サルモール魔道士の異世界滞在記   作:半日本人

20 / 36
うーん、クロス先の二作品の魅力を存分に出せて無い気が…私の表現力の無さが恨めしいです… でも好きなので頑張らせていただきます!



13話 矜持と意地

「《アイアンフレッシュ》!!ぐっ!?」

 

魔法の鎧が体を覆ってなお、体に響く衝撃に思わずアンジェルモは呻く。

変幻自在の軌道で飛びリーチも長く見切りづらい鞭という武器。

唯一の欠点ともいえる威力の低さも武器の素材とシルビアの高いステータスによって帳消しにされていた。

 

「くそ・・調子に・・!」

 

一方的な展開を挽回するべく《透明化》を無音で唱え姿を消す。

 

「まさかこの年で上級魔法を・・?! いやこれだけ近くなら見えないはずが!?」

 

相手の認識を阻害し、特定の動作をして存在を意識させない限りどの位置からでも見えなくなれるニルンの《透明化》。

 

光を屈折させる結界を術者の周囲に張り、外から結界内部の全てを見えなくするこの世界の《ライト・オブ・リフレクション》。

 

似た性質の魔法の微妙な効果の違いが歴戦の幹部を驚愕させ隙を生み出す。

 

「《二連・チェインライトニング》!!」

 

「っ・・甘いわよ!《バインド》!」

 

威力と衝撃を倍加した雷撃が障壁に反射し、何度もシルビアにぶつかる。

しかし、大してダメージを受けた様子もなくすぐさま反撃に転じ、拘束するスキルを放つ。

 

「っと!?この技は盗賊のスキル!?こんなもので!」

 

絡み付くロープをドーンブレイカーで切り払い、空いた手をすぐさまシルビアに向ける。

 

「《サンダーボルト》!!・・・馬鹿な!?」

 

太い雷撃がシルビアに向かって放たれるがシルビアはそれを正面から突破して一気に距離を詰め鞭を振るう。

 

完全に不意を突かれたアンジェルモは強い衝撃で吹っ飛び障壁に叩きつけられた。

 

「アタシが何故、紅魔の里を担当しているか知らないのかしら? あいつらの上級魔法をくらっても無事なほど高い魔法耐性があるからよ」

 

打ち所が悪かったせいか意識が遠くなり、シルビアの声がどこか遠くに聞こえる。

 

「アナタも変わった魔法を使えるけど流石に紅魔族には及ばないわね。武器での戦いもスキルや経験の差でアタシには遠く及ばない・・良く頑張ったけどここまでね」

 

ふらつく体を何とか起こし、顔を上げるとシルビアがこちらを悲し気に見つめている。

 

「子どもに手をかけたくはないけど、アナタはアタシの部下を殺した。戦場での事だからその事を恨んでないわ。あの2人もそう覚悟を決めていたから。でもこのまま部下の脅威になるあなたを見逃す事はできないわ・・アタシには魔王様から預かった大切な部下を守る義務があるのよ」

 

彼女からは王に仕える者として、そして部下の命を預かるものとしての矜持を感じる。

だからこそ紅魔族相手に敗退を重ねても彼女は変わらず一軍を率いる立場にあり、部下も死ぬ間際まで、彼女のために尽くしていた。

上司からも部下からも彼女は信頼されているのだ

 

(見事な敵・・だから引くことは・・できない!)

 

立派な敵だからって倒されてやるつもりは毛頭ない。

勝ち目が無いからと抵抗をあきらめる気は無い。

例え英雄と呼ばれる相手であろうが、仲間のためなら全力で向かっていく。

サルモールという組織こそ無くなったがここでも命を懸けるだけの絆ができた。

痛みを必死に堪え気合を込めて魔法を叫ぶ。

 

「ぐ・・《治癒の息吹》!!」

 

「回復魔法!? そんなものまで!?」

 

アークウィザードが傷を魔法で癒すというイレギュラーにシルビアが動きを止める。

その隙を逃さずアルトマー血の力を開放し、周囲の魔力を急速に取り込み始める。

 

相手が垣間見せた矜持に負けないよう決意を言葉にする。

 

「・・私も軍にいた者としての誇りがあった!守るべき民の盾となり、母国の繁栄を切り開く刃としての!!」

 

しかし、その生を終えて転生した世界にはアルドメリ自治領(仕えるべき国)は無くアルトマー(守るべき民)はいなかった。

 

「この里は母国ではない。里の皆も同族ではない・・だがそれでも・・!私は彼らに果たすべき義理がある!この世界唯一のアルトマーとしての意地がある!」

 

(魔法のダメージが通らない?武器での戦いでは遠く及ばない?いずれもニルンで既に体験済みだ・・)

