時間軸は原作の2話と3話の間です。
「はぁ…」
02の次作品に登場するツンデレ娘の家みたいな純和風の俺ん家。
そこの稽古場で俺は盛大にため息をついた。
「闘いの最中によそ見とは…随分と余裕じゃないか」
「へ?」
遠くから黒い塊が飛んでくる。
そいつをとっさに身体をひねって、すんでのところでかわした。
塊が飛んできた方向には「ゾロアーク」が――いや、ばあちゃんが立っていた。
「相手には常に気を配れと言ったはずさね」
「そもそもこうやって暮らしてる以上、んな機会ねーだろ?
この稽古だってどーせ無意味だし…」
それに今朝の話聞いたら稽古どころじゃないしなぁ…。
~回想~
高石くん「玄夢くん、ちょっといい?」
俺「何だ?」
高石くん「昨日のことで話があるんだけど、今日の放課後パソコン室に来てくれないかな?」
俺「わりぃ!今日は家帰って稽古受けなきゃならねーんだ」
大輔「んなこと言わずに頼むよ玄夢!」
高石くん「すごく大事な話なんだ!」
俺「そう言われてもなぁ…稽古サボったらばあちゃんから鉄拳が……」
八神さん「……稲荷くん、明日なら平気?」
俺「まぁ明日なら大丈夫だけど…」
八神さん「なら明日の放課後にパソコン室に来てくれる?」
俺「了解」
大輔「今日はしょうがねぇけど、明日は絶対来いよな!」
俺「はいはいわかってるって」
~回想終了~
大事な話かぁ…
いったいなんだろうな?
*
約束の時間。
つまり翌日の放課後、俺はパソコン室を訪れた。
「ごめんくださーい」
「よぉ、玄夢!」
「『よぉ』って…さっき別れたばっかだろ?大輔」
大輔だけじゃなく、パソコン室には八神さん、高石くん、京さん、伊織くんもいた。
「んで、話ってなんだ?」
「実はd「大輔ーーーーーーっ!!」
高石くんの台詞を遮って、棚の影から青くて小さい生き物が飛び出して大輔にくっついた。
そいつに続いて色んな生き物がわらわらと現れ、他のみんなにくっついていった。
「なななな、何だよこいつら!」
どう見ても普通の動物じゃないしポケモンにもこんな種族はいないはず。
つまり俺の目の前にいるのは完っ璧な未確認生物ズということだ。
ちなみに今の心境を例えるなら異世界の幽霊と合体した中学生を目の当たりにした気分だ。
「ヒカリ、こいつは誰だ?」
「4人目の新しい選ばれし子供・稲荷玄夢くんよ」
「そうか…」
八神さんの腕の中にいる白猫(っぽいの)がこっちを睨んでる。
はっきり言って怖い。
「私はテイルモン」
「オレ、チビモン」
「ポロモンです」
「ウパモンだぎゃ」
「そして僕がパタモンだよ
よろしくね」
未確認生物ズはそれぞれ名乗った。
おい、下から2番目の奴名古屋弁だったぞ。
「つーか、こいつらいったい何なんだよ!!」
「それはこれから説明するよ」
と言って高石くんは話してくれた。
デジタルワールドという世界のこと。そこに住むデジモンと呼ばれる生き物のこと。
俺と大輔、京さん、伊織くんが新しくその世界に選ばれた子供だということ。
そして、デジタルワールドを救うには俺たちの力が必要だってことを。
「頼むよ玄夢くん
君にも力を貸してほしいんだ」
「って言われてもなぁ…」
みんな真剣そうな顔だから俺が今聞いたことは本当のことなんだろう。
きっとデジタルワールドってとこを救うために何かと闘うことだってある。
下手したら俺の正体がバレちまうかもしれない。
だけど……大輔たちを見捨てることなんてできない。
「わかった。俺もやってみる!」
「本当!?」
「ありがとう稲荷くん!」
「玄夢ならそう言うと思ったぜ!」
それにデジモンって生き物のこと、どうも他人事とは思えないんだ。
*
パソコンに一昨日俺の手元に飛んできた小さい機械――デジヴァイスをかざすとパソコンの中へと吸い込まれていく。
目を開けると、そこはパソコン室じゃなくて虹色がかった草木が茂る森の中だった。
「ここがデジタルワールドかぁ…
…って、服変わってるーーーー!?」
俺の服はいつも着てる灰色のパーカーと黒いズボンではなく、灰色で七分丈のジャケットとズボンになっていた。
首元には黒いもふもふが付いていて、腰には銀色のヒップバッグがある。
さらに赤い手袋と靴というおまけ付きだ。
簡単に言っちまうと、今の俺の恰好は擬人化された「ゾロア」みたいな感じだ。
「うぉっ!?こっちも姿が変わってる!!?」
俺と同じく服が変わっていたのは大輔、京さん、伊織くんの3人。
劇的ビフォー●フターしたのはチビモン、ポロモン、ウパモンの3体だった。
