今回から新章に突入です!
少しシリアスが無くなるかも知れませんがご了承くださいね!
第二十七話 (契約と祝勝会)
夜が明けた鎮守府はかなり混乱していた。
中破や大破している艦娘は即座に入渠ドッグに、
そして姫級の深海棲艦達もどうやらかなりの被害らしく
入渠ドッグが開き次第すぐに入ってもらった。
その中でも吹雪は空き時間があるとすぐに司令官を探しに行こうとしていた。
そんなことをしているうちにもう夕方になってしまった
吹雪「司令官…」
吹雪は執務室の窓から海を見ていた。
提督の足取りが全くないのだ。探そうにも当てがなさ過ぎた。
と、そこに一体の深海棲艦が来た。
カ級「シ、シツレイシマス・・?」
最初に鎮守府に来たカ級だ。
彼女の報告がなければきっと今頃既にこの鎮守府は壊滅していただろう。
その点では彼女には感謝してもしきれない。
吹雪「カ級さんですか。どうしましたか?」
カ級「コ、コノタビハタスケテイタダキアリガトウゴザイマシタ。」
カ級は深々と頭を下げた。まさか深海棲艦に感謝される日が来るとは…想像もしていなかった。
カ級の姿はいつものような恐ろしい見た目ではなく、艤装と酸素マスクのようなものを外しているようだった。
カ級「ト、トコロデ…シレイカントイウカタハドチラヘ・・・?」
カ級もやはり気になったのだろう。何故提督がいないのか
吹雪はこの一日間の事をカ級に話した。
カ級は真剣な顔でその話を聞いていた。
カ級「・・・ナゼシレイカンガイナクナッタノカ…オモイアタルフシハアリマスカ?」
吹雪は少し悩んだ。まだカ級には化物になった可能性があるとは言えない。
だが彼女は助けてくれた…どうしたものか…
そんな事を考えていた時だった。突然夕立が執務室に入ってきたのだ。
吹雪「どうしたの?夕立ちゃん」
夕立「提督さんが、提督さんが帰ってきたっぽい!」
その一言で執務室の空気が凍った。
未だに夕立の言ったことが理解できていないような表情で吹雪は夕立を見ていた。
静寂を砕いたのは…カ級だった。
カ級「シ、シレイカンサンガカエッテキタミタイデスネ。ワタシハコレデシツレイシマスネ」
カ級はそう言うとそのまま執務室を後にした。
たったその一言だけでも静寂は壊せた。
吹雪「司令官は?今、何処に?」
吹雪は夕立に尋ねた。
夕立の話が本当ならばまずは執務室に来ると思うのだが…
夕立「執務室に来る前に他の子に捕まってね、今は食堂にいるっぽい」
なるほど。食堂か。吹雪は資料をまとめて抱えた後
吹雪「今から食堂に行ってきます!」
と言って全力で食堂に向かった。
夕立「お、おいていかないで~!」
夕立も後を追うように食堂へと向かった。
一日だけだったが会えなかったのだ。
きっと色々言いたいことがあるのだろう。
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提督「ンァ…ここは?」
提督が目覚めたのは見覚えのある海岸だった。
さっきから頭痛がする。それに少し気持ち悪い。
提督「この首飾りがあるってことは…やっぱり現実だったのか…」
提督は昨日の夜を思い出した。
完璧に覚えている訳ではないが、少しなら嫌でも脳内に流れ込んでくるのだ。
提督「今…何時くらいかな…?」
提督は空を見た。
見た感じだとまだ昼前くらいだろう。
提督「ここには昔…よく来てたなぁ」
この海岸は、提督の故郷の町のすぐ近くにあった。
町が滅ぼされた時の深海棲艦達の侵攻もここから来たのだろう。
提督「あの二人は元気かなぁ…?」
昔、浜辺で黒髪の少女と白髪の少女と出会った。
彼女達としばらく一緒に暮らしたがいつの間にかいなくなってしまった。
そんな昔の事を思い出しながら提督は浜辺を歩いていた。
崩壊した建物…つまりは提督の故郷の近くまで歩いてきたがそこでとあることに気付いた。
提督「あっ…そういえば左手…」
提督の左手は切ったはずなのにあった。
何も傷などないままだ
不思議に思い提督は左手を触った
提督「ッ!?」
左手に触れた瞬間炎で炙られたかのような感覚に陥った。
手を離した後もその痛みは残っている。
??(ヨぉ、どうだ?兄貴自身の体はよぉ?)
何処からともなく声が聞こえる。
その声には覚えがあった。あの怪物の声だ。
怪物(オメェの体には契約があるんだよ)
提督「契・・・約?」
怪物(そう、契約だ。今回の代価は…お前のその左手のようだなぁ)
提督は自分の左手を見た。一見特に問題はなさそうだが…
触れた時のあの熱さと痛みを思い出し少し顔を歪めた
怪物(オメェの左手はもう死んでるんだよ。
いや、死んでいると言っていいかがよくわからねェがな)
怪物は恐ろしい事をサラッと言った。死んでいる?一体どういう訳だ?
問題なく左手は動くはずだ。
怪物(外面だけはな。オメェの左手にはもう温度がない。
あー、深海化したって言えば分かるか?)
