残り3話か4話で紅魔の里日常編が終わり、アクセルへの流浪の旅に突入します。爆焔の前の時間軸なら皆何をしているのやら・・
とりあえずアルカンレティアでアクシズ教徒に絡まれるのは確定してます。
うろ覚えですが、その街にスノーエルフっぽいエルフとドワーフもいたような・・
紅魔の里 森の中にて
シルビアとこ遭遇から3日ほどが経過した。
心配されていた魔王軍の襲来も無く里は平穏そのものであった。
「あんじぇ!そっちに一匹行ったぞ!」
その声が聞こえると同時に草木をなぎ倒しながら大きな黒い影が迫る。
「了解!《アイスジャベリン》!!」
構えた手から名の通り、槍のように大きな氷柱が黒い影へと射出される。
鈍い衝突音が響き、氷が粉砕されるがその影も血しぶきを上げ怯む。
「さぁ、あの時のリベンジマッチと行こうじゃないか?・・いくぞ一撃熊!!」
「ゴルアアアアアアアー!」
手傷を負って怒り狂った一撃熊が立ち上がり大きく咆哮する。
偶然にもここは自分が転送されてきた紅魔の森。
初めての出会いがあり、初めて敗北を味わい、そして初めて人間に羨望を抱いた場所。
何の因果かあの時と同じように剣を構え、あの時と同じモンスターと対峙する。
「我が名はアンジェルモ!いずれ真の『聖剣の賢者』となる者!そのための糧となれ!」
互いが駆け距離が一気に詰まっていく。
先にリーチで勝る一撃熊の前足が振るわれる。
(遅い・・!シルビアより遥かに遅いぞ!)
パワーとスピード共に申し分ない一撃。
しかし、シルビアの鞭よりは遥かに劣る横薙ぎの攻撃を身を捩って回避し、カウンターで前足の関節部にドーンブレイカーで突き刺す。
痛みに咆哮をあげる一撃熊から素早く距離を取り、右手を一撃熊に向ける。
「《サンダーボルト》!!」
強力な雷撃が一撃熊の体を打ち据え、刺さったドーンブレイカーを伝って体内に侵入。
筋肉や血液を伝って外と内から電流が全身を巡り、脳からの信号を狂わされた巨体が倒れ込む。
ピクピク痙攣しているその体から刺さった剣を引き抜いて脳天に突き刺すと、ついにその体は動きを止めた。
パチパチパチ・・・!!
突然聞こえた拍手の音に振り向くと、いつの間にか満足そうな笑みを浮かべたそけっとが立っていた。
「うん、流石は我が弟子! 手助けは要らなかったみたいね?」
「いいえ、まだまだですよ。皆さんのように一撃、という訳にはいきせんでしたけどね」
「まぁ、それは上級魔法を覚えてからね!さぁ、早くモンスターの駆除終わらせましょう?」
2本の木刀をそれぞれの手で軽く振り回しながらそけっとは木立に入って行く。
(どうやら、贈り物は気に入ってくれたみたいだな)
そけっとの後を追いながらアンジェルモは安堵の息を漏らした。
アンジェルモは今、村の若者たちと共に明日行われる課外授業の準備のため森に来ている。
男女合同で里の森で行うこの授業は俗に『養殖』と呼ばれている。
教師や大人たちの魔法で、動けなくしたモンスターを生徒に止めを刺させてレベルを上げスキルポイントを稼ぐという内容だ。止めさえ刺せば経験値がもらえるこの世界ならではの効率的な鍛錬法といえるだろう。
アンジェルモと若者たちはそれに先駆け、危険なモンスターの駆除に来ている。
「あっ、そこの草むらに2体ほど隠れていますよ!」
「おっしゃ任せて! 《トルネード》!」
アンジェルモの《生命探知》に気付かれた狼のようなモンスターは草むらごと吹き飛ばされ空の星となった。
「皆さんは、攻撃にだけ魔力を使ってください!私の魔力は自然に回復しますから!」
「いやぁ、あんじぇに探知させると楽だね!《エネミー・サーチ》要らずで助かるよ!」
「あ、こいつ戦う気満々じゃないか? 明日に残そうと思ったんだけど・・」
「《鎮静》!今の内にそいつから離れてください」
「おっ!助かったよ! 危うく子どもの分が無くなるかと思った・・」
小器用なアンジェルモがサポートを担当し、強力な魔法を使える他のメンバーがモンスターを駆除。あるいは逃げられないよう動きを封じてゆく。
(あっちでの任務を思い出すな・・懐かしい)
異世界に来てからは単独の戦闘がいが、本来は仲間の補佐を担当していたアンジェルモ。
