副作用:影が薄い。   作:kwhr2069

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短編、第二話です。


破ノ編

 日曜日。

 

 特にやることもなく、暇を持て余していた俺は、たまには行ってみてもいいか、という思いからボーダー本部へ行き、誰か知っている人と、個人戦をしようと思い立った。

 

 

 後から考えれば、これは思い立ったのではなく、そう仕向けられていたのかもしれない。

 

 

 そうとも知らず、呑気に本部へ。

 

 残念ながら、俺の知り合いは見当たらず、結局、暇なまま午前中を過ごす。

 

 帰ろうかとも思ったが、お腹がすいた。

 

 食堂で昼食を食ってから帰ろう、と考え付いた。

 

 

 後から考えれば、これは考え付いたのではなく、そう仕向けられていたのかもしれない。

 

 

 俺は、人気ナンバーワンの料理を選び、食堂の隅の方へ。

 

 

 一人で昼食なんてかわいそう?

 

 そんなことはない。俺は一人には慣れっこだ。

 

 

 でも、周りの目とかあるんじゃないんですか?

 

 俺は、影が薄い。存在感がない。

 

 サイドエフェクト、『自然隠密状態』

 

 俺は、この体質のおかげで、周りから目を向けられることはほとんどない。

 

 

 一人で料理に舌鼓を打っていたその時。

 

 事件が発生した。

 

 

 存在感がないはずの俺のもとに、歩み寄ってくる一人の人。

 

 その歩みは、俺のすぐ近くで止まった。

 

 

 仕方なく顔をあげたその先には、風間さんがいた。

 

 

 風間蒼也。A級3位風間隊の隊長。個人では、攻撃手ランク:2位。

 

 身長158cmとかなり小柄。ちなみに、20歳、大学生だ。

 

 いきなりの登場にざわついている食堂。

 

 

「風間さん?いきなりどうしたんですか?」

 

 とりあえず手短に用件を聞く。

 

「・・・。」

 

 黙っている風間さん。

 

「あの...?風間さん?」

 

「・・黒分寺宵。B級隊員。チームに所属せずソロで活動。」

「万能手。レイガスト、拳銃使い。鉛弾を使用。」

「サイドエフェクト、『自然隠密状態』か。」

 

 唐突に俺のプロフィール紹介。

 

 困惑。

 

 要件は何ですか?と聞こうとしたとき。

 

「単刀直入に言おう。風間隊に入らないか、黒分寺。」

 

 

「・・そういうことでしたら、すみませんけどお断りします。」

 

 チームに所属する気がない俺は、即座にお誘いを蹴る。

 

 

「これは言おうか迷ったんだが。」

 

 そう前置きして、

 

「お前は、ネイバーに母を殺されたと聞いた。」

 

「っ!!」

 

「復讐したいとは、思わないのか。」

 

 俺は、その問いには答えず、

 

「・・遼と、菊地原ですか。」

 

「ああ。二人からお前のことは聞かせてもらっている。」

 

 

 風間隊の、歌川遼と菊地原士郎。

 

 俺は、この二人と同じ中学校に通っている。

 

 二人とも、俺の数少ない友達だ。

 

 

「悪いですけど、チームに所属しようと思えないんです。」

「だから、すみません。」

 

 

 無言の風間さん。

 

「そうか。」

 

 ようやく開いた口から漏れた言葉からは、本当に残念だという思いが感じられた。

 

 

「だがな。」

 

 続けて風間さんが言う。

 

「俺はお前を買ってる。それと、こう見えても俺は、意外と諦め悪いぞ。」

 

 

 不穏な言葉を残して去られ、俺は、ため息をつくのだった。

 

 

*  *  *  *  *  *

 

「そうでしたか。やっぱり宵はチーム所属したくない理由でもあるのかな...。」

 

「そうだろ。あいつが誰かと一緒に何かをやってるとこ、見たことないし。」

「それにしても風間さんは、あいつを買いかぶりすぎなんですよ。」

 

 その後。風間蒼也が作戦室に行くと、風間隊のメンバーが残っていた。

 

 そこで、断られたという話をし、今、こういう状況。

 

「本人が乗り気じゃないなら、無理して誘う必要もないんじゃないですか。」

 

 もちろん、風間隊オペレーター、三上歌歩もいる。

 

 

 この四人で、風間隊だ。

 

 

 風間隊は、全員が『カメレオン』というオプショントリガーをセット。

 

