サルモール魔道士の異世界滞在記   作:半日本人

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ニルンオンリーな話ですが一応本編にも関わって来る内容なので本編と同様の場所に置かせていただきました。
スカイリム本編ではサマーセット諸島の様子が不明なためほぼ妄想です。

追記
新章に先立ち活動報告にアンケートがございます。
気が向かれましたら皆様の考えをお聞かせ下さい。


18・5話 サマーセットにて吹く風

%#の月  サマーセット島  ヴェルディー家の屋敷 客室にて

 

 

スフィリアは1人のアルトマーの女性と対面している。

彼女が育った孤児院の出資者で、幼い頃から暖かく見守ってくれたアンジェルモの母セラフィーナだ。

単に遊び相手の母親だけではなく、よく孤児院を訪問しては子どもたちと触れ合い、様々な贈り物をくれた恩人。

その彼女の顔がこれから悲しみに歪むと思うとスフィリアの気持ちが沈む。

それでも自分の務めを果たすべく、重い口を開き声を絞り出した。

 

「・・既にご存知の事かと思いますが、改めて、御子息が亡くなった報告と・・謝罪に伺いました。 彼をお守りできず申し訳ありません・・ 私を庇ったのが原因です」

 

頭を下げたまま相手からの応答をひたすらスフィリアは待ち続ける。

数年前に夫がスカイリムで消息不明になり、今度は息子が殉職した。

その悲しみを思うと顔をまともに見る事が出来ない。

 

サイジック会メンバーの言葉が真実なら彼は異世界で元気にしているだろう。

しかし、息子を守れなかった自分の突拍子もない話を伝えても信じてもらえるだろうか。

もし信じて貰えたとしても今はエセリウスやオブリビオンとも違う異世界にいる。

二度と会えないなら死と何の違いがあるというのか。

だからこそ、せめて彼女の怒りを受けることが自分にできる唯一の事だとスフィリアは考えていた。

 

「顔を上げてくださいスフィリア」

 

身構えていたスフィリアにかけられたのは穏やかな言葉。

下に向けられていた顔が両手で優しく挟むように添えられ視線を上へと向けられる。

息子とよく似た碧眼がこちらを静かに見つめていた。

 

「ヴェルディー夫人、私は・・・!?」

 

何か言葉を発しようとしたスフィリアを遮るかのようにそのまま優しく抱きしめられる。

そして泣きそうな子をあやす様に背中をポンポンと叩かれる。

 

「辛いのは貴女も同じでしょう? 息子とは姉弟のように接してくれていましたから・・」

 

「何故怒らないですか・・? 私を庇ったせいでアンジェは・・!? 」

 

「サルモールに入った時点で息子も私も覚悟はしておりました。 ・・それに親馬鹿と思われるでしょうが息子を誇りに思っていますよ? 『父上のように同胞を守る男になりたい』というのが口癖でしたから・・ どうやらその誓いは果たせたみたいね?」

 

張り詰めていたものが緩みそうになりスフィリアの視界が滲んでくる。

拒絶されても役目を果たすという覚悟を持っていた。

幼い頃に彼女から感じた安らぎはもう得られないのだと覚悟していた。

でも、かけられた言葉は温かく、自分は今その腕に抱かれている。

身構え、凍らせていた感情が融かされていく。

 

「だからありがとう、息子の最期を伝えてくれて・・ そしておかえりなさいスフィリア」

 

「・・ッツ!」

 

 

この優しさに甘えてはいけない。

温もりに身を委ねてはいけない。

そう自分に言い聞かせるのももはや限界だった。

 

「危険な任務だって分かっていました! でもきっと大丈夫・・! いつものように無事に終わって仲間と笑い合えるって! でもラセイユさんが犠牲になって・・ そのあと何とか皆で巻き返したのに! あの時、私がしっかり止めを刺せていたらこんな事は・・」

 

スカイリムからの長旅と長馴染みの最期を伝えなければならないという緊張。

その事で忘れることが出来ていた自身の悲しみと後悔の念が口から溢れてきていた。

後悔の言葉を口にするにつれて自分を抱く力が段々と増していく。

 

「貴女は私と息子に精一杯できる事をしてくれました! 少なくとも私は貴女を責めません、だから貴女も自分を責めないで?」

 

「私・・私は・・・!」

 

仲間を失った悲しさ。

力及ばなかった事の苦しさ。

1人生き残ってしまった自分さえも受け入れてくれた嬉しさ。

旅の間に押し込めていた感情を吐き出すようにスフィリアはひたすら泣き続けるのだった。

 

 