深海化…聞きなれない言葉に提督は疑問を覚えた。
そんな事は大本営でも聞いたことがない。
怪物(そう不思議そうな顔をするな。理解できなくてもいいさ。)
提督「な、なぁ…その深海化って言うのは治るのか?」
提督は自身が疑問に思ったことを言った。
怪物(治る?んな事はネェよ。不治の病って奴だ。
感染したら最終的には深海棲艦となる。ただそれだけだ。
だって仕方ねェよなァ?俺との契約なんだからよォ?)
提督「…そう…か…」
提督は何度も自身の左手の感覚を確かめた。
見た目や動きには全く問題はない。
だが触ると激痛が走る。
そんな事をしているうちに崩壊した街中へと辿り着いた。
提督「…また…戻ってきたな…お墓参りでもしてこようか」
提督は崩壊している町を進んでいる。
時々赤黒い染みのようなものが道に点々とある。
もうこの光景にも慣れてしまったのだろう。
提督「・・・あの日から…もう8年か…」
あの日…この町がまだ繁栄していた時の事だ。
突如現れた数隻の深海棲艦によってこの町は壊された。
助けなんかが来るわけがなかった。
何故なら、その時大本営の発令でほぼ全ての鎮守府が大規模作戦に参加していたと聞いた。
たくさんの国民がいる『本土を置いて』、だ。
ある者は名誉の為に。ある者は階級向上の為に。
そしてある者は『英雄』という称号を貰う為に町の防衛などをしなかった。
その結果がこれだ。
この町の…提督を除いた全ての住人を見殺しにした。
さらに大本営側もこの町の存在自体を消し
この土地には何もないとだけ全国に伝えたのだ。
道の端には白骨や遺体などが転がっていて見ていて痛ましかった。
人間の遺体だけではない。深海棲艦の残骸や、艦娘の遺体までもがあった。
そんな地獄のような光景を直視しながらも提督は墓地へと向かった。
墓地には大量の花が植えられていた。
この花は全て提督が自分で植えた物だった。
提督「…ただいま。最近来れなくてゴメンな?」
勿論答える者はいない。
それでも提督は言葉を続けた。
提督「俺は…さ、もしかしたら早くにそっちに行くかもしれないんだ…」
提督は少し悲しげな表情でそう言った。
人型の形は留められても中身が深海棲艦になってしまうのなら死んだも同然だ
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約200近くある墓すべてに軽く手入れをして提督は墓地を後にした
その表情は何処か寂しげだった。
提督が鎮守府にたどり着いたときにはもう夕方だった。
正面の玄関を開けた時、ある一人の深海棲艦が見えた。
提督「確か…駆逐棲姫だったか…?」
提督は昨晩の事を思い出した。
確かにあの時にいた駆逐棲姫だ。
そんなことを考えていると駆逐棲姫と目が合った。
駆逐棲姫は提督と目が合うと
駆逐棲姫「ニ、ニンゲンダ!?」
駆逐棲姫が大きな声でそう言った。
そんなに珍しいのか?
駆逐棲姫のその一言で何やら建物内からぞろぞろ艦娘と数人の深海棲艦が出てきた。
一瞬にしてたくさんの艦娘に囲まれた。
提督「あの…ここの提督だが…吹雪はいないか?」
提督がそう言うと囲んでいた艦娘が固まった。
何か可笑しなことでも言ったのだろうか?
遠目から見ていた深海棲艦も同じように固まっている。
数分間くらいそんな状況が続いていた。
すると提督を中心としていた円を弾くように高速で何かが走ってきた。
提督「…何故だろう。凄く…嫌な予感がするよ」
全力で走ってきたのは金剛だった。
金剛は提督を見つけると瞬間的に
金剛「テェェェェェェトク!!!!」
と言いながら突進してきた。
流石に危険を感じ避けようとしたが時すでに遅し。
提督「ぐへぇ!?」
よく分からない声を上げて吹っ飛ばされた。
金剛はそんな提督を揺すり続けた
金剛「何処に行ってたのデスカ!?心配したんデスヨ!!」
金剛の目から涙がこぼれている。
それほど心配されていて提督は何故か嬉しいような気持ちになった。
金剛のその攻撃で他の艦娘達も提督に飛びついていった。
傍から見れば幸せそうな光景だろうが何人かが左手に触ってかなりの激痛が走り続けている
だが、それでもこんなにも心配してくれる仲間がいるのに
振りほどくようなことは出来ない。
提督は声を上げないように我慢しながら熱い歓迎を受けた。
流れるようにして運ばれた提督は食堂にいた。
どうやらいまから祝勝会でもするような感じだった。
その場には、艦娘達の他にも深海棲艦も参加していた。
皆艤装はちゃんと外している。何気に律儀だ。
そうこうしていると食堂のドアが勢いよく開けられた。
そこには資料を持った吹雪がいた。
吹雪は提督を見つけると真っ直ぐ提督の元へと走ってきた。
吹雪は近くまで来ると急に止まってしまった。
何かを恐れているのだろうか。
提督は吹雪に対してこう告げた。
提督「ただいま。吹雪」
それを聞いた吹雪は驚いた表情をした後に
吹雪「お帰りなさい!司令官!」
と笑顔で答えてくれた。
その一言と同時に祝勝会が始まった。
提督はその吹雪の笑顔に懐かしさを覚えながらも祝勝会に参加したのだった。
~続く~
どうでしたか?
提督は代償を背負ったもののようやく鎮守府に戻って来れました。
次は祝勝会ですね!
次回もお楽しみに!