サルモール魔道士の異世界滞在記   作:半日本人

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 活動報告にも書きましたが外国に3週間ほど行きますのでその間は執筆作業はできなくなります。4月25日には帰国していると思いますので次話はお待ちいただけると幸いです。行く場所は銃社会なのでソブンガルデに逝かない様に気を付けて行って参ります。
近日中に今話までの滞在日記を(馬車の旅の分)投稿する予定です。お楽しみいただければ嬉しいです。


26話 Restart(リスタート)

 ワイバーンとの戦いによる精神的な疲労。夜通し重い剣を振り回し続けた肉体的な疲労。

 加えて、アルカンレティアでは目覚めが悪かったことで眠気もピークに達していた。

 生前であればともかく、肉体年齢が下がった今の体には限界だったようで朝の光が見えると、緊張の糸が切れたアンジェルモは意識を手放していた。

 

 

 慌てたように自分の名を呼ぶ声もやがて遠くなり意識はより深く沈んでいく。やがて周囲の闇が靄に包まれ始め、奥に浮かぶシルエットがやがてはっきりとしていく。

 

(はぁ・・今回は何を見せられるのやら・・。余り心臓に悪いのは御免だが・・。これはどこかの書斎か?)

 

 かつては、立派な書斎だったのだろう。しかし長い間放置されていたのか、辺りは蜘蛛の巣が張り、本や錬金術の素材にも埃が被っている。そんな中、室内を動き回っていた2つの影がこちらへと近づいて来た。

 

「中々見つかりせんわね・・。用心深いお母さまなら予備の材料ぐらい用意しているでしょうに・・。あなたの方は材料は見つかりまして?」

 

「丁寧に引いた骨の粉は見つかった。残るは砕かれた魂石(ソウルジェム)だけだ・・それにしてもこの部屋は薄暗過ぎて見辛いな? もう少し日が差せば良いのだが・・」

 

(わたくし)たちにとってはこの程度の暗闇はどうということはありませんのに・・常命の者は不便ですのね?」

 

「私としては太陽を苦手とするお前たちの方が不便に感じるのだがな・・」

 

「あら? 日光はお肌の大敵。私に限らず世の女性は皆そう思っておりましてよ?」

 

 軽口を叩きながら何かを探している2人。

 

(プリズナー!? それにあの女性は確かセラーナと言ったか!? あのテロリストめ! どうせまたろくでもないことをしているのな・・それにしてもあの魔法陣のようなものは一体? 故郷でも見たことがないぞ!?)

 

 アルトマーの故郷、サマーセット諸島。そこでは他の地方では見られないほど魔法学が発達している。大陸で一般に知られている魔法はもちろん、他の地方では失伝された強力な魔法を扱える者も多い。彼の母もその1人だ。

 だが、魔法の知識には自信があったアンジェルモでも、その魔法陣の詳細は掴めない。精々、大掛かりな召喚魔法の陣に似ていることが分かっただけであった。

 

 魔法陣を興味深く見つめるアンジェルモを余所に2人の捜索は続いていくが、次第にセラーナと呼ばれた女性は飽きて来たのか、室内の本を読み始めたり、設置されている錬金術の機材をいじり始めていた。

 

「もう、いっそこと貴方の持つその破片を使いませんこと? どうせ彼の魂も一緒にソウルケルンへと向かうのですから一足先に向かっていただくだけですわ」

 

「おっ、中々いい提案だ、見つからなかった時はそうしよう。まぁ破片を1つでも残せば大丈夫だろ? サルモールの魂はそこまでやわじゃないさ」

 

(おい私の魂石のことか!? 全然大丈夫じゃない! 人の魂を何だと思っている!?)

