魔術師で暗殺者なマスターが人理を救うそうです   作:醤油味のパスタ

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今回はちょい長め


第3話 絶望と新天地と洞窟

私が目を覚ますと、周囲は暗闇暗闇に染まっていた。緊急レイシフトが失敗して時空の狭間(?)にどうにかなってしまったのかと少し思ったが、きちんと地面も壁もある。歩くには問題ない程度にゴツゴツした地面。ひんやりとしていて気持ちがいい。空洞音らしき音もするため、あまり光の届いていない洞窟の中だと予想する。サーヴァントもおらず、会敵してしまったら逃げるのが困難な上に、既に遭難している可能性すらあるこの状況は、はっきり言って最悪だった。

 

 

 

 

部屋を出たロマニ、藤丸、私の3人は一直線で管制室に向かっていた。

 

到着した管制室は火の海と化していた。瓦礫がその辺にゴロゴロ転がっており、ところどころで人が下敷きにされているが、悲鳴もなく、ぐつぐつと空気が煮えたぎる音だけがしている。

 

「……生存者はいない。無事なのはカルデアスだけだ。ここが爆発の基点だろう。これは事故じゃない。人為的な破壊工作だ。」

 

ロマニは顔に屈辱の色を浮かべる。

 

「動源部の停止を確認。発電量が不足しています。予備電源への切り替えに異常があります。職員は手動で切り替えてください。隔壁閉鎖まであと40秒。中央区画に残っている職員は速やかにーーー」

 

「僕は地下の発電所に行く。カルデアの火を止めるわけにはいかない。君らは急いで来た道を戻るんだ。いいな、寄り道するんじゃないぞ。外に出て外部からの救助を待つんだ。」

 

そう言い残すとロマニは入ってきた扉へ、再び入っていった。

 

「……俺は、探さないといけない人がいるんだ。ーーーギリギリまで探すよ。君は先に第二ゲートに行っていて。」

 

探さないといけない人はマシュ・キリエライトだろう。2人とも助かることを知ってしまっている私は、そう言って走っていった彼の背中をしばらくじっと見ていた。

 

「………」

 

隔壁閉鎖まであと30秒もない。彼はきっと、マシュ・キリエライトが見つかったとしても、見つからなかったとしても、ゲートへ向かう気はないのだろう。今からなら助かる命を、誰かを看取る為だけに手放したのだ。私にはその行動が理解出来なかった。

 

[君も行かなくていいのかい?]

 

うわっ

びっくりした。完全にマーリンの存在を忘れてた。そうだ。私はここから何らかの方法で助かることを知っている。なら、この時間を彼のように費やすべきなのだが、足が砂に埋まっているかのように動かない。

 

[どうした?いつもの君らしくないじゃないか]

 

なんだか場に圧倒されてしまって。自分はこんな化け物を相手にするんだなぁとおもって……

 

恐怖というよりは不安だった。自分は人理を背負って戦い抜けるかという問に対し、自信が持てなかった。

 

「システム、レイシフト最終段階に移行します。座標 2004年 1月 30日 日本 冬木。」

 

アナウンスが聞こえる。冬木。冬木か。聖杯戦争。こんな魔術師の端くれでも聞いたことはある。剣、弓、槍、術、騎、殺、狂に特化した7騎の英霊をそれぞれ召喚した魔術師7人が戦い、残った1人と1騎はどんな願いでも叶えられる願望器である聖杯を手に入れられる儀式。その存在以外は至って普通である冬木が歴史のターニングポイントとして特異点化するなら、確実にその儀式が関わってくるだろう。

 

第二ゲートはもうとっくのとうに閉まっている。もう後戻りなんてできない。足を一歩、前に踏み出そうとしたその瞬間、なんだかカルデアスの様子がおかしくなっていることに気がつく。

 

「観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。シバによる近未来観測データを書き換えます。近未来100年までの地球において、人類の痕跡は発見できません」

