幻影狐と原始竜   作:月影星良

1 / 9
その1:デジモンカイザー編
Lv.1  パソコンは叩いちゃ駄目


俺の名は稲荷玄夢。

表向きはごく普通の小学5年生だが、実はとんでもない秘密を持っている。

おいそこ!「こいつ厨二病こじらせてやがる……」って言うんじゃねぇ!

言っとくけど本当のことだからな!!

何せ俺は……

 

「やっべぇ!玄夢よけろー!!」

 

声が聞こえたほうを振り返ると、サッカーボールが迫っていた。

一般ピーポーなら顔面にゴールってオチだが、生憎俺はそんなへまはしない。

 

「ほい」

 

軽く跳び上がってサッカーボールを蹴り返す。

ボールは俺がいる方向とは逆に飛んでいき、少し先で受け止められた。

そこには頭にゴーグルを付けた男子がいた。

 

「ったく…サッカーするときはもうちょっと周りに気を配れよな、大輔」

「悪ぃな玄夢」

 

ちなみに俺とこいつは1年のときからずっと同じクラスな腐れ縁だったりする。

5年になった今年も例にもれずまた同じクラスだった。

 

「しっかしホントに惜しいよなー」

「何がだ?」

「お前がサッカークラブに来れたらオレ達のチームはもっと活躍できたのになぁ」

「しょーがねぇよ

俺んち『運動系のクラブは絶対やるな』ってうるさくてさ…」

 

これにはちゃんとした理由がある。

実を言うと俺は――いや、俺を含めた家族の何人かは人間じゃない。

ばあちゃんの話だと、どこかの世界の人間は俺らのことを「ゾロアーク」と呼んでるらしい。

「ゾロアーク」とはポケモンと呼ばれるふしぎな生き物の一体。

ポケモンは闘って進化して、名前と姿を変えながらどんどん強くなっていく。

まぁ、俺はまだ進化できないから「ゾロアーク」の前――「ゾロア」のままなんだけどな。

 

「何ぼーっとしてんだよ!

早くしねぇと遅刻するぜ!」

「お、おう!今行く!!」

 

俺のいるこの世界はポケモンが存在しないから外では人間の姿になって生活している。

だから正体がバレるのは絶対に避けなきゃならない。

ってなもんだから運動能力の差がモロバレル……じゃない。モロバレしやすい運動系のクラブはもっての外というわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、大輔

八神さんにはいつ告白するんだ?」

 

俺がそういった瞬間、大輔は持っていた教科書を床に落とした。

 

「ななななななんで知ってんだよ!」

「お前の態度見てりゃ誰だってわかるっつーの」

 

本っ当にわかりやすいよな、こいつ。

 

「また同じクラスになれたんだし、これを機会にもっと仲良くなっちまえよ!

ぼやぼやしてっと他の男に取られちまうぜ?」

「んなこと言われてもなぁ……」

 

大輔が言い終わる前に教室の前のドアが開き、先生が入ってきた。

俺たちは急いで自分の席に座った。

 

「この新学期からの君たちの新しい仲間を紹介しよう」

 

先生は黒板にそいつの名前を書いていく。

そしてドアに手を向けると、そこから帽子を持った男子がやってきた。

 

「高石タケルです。よろしくお願いします」

 

転校生――高石くんはみんなの前でぺこりと頭を下げた。

 

「あいつ…」

「知り合いなのか?」

「校庭でサッカーしてたときにこのゴーグルを褒めてくれたんだ」

「ふーん」

 

このくらいの男子ってみんなゴーグルに憧れる年頃なのか?

 

「席は……八神の隣だ」

 

先生に言われ、高石くんは八神さんの隣の席に座る。

その際、

 

「久しぶり」

 

と八神さんに声をかけた。

そいつに対して八神さんも

 

「背、伸びたね」

 

と返していた。

2人のやり取りを聞き、俺の前で大輔が嫉妬の鬼と化していたのは言うまでもない。

 

「ほーら、フラグ立ったー」

「うっせー!!」

 

半ばやけくそ(?)に大輔はそっぽを向いた。

ちょっとからかい過ぎたかな?

 

 

 

 

 

 

「ごめんくださーい」

 

放課後、俺はパソコン室を訪ねた。

 

「あっ、玄夢くんお疲れ様ー!」

 

中にいたのは6年の井ノ上京さん。

去年まで俺が入ってたパソコン部のメンバーだ。

 

「京さん。頼んでた『あれ』どうだった?」

「うーん、色々と調べてみたんだけど、特に変わったところはなかったわ」

「そっか…」

 

ずいぶんと古いやつだもんなぁ…『あれ』

あ。ちなみに『あれ』ってのは、ばあちゃんからパk……勝手に借りた古いフロッピーディスクのことだ。

箪笥の奥にあったそいつを偶然見つけて、せっかくだから調べてもらおうと京さんのところに持ってきたりする。

 

「今度泉先輩にも調べてくれるよう頼んでみるけどいい?」

「ああ。構わないぜ」

 

と、俺が相槌を打つのと同時にパソコンから音がした。

 

「噂をすれば泉先輩にメールみたいね

でももう卒業したのにどうしてなんだろ?」

「一応残しといたほうがいいんじゃないか?