 

 人命は奪うことはあってもその魂までは奪わない。自国のためならどのような手段も厭わないと誓うサルモールですら持っている最低限のモラルだ。下等な動物のならともかく人の魂を目の前の2人のように扱う者などそれこそ死霊術師のような外道が行う所業だ。

 

 幸いにも予備の破片が無事見つかり、全ての材料が銀の盆の中へと収められる。古びた手帳を見ながらセラーナと呼ばれた女性は確認作業をしている。距離が遠くなったので

 

(・・門を開くのに母親の血が必要? 随分と物騒な話を・・っておお!? い、今・・自分の手首を噛み切った!? ・・・あの牙、彼女は吸血鬼なのか!?)

 

 以前とは違って顔を隠すフードを被っておらず、吸血鬼の証である鋭い牙が確認できる。

  自分たちに仇を成した男が、人外とも繋がりがあったことに戦慄するアンジェルモの前に

転移門が開かれていった。

 

 

 

 

 

 

「うーん・・あのノルド・・遂に人外に・・。うう・・スフィリア・・母上・・あいつらは人間じゃありません・・ヴィルナを連れて逃げて・・」

 

「ね、ねぇ? さっきから寝言の内容が凄いんだけど起こした方が良くない? 明らかに悪夢を見てるでしょう? この子?」

 

「おい、起きろアンジェ! ・・・大丈夫か? 随分とうなされていたぞ?」

 

 肩を揺すられた私がゆっくり目を開けるとあのクルセイダーをはじめ、見知った顔が心配そうにこちらを覗き込んでいた。目覚めたばかりのはずなのに既に呼吸は乱れ、汗がべったりと髪にかかっている。どうやら彼らの言う通り酷くうなされていたようだ。

 

「・・え、ええ・・すみません、御迷惑をおかけしました」

 

「いや、あれだけのゾンビを爆破したんだ。大方あいつらに囲まれる怖い夢でも見たんだろ? はは、お前も年相応な面があった訳だ!」

 

「『ゾンビには気を付けろ! あいつらは人間じゃねぇ!』 確か伝説の遊び人サン=シロウの言葉ね? ・・ふーん、良く勉強しているじゃない? 偉い偉い!」

 

 生憎、私が怖いのはマルカルスにいた犬くらいなのだが・・。何となく皆から子ども扱いされている気がしてどうもこそばゆい。普通なら怒りを覚えるべきなのだが・・どうも悪意を感じられないからか調子が狂ってしまう。

 もやもやした気持ちを振り払うように汗で濡れた髪をタオルで拭いていると横合いから伸びた手によって取り上げられる。

 

「ああ、ダメだよ? そんなに乱暴に拭いたら折角の髪が痛むよ? ほら、おねぇさんが拭いてあげるから・・」

 

 このパターンは知っている。絶対に後で私の髪が弄り回されるやつだ! 幼かった頃スフィリアに散々やられたから分かるぞ! ふん、アルトマーがそんな見え透いた手に乗るはずが無いだろうに・・。

 

「い、いえ、自分で出来ますから・・だから、早くタオルを―――っ!?」

 

「ダ~メ、変に拭いたら風邪引くわよ? ほら、私が抑えておくから今の内に・・」

 

「ほらほら、すぐ終わるからいい加減観念しなさいって! 全く! 図体は大きいのにそういう所は子どもね!」

 

 ええい、玩具などされてたまるか! ・・そうだ! 彼女たちと付き合いが長いあの2人ならきっと上手く説得してくれるはず・・。

 

「あ~、悪いなアンジェ・・こうなった2人はもう止められないんだわ・・」

「この2人の意見が一致したら諦めるしかないよ。・・お悔やみ申し上げる」

 

 良く知っているから真っ先に匙を投げた・・だと? あっ、まずい私の髪を弄りだした・・。

 

「綺麗な銀色ね。しかもサラサラ・・ねぇ私、この髪にはこれが合うと思うんだけどなぁ?」

「飾り紐ならまだしも、そんなフリルが付いたのはやめていただきたいのですが・・ああ、ダメだ絶対聞いていない・・」

 