いつもの1・2倍は張り切った彼の活躍もあり、昼頃には大方の駆除を終える事が出来た。
1時間後 里の学校 教員室にて
駆除を終えた報告をするため職員室の扉をノックする。
しばらくすると中から扉が開きかるせるが顔を出した。
「やぁ、アンジェ。その様子だと駆除は終わったみたいだね?お疲れさま!」
「ありがとうございます!先生も休日なのに大変ですね・・」
「仕方がないさ。安全が確認されたとはいえシルビアが襲撃してからまだ日が浅い。それでもやるからには入念に準備しないとね。さて、スキルポイントはいくつ溜まったかな?」
担任に促され、アンジェルモはチラリと自分の冒険者カードを確認する。
「・・レベルは先程13になりました。私の初期スキルポイントが2でポーションが7つ。レベルアップで12・・上級魔法まであと9ポイントです」
「そうか・・君は幹部に狙われていたから早く力をつけないとね。僕も他の先生方に掛け合って補習課題の分もポーションを渡していいか聞いてみるよ」
「いや、流石にそれは贔屓だと思われるのでは?」
「そんなことは無いよ?君はみんなより学びが遅く始まったのだから。補習の課題もいい点を取っているし。もし下級生の時からいたらもっとポーションをもらえたと思うなぁ。それにみんなと一緒に卒業したいでしょ?」
「それはそうですが・・しかし!」
「まぁ、全ては他の先生次第だ。ただ一応そういう可能性はあると考えてくれよ」
「はい、分かりました」
「そうそう、めぐみんとえすとるがさっき来てたよ。『終わったらさっさと来い』ってさ」
「私は一応、仕事をしてたんだが・・すみませんこれで失礼します」
「うん、楽しんでおいで!」
担任に別れを告げ教員室を出たアンジェルモはそのまま学校を後にする。
向かう場所には里の外れにある「魔神の丘」。
首を長くして待っているであろう友人たちの顔を思い浮かべながらアンジェルモは足を速めるのだった。
20分後 魔神の丘にて
「ふっ、待ちくたびれたぞあんじぇ。あまりにも暇すぎて我が二つ名を5個ほど思いついてしまった」
「まだ約束の時間は来てないぞ?・・みんな随分と余裕そうだな?急いで来るまでもなかったか?」
「いや、良いタイミングだったよ。もう少し遅ければめぐみんが食欲に負けて野生化する寸前だったからね」
「あんじぇが待たせるのがいけないんですよ。せっかくの休日なのに無駄にカローリー消費しちゃいましたし」
既に他ののメンバーは全員揃っており、(めぐみん以外)各々が持参した弁当を広げて待っていた。
アンジェルモも急いでホールチーズ一つとパンも何切れか取り出す。
「おや?いつも気合が入ったお弁当を作るって聞いていたけど、やけに質素だね?」
「心配するなあるえ。これは食前に作らないと意味が無いやつだからな。あとは砂糖とこいつで・・」
「ねぇ、今取り出したのってお酒だよね? アンジェ君まさか飲むつもりじゃ・・」
「いや、私はエールよりはワインやハチミツ酒の方が―――コホン、恐らく口に合うと思うぞ?飲んだ事無いがな」
「今、露骨に目線を逸らしましたよこの不良エルフ。先生にばらされたくなければ・・分かってますね?」
「分かった分かった、昼食少し分けてやるから!・・ったくこの年では飲んでないのに」
周囲の視線を浴びながらもホールチーズに砂糖を適量まぶし、上からエールを注ぐ。
チーズを鍋に入れて大きな石の上に置き上から魔法でじっくり焼いていくと次第に溶けたチーズの香りが辺りに広がって来た。
「『チーズフォンデュ』。故郷でのとは少し違うが、味は十分だ。硬めのパンに付けて食べるといい」
「「「「「おおお!」」」」」」
少し焦がした砂糖の香ばしい香りにトロトロのチーズ。
パンを浸して一口齧れば、パンの食感にほんのりとした甘さと酸味が食欲を促進させる。
「やぁ、美味いよあんじぇ君!それじゃ僕のもどうぞ!」
「では、お言葉に甘えて・・むっ?この野菜スティックまだ動いてるな?」
「当然だ。古くなった物をわざわざ持ってくるはずはあるまい?」
「今朝、僕と兄さんが取ってきたばかりだからね!これをパンの代わりにしてもいいんじゃない?」
