サルモール魔道士の異世界滞在記   作:半日本人

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2017年中に投稿したかったのですが遅れてしまいました。申し訳ありません。
作中に少々の下ネタがありますのでご注意を・・



20話 女神アクアに導かれし者たち

 先程購入した饅頭も既に食べ終わったアンジェルモはセシリーと名乗った女司祭たちに纏わり付かれながら街中をひたすら進んでいた。

 

 

「1回だけでいいんです! ここに名前を書くだけで貴方にもアクア様のご加護が―――」

 

「生憎だが、既に別の神を信仰している。 アクア神には恩を感じているが入信は勘弁してくれないか?」

 

「そんな!? あれだけ尽くしてあげたのに酷い! 私とは遊びだったの!? 」

 

「アクシズ教の教理を教えてくれと頼んだだけだろ? その程度で尽くしたなど片腹痛い・・ いっそ、マーラの使徒にでもなったらどうだ?」

 

「すげぇ! あの顔で、ナチュラルにセクハラ発言をしやがった!? 将来は立派なアクシズ教徒になるぞ!」

 

「全く話が噛み合わない・・ 翻訳が不調なのか?」

 

 魔王軍ですら恐れるというアクシズ教徒。

 タムリエルの過激なデイドラ信者たちのように破壊活動や犯罪行為に勤しんでいるかと思いきや、エリス教徒への嫌がらせと一般人への迷惑行為程度に止めているようなのでやや拍子抜けをしていた。

 とはいえ、先ほどから入信を勧められ、会話も噛み合わない状況が続き、思わず転生時の翻訳の効果が切れたのか疑ってしまうほど精神が消耗してきていた。その影響もあり敬語を使う気も既に失せている。

 怖いもの見たさでつい話を聞いてしまった事をアンジェルモは今更ながら後悔し始めていた。

 

(タロス信者みたいに暴力に訴えてない分対処が難しい! 何か良い言い訳を・・ん? そういえば!)

 

 以前、ひょいざふろーに王都で装飾品を売って貰った際にお客からアルカンレティアに住む人物へ大量の指輪を送って欲しいとの依頼があったのを思い出す。

 確かその人物の名は・・。

 

「・・おお、そうだ! 私はこの街のゼスタという名の男に届け物があったのだ! 誠に遺憾だが話を聞く時間が無くてな・・ いやぁ、非常に残念だ!」

 

『え!? それじゃあ、ゼスタ様が言っていた紅魔の里の付呪士って・・なるほど、あの子が・・!』

 

 依頼書に書いてあった人物の名前を聞いた途端、セシリーを始めとするアクシズ教の面々が小声でひそひそと話し始めたかと思うと一斉にアンジェルモの方に顔を向け口を開く。

 

「「「では、また後でお会いしましょう! アクア様の加護がありますように!」」」

 

「・・・? やけに聞き分けが良かったな?」

 

 そう言うとさっさと来た道をセシリーたちは引き返して行ってしまい、アンジェルモは1人残される。

 先ほどからあれだけ粘った割には妙にあっさり引き下がった事に暫し呆気にとられてしまう。

 

「・・良く分からないがこのゼスタという人物はこの街で相当顔が利くのだろうな。 それこそアクシズ教徒に名が知られるぐらいに」

 

 ならば、その人物の機嫌を損ねないよう急ごうと、依頼書に書かれた住所を便りに歩き出す。

それは見る者が見れば火に飛び込む虫か、この世界のオーク集落へと1人で向かう男を連想しただろう・・。

 幸運値が低さを示すかのように自分がとんでもない場所に向かっている事についに気付くことはできなかった。

 

 

 

 

1時間後 アクシズ教団本部の教会にて

 

 必死に聞き込みを行いながら依頼書に記されていた住所へと向かうとそこはアクシズ教団の本部だった。

 何かの「また会いましたね」と笑顔のセシリーさんたちに無理矢理引きずられ抵抗も虚しく教団関係責任者の元へと連行されてた。

 そして私は今、豪華な司祭服を着た男性と対面をしている。

 

 

「ようこそアクシズ教団本部へ! 私は次期最高司祭ゼスタと申します! お待ちしておりました! さて、まずはお近づきの印に入信書になどいかがですかな?」

 

「我が名はアンジェルモ、紅魔の里で魔法を学びし者。貴方が受取人でしたか・・」

 

 