大事なメールかもしれないし……ん?」

 

届いたメールには「みんな助けてくれ。デジタルワールドがピンチなんだ!」と書いてあった。

いかにも怪しそうな内容だけど、差出人の名字には見覚えがある。

 

「このメール書いた人……八神さんの家族!?」

「あたし知らせてくる!」

 

パソコン室を飛び出し、京さんは一目散に駆けだした。

すぐにメールの文章をプリントアウトし、そいつを持って俺も後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下の階にある下駄箱。

そこには八神さんの他に大輔、高石くん、京さんがいた。

 

「ちょうどよかった

玄夢、お前もタケルにがつんと……」

「今はそれどころじゃねぇよ」

 

大輔を遮って俺は八神さんに持ってきたものを見せた。

 

「なぁ、この人のこと知らない?」

 

そいつを見て、八神さんは血相を変えた。

 

「…お兄ちゃん!」

「やっぱ家族だったか」

 

同じ名字だからそうだろうと思ってたけどな。

 

「稲荷くん、お兄ちゃんに何かあったの?」

「パソコン室のパソコンにこのメールが送られてきたんだ

あとは俺にもわかんない」

「とにかく行ってみよう!」

 

高石くんを先頭に、みんなはパソコン室に向かった。

…でもなんでパソコン室なんだ?

まぁいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パソコン室に向かう途中、偶然にも階段で光子朗さんと出会った。

 

「あっ、京くん、玄夢くん

部室のパソコン使わせて下さい!」

「どーぞどーぞ!

卒業後も顔出して下さるなんて感激です!」

 

と嬉しそうに京さんが言う。

パソコン室に入るとすぐに光子朗さんはパソコンを立ち上げてメールを打ち始めた。

あのメールは光子朗さんのところにも届いていて、返事を書こうとしたら電池がなくなっちまったらしい。

 

「ねぇねぇ、デジタルワールドって何?

新しいテーマパーク?」

「オレ、ちょっと太一さんに聞いたような……

確か、デジモンがどうとか」

「デジモン?」

 

なんだそりゃ。

新種のポケモンか?

 

「大輔くん、太一さんを知ってるの?」

「サッカー部の先輩後輩なの」

 

高石くんの質問に答えたのは大輔…じゃなくて八神さんだった。

 

「だから何?デジモンって何?」

「俺にもじーーっくり教えてくれないか?」

 

じりじり言いよる俺と京さん。

光子朗さん、高石くん、八神さんは冷や汗をかきつつも作り笑いをしていた。

こいつら絶対何か隠してるな。

 

「教えてくれなきゃここで…」

 

と、言いかけたところでドアがガラッと開いた。

そこにいたのは丸い頭の男の子だった。

 

「伊織!」

 

京さんが男の子――伊織くんに駆け寄る。

どうやら知り合いみたいだ。

 

「京さん、パソコンの修理……」

「あっ、忘れてた!」

 

「あとでデジモンについて教えてほしい」と伝え、京さんは伊織くんと一緒にパソコン室を後にした。

 

「げ、玄夢くんも手伝ってあげたらどうですか?」

「俺、パソコンにはそんなに詳しくないし光子朗さんのほうがいいと思うんだけど」

「僕はここでやらなくてはいけないことがあるので……」

 

怪しい。

もりのよ●かんの噂並に怪しい。

 

「僕達からも頼むよ」

「お願い稲荷くん」

 

光子朗さんだけでなく八神さんと高石くんまで頼んできた。

3人とも、どうしても俺をここから追い出したいようだ。

だったらこっちにも考えがある。

 

「…ディスク」

「はい?」

「京さんに調べてもらってたフロッピーディスクがあるんだけど、光子朗さんにもそいつを調べてほしいんだ

そしたらここから出ていくけど…どうする?」

「それは別に構いませんが…」

「んじゃ、交渉成立ってことで!」

 

京さんたちを追うべく俺もパソコン室から出た。

あまり時間が経ってないこともあって、2人の姿はすぐに見つかった。

 

「京さーん!」

「どうしたの?玄夢くん」

「パソコンの修理俺も手伝うよ」

「本当!?ありがとう!」

 

光子朗さんと取引したしな。

 

「まず何から手をつけたらいい?」

「えーっとね…」

 

その時だった。

 

「うわっ!」

 

ものすごい光が後ろからやってきて、俺の手めがけて飛び込んできた。

見るとそこには――白地で持つ部分が紫色をした小さな機械があった。

 

「な、何!?今の光!」

「さぁ…?」

「僕にも何がなんだか…」

 

俺だけじゃなくて京さんと伊織くんの手元にもこいつと色違いのがある。

 

「ちょっと光子朗さんに聞いてくる!!」

 

そう言い残して京さんはパソコン室のほうへ走っていった。

 

「あー、伊織くん…だったよな?」

「はい。えっと…」

「俺は玄夢。稲荷玄夢だ

よろしくな」

「こちらこそよろしくお願いします。玄夢さん」

 

伊織くんはぺこっと頭を下げた。

 

「お前はこれからどうするんだ?」

「今日は遅くなりそうですし、家に連絡しようと思うのですが…」

「了解!1人でだいじょうぶか?」

「はい。大丈夫です」

 

もう一度お辞儀して伊織くんは電話が置いてある所へ歩いていった。

 

「さて、俺はどうすっかな?」

 

光子朗さんと取引しちゃったからパソコン室には戻れない。

しょーがないので伊織くんに帰ることを伝えといて俺は下駄箱へと向かった。

 

 

 

パソコン室に戻らなかったことを二重の意味で後悔することになるのは少し先の話だったりする。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。