Skyrimでアルトマーのマイキャラが自然に魔法と暗殺技術に特化していくのはその主人公に影響された部分が大きいのかもしれません。
紅魔の里 森の中にて
まだ日が昇り切っていない早朝、アンジェルモは久しぶりにそけっとと木刀で打ち合っていた。
かつてはステータスの差で一方的な展開になることが多かったが、彼が徐々に生前の勘を取り戻していき、立ち回り方次第でかなり拮抗できる時間が多くなっていた。
「へぇ~、随分と腕を上げたわね! 上手く言えないけど動きに迷いが無くなって来た感じかしら?」
「ぐぐぐ・・こちらも上手く言えませんけど・・やっとこの体に馴染んできたという所です」
木刀でお互いに鍔迫り合いをしながら言葉を交わしていく。
そけっとがステータス差を生かし押し込もうとすれば、アンジェルモは力を逸らし逆に体勢を崩そうとしてくる。
せめぎあう2人の顔には笑みが浮かんでいた。
(これよ、これ! 近距離戦闘だから味わえるこの緊迫感! 魔法の撃ち合いでは味わえない刹那の攻防!)
やっと、弟子がここまで成長した事にそけっとは内心歓喜の声を上げる。
かつて本で読んだとある剣士の冒険譚。
屈強な魔物すらその剣で次々と切る伏せていくその主人公に憧れて、見よう見まねで1人剣の腕を磨いてきた。
皆は、剣に興味を示さず競う相手もいない毎日。
周辺のモンスターも自分に敵う存在は無く、新たな刺激を欲していた時に現れたのが外から来た彼であった。
「っと!!」
考え事で意識が逸れてる間に眼前に迫っていた剣を何とか避ける。逆にここが攻め時と見たのかアンジェルモは木刀と魔力で生み出した剣で一気呵成に攻めかかる。
「ちょ、ちょっと待って?! 《テレポート》!!」
「なっ!? 師匠大人気ないですよ!! 《透明化》!!」
ようやく追い詰めたと思った瞬間にテレポートで逃げられアンジェルモは思わず抗議の声を上げるがすぐさま姿を消し、魔法の射線から逃れる。
「ああ!?また消えた!?剣士なら正々堂々と戦いなさい! 《ファイアーボール》!!」
(いや、私はアークウィザードなのですが・・ていうか魔法を連射するのは剣士の戦い方ではないですよね!?)
迫りくる火球を音も立てずに前転で躱し、周囲をキョロキョロと見回しているそけっとの背後に忍び寄る。
「(隙あり!)《雷の罠》!!」
「後ろ!? きゃあ!?」
足元のに仕掛けられたルーンが電流が流れそけっとが怯む。
その隙にアンジェルモが後方からそけっとの腰に腕を回してクラッチしたまま後方に反っていく!
「え!?まさか女の子相手に嘘・・」
「油断した師匠に鉄槌を!!受けよ、ラセイユさん直伝!!《エルスウェアー・スープレックス》!!」
クラッチを解かないまま反るスピードをさらに加速。アンジェルモの背が綺麗なブリッジを描き そけっとの頭が草地に叩きつけられる。
すぐさま起き上がり、アンジェルモは臨戦態勢を取るがそけっとは頭に抑えてうめくだけで立ち上がれない!