 ヴィルナが故郷で付けていたようなフリフリのリボンが私に迫って来る。逃げようにも私よりレベルが高いアーチャーに腕を取られ逃げることはできない。打つ手が無い私にできたのは目を瞑り、一刻も早く2人が飽きるのを祈ることくらいだった。

 

 

 

 

◇1時間後 アルカンレティア~アクセルへの道 馬車の中にて

 

「お~、すっかり別嬪さんになってまぁ・・」

 

「・・い、意外と似合ってるじゃないか! くっくく・・」

 

「つい、調子に乗ってしまったわね・・でも良い気晴らしになったわ!」

 

「力作なんだからアクセルに近付くまでそのままだよ? じゃないと取ってあげないからね?」

 

「・・・これで女装趣味なんて噂が広まった時は覚えていて下さいよ? はぁ・・それはさておき冒険者カードの相談なのですが・・」

 

 髪に様々な飾りを付けられたアンジェルモが差し出したのは自分の冒険者カード。昨日ワイバーンやゾンビに止めを刺したことでレベルは21となっていた。折角なので新たに身に付けるスキルについて経験者である彼らの意見を聞いておこうと思ったのだ。

 

「一応スキルの概要は知っているのですが、御存知の通り里にはアークウィザードしかいませんので他の職業の方の意見も聞いておこうと思い相談させていただきました。皆さまよろしくお願いします」

 

「うーん、少なくとも生産系スキルはほどほどにしろよ? 生産スキルも戦闘スキルも上げていくと全てが中途半端になりかねん。モンスターを倒した金で鍛冶屋とかに頼んだ方がまだ効果的だ。冒険者やめて生産スキルで食って行くつもりなら話は別だ・・」

 

「楽器演奏とかの芸術系のスキルは個人の好みね。狭き門だけど極めれば生産系スキルよりはお金が稼げるかもしれない・・あっ、でも宴会芸だけはやめておきなさいよ? 5ポイントも使うから正直他に回した方がマシよ」

 

「偵察関係のスキルはほとんどが盗賊やアーチャー専用だからなぁ・・できるとしたら《読唇術》ぐらいだね」

 

「後は各種耐性のスキルとかだけど・・というかアンジェの魔法抵抗力低く過ぎない? 折角だからスキルで耐性を上げておきなさいよ。・・言っとくけど昨日みたいに避けるとか防御するという言い訳は無しよ? 万が一巻き込んじゃったら軽くトラウマになるわよこれじゃあ。」

 

(いや、魔法を使う敵などそうそう会わないからな・・スカイリムならともかくこの世界は人間が敵になることなど稀だ。そもそもわざわざ魔法を撃つと宣言してくれる相手に盾の魔法が間に合わないはずがない)

 

 タムリエルでは味方を巻き込まないように自分が使う魔法を宣言することはあっても、1人で戦う時は相手に読まれないように無言で魔法を撃ち合うことも多い。敵がウィザードである場合も多く、不意打ち気味に飛来する魔法を咄嗟に盾の魔法で受け止めるという癖が染みついているのだ。

 

 一方この世界では人類同士で戦うなどごく稀で、一部の知性が高いモンスターを除けば魔法の詠唱を聞かれたとしても対抗策を取られることは無い。わざわざ威力が落ちて制御も難しくなる無詠唱で魔法を放とうとする必要性が無いのだ。だが、アンジェルモからすればわざわざ丁寧に詠唱しどの魔法を使うかまで教えてくれるこの世界のウィザードは親切極まりなく対処は容易に思えた。

 

 

「そもそも今までも盾と回避だけでやって来れ・・・ました? ・・すみませんやはり取得します。ああ・・《読唇術》も取らなくては・・」

 

「あ、うん。取ってくれると安心できるけど大丈夫? 震えてるみたいだし顔色も悪い気が・・。元々分かりにくい色だけど・・」

 

