木場きゅん奮闘記   作:ふぁもにか

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 木場きゅんが強化されているのは大抵オリキャラさんのせい。


第一章 旧校舎の木場きゅん
木場きゅんとフィルさん


 

 僕の名前は木場祐斗。駒王学園に通いオカルト研究部に所属する極々一般的な高校二年生だ。……うん。ウソ。思いっきりウソ。実際はオカルト研究部部長たるリアス・グレモリーの騎士(ナイト)として生きる転生悪魔だ。そして。女子から黄色い歓声を、一部の男子(特に兵藤くんと松田くんと元浜くん……だったかな?)から怨嵯の眼差しを向けられる程度には一般的な高校生を逸脱している。なので、女性の友達はそれなりにいるけれど、男性の友達はあまりいない。というか、男友達が上手く作れなかったりする。困ったものだ。

 

 さて。そんな僕の朝はとある人との試合から始まる。あらかじめ魔剣創造で一般的な剣を作ってから誰もいない剣道場に足を運ぶと、すでに先客がそこにいた。桃色の髪を肩にかかる程度に切りそろえ、意志の強さを感じられる真紅の瞳を宿し、170センチと、女性にしてはそれなりに身長の高い少女がそこにいた。

 

「来ましたか、裕斗くん」

「はい。相変わらず早いですね、フィルさん」

「早起きは三文の得ですよ? よかったら祐斗くんも一緒にどうですか?」

「いえ、さすがに午前1時起きの1時間睡眠生活は遠慮しておきます」

 

 まぁ僕悪魔だしね。午前1時は僕が活発に活動する時間帯だし、それに1時間睡眠なんてもはや仮眠だ。そんな生活を続けているフィルさんは本当に何者なのだろうか。

 

「……そうですか」

 

 だからそんな悲しそうな顔をしないでほしい。反応に困るから。

 

「――では、そろそろ行きますよ」

「はい。お願いします。フィルさん」

 

 ――っと、この人の説明がまだだったね。少女の名前はフィルシー・カーマイン。17歳。駒王学園3年生の剣道部主将にして僕の二人目の師匠的存在だ。僕は敬愛と親愛の念を込めてフィルさんと呼んでいる。

 

 彼女はれっきとした人間なのだが、僕は未だにフィルさんに一度も勝てたことがない。騎士(ナイト)としての力を開放しても全く歯が立たない。それだけに彼女の剣術の腕は凄まじい。特に居合切りに関しては脱帽ものだ。

 

 フィルさんの言葉を合図に僕は剣を鞘から抜いて正面に構える。対するフィルさんは左手で鞘を、右手で刀の柄を持ったまま微動だにしない。それが居合の達人と言っても過言でない彼女の戦闘スタイルだ。

 

「貴方の剣は何度見ても綺麗ですね。惚れ惚れしてしまいそうです。どこで手に入れたのかが本気で気になりますね」

「これに関しては企業機密です」

 

 神器パワーです、魔剣創造で作りましたなんて言えない以上、テキトーに誤魔化すしかないよね。うん。僕は悪くない。

 

「フィルさんから来ないなら、僕から行きますよ」

 

 僕は足に力を込めて一気に加速した。すると、僕の突進を遮るように三日月上の白い斬撃が襲いかかってくる。フィルさんは『氣』を制御できるらしく、氣を刀に纏って居合切りを放つことでこうして斬撃を飛ばしてくるのだ。

 

 僕はそれをすり抜けるようにしてかわしてそのままフィルさんに切迫する。僕はその状態から逆袈裟を放つも、彼女が迅速の速さで抜き放った刀の一撃によって僕の剣はあっさり上に弾かれてしまった。

 

「一閃、二閃――」

 

 フィルさんの一撃により剣先が上を向けられている、つまりフィルさんの攻撃の衝撃で剣を掴んだ両手を上げさせられた状態になっている僕に向けてフィルさんが例の言葉を口ずさむ。と、同時に白い斬撃が一つ、二つと時間差で襲ってくるのを横っ飛びでどうにか避ける。

 

『一閃、二閃――』とは、フィルさんが大技を放つ際の合図みたいなものだ。最初の一つの斬撃と二つの斬撃を時間差で放つ中でフィルさんは体を慣らす。そう、これは最初の刀の一閃と二閃でフィルさんが体を慣らして精神を高めて、次により多くの斬撃を放つための布石。つまり、次に来る斬撃こそが彼女の本領ということになる。

 

「――十二閃!」

 