 

 どうやら目の前にいるこの男が私が会う予定の人物で間違いないようだ。ならば先程、セシリーさんたちが名前を聞いた途端あっさり引いた訳も納得がいく。遅かれ早かれ私の方からやって来るのは分かっていたのだから・・

 ここは野良犬に噛まれたと思って、さっさと商談に移るとしか無いだろうな。

 

「早速、商品の確認に移ります。王都で交わした《水中呼吸》指輪の注文書とゼスタ様がお持ちの商品引き渡し書。共に改めさせていただきます」

 

 私が持っている注文書と商品の受け取り人が持つ引き渡し書には、偽造防止の為に私の魔力に反応するルーンが刻まれている。

 このような大型の契約は始めてだったので上手く行くのか不安だったのだが、幸いにもルーンもしっかりと作動し確認を行う事ができた。

 

「それでは、商品をお受け取り下さい。 ご注文通り銀製で、数は20です。」

 

「おお、これが王都の信者たちの間で噂の・・! 早速このアクア様の御業でエリス教徒共に―――」

 

「・・うちの商品で犯罪を犯すのはやめていただきたいものですが?」

 

「おお! その凍えるような視線・・実にゾクゾクしますな! さぁ! もっと口汚く罵るのです!」

 

「もう嫌だぁ・・アーリエルよ私にどうか力を・・」

 

 

 どう対応してもゼスタさんを喜ばせるだけな気がしてきた。恐らくサルモールの拷問部屋でも生き生きとしている事だろう。アクシズ教徒・・私の手に余る連中だった!

 さっさとここを離れて冒険者ギルトの見学にでも行くとしよう。このままでは私の精神が持たない!

 

「とにかくやるべき事は終わりましたのでそろそろお暇させていただきます・・向かう場所がありますので」

 

「む? もっと親密な関係を築きたかった所ですが仕方ありますまい。 貴方にアクア様の加護があらんことを!」

 

「ええ、貴方にも・・それではこれで」

 

 女神アクアには恩があるからな。例えその信者の頭がおかしくても加護を祈るくらいはいいだろう。

 とりあえず魔王軍以外には死傷者を出さないようだし、少々精神的な疲労を覚悟すればそこまで危険な連中ではないのかもしれないが・・少なくとも今後は密室で二人っきりになるのは避けるとしよう。身の危険を感じる。

 

 

 

 

 

2時間後 アルカンレティア 冒険者ギルドにて

 

 

 初めて足を踏み入れたギルドは多くの冒険者たちで賑わっていた。

 今はちょうど昼時だったらしく冒険者たちの喧騒に加えて、併設された酒場からは漂って来る酒や食事の匂いが漂って来ている。1人でこのような場所に入った経験がないアンジェルモは、暫しその雰囲気に圧倒されていた。

 その彼に戦士風の男が声をかけてきた。

 

「ん? おめぇさん見ねえ顔だな? もしかしてここは初めてかい?」

 

「ええ、おっしゃる通りです。 クエストを受けたいのですがどなたに聞けば良いのか分かりません・・」

 

「やれやれ、しょうがねぇなあ・・ あっちに見えるカウンターにいるのがクエストの受注担当者だ。そいつらに聞けば後は案内してしてくれるだろう。クエストを受けたい奴もいるから空いている列に並ぶんだぞ」

 

「分かりました、ご親切にありがとうございます!」

 

「いいって事よ! それじゃあな新入り!」

 

 人ごみに消えていく男に頭を下げ、教えてもらったカウンターへと進みながら周囲に目をやる。

依頼が張られた掲示板を確認する女性。テーブルで賭け事に興じる男たち。2人の女性冒険者に囲まれた青年。 

 サルモールの兵舎とは違い、それぞれが思い思い過ごすに自由な雰囲気がそこには広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 10分後 冒険者ギルド クエスト受付カウンターにて

 

 

 皆が食事をしているからであろう。大して待つことが無く自分の番がやってきた。

 

「こんにちは、ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

「すみません、初めてクエストを受けるのでその説明をしていただけますでしょうか? 冒険者カードの発行は既に済んでいます」

 

「おや、駆け出しの方のほとんどはアクセルに行かれるので珍しいですね? それではまず冒険者カードを見せて下さい。ふむふむ・・おお! 魔力と知力、それに俊敏性がかなり高いですね! まさにアークウィザードという感じのステータスですね! 後はユニークスキルの《魔力高速回復》と《魔法被ダメージ増加》・・それに《高貴な生まれ》? どこかで聞いたことがあるような? カード発行場所は・・紅魔の里!?」