 最近まで、盾の魔法を叩き割る程の魔法をボカスカ撃って来る赤い眼の連中がいたことを思い出し、ついでに彼らの魔法で危うく死にかけたことまでを思い出してその時の恐怖が蘇ってきた。《読唇術》まで取ったのは諜報活動に使えそうだというだけではなく、一刻も早く詠唱を見極めて魔法の範囲内から逃げるための物だ。不審者と間違えられたり、そけっとを怒らせた時に自分に向けられた上級魔法の恐ろしさはカードを操作する指が思わず震えてしまうほど。

 

「ワイバーンやゾンビに臆さなかったアンジェが怖がるなんて・・どんな恐ろしい化け物を想像した?」

 

「こ、こ、怖がっていませんよ!? ははは・・誇り高きサルモールの私に・・・こ、怖いものなど!」

 

 

 

 もちろん誇り高きサルモールだろうと苦手(・・)な物くらいはあるが、あくまでも苦手なだけであって任務に支障が出るほど怖い訳ではないというのがアンジェルモの弁だ。部隊では最年少で下っ端だったとはいえ一応はエリートであったこと。加えてサマーセット島のアルトマーが持つプライドの高さが合わさって非常にめんどくさいことになっている。子ども扱いはされたり髪にリボンを結ばれることは耐えられても「アイツ〇〇が怖いんだって」と言われるのは耐えられないのだ。

 

「怖い物などありません! 今は苦手であってもいずれは全てを克服します! そんなもの更なる高みに上るための踏み台に過ぎず―――」

 

「どうどう、落ち着いてって! そ、そうだ! アンジェの誕生日っていつ? 折角だから私が占ってあげるわよ! ほらほら早く!」

 

「え!? た、誕生日ですか? 恵雨の月の25日・・じゃなくてええっと・・あっ、この日です!」

 

 突然の質問に反射的にタムリエルの暦で答えてしまい、慌てて冒険者カードを指し示す。話題を上手く逸らせたことに内心ほくそ笑みながら占い道具・・ではなく女性向けの占い雑誌をアーチャーは取り出す。

 

「あれ? 星は見ないですか? 母上はそうしていましたけど・・」

 

「また随分本格的な・・ああ、そうか紅魔族みたいな魔法に長けた種族だったのよね・・。というか明日誕生日だったんだ? 何で『この日』なんて紛らわしい言い方したのよ・・」

 

 この世界の暦にまだ慣れないなど言えるはずもなく大人しく雑誌をめくる彼女をアンジェルモは見守る。内心、自分たちの世界では見られなかった誕生日による占いに興味深々だ。

 

(本だけで占いか!・・魔力(マジカ)は感じないがアレはきっと凄い魔導書なのだろう! きっと、噂に聞いた『運命の書』のように未来が記されていたり・・)

 

「・・日に生まれのエルフ族の男っと・・さて、アンジェの運命の相手は・・・あれ?」

 

「そう! 私の運命! ・・・の相手? ・・あの、一体何の占いをされているのですか?」

 

「いやねぇ、将来どんな相手と結ばれるのかがここに書かれているはずなんだけど・・『この世界に該当する人はいません』だって? ということは相手は魔族? ニホンジンと呼ばれる人たちの中には異世界から来たと自称している人もいるけどそんなことあるはずはないし・・」

 

「・・・・」

 

 その日に生まれたエルフ族の男全員を敵に回すような占い結果はさておき、自分に提示された内容をアンジェルモは考え始める。彼女の言う通りの人と結ばれるのかも知れないし、或いは生前のように若くして最期を遂げるのかもしれない。違う世界から来た自分に対してわざわざ『この世界にはいない』という占い結果が出たことに何らかの意味があるのかも知れない。星霜の書(エルダースクロール)やデイドラロードのアズラなどによって未来を事前に知ることが可能であると知っているタムリエルの民にとって占いは立派な学問であり神秘なのだ。

 

 一方でこの世界での占いはタムリエルと比べ未来を知るためというよりはどちらかというと娯楽的な意味合いが強い。魔王軍の預言者や紅魔族のそけっとのようにほぼ正確に未来を予知できる存在もいるが、一般的には自分の暇つぶし的な意味合いが強い。話題を変えるためのネタのつもりだったが思いの外真剣に受け止められてしまい焦り始める。