 刹那。フィルさんの手元から十二もの白の斬撃が襲いかかってくる。中々の速さで迫ってくるそれらを僕はかわして受け流して受け止めてを繰り返してどうにかやり過ごした。無傷の僕の姿を見てフィルさんがわずかに目を丸くする。

 

「へぇ。この技に対処できるようになったのですね」

「はい。いい加減、そろそろフィルさんの本気を引き出す程度には強くなっておきたかったので、頑張りました」

「それはそれは、嬉しいことを言ってくれますね。私としても祐斗くんが強くなるのは大歓迎ですよ。そろそろ師匠と弟子みたいな関係からライバルの関係に昇格したいと常々思っていますので。真剣での斬り合いに付き合ってくれる相手なんてそうそういないでしょうからね」

 

 まぁそうだろう。剣道部に所属している人たちは皆剣道をしに来ているのだ。決して生死を賭けた真剣勝負が目的じゃない。現代日本においてそのような戦いをしたがるのは、よっぽどネジのぶっ飛んだ重症のバトルジャンキーか、僕みたいな強さを求める人外さんくらいだ。

 

「では、次は20パーセントの実力で行きますよ?」

「え、今の攻撃、20パーセントにも満たなかったのですか?」

「そうですが、貴方は何パーセントくらいだと思っていたのですか?」

「50パーセントくらいだと――」

「フフッ。私の実力を侮ってくれては困りますよ」

 

 今の十二閃で20パーセントにも満たないとか……本当に底が見えないな、この人。

 

「そうですね。気が変わりました。40パーセントの力で祐斗くんを倒してみせましょう」

「――今ッ!」

 

 柄にあてている右手を唇に持っていき、名案を思いついたと言わんばかりに宣言するフィルさん。その隙を狙って僕は一直線に駆ける。今度はフィルさんの慎ましい胸に目がけて突きを放つもフィルさんが一歩退いただけで軽くかわされてしまう。僕がさらに踏み込んで唐竹だったり横薙ぎを繰り出すもフィルさんは余裕そうに紙一重でスルリとかわしていく。まるでヒラヒラと風の影響を受けながら落ちていく葉っぱを斬ろうとしているかのようだ。まるで手ごたえがない。

 

「一閃、二閃――」

 

 と、その時。彼女の大技前の合図を聞いて、僕は身構える。どんな攻撃が来ても対処できるように目を光らせる。

 

「――四十八閃!」

 

 ――が、フィルさんの放った四十八もの白の斬撃の弾幕、そのあまりの速さを前に、僕の視界は文字通り真っ白に染まった。もちろん、白とは斬撃の白だ。フィルさんの攻撃は僕の想定を軽く超えてきた。あぁ。フィルさんは本当に強いな。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「っつう、ここは……」

「ちょっとやり過ぎましたね。一応急所は外していますが、大丈夫ですか?」

 

 目を開けると真っ先にピンクが見えた。視線を向けるとフィルさんの顔が上にあるのがわかった。さっきのピンクはフィルさんの髪の色だろう。そして。後頭部の柔らかい感触からして、おそらく僕はフィルさんに膝枕をされているのだろう。

 

 フィルさんはその容姿や凛々しいあり方から男女ともに人気が高い。部長や朱乃さんと引けを取らないレベル、と言えばフィルさんがどれだけ人の注目を浴びる存在なのかがわかることだろう。

 

「……はい。こうみえて僕、丈夫ですので」

「ホント、呆れるくらいに頑丈ですね、裕斗くん。こうして傷だらけになっても次の日にはピンピンしてますし。何かあるのなら是非とも教えてもらいたいのですが」

「その辺は内緒ってことでお願いします」

「全く、裕斗くんは謎だらけですね。だからこそ魅力的に感じるのでしょうけど」

 

 フィルさんは音一つ立てずに刀を床に置くと、僕に向けて微笑んでくる。すみません、フィルさん。そのような笑顔を見せられても内緒のものは内緒ですよ? このことも悪魔が存分に関わってるし。

 

 とにかく。僕が気絶した以上、今回の真剣勝負は僕の負けで終了だ。またの機会に持ち越し確定だ。

 

「次はいつぐらいが大丈夫ですか?」

「う~ん、そうですね……明日は所用で一日中空いていませんので、明後日でしょうか。その際には例のモノ、頼みますよ」

「わかりました。では」

 

 僕はこちらにゆったりと手を振ってくるフィルさんに手を振り返した後、剣道場を後にする。今回で僕はフィルさん相手に通算60回目の敗北を味わった。けれど、次こそは勝つ――まではいかなくとも、せめて一撃くらいは攻撃を当てられるようになりたいなぁ。

 

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