 

「はい、訳あってそこの学校で学んでいました」

 

「ああ・・だからこのレベルで既に上級魔法を。 大変だったでしょう?」

 

「・・紅魔の里に行く前はもっと過酷でした」

 

 ドラゴンや吸血鬼に襲われたり、山賊や猛獣に追われたり。 挙げ句、頭のおかしい奴に仲間諸共殺されたからな。紅魔の里では数回死にかけたぐらいだし・・。

 

「そ、そう? 若いのに苦労したのね・・ あっ、クエストの受け方を説明します。受けられるクエストの依頼書はあちらの掲示板に貼られています。受けたいクエストの依頼書を剥がして私たちに持って来れば手続きさせていただきます。また、パーティーを組めばクエストの難易度は下がりますが報酬を分けなければなりません。注意するべき点はこれぐらいですね。他にご質問はありますか?」

 

「いえ、大丈夫です。教えていただき感謝します」

 

「いえいえ、とんでもありません。そうそう、初めてクエストを受けるのであればパーティーを組んで受ける事をお勧めしますよ! アクセルとは違いソロでは危険なクエストが多いですから」

 

「はい、何から何までありがとうございます!」

 

 受付の女性のアドバイスを受け、私はパーティー募集の掲示板へと向かう。理想は経験が豊富で優秀な前衛職がいるパーティーに入りたい。

アークウィザードの募集が予想より多いから慎重に見極めねば・・。

 

「・・あっ! そこのエルフの君! その格好はもしかしてウィザードかい?」

 

「クエストの経験は無いが一応アークウィザードをさせてもらっている」

 

 入るパーティーを迷っている私に立派な剣を持った青年が声をかけて来た。年は10代半ばといった所だろうか?

 

 

「アークウィザード!? ちょうど良かった! 今、僕たちのパーティーに後衛職がいなくてね! もし良かったら力を貸してもらえないかい? ああ、君の安全は心配しなくていいよ。 僕はこう見えて王都ではそこそこ名の知られた冒険者だから大船に乗った気でいてくれ!」

 

「私としては構わないが・・君の他の仲間は了承したのか?」

 

「いや、これから聞きに行く所だよ? 大丈夫、2人もきっと分かってくれるさ! 安心して?」

 

 うーん、身に付けている鎧や剣を見る限り相当な実力者なのだろうが、常に自信たっぷりなのが何となく不安になる。

 それにまるで私の方から仲間に入りたがっているような流れになっているのだが・・まぁ、悪い奴じゃなさそうだから今回は大目に見るとしよう。

 

「そういえば自己紹介がまだだったね? 僕の名前はミツルギ・キョウヤ! 巷では魔剣の勇者と呼ばれているソードマスターだ」

 

「我が名はアンジェルモ、紅き目の魔人より魔術を学びしアークウィザードだ。よろしく頼むミツルミ!」

 

「僕はミツルギだ! 間違えないでくれ!」

 

「・・善処する」

 

 紅魔族に匹敵するぐらい言いにくい名前だなと彼の後に続きながら私は思う。こうして近づくと彼の持つ剣から非常識な程の魔力を感じる。

 予想が正しければあの剣は神器で彼は女神アクアが送った勇者候補のニホン人となる。 

 初クエストの同行者としてこれ以上に心強い仲間はいない。

 

(記念すべき私の初クエストはどうなるやら・・今からが楽しみだ!)

 

 テーブルで待つ仲間の下へと駆けていく彼を見ながら私はこれから受けるクエストへと思いを馳せるのであった。

 

To be continue…

 

 

 




アンジェルモがこれまであった人物は
紅魔族→魔王軍→アクシズ教徒 と一般人に敬遠される連中が殆どでしたが遂に待望の普通(?)の人間との出会いを果たします。
 
 異世界では、ご立派様やブッタを誘惑した悪魔を知らなくても、アルゴニアンの侍女に出て来る大きなパンや槍はきっと連想できるかと思います。

 TESシリーズのマーラは慈愛に満ちた素晴らしい神格なのに日本のゲーマーたちに名前でネタにされるという不憫なお方です。 私も誘惑に勝てませんでした・・
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