 

『ど、どうしよう? 何か真剣に考え始めちゃったんだけど・・まさか本気で信じちゃった!?』

 

『おい、どうすんだよ! 一生独身か、魔族と結婚なんて最悪の二択じゃないか! 子どもの夢を壊してどうするんだよ!?』

 

『・・・いや、アイツの目はまだ輝きを失っていない! あの占い結果に落ち込まないとはやはり並みの肝っ玉じゃないな!』

 

『ギルドで噂になっていた時と大分イメージ変わったなぁ。 昨日は紅魔族とアクシズ教に影響された爆撃野郎(ボンバーマン)だと思っていたけど・・』

 

 思想も常識も歴史も、そして世界の理さえも全てが違う2つの世界。本来は次元の壁に隔てられて互いに交わるはずのない2つの世界が何の因果かこうして同じ場所で同じ時を過ごしている。互いの全てを曝け出した訳でも無く今だ理解できないことはまだたくさん残っていた。

 偶々一緒の馬車に乗り、偶々共に肩を並べて戦っただけの仲。1年近く共にいた紅魔族とも違いたった1日の付き合いだ。しかし、それだけの間柄であっても確かに互いの心に残ることはあるだろう。

 

 一期一会。運命かまたは神が与えた1度きりの邂逅。

 始まりはある先輩冒険者が見慣れない新人を気遣ってが声をかけただけ。

 しかし、たったそれだけの行為が縁を呼び、互いの心を繋いで行った。クルセイダーやその仲間たちは夢にも思っていないだろう。自分たちの目の前で首を捻っているエルフの少年がかつては人間と敵対する勢力にいたことを。

 その彼がこれほど自分の感情を露わにしたり、無防備な姿を晒していることがとてつもない奇跡であることを。

 

 

 

 

 

 

◇5時間後  始まりの街、アクセル 馬車乗り場にて

 

「それじゃあな! アンジェ! 縁があったらまたどこかで会おうぜ!」

 

「今度は貴方のどんな噂が聞けるのかを楽しみにしているわ。同じエルフ族としてお互いに頑張りましょう」

 

「2日にも満たない間だったが、お陰で退屈しないで済んだ・・! 後、モンスターの弱点はしっかり事前に調べておけよ? 正直、昨日のゾンビ戦、少し不安だったからな?」

 

「私たちのプレゼント大切に使ってね? ふふっ、大きくなったら一緒に酒場で一杯やりましょう!」

 

「皆さん、お世話になりました! まさかプレゼントまでいただけるなんて・・きっと大切にします! お気を付けて!」

 

 アンジェルモをはじめとした多くの冒険者はここで降り、馬車の一団はアクセルを発って郊外の村へと向かう。護衛として雇われた彼らとはここでお別れとなった。空が茜色に染まる中、遠ざかってゆく馬車にアンジェルモは手を振り続ける。やがて馬車の姿も見えなくなると今夜の宿を確保するべく街の中へと歩を進める。

 アルカンレティアほどではないにしろ活気のある町。しかし、不思議とアンジェルモはやや静かに感じていた。

 

(随分と賑やかな人たちだった・・多少変わっていたが・・不思議と不快では無かったな・・)

 

 リボンを結ばれたり編み込まれたりした跡が残る髪を弄りながらそう思い返す。左手には銅の指輪が光ってる。この世界のウィザードが杖の代わりにとしても使う魔法の媒体ともなる指輪で彼らからの1日早い誕生日祝いだ。

 偶々同じ馬車に乗っただけの自分に対してここまでしてくれたことに対する戸惑いと同時に喜びを覚えた。

 

(願わくば私が彼らにとってこの指輪を贈るに相応しい人物であったのなら良いのだが・・)

 

 思えば里を出てからは誰かと共に行動することが多かった。ミツルギやあのクルセイダーのパーティは賑やかだったが、今の自分は1人だ。アクセルの街がどこか静かに錯覚してしまうのもそのあたりの心情が影響しているのかもしれない。

 

(この体たらくではあんかのやえすとるに笑われてしまう・・かつての仲間たちにも!)