「3・2・1・・ よし!!ラセイユさん、私はやりましたよ! 長い間待ち望んでいた瞬間が遂に・・」
東へと消えようとしている月に向かって拳を突き上げ、亡き師に勝利を報告する。
ようやく掴んだ初勝利の余韻にアンジェルモが浸っていると、バキッっと背後で何かが折れる音がした。
「・・・にこっ」
恐る恐る振り向くとそこには聖女マーラのように微笑むそけっととがいた。
足元には何故か真っ二つに折れた木刀が転がっている。
「・・・し、師匠流石ですね!あの技を私が受けた時、3日間は寝込んだのにたん瘤一つで済むとは!」
「へぇーあれは『3日間寝込む技』だったの? おかげでいい経験になったわ・・ありがとう」
「あの・・師匠・・もしかして怒っています?」
「いいえ?弟子の成長を喜んでいるだけよ。剣だけじゃなくて遠慮のなさも成長していたのは予想外だったけど」
アンジェルモは知っている。
一見穏やかに微笑んでいる彼女の魔力が急激に高まっている事を。
そしてその整った顔に青筋が浮かんでいる事を。
「喜んでいただけて何よりです・・あの、そろそろ学校の準備がありますので今日はこの辺で―――」
「ふふふ・・まだ時間は残っているじゃない?・・アンジェ君が成長したご褒美に次からは少し本気を出してあげる。具体的は上級魔法の解禁ね」
「・・さっき思いっきり《テレポート》使ってたじゃないですか・・冗談じゃない私は帰らせてもらいます!」
「あら、学校で教わらなかった?そのセリフは・・『死亡フラグ』よ!」
「っ!? まずい!!《麻痺》!」
そけっとが詠唱を始めた瞬間、あらかじめ準備していた魔法を撃ち、動きを止めようする。しかし・・
「レジストされた!?ちょっと、師匠!?私の魔力抵抗知っていますよね!?・・やばい目が本気だ!」
結果は魔力を浪費しただけに終わり、脱兎のごとく逃げだす。
逃げる背に上級魔法が放たれ、第2ラウンドの幕は開けるのだった。
2時間半後 里の学校 男子クラス
痛む体を引きずり、いつもより遅れながらも何とか学校にアンジェルモは登校した。
「あっ、アンジェ君今日は遅かった・・って、ええ!?どうしたのその包帯!?」
「お、脅かさないで下さい!そんな怪我、例の回復魔法でちゃちゃっと治せなかったのですか!?」
「痛みで集中ができなくて・・痛みが消えるまで簡単な魔法で徐々に治療している所だ」
「あんじぇがそんなにズタボロにされるなんて・・きっと魔王幹部のような凶悪な相手だったんだね!」
魔王幹部と同列にされてしまった師匠。死ぬような目に遭わされたとはいえ彼女の悪いイメージを払拭するべくフォローをする。
「いや、むしろ師匠は普段は優しいぞ? 今思えば背後から不意打ちしたのが彼女の癇に障ったのだろうな・・・おい、何故私から距離を取ろうとする?」
「ゆんゆん、離れましょう!なんだかんだで最後の一線は越えないと信じた私の間違いでした!」
「そんな!?私信じてたのに・・きっと、いつか私たちは、と、友達になれるって・・」
「はぁ・・あんじぇよ。貴様は馬鹿ではないのに誤解を招く言い方をするのだ?経緯をはじめから説明しろ。さもないとお前の友が存在しなくなるぞ?」
「わ、分かった! 実は早朝にそけっとさんと―――」
「・・なるほど、あんじぇとしてはアドバイス通りに『かっこいい必殺技』を放ったつもりなのにそけっとを怒らせてしまったと。アークウィザードなのに格闘技の必殺技を思いつく所が如何にもらしいですね」
「でも凄いよ!魔王軍の残党と戦ったのは聞いていたけどあのそけっとさんから1本取れるなんて・・流石は『聖剣の賢者』だね!」
「まだ、その名で呼ぶか!?はぁ・・師匠に完敗しているようではアイツにはまだ・・」
「アイツ?アンジェ君、そけっとさんより強い人を知ってるの?」
「強いというより戦いにくい相手だったな・・師匠なら戦い方次第で1割は勝てると思えるが、アイツはどれだけ手を尽くしても勝てる気がしないな・・(実際勝てなかったし)」
ふと脳裏に浮かんだのは自分の最期の敵の姿。
念入りに情報も集め、連携も確認し、一切の油断を排除して仲間と共に挑んでも奴には届かなかった。
自分の弱点を自分で補える多彩な戦闘技術に加え、シャウトという反則技と経験から来るであろう冷静な立ち回り。
戦闘スタイルがハッキリしているそけっとは違う得体の知れなさが奴にはあった。
「まぁ、もう会わないからどうでもいいか。それより、師匠の機嫌を直したいが・・」
「ああ、それなら何か贈り物を渡したらどうだ?ちょうど木刀も折れたからそれを渡すと喜ぶだろう」
「え!?女の人は木刀じゃなくて花束とかの方が・・」
「ゆんゆんの変わった感性と一緒にしないで下さい。あの木刀の可愛らしさが分からないなんてやっぱり変わり者ですね!」
