・」

 

「あの、そんなに見つめられると落ち着かないというか?私の肌が珍しいのは分かりますが・・」

 

「いや、女っぽい顔をしているが意外に筋肉はあるんだな!細マッチョといった所か!」

 

(結局は生前と同じ外見という訳か・・意識して筋肉をつけようとしているんだけどな・・)

 

良く女と間違えられた顔。生前の世界を懐かしんだ所で、ふと今の世界へ意識を向ける。

 

この世界に来た彼の感想を一言で表すなら「おかしい」であろう。

そう彼にとってこの世界はおかしいのだ。

それは野菜が逃げ、魚が畑で獲れ、変わった感性を持つ種族がいることよりも。

自分に向けられる感情に違和感を覚えていたのだ。

 

スカイリムの地で恐怖や憎悪の感情を向けられたが、こちらでは親しみや興味、そして善意の感情が向けられている。

時折残念な人を見るような目を向けられるがスカイリムと比べると数百倍もマシである。

最近は人間の中に暮らす今の状況を「楽しい」と感じる自分の変化に戸惑いを隠せない。

少なくとも転生の際にアクアの2つの選択肢を拒否するぐらいには人間に苦手意識があったはずなのだから。

 

「ひょいざぶろーさん、私はここに来て変わったと思いますか?」

 

自分だけでは結論までは行きつかない。そう考え、頼りにしている大人の助けを借りることにした。

しばらく顎に手を当てて悩んだ後、彼は口を開く。

 

「少なくとも、自分の感情を表に出すことが増えたな。村長が言うには『礼儀正しいが他人を気にして感情を抑えてる』と心配していた。だが、もう心配ないとお伝えしてもいいだろう。隣のぶっころりーは『最近遠慮が無くなってきた』とぼやいていたが――」

 

思い出すかのように指折り数えながら、自分が他人から聞いた彼の評価を挙げ続ける。

言い方は違えど大体『最近自分を出すようになって来た』というのが自分の評価のようだ。

 

「ありがとうございます。最後にもう1つだけ・・あなたは私達エルフをどう思っていますか?感情的な意味でです・・」

 

この世界に来てからの皆の態度や向けられる視線で答えも予測がついている。

それでも自分が納得するために直接言葉で聞いてみたかったのだ。

 

「別に好きでも嫌いでもないさ。良い奴もいるし悪い奴もいる。俺たちと変わらないさ!」

 

「・・・そうですね!(私もそう思うようになりました!)」

 

実際に言葉にされてより強く自覚する。

この世界はおかしい。自分たちの常識であった人間達との対立の歴史が無い事が。

この世界はおかしい。エルフを「俺たちと変わらない」と断言する人間がいる事が。

この世界はおかしい。そしてそんな世界を「悪くない」と思っている自分も。

そんな自分に苦笑するアンジェルモにひょいざいぶろーが真剣な言葉が飛ぶ。

 

「まぁ、そんな事はどうでもいい。とりあえずはパンツも早く買えよ?」

 

「・・・・明日の放課後には必ず」

 

先程の空気もどこへやら。

2つの世界よりも彼がまず優先するべき事は自分の下着を新調することなのだ。

 

To be continue…

 




バニラでは体部分の鎧や服を取ると見た目は下着姿になりますが、周囲の反応を見ると何も履いてない状態になるようです。
ただ、服なら兎も角、鎧の下に何も着てないのは流石に無いと思いますので一応下着はつけている設定にしています。

恐らくドヴァーキンは豪快に鎧と下着を同時に着脱させているのでしょう。戦闘中でも着替えられる人物ですし!(暴論)

なお、男性の下着は褌、女性はブラとパンティーがありますが明らかに女性だけ時代が進んでいます・・コルセットやドロワーズなら兎も角・・

どうやら衣服の男女格差はモンハンだけじゃないようです・・
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