 

 気合を入れるべく紅魔族っぽさ2級(名誉紅魔族)の証である眼帯を左目に付けこっそりポーズを取ってみる。何やってんだコイツと言わんばかりの視線をちらほら感じるが何となく気分が高揚した気がした。

 

(とりあえず・・今日は旅の疲れもあるから早めに休んで街の探索は明日からだ! 幸いなことに懐は温かく宿代は簡単に出せる。ついでに街の地図でも買っておこう!)

 

 ちょうどベンチには肩パッドを当てた人相の悪いモヒカン男が休んでいる。スカイリムの山賊を思わせる彼に懐かしさを覚えながら道を尋ねるべく近付いてゆく。

 

(ひょいざぶろーさんが言っていた店も探したいし、このギルドのクエストの相場も知りたい! ここの主な産業は? 物価は? どんな付呪なら他と迎合せずに利益を得られるのか? ああ! やりたいことがたくさんだ!)

 

 今、アンジェルモの目の前には未知の世界が広がっている。そこに向かい一歩二歩と自ら踏み出していく。

 

(未知に対して一歩踏み出すのが冒険者。 そうですよね先生?)

 

 本来はこのアクセルから異世界生活は始まるはずだった。

 しかし、アンジェルモが飛ばされたのは紅魔の里だった。

 そこで自分の力不足を知り、異世界の理を学んだ。そして倒すべき敵、越えるべき壁の高さ身を持ってを知った。

 そしてアクセルではできないであろう勇者との共闘。そして多くの経験を積んだ先輩の金言から多くのことを学び

アクセル(始まり)へとやってきた。

 

(1年近くも遅れたが、全てが有意義な寄り道だったといえる。今日からが真のスタートだ・・!)

 

 この世界で学んだ通りに、モヒカン男の前でポーズを取り、堂々と誇り高く名乗りを上げる。

 

「我が名はアンジェルモ! 高貴なるアルトマーの末裔にして紅魔族の弟子! そして未知に挑む冒険者だ!! ・・お寛ぎの所恐縮ですが実は道を教えていただきたく・・」

 

 使命が原動力だったサルモールにいた頃と違い、今は自分の意志こそが原動力。組織という殻に守られていたアンジェルモは、今は1人の冒険者として立っていた。

 

 

To be continue…




 シンデリオン・ヌレリオン・カルセルモ・ヴィアルモ。純粋な知識の領域でトップを取るのはアルトマーが多い気がします。純粋に知性が高いだけではなく長命であることに加え、何よりも知的好奇心が凄い気がします。というか上記の中でヴィアルモ以外は熱心さが異常です。主人公が好奇心旺盛なのもそんなアルトマーのイメージからです。

運命の書・・ウィンドヘルムに住む骨董品館にある謎の書物。書物を開いた者の運命がそこに書かれています。しかし、真っ白なページしか見えない者の場合は読み手が宿命を持たずに生まれてきたか、今にも起ころうとしている読み手の死を表しているらしいです。因みに主人公であるドヴァキンも真っ白であり、上記二つのどちらにも当てはまります。しかし、元々何も書かれていないただの本の可能性も・・・。

人間を辞める主人公・・選択肢によっては主人公は人狼ウェアウルフになったり、ヴァンパイアロード(人間体より更に強力な異形の吸血鬼)になったりできます。両者とも基本的には治療が不可能なはずなのですが、出会いに恵まれた主人公はいつでも人間を辞めたり人間を始めたりできます。ドヴァキンの皆さまならご存知でしょうが主人公がうなされていたのも主人公が人間を辞める瞬間を見てしまったからです。
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