 

「コフィン内のマスターのバイタル。基準値に達していません。レイシフト定員に達していません。該当マスターを検索中……2名、発見しました。マスターとして、再設定します」

 

2名、とはきっと藤丸と私のことだろう。きっと、これからレイシフトして聖杯戦争中であろう冬木に行くんだろう。

その場に腰を下ろし、ごうごうと燃えるカルデアスの球体を眺める。その様子はまるで夕日のようで美しかった。人類史の夕日……これを沈める訳にはいかないんだ。

 

「アンサモンプログラムスタート。霊子変換を開始します」

 

足の先から少しずつ光になっていく。

身を任せるようにすっと目を閉じる。

 

「全行程クリア。ファーストオーダー、実証を開始します」

 

 

 

 

そうして今に至る。少なくとも陸地が出発地点だと思ってたもんで、正直、キモを抜かれている。

 

いい加減目が慣れてきた。全く光が通っていないという訳では無いみたいだ。ということは、出口がどこかにあるということなのかもしれない。希望が少しずつ見えてきた。

歩いていくにつれて、洞窟は少しづつ明るくなっているような気がする。順調に出口に進めているのか、それともただ単に目が慣れてきているだけなのか。

 

そういえば、所長のレイシフトについての講義で存在証明のためにカルデアから定期的に通信を行うと言ってたが、それがここに来てから1回もされていない。この存在証明がされないともとの2016年の私はいないことになってしまう。つまり死ぬということだ。

それと、マーリンからの連絡もない。あのマーリンが魔術干渉できないということは、この周辺にそれを妨げるほどの強力な装置だったり、とても魔力の高い空間あるいはモノがあるということである。きっとカルデアとの連絡が取れないのもそれのせいだろう。もしこの地が聖杯戦争中の冬木だとするならば、それに該当するものって…

 

なんで始まって早々、こんなにも不幸なのか。いや、そもそも所長の講義ではレイシフトする座標はだいたい指定できると言っていた。それならば、初っ端からカルデアから連絡ができないかもしれない危険地帯に送り込まないし、一緒に来ているはずであろう藤丸と同じ座標にレイシフトさせるはず。なら私がこんな場所にレイシフトさせられてるのは誰かが手を加えたからだと考えるのが妥当であろう。こんなことが出来て、することに利益のある人といえば…

 

そんなことを考えていると、だいぶ大きな洞窟に合流した。幅がこれまで進んできた洞窟より遥かに広く、明るく、人の手が加わっていると見受けられる箇所がいくつかある。

そこから少し進むと大きい空洞があった。大きいと一言で言っても半端な大きさではなく、サッカースタジアムとか、野球場とか、そういう規模の大きさである。しかも空洞内に丘のようなものができており、その頂上あたりから紫の光が天井に漏れている。これがマーリンの魔術やカルデアの連絡を妨害した原因……おそらく聖杯だろう。その丘の手前には、それを守るように紫の鎧の金髪女騎士が地面に紫の剣を立て、堂々とした態度で仁王立ちしている。

 

「ーーーーー。」

 

紫の鎧の女騎士はこちらに気が付くが、眼がこちらを向いただけで身体は動かない。白人で顔立ちも西洋風であり、格好も一般人のものではないためサーヴァントに見えるが、コスプレと言われたらそれはそれで信じてしまうほど普通人で、むしろ私と年齢が近そうに見えて親近感すら湧いてしまう。

 

正体がどうであれ、レイシフト先の第一村人ということには変わりない。敵意は無さそうだし、聖杯戦争中のサーヴァントであったとしても敵意のない一般人に危害は与えないだろうし、情報を聞き出そう。

 

Where am I (ここはどこ)?」

 

外国人だし、とりあえず英語で話しかけるよね。ヨーロッパの人だったとしてもイタリア語とか話せないし。

 

「……」

 