 

 

 

心が落ち着いた後、スフィリアは自分に起こった出来事をセラフィーナに話して聞かせた。

まず、サイジック会のウィザードが自分に接触し、やがて来る危機を警告した事。

次に、帰国の途中に異世界で暮らすアンジェルモの様子が夢に出て来た事。

そして、それらには恐らく自分が回収した魂石の破片がと関わっているらしいという事を。

 

余りにも信じがたい内容にセラフィーナは訝しんだものの、幼少から知っているスフィリアの人格、そして夢に出て来たという息子の行動に思い当たる節があり過ぎた事で疑いは薄れていった。

 

「―――という訳で魔法学校? という場所をもう少しで卒業するようです。 里の人間との関係も良好と言えます」

 

「そう、元気そうで安心しました。 あら、死んでいるのに元気そうというのもおかしな話ですね?」

 

「・・おば様・・流石に笑えないです」

 

スフィリアから異世界でのアンジェルモの様子を聞くにつれ、死んだというより異国で頑張っているという感覚になって来たセラフィーナ。

段々と緊張もほぐれて来たのかスフィリアも子供の頃の呼び名でセラフィーナを呼ぶようになっていた。

 

「ふむ、人間でありながら我々より強力な魔法を使う種族ですか・・ これは真偽はどうであれ周りには言わない方が良いでしょう。 少なくともサルモールの思想とは相容れませんからね?」

 

「・・そうですね」

 

異次元オブリビオンの門がタムリエル中に開いた事件、通称『オブリビオンの動乱』。

その最中にサマーセット諸島で存在感を増し、政権を握ったのが今のサルモールだ。

彼らのおかげで領土は広まり、30年前の白金戦争でシロディールの帝国に勝利したことによりエルフの優位性が示されたと評価する者は多い。

 

一方で、自分たちに相容れない思想を厳しく弾圧する集団として名高く、過去には多くの同胞が反逆者の烙印を押されて殺されたという過去も存在する。

アルトマー至上主義なサルモールの前で「自分達より強力な魔法を使う人間の種族がいる」と言えばどうなるのか結果は明らかだ。

タムリエル大陸最強の勢力というのは彼らの自称だが、そう名乗るだけの成果と実行力を有する組織なのだ。

 

そこで、セラフィーナはふと我に返る。

そんなサルモールに真っ向から対立し、未だに命を長らえている1人のノルドがいたと。

息子から送られた手紙の情報が真実であれば、詳細は不明だがスカイリム地方におけるサルモールの活動に大きな被害を与えた人物だ。

 

当然、プライドを傷つけられたサルモールは刺客を送ったが返り討ちにされ続け、ついに息子たちの部隊まで壊滅させられている。

その高すぎる戦闘力に違和感を覚えてきていた。

 

「スフィリア、辛いことを思い出させて恐縮ですが・・ 息子を討ったノルドの男について教えていただけますか? もちろん話せる範囲で構いません」

 

「ええ、資料で確認した情報で良ければ・・」

 

箝口令の対象に触れないように注意深く言葉を選びながらスフィリアは話し出す。

 

曰く、スカイリムの内戦を終結させた英雄である。

曰く、スカイリム地方の全9つの要塞で従士としての地位にある。

曰く、魔術大学、同胞団、闇の一党、盗賊ギルドのトップで、吟遊詩人大学と吸血鬼ハンターの一員。

曰く、未確認だが魔竜アルドゥインを討伐したと噂されている。

 

尚、サルモールに与えた被害については箝口令の対象となり伝えることが禁じられている。

 

「・・その男は本当に定命の者なのですか? 古代神話の物語と言った方がまだ納得できますね」

 

「ええ、そうですね。 現地のノルドには彼を伝説の竜の血脈(ドラゴンボーン)と呼ぶ者も セプティム家の血筋はもう絶えて―――」

 

「ドラゴンボーン!? まさか、その男は声秘術(スゥーム)という技を・・!?」

 

「え!? 凄い! よくご存じで! おば様は彼に心当たりが?」

 

「いいえ。しかし、過去にそう呼ばれた者を知っています! ドラゴンボーンという名にスゥーム! ああ、よりによってサルモールは何と恐ろしい相手と敵対を・・」

 

「あ、あの・・おば様? しっかりしてください!」

 

何かに打ちのめされたかのようにふらふらと頭を抱えて呻くセラフィーナの肩を優しく揺すり呼びかける。

やがて力なく上げた彼女の顔は少し青ざめていたが目には強い光が宿っていた。

 