「デジタルワールドに来ると戻るんだぎゃ」
と、ウパモン(この状態のときはアルマジモンという名前らしい)が説明してくれた。
いわゆるフォルムチェンジってやつか。
おk。把握した。
「で、俺たちは何をすりゃいいんだ?」
「まずはデジメンタルを探そう」
「デジメンタル?」
そう問いかけた瞬間、俺のデジヴァイスが鳴りだした。
画面を見たら数個の点から少し離れた所に点が1つある。
「きっとそこにデジメンタルがあるんだよ」
「マジで!?」
「よし!そうと決まれば早速………」
大輔が言いかけたところで、いきなり草むらを割ってお面を被ったマッスグマが飛び出してきた。
数は3体。
どいつもこいつも首に巻いてるしめ縄に黒いリングが付いている。
「あれもデジモンなのか?」
「うん。レッパモンっていうんだ」
お面を被ったマッスグマもといレッパモンは俺たちめがけて尻尾を振り下ろした。
「うわぁあっ!!」
なんとか当たらずに済んだけど、地面には深い切れ込みが入っていた。
こりゃ当たったらガチでやばいな。
「ここはオレたちが食い止める!
玄夢はヒカリちゃんとタケルを連れてデジメンタルの所に行け!」
そう言うと大輔はデジヴァイスを上にかざした。
京さんと伊織くんも大輔と同じようにする。
「「「デジメンタルアーップ!!!」」」
3人が叫ぶと、ブイモン(元チビモン)、ホークモン(元ポロモン)、アルマジモンの身体が光りだした。
「ブイモン、アーマー進化―!!
燃え上がる勇気・フレイドラモン!!」
「ホークモン、アーマー進化―!!
羽ばたく愛情・ホルスモン!!」
「アルマジモン、アーマー進化ー!!
鋼の英知・ディグモーン!!」
3体は別のデジモンへと姿を変えていた。
「どういう……ことだ?」
まさかデジモンも進化できるのか!?
「行こう、玄夢くん!」
「お、おう!」
この場を任せ、俺たちは森の奥へと進んだ。
*
デジヴァイスの画面に映し出された点を頼りに森を進んでいったら、小さい洞穴があった。
入口の上には五角形みたいなマークが刻まれている。
「なんだありゃ?」
「あんな紋章見たことない…」
「とにかく行ってみよう!」
洞穴に近づくと、上から悟●っぽい服を着た3本角のミミロップっぽい奴が降りてきた。
そいつの左足にも黒いリングが付いている。
「トゥルイエモンだ!」
パタモンが叫ぶと、ミミロップもどき改めトゥルイエモンは持ってる鉤爪を構えてこっちに向かってきた。
「玄夢くん!ここは僕たちに任せて!」
「だ、だけどお前らが…」
「私たちなら大丈夫よ
だから早くデジメンタルを!」
「……わかった!」
全力で走って洞穴の中へと飛び込む。
奥には入口にあったマークと同じものが付いた小さい置物が台座の上に置かれていた。
「これだな」
試しに持ちあげてみたら、置物の下にあった穴から光が噴き上がった。
「おわっ!!」
光の中から現れたのは―――紫色のもふもふした生き物だった。
額には三角形の赤い物体が付いている。
「君は…?」
「げ、玄夢!稲荷玄夢だ!」
「そうか…君が絆のデジメンタルを持ち上げてくれたんだね……」
「へ?」
「おれはドルモン
これからよろしく、玄夢」
黄色い目を細め、ドルモンは……種族名で呼ぶのもかわいそうだしドルすけでいっか。
ドルすけはにっこりと笑った。
そのすぐ後に入口のほうからでかい爆発音が聞こえた。
「い、今の何!?」
「まさか…!」
ドルすけを抱え、入口へと戻る。
そこで目にしたのは傷ついたテイルモンとパタモンを抱える八神さんと高石くん。
2人の前に立っていたのはさっきのトゥルイエモンとグラサンをかけたコスプレイヤーだった。
「また新しい選ばれし子供か…」
コスプレイヤーは俺を見るな否や小さく舌打ちをした。
「誰だお前は!」
「僕はデジモンカイザー
デジモンの支配者にしてデジモンの王さ」
「はあ?デジモンカイザーだかヘルカイザーだか知らねぇけどよー……
お前、どう見てもただの痛いコスプレイヤーじゃねーか」
俺の台詞を聞いて、コスプレイヤーもといデジモンカイザーの顔が少し引きつった。
「僕を侮辱するとはいい度胸だね…
逆らう者はどうなるか教えてやるよ
行け!トゥルイエモン!!」
命令を受け、トゥルイエモンが地面を蹴って向かってきた。
「玄夢!絆のデジメンタルを持って『デジメンタルアップ』って叫ぶんだ!」
「へ?」
「早く!」
トゥルイエモンの鉤爪が勢いよく振り下ろされる。
振り下ろされる寸前で俺たちはなんとかよけた。
「…了解!いくぞドルすけ!!