What's this cavity for(この洞窟は何のためにあるの)?」

 

「………」

 

無視は辛いって…

無駄に大きな空洞に私の言葉だけが寂しく響いている。なんだか一人芝居してるみたいで恥ずかしくなってきた。

 

すると突然、紫の女騎士が剣を構え、身体から魔力を放出させる。

そんなに私の英語が気に食わなかったのか、完全に臨戦態勢である。

私もそれに合わせ、ダガーを構える。相手はおそらく最優のサーヴァント、セイバー。それに勝てる希望はほんの少しもなかった。ここから生きて帰れる確率は限りなく低い。けれど、なんとなく、立ち向かわなければならない気がした。

 

その為にも、先手をとることが重要だろう。少しでも、少しでも足掻く。しかし、足を一歩踏み出そうとしたその時、既にセイバーはその剣で私を割こうとしていた。

 

「!??!?」

 

魔力を腕に込め、ダガーに魔力を回す。

とりあえずこれを受け流すしかない。二発目が来るかもしれないが、今はそれどころではない。ダガーは剣に触れ、火花を散らし、ほんの少しだけ軌道を逸らす。想像以上に重い一撃。両手に持っていたダガーは吹き飛ばされる。両腕が痺れ、力がうまく入らなくなる。

それだけじゃない。私は今、宙に浮いていることに気がついた。確かに剣撃は避けた。でも、その魔力放出をまともに食らってしまったのだ。

 

「グッ……!」

 

壁に背中を打ち付ける。セイバーは無表情でこっちに歩いてくる。サーヴァントはここまでの力を持っているのか。侮っていたと自分に言い訳をする。

一か八か、もう逃げるしかない。幸い、私が飛ばされたのは入口付近だった。私は歴戦のサーヴァント相手に、背中を向けて逃げ出す。そもそも、自分のサーヴァントがいない時点で、初めからそうするべきだったのだ。これは自分の判断ミスなのか、それとも彼女の気迫が、私をそうさせたのか。そう思うと屈辱でいっぱいだった。

数秒後、追ってきているはずの奴の足音がしないことに気がついた。追うのを諦めたのか?いや、違う。後ろを振り返ってみると、セイバーは空洞の入口で禍々しい魔力を纏った剣を構えていた。

私と彼女の距離は50メートル以上ある。剣

を使ってその距離から当てて、かつ私を確実に殺せる方法があるというのか!?

それが何にせよ、相手からしてもこの洞窟を崩すことは良くないことだろうし、彼女との死角をつくれば避けることはできるだろうが、不幸にもこの洞窟はしばらくまっすぐで、次の曲がり角まで逃げこむまでの時間はない。

 

「真名解放!!」

 

これは…宝具か!?生身の人間に宝具を使うのか!?いや、逆に、もし生きて帰れたら親玉の真名を知れる可能性が高いということ。

 

約束された(エクスカリバー)……」

 

聖剣(エクスカリバー)ということはアーサー王か?いやでも相手は女性だし、剣はデザインこそ似ていても、真っ黒でそれには程遠い。だが、少なくともアーサー王伝説の人物であることは間違いない。

 

勝利の剣(モルガン)!」

 

それと同時に、すべてを飲み込む闇のような極光が後ろから迫り来る。

もしこのサーヴァントの真名がモルガンだとすれば、女性であることや、禍々しい魔力も納得がいく。それに、彼女はマーリンに並ぶほどの凄腕魔術師で、ウーサー王の血を引くブリテンの後継者候補。アーサー王と同じように神秘の力を持っていることも含め、聖剣を持っていることにも合点がいく。

 

真名はわかった。でも、これを食らったら、確実に助からない……

 

 

極光は音を立てて洞窟をくり抜くように容赦なくすべてを飲み込んだ。

 

 

戦況

 

カルデア

ロマニ(管制室)

 

特異点F 冬木

藤丸立香(???)

マシュ・キリエライト(???)

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