数ヵ月ぶりの更新、少し緊張しています笑
楽しみにしてくださっていた皆様には大変申し訳ないことをしてしまいました……。
新たな夢の続き、お楽しみください。
「……だから、あの人は幸せなんだよ。けどね?」
「けど?」
「貴方は、違う。」
俺の目の前の不思議な少女は、俺を『幸せじゃない』と切り捨てた。
そういう意味だと理解するのに、どれだけの時間が掛かったのだろうか。たった一瞬だったかもしれないし、一時間ほどだったかもしれない。
その間、俺は彼女の目をずっと見つめていた。さっきのふわふわとした笑顔の欠片もない、真剣な表情。
今までずっと俺が目を背けてきた『俺の幸せ』について。こんなガキに言われたくらいで簡単に自覚しようとしている。
駄目だ。やめろ。やめてくれ。じゃないと、
「俺が壊れてしまう、でしょ?」
こんなにも待ちわびた彼女の次の言葉は、またもや俺の確信をつく。そんな彼女が、天使の格好をした死神のようにも思えて、俺は思わずこう溢す。
「……綺麗だな、お前」
「え~っ? やだぁ~なに突然っ」
誉めた途端に真剣な表情を吹き飛ばし照れ始めた。……何なんだこいつは。あぁ、でも
「その顔が見たかったんだよ、俺は。」
「ウザいって思ってた癖にぃ?」
「……うるせぇ、思ってたよ。思ってたけど、ふわふわしたお前の方がいい。」
「気づかされちゃうもんねっ?」
「……」
嫌でももう気付かされてる。今までずっと自分に言い聞かせてた。『俺は幸せなんだ』って。けれど実際は……それに疲れてしまった。
「じゃあ、おにぃさん。息抜きしよっ?私と、一緒に遊ぼっ?」
「こんな時間にか?」
「そうだよっ? こんな時間に、だよっ!」
「……しかたねぇな」
彼女の遊びに付き合ってやるために、仕方なく座っていたベンチから腰をあげる。すると、彼女は
「あ~っ! だめだめだめっ! なんで立つの!」
と、あろうことか俺を座らせた。
「は!? なんでだよ……遊ぶんだろ?」
「うんっ! そうだよぉ~? だから、おにぃさんは座ってて?」
俺はそれに大人しく従い、再び腰を下ろす。すると彼女は、俺の膝の上に向かい合うように座った。彼女が動く度に揺れる髪からは、なんかちょっといい匂いがする……ってそうじゃない!!
ここはちゃんと強気に……強気?俺なりの強気は……こんな感じか?
「そんで? てめぇは俺に何しようってんだ?あ?」
「え……」
「じょ、冗談だよ! あはは……」
「あぁ……うん」
うわぁぁぁぁぁぁぁ!! すごい目で見てるぅ!!完全に強気をはき違えたようだ……。いつも通りに行こう。改めて何をするんだ、といつも通りに聞くと、彼女もいつも通りの表情で
「んーっとね! 私の世界に行こうよっ!」
「…は?」
「だぁかぁらぁ! 私の世界にっ! 行こうって! 言ってるのぉ! ……おけ?」
「……お前おかしいやつだとは思ってたけど、そこまで重症だったんだな。なんだよそれ、馬鹿馬鹿しい。」
私の世界ってなんだ私の世界って。
馬鹿にされた少女は、ハムスターよりもリスよりも大きく口を膨らませている。……そんなに息止めてると死ぬぞ。……あ、むせた。
「おにぃさんさぁ……そうやって人の事馬鹿にしてばっかりだと、空っぽになるよ?」
「っ……」
――っはは! お前そんなことも出来ねぇのかよ! だっせぇー!
――うるせぇなぁ! 文句があんなら俺に勝ってからにしろよ! 馬鹿が!
「あ……」
溜め息をつきながら言った彼女の言葉は俺の中で固く閉ざしてた箱の鍵となった。
思い出す。思い出させられる。
あのときから何も変わってなかった。だから俺はからっぽなんだ。だから俺は……。
「おにぃ……さん?」
「……っ!」
どれくらいの間考えていたのだろうか。気がつくと、さっきまでの彼女の呆れたような表情は、心配そうな表情に変わっていた。
うつむく俺を覗きこみ少女は問いかける。
「お兄さんは今、何がしたい?」
「……俺?」
「貴方は今、どうなりたいの?」
俺がやりたいこと。俺がなりたいもの。
「私になら、手伝えるかもしれない……いや、手伝える」
「そんなの……」
「無理じゃないよ、おにぃさん? 私にはそれができる。おにぃさんに夢を見せられる」
「俺はもう夢は見たくない。いつか覚めてしまうなら……見ない方がましだ」
「なら私が、覚めない夢を見せてあげる」
「覚めない夢なんて……ない」
「でもっ!」
「黙れよ! 何も知らないガキが!」
「……っ!」
俺はそこで彼女の言葉を断ち切った。彼女を見ることもやめた。つらつらと希望を語る彼女の言葉を聞くのが怖くなった。俺を見透かすような目を見るのも怖くなった。ベンチから腰を上げ、彼女を押し退けて家へ繋がる道へと歩き出す。
夢はいつか覚めるもの。寝ている間に見る夢はもちろん、将来へ抱く夢でさえも。そんなものを見ている時間なんて今の俺にはない。
あのとき憧れていた、人とは違う少し輝いた世界。それはもう叶わない。
なら、普通だとしても、人と同じ舞台に立たなければ。せめて……
「追い付かなきゃ……」
家を出た頃とは全く違う空の表情に、一晩と言う時間の短さと焦りをを感じた。
「……貴方には見えてないよ、おにぃさん」
ぽつりと呟く鈴の音は、風に吹かれて俺には届かなかった。
もうすぐ夜が明ける。
読んでいただきありがとうございました。
ファンタジー要素……なかなか出てこないなぁ笑
次回はちゃんとファンタジーですよ!はい。
話の進め方がなんとなく早い気もしましたが……次でかなり動きますのでお許しくださいm(__)m