「スフィリア、忠告しておきますが決して仲間の仇を取ろうと考えてはいけません! 相手が悪すぎます!」

 

「そ、それだけは聞けません! ・・正直今でも恐怖はありますが、この命に代えても皆の復讐を―――」

 

「いいえ、恐らく彼には決して届きません! 彼が本当にドラゴンボーンであるなら、かの暴帝タロスに匹敵する可能性があります! 我々の父祖たちが勝てなかった彼に!」

 

「まさか!? あのタロス・・ですか?」

 

「ドラゴンボーンという呼称は元々セプティムの血筋を指すものではありません。人間たちが信じる竜神アカトシュ。その加護を受けたという多くの英雄たちがそう呼ばれてきました。あのタロスもその中の1人に過ぎないのです! 恐らくあのノルドも・・」

 

自分たちが戦った相手が彼に匹敵するかもしれない。

そう言われたスフィリアは思わず身震いをする。

タムリエル全土を征服した皇帝タイバー=セプティム、またの名をタロス。

憎き敵ではあるが、絶望的な力の差の前に父祖たちが膝を屈するしかなかった相手だ。

 

(もし、そうなら今までに送られた刺客は? 私たちは一体!?)

 

もしかすると勝てるはずがない戦いを自分たちは強いられていたのではないか?

そして、犠牲は更に増え続けて行くのではないか?

上層部はあのノルドに対して強硬な態度を崩してはいない。

 

「恐らく上層部も彼の正体には気付いていたはずです。 それでも貴女たちにはこの情報は知らされていない。 最悪の可能性を考慮すれば救われる命はあったでしょうに・・!」

 

戦闘部隊のスフィリアの耳にさえ入って来たのなら、上層部は彼がドラゴンボーンであるかどうか情報をより持っていたはずだ。

勝てるはずがない相手。

それでも部下たちを刺客として送り込んだのは彼らの命以上に優先するものがあったのだろう。

 

(それほど体裁を守りたいのですかエレンウェン!? 同胞のたちの命よりも・・!)

 

サルモールが政権を担ってからは、多くの同胞が反逆者として処刑された。

30余前の白金戦争は勝利こそしたが、多くのアルトマーが犠牲になった。

その後にハンマーフェルで起こった蜂起ではレッドガードにも多くの犠牲を出して敗北し、帝国との協定で得るはずだった領土を喪失。

そしてスカイリム地方では、多くの者が勝てない戦いを強いられている。

 

自治領の未来を担う子どもたちのためにと孤児院の援助をしてきたセラフィーナにとって犠牲を強い続けるサルモールの行動への不信感は募らせるものであった。

 

(いえ、感情で物事を決め付けるなど高貴なアルトマーに相応しくありませんね。情報はしっかりと裏付けを取りませんと)

 

高ぶる感情を抑えるように大きく息を吐きスフィリアに目をやる。

 

 

「スフィリア、私は真実を知りたい。息子のため、娘のため、そして孤児院にいる多くの子どもたちのために! そのためには私はサルモールを、そしてあのノルドの男を見極めなくてはなりません! 危険を伴いますがそれには貴女の力も必要です!」

 

「ええ、おば様。 私も真実が知りたい!」

 

ショックを受けていたスフィリアも目に光を宿して頷く。

サルモールという自分たちが信じていたものが崩されていても、2人が前に進む力があったのは、異世界という更に非常識な中で前に進もうとする人物を知っていたからだろう。

 

1つアクシデントを始点に分岐した1つの未来。

タムリエルの北端スカイリムと南端のサマーセットにて運命の歯車は人知れず回り始めた。

 

 

 

 

4時間後 ヴェルディー家の屋敷 寝室にて

 

スフィリアは除隊願いを提出するべくサルモールの施設へと向かって行った。

彼女を見送ったセラフィーナは、娘のヴィルナの事情を説明し周囲には気を付けるよう言い含める。

兄の死にショックを受けながらも夢で姿を見られる可能性を示唆すると僅かに希望を見出し、協力することを誓った。

 

そして、夜の食事を終えた2人は寝室へと向かう。

 

「お兄様の顔を見るのも1年振りですね。本当に夢で会えるのかが不安ですが・・」

 

「 『会える可能性があるだけ良い』 そう考えれば損をした気持ちにはなりませんよ?

