フリード語が難しすぎる件について。難しいなんて言葉が霞むくらいにフリード語が難解な件について。え、何、何なのこれ。フリード語の法則が全然わからない。
夜。悪魔としてのお仕事:契約をちゃちゃっと終えた後、僕は近くのスーパーを訪れていた。閉店間際のこの時間帯は大抵の食材が低価格で売られているため、自炊生活を営む僕はできるだけこの時間帯に食材を購入することにしている。別にお金に困っているわけではない。単に節約志向があるだけだ。とりあえずレジ打ちの女性の熱い視線には微笑みと軽い会釈を返しておいた。かくして。安くで色々と戦利品を手に入れた僕は家路に就いていた――のだが。
「ぁぁぁああああああああああ――ッ!!」
突如、男性の悲鳴が辺り一帯に響き渡った。音源は僕のすぐ傍の家からだ。何があったのかはわからないが、ただ事じゃないのは明らかだった。
「……行ってみるか」
僕は買い物袋をそっと路上に置くと、断末魔らしき悲鳴の聞こえた家へと向かった。不用心にも鍵は空いていた。
「(……これならわざわざドアを破壊しないで済みそうだ)」
僕はなるべく音を立てずに家へと入る。瞬間、血なまぐさい匂いが僕を襲った。いつ、どこから、何が来てもいいように最大限に警戒を払いつつ、血の匂いの濃くなる方向へと一歩一歩進む。
そこはリビングだった。ロウソクの明かりだけがほのかにリビングに光を提供している。そして。そこに肉塊があった。人間の原型を留めていないほどにグチャグチャになった何かと、その肉塊を中心に溢れるおびただしいほどの血。
「――ッ!?(これは!?)」
「おやおやぁ。誰かと思えば、俺の狩りの対象のあーくまくんではありませんか。しかも金髪イケメン。惚れちゃうねぇ」
僕が言葉を失っていると、タイミングを見計らったかのようにふざけた口調をした男の声が響いた。声の聞こえた方向へ目を向けると、リビングのソファーに深く腰掛けている白髪の男がいた。目の前のあまりにグロすぎる光景に気を取られていたせいで声を掛けられるまで全く気づかなかった。というか、この状況下で平然と座ってるなんて普通じゃない。
「……君は誰かな? さすがにここの住人ってわけじゃないんだろう?」
「もっちろん。俺の名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い(エクソシスト)組織に所属してる天才少年神父DE☆SU。以後お見知りおきを。まぁ、すーぐ死んじゃうだろうから名前何て教えても意味ないだろうケド」
「神父、ね……。一応確認するけど、お前がこの人を殺したのか?」
「イエス! ザッツライト! 俺っちが直々にこの光の剣で細切れにしてやりましたとさ。このクズがクソ悪魔なんかに頼ろうとするからいけないんですぅー。あぁもちろんその前にこの銃でドタマぶち抜くのも忘れちゃいませんよぉ~? そこのクソ人間の苦しむ姿といったらもう……あぁ、俺興奮しちゃう! 夢に出てきそう! ヤダ怖い! 怖いよママー!!」
フリード・セルゼンとやらは凶悪な笑みを浮かべて光の武器を見せつけたかと思うと両手で自身を抱きしめ女性のものと遜色ない裏声を上げてふざけてくる。はっきり言って隙だらけ。だが。相手の実力がわからない以上、うかつに攻撃を仕掛けるわけにはいかない。
「……世界広しとはいえど、君ほど神父の印象からかけ離れた人間はそういないだろうね。気持ち悪くて仕方ない」
とても言葉の通じそうにないフリードとやらと対峙する中で、徐々に僕の神父に対する恨みや憎しみといった負の感情が湧き上がってくる。普段なら神父や堕天使を前にしただけでこうまで個人的が感情が膨らむことはない。が、ここまで人格が崩壊している相手に理性的に対応するのは、僕には少々荷が重そうだ。そういうのは朱乃さんの得意技だし。
「あぁ? クソ悪魔が気取ってんじゃねえよ! もっと悪魔は悪魔らしく己の欲望のまま暴れてみやがれっての!!」
「君の方がよっぽど欲望に忠実だと思うけど、ね!」
フリードとやらが光の剣を具現化して襲ってきたことで僕と神父との戦いの幕が上がった。僕はフリードとやらから見えない位置でこっそりごく一般的な魔剣を創造すると、そのまま逆袈裟を放ち、フリードとやらと鍔迫り合いに至る。
すると。フリードとやらが銃の引き金に指を掛けたので僕はすぐにバックステップを取って回避する。そのまま僕はリビング中を変則的に賭け回って銃弾を避けつつ、反撃の機会を探る。
「ちょこまかちょこまか避けやがって、しゃらくせぇ! さっさと当たって消滅しやがれよ、この害虫がァァァァアアアアアアアアハヒャヒャヒャハヒャヒャハヒャ!」
「よくそんな笑い声上げながら戦えるよね、君……」
戦闘中にそれだけ笑っていながら息切れしないのはさすがとしか言いようがない。
まぁそれはともかく。フリードとやらの戦い方は中々に厄介だ。近接戦では右手の光の剣で切りかかり、少し距離を取れば左手の銃から光の弾を放ってくる。銃で相手を弱らせて光の剣でとどめを刺す。もしくは、銃で相手の動きを制限して次の動きを予測して光の剣でとどめを刺す。中々理に叶った戦い方だ。案外、自身を天才と称するだけの実力は持っているのかもしれない。――でも、今回ばかりは相手が悪い。
「大したことないね」
「んだとォ!? クソ悪魔のクズ悪魔の分際でェエエエエエエエエ!」
そう。大したことない。フィルさんに比べればフリードとやらの動きは止まって見えるし、殺気もフィルさんの方が鋭くて恐ろしい。殺気だけで本気で殺される錯覚を何度味わったことか。得体の知れないフィルさんと比べるのはアレな気もしたが、フリードとやらの実力が格下、とまでは言わなくとも下なのだから仕方ない。何か切り札を持っているわけでもなさそうだし、そろそろ終わらせるか。そう思った時だった。
「え、こ、これ――、なに? どうして?」
聞き覚えのある声が響いた。その方向へ目を向けると、なぜかあの時の金髪シスター:アーシアさんがそこにいた。
ストックe……。というわけで、次話からは不定期連載だったりする。