デジメンタルアーップ!!!」
言われた通り叫ぶと、大輔たちのときと同じようにドルすけの身体が光りだした。
「ドルモン、アーマー進化ー!!
鉄壁の絆・ラプタードラモン!!」
ドルすけは紫色のもふもふした生き物から鋼鉄で武装した黄色いドラゴンへと姿を変えた。
そしてそのままトゥルイエモンに突っ込んでいった。
「クラッシュチャージ!!!」
もう少しで当たるってところでトゥルイエモンが急に上へと跳び上がった。
攻撃対象がいなくなったことで、勢い余ってドルすけは木に激突した。
「だ、だいじょうぶか!?」
「ああ…大丈夫だ」
身体を起こして立ちあがるドルすけ。
すぐ目の前には鉤爪が迫っていた。
「巌兎烈斗(ガントレット)!!!」
そしてドルすけに鉤爪の連続攻撃を浴びせた。
「うわぁああああ!!」
地面を蹴ってトゥルイエモンが再び跳び上がる。
やばい、このままじゃ2撃目が来る!
いったいどうすれば………。
……そうだ!この方法ならいけるかもしんねー!
「ドルすけ!もっかいトゥルイエモンに向かって飛び込めーー!!」
「わかった玄夢!」
足場のない空中なら飛ぶ手段を持たないトゥルイエモンは動く方向を変えることができないはず!
思った通り、方向を変えるようなことはしてこなかった。
「あの黒いリングを狙うのよ!」
「了解!
頼むぞドルすけ!!」
ドルすけはトゥルイエモンを抑え込み、黒いリングを噛みちぎった。
「アンブッシュクランチ!!!」
一瞬にして黒いリングは粉々になった。
それを見て、デジモンカイザーは遠くからデジモンを呼び出してそいつに乗って飛んでいった。
「ちょっ、逃げんなこらーー!!」
「でもデジメンタルは見つかったし、操られていたデジモンも元に戻ったみたいだから今回はこれで一件落着じゃないかな?」
高石くんが指した先ではトゥルイエモンが目をぱちくりさせていた。
「はて?我はいったい…?」
「黒いリングでデジモンカイザーに操られていたのよ
それを稲荷くんとラプタードラモンが助けてくれたの」
「そうであったか
謝謝!助けて頂き、本当に感謝する!」
手を合わせてぺこっとお辞儀すると、トゥルイエモンは森の奥へと去っていった。
代わりに大輔たちが森の奥から姿を現した。
「みんなお疲れさん!」
「そっちも終わったみたいだな、玄夢……とそいつは?」
大輔がドルすけを指して言った。
つられるようにしてドルすけを見ると、なんとドルすけは元の紫色をしたもふもふ生物に戻っていた。
デジモンって進化したら元に戻るもんなのか?
…おっと話がずれちまった。
「こいつはドルすけ
なずなのデジメンタルを持ち上げたら出てきたんだ」
「『なずな』じゃなくて『絆』ね
あとおれドルすけじゃなくてドルモンだから」
いちいち訂正しやがって……どこかの攘夷志士かよお前は。
「ってことはこの子が玄夢くんのパートナーだね」
「パートナー?」
「うん。選ばれし子供にはそれぞれパートナーのデジモンが1体いるんだ
ちなみに僕はタケルのパートナーだよ」
「へぇ~」
6体までじゃないんだな。
「これから一緒に頑張ろう」
「ああ、高石くん」
「名前でいいよ。玄夢くん」
「そうね。私たちもう仲間なんだもの」
そう言って八神さんがにこやかにほほ笑んだ。
俺の横で大輔も「(八神さんを)名前で呼んでやれ」って言いたそうな目でこっちを見ている。
よーし、だったら……。
「んじゃ改めて……よろしくな!タケル、ヒカリ!」
「うん」
「こちらこそよろしくね。玄夢くん」
俺はタケルとヒカリと、ドルすけはパタモンとテイルモンと握手した。
このあと大輔にしこたま非難されたのも、まぁ……言うまでもないか。