 それと菊地原のサイドエフェクト『強化聴覚』を組み合わせた、隠密戦闘を得意としている。

 

 

 そう。

 

 だからこそ彼らは、『自然隠密状態』の黒分寺宵に目を付けたのだ。

 

 

「風間さん、黒分寺君ってどれくらい強いんですか?」

 

 三上が聞く。

 

「・・そうだな。言われてみれば噂だけで、実際に見たことはなかったな。」

 

「見るまでもない。別に大した奴じゃないですよ。」

 

「え?菊地原君は見たことあるの?」

 

「いや、ないけど。」

 

「なんだ、じゃあ、詳しいことは分からないんだね。」

 

 

「よし。」

「歌川。また黒分寺の誘導をお願いしてもいいか。」

 

「今回は成功しましたけど、次は分かりませんよ?」

 

「失敗しても別にいい。日曜日に頼む。」

 

「わかりました。やっときます。」

 

 

 誘導。怪しげな言葉だ。

 

 

 

 二日前。

 

 歌川遼は黒分寺宵が日曜、つまりこの日に、本部に来るように仕向けていたのだ。

 

 自分が忙しいから、課題を写すために、黒分寺に土曜日までにすべての課題を終わらせ、

 

 本部にいることをそれとなく示唆しておき、

 

 食堂の人気メニューの話もしていた。

 

 

 黒分寺が日曜日に本部に行くように、歌川遼は裏で手を引いていたのだ。

 

 

 恐ろしい子...!である。

 

 

*  *  *  *  *  *

 

 夕方。

 

 本部から出た俺は、本屋に寄った後、日曜日恒例の場所へ向かう。

 

 

「お母さん?」

 

 目的地に着くと、扉をあけながら、俺はそう言う。

 

 

 俺の母、黒分寺 明璃(こくぶんじ あかり)は、窓から見える夕焼けを眺めていた。

 

 こっちに気づくと、「ああ、来たのね。」と一言。

 

「はい、これ。頼まれてた雑誌。」

 

 俺はそう言いながら、本屋で買ったものを渡す。

 

「ああ、ありがとう。ちょっとそこに、置いといて。」

 

 そう言うと、また夕焼けを眺めはじめる。

 

「夕焼け、綺麗だね。」

 

 近くの椅子に座り、話しかける。

 

 しかし母は、何も言わずただ夕焼けを眺め続けた。

 

 

 

 やがて日が沈み、母は話し始めた。

 

「夕焼けって、残酷だと思うの。」

 

「あんなに綺麗なのに、少しの間しか見られなくて。」

「空が曇ってたら、それだけで見られなくなるし。」

 

 どうしたのだろうか。

 今日はやけに詩的だ。

 

 

「なんだか、命の儚さと同じようなものを感じない?」

 

 

 その一言に、俺の心は締め付けられる。

 

 

 母が半年ほど前に、『夕焼けが好きになった』と唐突に言ったことがふと蘇る。

 

 

 俺の暗い雰囲気を察したのか、母は話題を変えた。

 

「最近、どう?友達とは上手くやれてるの?」

 

 

 俺は少し考えて、言う。

 

「そうだね。まあ、ぼちぼち。」

「強いて言うなら、今日風間隊の隊長さんに勧誘された。」

 

「そうなの?で、入るの?」

 

「いや、俺じゃ全然弱いから。」

 

「入りたいとは思わないの?」

「歌川くんと菊地原くんも、風間隊だったわよね?」

 

 母は、諒と菊地原のことを知っている。

 

 二人は、1、2回だが、病院に来たこともある。

 

 

「それはそうだけど...。それとこれとは違うんだよ。」

 

 母はその時、何か言いたげな顔をしたが、すぐに元に戻り、

 

「せっかくだし、入ってみればいいのに。」と言った。

 

 

 そこから、他愛もない話を少しした後。

 

「んじゃ、帰るわ。」

 

 そう言って立ち上がる。

 

「うん。ありがとね、いつも。本当に去年から迷惑かけて...。ごめんね。」

 

 

 謝られてしまった。

 

 心が痛む。

 

「いや、いきなり何?別に謝ることでもないよ。」

 

「そうね。変なこと言っちゃった。じゃ、気をつけて。」

 

「うん、じゃ。」

 

 

 再び何か言いたげな顔をしたのが少し気になったが、結局俺は帰宅。

 

 

 

 のちに俺が、今日のこの行動を後悔することになるとはつゆ知らず。    続




次回で完結となります。

結末、あたたかく見守って下されば嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございました!
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