 

倒れた体を起こし、相手と同じ目線に立つ。まだ戦えるという意志をを視線に込め相手を見据える。

両腕に収束していく魔力が本気である事を伝える。

 

「アナタの攻撃はアタシに通じない。万に一つの勝ち目がない状況でまだ抵抗するつもりかしら?」

 

「貴女方・・いや、お前達が魔王軍に付いているのは絶対に勝てるからという訳ではないだろ?勝とうが負けようが自分が命を懸けて支えたいからそうしてるはず。私だってそうだ。この里に命を懸けたいほど愛着が沸いたし、死を恐れた結果信頼を裏切ることをしたくないという意地もある」

 

口調も一切飾るのをやめたことで空気が張り詰め、お互いに臨戦態勢を取って行く。

 

「今の見た目は確かに子どもだが見くびるな!死の覚悟などとっくにできている!」

 

「・・ならばお望み通りここで消えなさい!」

 

アンジェルモが吠え、シルビアの鞭がうなり戦闘が再開された。

 

 

 

(魔力の回復が早まっているうちに仕掛ける!)

 

鞭をしゃがんで躱し、両手を自分の足元に向け叫ぶ!

 

 

「《雷の壁》!」

 

 

アンジェルモの手から放たれた雷が地面に帯電しシルビアと自分を遮る壁となる。

 

 

「はっ!あれだけ啖呵を切って結局時間稼ぎかしら?・・こんなもので!」

 

 

シルビアは魔法耐性の高さを生かし、壁を一気の突破し肉薄しようとする。

 

 

「・・いない!どこに!?」

 

 

「《雷の壁》!」

 

 

「・・そこね! あいた!? 」

 

 

「《雷の壁》! ・・見た目によらず脳筋だな!」

 

 

「な!?なんですってぇー!?」

 

 

雷撃の壁で視界を塞ぎ、シルビアが突っ込んできたら視界から消え新たな雷撃の壁に隠れる。

時折足元に設置したルーンと挑発を繰り返すことで彼女を煽り、壁に突っ込ませ続けていた。

しかし、それでもステータスの差は埋まらずシルビアの攻撃が掠るようになって来ていた。

 

「・・《雷の壁》!!」

 

「おらあ!!」

 

「うぐ!?・・《透明化》!!」

 

「ああ!? こそこそしやがってクソ!! アルトマーとかの誇りはどうしたぁあ!!」

 

「戦場は勝者と敗者しかいない!名誉だの勇敢だのは脳筋馬鹿のセリフだ!最後に勝てばいいんだよ!」

 

「きぃいいい!!」

 

怒りで鞭をめちゃくちゃに振り回すシルビアの鞭を必死に回避するが遂に直撃を受けてしまう。

 

「そこかああ!?」

 

手ごたえを感じた方向に鞭をしならせると何もない空間に巻き付いていく。

そのまま締め付けをきつくすると呻き声をあげアンジェルモの姿が浮かびあがって来た。

 

「ぜぇ・・ぜぇ・・随分とてこずらせてくれたわね・・ううん?」

 

「おやおや、凄い顔だな・・美人が台無しだぞ?」

 

鞭が巻き付いて身動きが取れないままの状況で尚も不敵に笑う。

 

「はぁ…け、結局…見苦しく足掻いただけ…じゃないの?…」

 

「まぁ、確かに足掻いたさ…それよりお前に良いことを教えやる」

 

「ふう…何?命乞いなら…聞いてあげなくも…ふう、無いわよ…」

 

「いや、何私の使った魔法について…それとお前が異常に疲れている事についてとか?」

 

「アナタ…何を!?」

 

「私が使える魔法は火・氷・雷の3属性…これにはそれぞれ特徴があってな。私が先ほどから使っていた雷系の魔法…当たった奴の魔力を体外に散らす特性があるのさ!」

 

「!?」

 

「こんな魔法聞いた事無かっただろ?加えてお前は盗賊職…いくら幹部とはいえ魔力はアークウィザードの私には劣る筈だ…今、肩で息をしてる所を見ると魔力は尽きそうなのだろ?」

 

「ふん、そういうアナタもあれだけ魔法を使ったのよ?さっきの妙な技も効果が切れたみたいだし、魔力がキツいのは同じでしょ?」

 

今も地面のあちこちで帯電する壁が残り、周囲の草を燃やし始めている。既に消えてしまった分も含めればかなりの魔法を放ったいる。それなら彼の魔力も枯渇寸前だとシルビアが睨んでいた。

 

「!? まさか私の魔力量まで読んでいたのか!?」

 

「経験の差って奴よ。戦闘の最中でも相手を見て先を読む。アナタの魔法の威力が落ちてた事に気づかないと思った?」

 