「私が変わってるの!?木刀の可愛らしさが全然わからないんだけど!?あ、アンジェ君は分かってくれるよね!?」
「ふむ、可愛らしい木刀・・じゃあ間を取って花柄の木刀なんてどうだ?」
「「「ねぇよ!」」」
「!?」
「ごめんね、私も流石にそれはないと思うよ」
「ゆんゆんまで!?」
皆の意見を取り入れた完璧な答えが大ブーイングを受けて却下され、仕方なく木刀と花束の両方を放課後に購入することに決まった。
6時間半後 紅魔の里 鍛冶屋にて
「流石に花柄は無いか・・仕方がない、これとこれを下さい!」
残念ながら女性が喜びそうな絵柄は見当たらなかったので、虎と麒麟のが彫ってある木刀を一本ずつ購入し好きな物を選んでもらう事にした。花束は家の庭に植えている各色の山の花。
この世界では珍しい上にポーションの材料にもなるので気に入ってくれることだろう。
「後は、師匠に渡すだけだが・・どこだろう?家にも店にもいないみたいだし・・森か?」
彼女は店が暇になると里をぶらぶら散歩し、森のどこかで1人修行をすると聞いていた。
ならばきっと森のどこかにいるはず。
そう考えると早速家に戻り、武器と巻物の準備をして森の中へと足を踏み入れて行った。
20分後 紅魔の里 森の中にて
多くの動物が自分を警戒するため《生命探知》が敵として反応してくる。
その都度、破壊魔法或いは幻惑魔法で大人しくさせそけっとを探し続ける。
「ん?この先に魔力の反応・・紅魔族とは違う?なら魔王軍か?」
不意に前方に不自然な魔力を感じた。
《生命探知》には反応が無いことを確認し、恐る恐る様子を窺がうと見覚えのある水晶が落ちていた。かつて戦った魔王軍の残党が持っていたのと同じものである。
「魔王軍がここに来ていたのか!?すぐ大人に知らせ―――」
「そんな事言わずに少しアタシと遊んでいかないかしら?」
「っ!? 何者!?」
不意に背後から聞こえた女の声に思わず振り向いてしまった。
足を止めてしまった。それゆえに逃走のチャンスは潰えてしまう。
目の前に女性が手に持った魔道具をかざすと周囲を障壁が取り囲みアンジェルモとその女性を中に閉じ込める。
「まずい!? 《エクスプロージョン》!! ちっ!・・・せぇええい!!」
炎と爆発が障壁を揺らすが傷一つ付けられることなく終わる。
剣で切り付けても固い音と共に跳ね返される。
必死に抵抗するアンジェルモを面白そうに見ながら女性はつぶやく。
「無駄よ。この魔道具は元々紅魔族を捕らえるために開発した物。内側からは壊せないわ
それに―――」
「『認識疎外の魔法も掛かっているから助けは来ないわよ?』って所かな?魔力で分かる」
「あら?察しがいいじゃない?そういう子、嫌いじゃないわよ?」
一見すると隙だらけな格好で立っているが、目の前の女性からは感じられる強烈なプレッシャーを感じアンジェルモはうかつに仕掛けられないでいた。
「ああ、自己紹介がまだだったわね。アタシはシルビア、魔王様に仕える幹部の1人よ!」
「我が名はアンジェルモ!紅魔の里で魔法を学びし、ハイエルフ=アルトマーなり!」
「・・すっかりあの連中に染まっているわね。かわいそうに・・!」
「最近名乗りに快感を覚えて来てる自分が怖く思います。ところで幹部が何故ここに?」
「ああ、ある人物を調べにね。この前、部下が今までと違うやられ方をしたからその原因調査よ。ねぇ?部下に止めを刺したのはアナタでしょ?『金色のエルフ君』?」
そう言葉を発した瞬間、圧力が更に高まり、思わずドーンブレイカーを引き抜く。
光り輝く刀身を確認したシルビアも自分の獲物である鞭を構えて笑みを深くする。
「その剣・・!やはりアナタで間違いないみたいね!紅魔の里の新たな脅威の正体、このアタシ自ら見極めてあげるわ!」
(くっ・・まさか幹部とこれほど早く戦う羽目になるとは・・!)
異世界より、この世界を救うために送られてきた多数の転生者たち。
女神から強力な恩恵を受けた彼らですら未だ倒す事が叶わない魔王軍の精鋭たち。
その1人である魔王軍幹部シルビア。
余りにも絶望的な戦いが始まる。
To be continue…
好事魔多し。「おっ!イケるんじゃない?」と思った頃にやって来る中ボス様。
性格はアレですが任務を真面目にこなしていたシルビアさんなら不確定要素の調査に来そうだなという妄想です。
RPGみたいにまずは弱い敵でレベル上げといかないのが現実。勇者がスライムをプチプチ潰している間どこかの町の戦士が勝てもしない凶悪なモンスターに襲われたりします。
せっかく紅魔の里という激戦区に飛んだので彼にはもっと苦労してもらいましょう!
これも愛ゆえの試練です(?)