「どれどれ・・あっ、めぐみんこの組み合わせすっごく美味しいよ!」
「でかしましたゆんゆん!それでこそ私のライバルです!」
「料理ができるエルフの少年・・あっ、今がネタが思いつきそうな・・」
野外で仲間たちと取る賑やかな食事。思い浮かぶのはニルンの情景。
故郷で母が作ってくれた懐かしい味、旅先で仲間が作ってくれたそれぞれの故郷の味は大切な思い出となった。
そして今も新たな仲間と共に新しい味と思い出を心に刻んでゆく。
騒がしくも楽しい昼食の時間はあっという間に過ぎて行った。
40分後 魔人の丘にて
「さて、皆が満腹になった所でここからが本題だ」
皆の腹が膨れ人心地が付いた所であるえが立ち上がり皆の前に進み出る。
「
「・・おい」
「もしできればこの里に来る前の旅の話とかを聞きたいと思ってね。皆も同じ意見だよ」
「なるほど、いつの間にか私を取り囲むように移動したのはこのためか・・」
アンジェルモが見渡せばいつの間にか周囲を囲まれ、紅く光る目がこちらを注視している。
逃げられないと観念し、ため息をつきながら鞄に繋げたの異空間からリュートを取り出し音を確かめるように鳴らしていく。
「・・今から語るのは、私が旅先にで聞いた北の雪国で語り継がれる物語。世界を喰らう者と呼ばれた漆黒の魔竜アルドゥインとそれに立ち向かった戦士たちの物語・・」
ポロロン・・と弦をかき鳴らせば皆が静まり表情を改める。
かつてスカイリム地方の酒場で聞いた「舌の物語」。それを思い起こしながら言葉を紡いでいく。
「空を覆うアルドゥインの翼、刃のような鱗、放つは灼熱の息吹。多くの戦士が立ち向かったが、皆虚しく散り、人々はただ恐れ逃げ惑うしかない・・人々は求めた!救世の英雄を!アルドゥインに挑む猛き勇者を!
アルドゥインが勝利すれば人の世は終わる。その到来を避けるべく必死の抵抗は続いた。
そしてその恐ろしき日にもやがて終わりは訪れる。
戦いは続きやがて大空に
演奏の手を止め大きく息を吐く。
怪しまれないように所々はぼかしてはみたが特に不審に思われずに済んだようだ。
「スゥームなんてスキル聞いたことないよ。空に響くくらい大きな声を出せるみたいだけど・・」
「アルドゥインなんてドラゴンも聞いたことないですよ?魔王の手下って感じでも無いですし」
「まぁ、所詮酒場で聞いた英雄譚だ。本当かもしれないし、作り話かもしれないが想像すると楽しいだろ?」
「そういう事だ。こんな旅先で聞いた話でも良ければいくらでもあるぞ?」
「折角だから私は君たちのアルトマー族について聞きたいかな」
「わ、私も知りたい!」
「いいぞ。
もしかしたらこの里にいられるのは残り僅かかもしれない。そう心の奥で思いながら可能な範囲で心に秘めていた物を開示してゆく。
旅の空で倒れた時に後悔が無いように。仲間に隠し事をしたまま最期を迎えないために。
(絶対に大丈夫。何が起きても乗り越えられる。そんな保証はどこにもないからな・・あの時だって)
幸か不幸か、全てが終わった後に始まった新たな生。そんな存在は自分の最期からも学ぶ機会を与えられる。
(どんな結果になっても『やるべき事は精一杯やった』と思えるように備える。それが私のするべきこと!)
だから今は仲間との時を大切にしよう。
そう決意し、皆から来る質問の嵐にアンジェルモは必死に頭を巡らすのであった。
To be continue・・・
スカイリムでメインクエスト終了後に吟遊詩人の歌に追加される「舌の物語」。本来の吟遊詩人らしい朗読っぽい感じではなくエンディングっぽくしっとり歌い上げてくれます。
アンジェルモのセリフが歌詞と違うのは、口伝は伝わって行くにつれて変化していくためこんな感じなのかなという想像からです。なお、スカイリムの地名を入れなかったのは異世界だとばれないようにするためです。情報漏洩に気を使っているようでドヴァキンにはあっさり見つかっちゃうスカイリムの敵キャラ達。主人公もその例漏れず時々ボロが出ます。
まぁ、ネットが普及した現代と中世ではそもそも意識が違うのもありますが・・
参考までに
一緒に昼食を食べたメンバーは、めぐみん、ゆんゆん、あるえ、あんかの、えすとるです。