木場きゅん奮闘記   作:ふぁもにか

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 オカルト研究部メンバー、ここに登場。



木場きゅんと部長さん

 

 僕の駒王学園での生活に黄色い歓声が止まないことはあまりない。校庭を歩いても、廊下を歩いても、木の下で読書をしていても、自分で作った弁当を食べていても、必ずどこからか歓声が聞こえてくる。

 

 とはいっても、そのような歓声を上げているのは大抵他のクラス・学年の人たちだ。さすがに同じクラスの皆は僕に慣れたみたいで今では普通に接してくれる。僕としてはそのような対応をとってくれることは非常にありがたい。尤も、僕が普段しないような行動をとると、同じクラスの生徒であっても黄色い歓声を上げることになるのだが。

 

 さて。そんな境遇に置かれている僕だが、今は旧校舎に足を運んでいる。二階建て木造校舎を進み、階段を上り、そしてさらに奥に進んだ先に、僕の所属するオカルト研究部が存在する。

 

「それで、どうだったの、裕斗? 今日の試合は?」

 

 そう話しかけてくるのはオカルト研究部部長:リアス・グレモリー。僕が瀕死の所を救ってくれた命の恩人だ。いや、部長は悪魔なんだから恩人というのは変か。でも恩悪魔というのはもっと変だ。……この場合、何て表現するのがいいのだろうか?

 

 まぁ、それはさておき。部長が尋ねているのは僕とフィルさんとの戦いの結果だ。僕のボロボロ具合から部長もある程度察しているはずなのだが、僕の口から直接結果が知りたい。そんな所だろう。

 

「完敗です。あっさり負けてしまいました。やっぱりフィルさんには敵いませんね」

「そう。フィルシー・カーマイン。うちの祐斗を倒すだけの実力があるのなら、是非とも騎士(ナイト)として歓迎したいのだけどね」

「そう上手くいかないと思いますよ。あの人、見た目よりは結構強かですし。勧誘するなら気をつけてくださいね」

「わかったわ。肝に銘じておく」

 

 僕は一応部長に注意を促しておく。まだフィルさんの正体が人外の領域に片足突っ込んだだけの人間なのか、それとも悪魔や堕天使といった人外なのかがわからない以上、うかつに接触するのは避けた方がいいだろう。僕に敵意がないからといって部長に敵意を向けないとは限らないわけだし。それに。フィルさんなら部長が攻撃に気づく前に一刀両断とか平然とやってのけそうだしね。……ホント、フィルさんって底が知れないなぁ。

 

 と、そんなことを考えていると。オカルト研究部の扉が開かれた。

 

「祐斗先輩。ここにいましたか。探しましたよ」

 

 扉からヒョコっと姿を現したのは塔城小猫。駒王学園に通う僕の後輩さんで僕と同じく部長の下僕悪魔の一人だ。ちなみにランクは『戦車(ルーク)』。見た目にそぐわずかなりの力持ちだ。怪力ともいう。

 

「ん? 小猫さん? どうしたの? 何か僕に用事?」

「忘れたのですか、裕斗先輩? 前にケーキを食べに行く約束、しましたよね?」

 

 小猫さんからジト目で見つめられて、僕はようやく約束の件を思い出す。この前、部室のテーブルに無造作に放置されていた羊羹を小猫さんのものだと知らずにフィルさんにおすそわけしてしまい、それで小猫さんを怒らせてしまったのだ。結果、小猫さんの怒りを鎮めるために僕が今度何か羊羹に匹敵するものを奢るということで落ち着いたのだ。それがケーキを小猫さんと一緒に食べに行く約束に結びついたというわけである。

 

……あの時はホントに生きた心地がしなかったね。うん。

 

「あぁ。そういえばそうだったね。それじゃあ行こうか、小猫さん。どこに行きたいとかあるの?」

「はい。駅前の翠屋という所です」

「あぁ。あそこね。おいしいよね」

「食べに行ったことあるんですか?」

 

 僕の言葉に小猫さんがコテンと首を傾げる。おそらく甘党じゃない僕が翠屋に行ったことがあるのが小猫さんにとって意外だったのだろう。

 

「フィルさんの罰ゲームに付き合わされた時にね」

「……そうですか」

「小猫さん?」

「行きますよ、裕斗先輩」

 

 僕がフィルさんの名前を出すと、小猫さんは露骨に嫌そうな顔をした。様子の変わった小猫さんに内心で「うん?」と首を傾げていると、小猫さんは僕の袖をグイグイ引っ張ってそのまま僕を引きずるようにして扉の方へと向かっていった。

 

 そんなに今から食べるケーキが楽しみなのだろうか? まぁ翠屋のケーキの美味しさを知っている身からすれば小猫さんが今すぐにでも翠屋に行きたがる気持ちはよく分かる。ともかく、力技は小猫さんの領域だ。こうして袖を掴まれて引っ張られている以上、素早さが売りの騎士にはどうしようもない。ただ小猫様の為されるままでいるしかないのだ。これが騎士の宿命か……。

 

「部長。それではちょっと行ってきます」

「……行ってきます、部長」

「ええ。楽しんでいってらっしゃい」

 

 僕は小猫さんに引っ張られつつ部長に頭を下げてから、小猫さんとともに外に向かう。残された部長が微笑ましそうにこちらに手を振っているのが印象的だった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「あらあら。相変わらず、小猫ちゃんは祐斗くんが大好きですのね。祐斗くんがフィルさんの名前を出していただけでも嫉妬していたみたいですし。うふふ」

「でも肝心の祐斗があの子の恋心に気づいていないみたいなのよね。あの子の方もはっきりと祐斗が好きだって自覚しているわけではなさそうだし。私としては早くイチャイチャしている二人を見てみたいのだけどね。フィルシーさんには悪いけど」

 

 その後。リアスは後から部室に現れた下僕悪魔:姫島朱乃(ランク:女王)に事の顛末を伝えると、朱乃は口元に手を当てて嬉しそうに言葉を紡いだ。対するリアスは呆れの表情だ。

 

「焦りは禁物ですよ、部長。ここは慎重に、一歩一歩進めていきましょう」

「わかっているわ、朱乃。ここでヘマしたら今までの努力が水の泡だものね。じゃあ始めるわよ。第11回、裕斗×小猫or小猫×祐斗:ラブラブカップル昇格作戦会議!」

「はい、部長」

「「フフフフフフフッ……」」

 

 裏ではこんな感じになっていることを僕は知らない。小猫さんも知らない。

 




 木場きゅんに「小猫さん」と言わせたかった。それだけ。
 とりあえず、ストックが切れるまでは毎日投稿しようかなって。そこから先は不定期更新。
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