こういう神秘的な事は強い意志が大事です。スフィリアを信じましょう」

 

2人の手にはスフィリアが渡した黒い魂石の破片。

アンジェルモの遺品ともいえるそれを首から小袋に下げ胸に抱きながらベッドに横たわる。

 

「おやすみなさいヴィルナ、どうか良い夢を」

 

「おやすみなさいお母さま、絶対お兄様の夢を見ましょう」

 

大きなベッドで互いに手を繋ぎながら目を閉じる。

精神的に疲労してこともあってか程なくして2人の意識は深く沈んでゆく。

 

 

 

 

何かに引っ張られるような感覚がするとヴィルナは深い靄の中にいた。

その奥に木々や建物の影と思われるものがうっすらと見える。

自分の右を向けば手を繋いだはずの母の姿は無い。

 

(では、これは夢? ・・・! お兄様は!?)

 

靄が段々と晴れ、影だけであった建物や木の姿がハッキリとしてくる。

それに伴い黒髪のヒトのような者たちが大勢集まっているのが見えて来た。

 

(あれは人間かしら? 本でしか見た事がないからはっきりとはいえないけど・・)

 

『遂にお前も旅立つ時が来たか・・! ぶっころりーに連れられて家に来たのがこの間だった気がするな』

 

『私もです族長、色々と心を砕いて下さり感謝の念に堪えません!』

 

『ハハハ! 気にするなあんじぇ! 我々も楽しかったぞ!』

 

(アンジェ!? まさか!?)

 

聞き覚えがある呼び名に視線を向けると、族長と呼ばれていた男と談笑している銀髪がまず目に入る。

良く見ようと身を乗り出すと銀髪の下に金色の肌とエルフの証である尖った耳が見えた。

 

自分の記憶よりも更に幼く、声も高かったが、会話の中で浮かべる困ったような表情や興味が湧いた物に対する目の輝きは幼い頃から良く知っているもの。

 

(本当にお元気そうで・・!! お兄様・・!!)

 

年齢や服装こそ変わってはいたが、目の前にいるのは間違いなく自分の兄だとヴィルナは心の底から思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『あんじぇー!! 困った時はいつでも帰って来いよ!!』

 

『私の弟子だから手柄を立てるまで帰ってきたらダメだからね!!』

 

『どっちですか一体!?』

 

多くの人間たちに温かく見送られている息子をセラフィーナは見つめる。

アルトマーと人間が仲良くしている目の前の光景。

人間とエルフの長い対立の歴史を知る彼女だからこそ、その尊さを心から実感していた。

 

(スフィリアから聞いた時は半信半疑だったけど・・ 本当にこんな事が・・!)

 

息子が死んだ事は確かに不幸な事であった。

しかし、それによって長くタムリエルを蝕んできた種族間の遺恨からから解放されたのは恐らくアーリエルのお導きではないか。

友人になったと思われる子どもたちに囲まれる息子を見ながらこれからへと思いを馳せる。

 

(恐らく私たち大人は人間たちへの偏見を捨てるのは難しい・・でも子どもたちは変わっていける?)

 

目の前の光景を夢で終わらせないようにする努力。

危険を伴うがやってみる価値はあるかも知れないとセラフィーナは密かに誓う。

 

やがて子どもたちから受け取った手作りのアミュレットを首にかけ、入り口に待つ男へと歩を進めその手を取る。

 

「いってらっしゃい、私たちの愛する子」

 

別れの挨拶をする人間たちに混じり、そっと見送りの言葉を呟くと驚いた表情のアンジェルモと目が合った。

恐らくセラフィーナの姿は見えておらず声も聞こえていないだろう。

それでも確かに視線を合わせてたままアンジェルモは口を開く。

 

「いって参ります! アーリエルの光に導かれんことを!」

 

「!!」

 

奇しくもそれはスカイリムに旅立つ前に交わした最後のやり取りと同じだった。

転移の光に包まれてアンジェルモの姿が消えると始まりと同じように靄がかかってゆく。

 

やがて靄が濃くなるにつれて意識が浮上してゆきセラフィーナは目覚めが近いのだと悟る。

 

(ああ、サニヨン! どうか安心して! 私たちの息子は元気でやっています!)

 

自分が愛した男の顔を思い浮かべながらセラフィーナは目を開くのだった。

 

 

To be continue…

 




主人公の家族はそれなりに上流の家庭をイメージしています。
生憎作者にブルジョワな知り合いがいないので口調に違和感がありましたらご指摘を。

サルモールというとハ〇ーポッターの蛇寮の方々を思い浮かべますね。
選民思想があってどこか貴族っぽくて目的のためには手段を選ばない。
あと魔法に関しては優等生。
ウィンターホールド大学の同級生もどことなく獅子寮の三人組をみたいですし。

次話は1週間後を目標として頑張らせていただきます。
お読みいただければ幸いです。

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