「っ!?」

 

図星だった。あの、壁の魔法は効果時間が長い反面、魔力の消費が激しく魔力も尽きるギリギリだった。

シルビアの予測は正しかった。

 

「ははは・・流石は幹部・・!ここまで頭が回るとはな!危うく完敗で終わる所だったよ・・」

 

「何を言ってるの? アナタはもう… っ!?嘘でしょ?」

 

既に魔法を使う魔力が残っていなかった筈のアンジェルモの体が突如放電を始め、鞭を伝った電流がシルビアに迫ってきた。咄嗟に鞭を手放して逃れたものの雷はそのまま術者を守るかのように周囲を回り始めた。

 

「さっきの推測は本当に背筋が凍った気がしたぞ。ほぼそちらの読み通りだったからな!だが結局、情報不足だ。私がなぜわざわざ話を長引かせていたか気付かなかったのか?」

 

「一体…!?まさか、アナタ!?」

 

「私達は元々魔力の回復が早くてな。先ほどの技の使わなくても時間さえ稼げれば魔力は溜まるのさ!」

 

「くっ・・でもアナタではダメージは与えられない!魔力が少なくなってもアタシには勝てないわよ!」

 

「ああ、私では勝てない・・だが、里の皆ならどうだ?いくら認識阻害をかけてもそろそろばれるぞ?何せ私の魔法で草を焼いた煙がさっきから外に漏れているからな!」

 

「馬鹿の1つ覚えかと思ったら・・!そういう・・」

 

どうしても勝てない相手なら仲間と挑めばいい。

万が一アンジェルモがここで命を落としても魔力を削られたシルビアを紅魔族は倒しきれる。

敵の強力な駒を倒すための捨て駒としての役割をアンジェルモは見事にこなして見せた。

 

「おい! 何かこの変怪しいぞ!」

 

「煙を追って来たのに何もない!?周囲を探せ!」

 

遠くの方から里の大人達の声が聞こえて来る。

もし、シルビアがアンジェルモと交戦すれば魔力は更に減り逃走は叶わなくなる。

逆に今、アンジェルモを見逃して逃走を図れば何とか逃げ切れる。

彼女に選択の余地は残っていなかった。

 

「潮時ね・・やるじゃないエルフの坊や。今の所アナタの優先度は大分下だから見逃してあげる。でも、次会った時は容赦しないわ!」

 

「こちらこそ、次は手傷を負わされる覚悟で来い!今日の屈辱は忘れないからな・・」

 

視線を交わすとシルビアは障壁を解除し、逃走していく。いくつもの上級魔法が彼女に放たれるがスキルを上手く使ってやり過ごし、魔道具でどこかへと転移していった。

 

「あーっ!? あんじぇがボロボロになってる!?」

 

「シルビアめ!こんな子どもを鞭で・・」

 

「一体、どんなハードなプレイを!?うらやま…けしからん!」

 

「大丈夫!?変な事されなかった!?新しい世界の扉を開いちゃったりしてない!?」

 

先ほどの命のやりとりが嘘のように騒がしくなる。

 

(ああ、帰って来れたのか…いつも日常に!)

 

いつも誰かが馬鹿騒ぎをしている祭りのように賑やかで楽しい毎日。

 

日常に帰って来れたという安心感で気が緩み瞼が重くなる。

 

「おい!?あんじぇ!?大丈夫か!? ・・返事が無い。ただ寝ているようだ・・」

 

「どうするの?私この子のお家知らないわよ?」

 

「・・俺が連れて行くよ。確かそけっとの近所だった筈だから」

 

「んじゃ頼んだぜぶっころりー!俺達は族長と学校に連絡しとく」

 

 

 

翌日、いつもより目覚めが遅かったアンジェルモは珍しく学校に遅刻した。

シルビアとの交戦したことについて村長や先生から厳しく注意されたがそれ以上に自分の無事を皆が喜んでくれたのが彼にはとってもくすぐったかった。

 

自分の攻撃が通じなかった悔しさと一矢報いることができた達成感。そして焦燥感。

旅立ちの日備えて彼の強さへの渇望はより深くなっていった。

 

To be continue・・・

 




勝てない系ボスに対する対処法。

①一定のターン生き残る
②相手の○○を一定以下にする

アンジェルモが選ばれし勇者なら③隠された力が目覚める がありましたが、むしろ元敵陣営でしたし…

アルトマーは頭が良いはずなのに話術スキルは低いですが相手を苛立たせるボキャブラリーは凄いです。プライドが高くて愛想良くするのは苦手って所でしょうか。普段礼儀正しい主人公も悪口を言う時は非常にイキイキしてるという設定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。